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『君の心臓の鼓動が聞こえる場所』

2008.11.29(sat.) 19:00~21:10 サンシャイン劇場・14列下手側

キャラメルボックスクリスマス公演、東京初日。
札幌で11月初頭に幕を明け、名古屋・神戸経由でこの日が東京初日。

普段、キャラメルは初日に行くことはないのですが、既に3都市の公演を終えており、それなりに出来上がっているだろうと見越して東京初日を取りました。

「雨と夢のあとに」でキャラメルボックスの成井さん・真柴さんの脚本との相性が抜群だった黒川智花ちゃんを客演、ヒロインとして迎えたこの舞台。

智花ちゃんを魅力的に見せることではたぶん日本一であろう成井さんの演出ですから、いやがおうでも期待は高まります。

で、感想ですが。

期待しすぎたのかなぁ。

とりあえず初回ではちょっと微妙な印象でした。

そりゃ文句なしに可愛いのは確かなのですが、舞台的な押し出しが強くないので、その分キンキン声で声を張らせているのが、ちょっと耳に優しくありません。

よくミュージカルとかで「キンキン声」と称される(ちなみにあまり褒め言葉としては使わない)女優さんがいまして、松たか子さんとか由美子さんとかそうだったりするんですが、比べものにならないぐらいの高音です。無理して出している感が智花ちゃんの場合はありありとみれて、特に前半部はなかなかの生意気っ子なので、感情移入がなかなか大変です。

ストーリーを単純に説明してしまいますと、時はクリスマスイブ。

主人公の脚本家は結婚歴1回、1女をもうけるがその後離婚、親権は母親に行ってしまう。
五歳の時に分かれた長女、それから14年目のこの年、19歳になった娘は、家出まがいに自宅に転がり込んでくる・・・

目的は自分の書いた小説を出版して欲しいからだった・・・

その19歳の少女、「日高いぶき」役の黒川智花ちゃん。

というか雨夢の時にはまだ15歳だったのですね。それから4年たってのキャラメル初登場でさえ、まだ10代というのですから、女子団員の皆様から「若いわ~」と羨望の眼差しで見つめられるのも分かります。

雨夢の舞台版をやった福田麻由子ちゃん(ちなみに智花ちゃんに花を贈ってました)を見つめる目が「12歳なのに一人前の女優」だったのに、智花ちゃんを見つめる目が「19歳なのに純粋な少女」だったのは、女優さんとしての力強さの違いということになっちゃうのかな、やっぱり。

ちなみに今回の作品の制作発表で、「雨夢が舞台化されたときに自分じゃなくて悔しかった」と語ってる智花ちゃんのコメントがあってとても意外でした。(こちら

おっとりした感じの彼女でも、やっぱりそういうことは思うんだなぁという当たり前の感想を持ってみたり、おっとりに見えて気が強いようなところは、今回の作品のいぶきの一面に、そのまま表現されているのかもしれません。

今回の作品はあくまで「黒川智花ちゃんをヒロインに迎える」のが一義的な目標に置かれているので、父親役はドラマで共演した西川さんに必然的になるし、岡内さん(脚本家の秘書的存在)は雨夢でいえば木村多江さんが演じた役回りの、いわゆる「素敵なお姉さん」になるのも必然。

さてこの辺りから毎度恒例のネタバレです。
今後鑑賞予定の皆様はご注意くださいませ。




で。

今回の作品のタイトル、すごーく長いわけですが、「心臓の鼓動」という台詞、本編でも何度か使われています。

何かの暗喩かな、と思っていたわけですが、なるほど不幸が様になる少女、黒川智花ちゃんは病気を避けては通れないのですね。

人は自らが危機に陥ったときに、一番大切な人(物)を想う。

というおそらく真理が、物語後半で解き明かされるにつれ、日高いぶき、そしてもうひとりの少女である石狩鈴音の関係とともに判明していきます。

日高と石狩・・・この作品が北海道からスタートしてる公演というのがよく分かります。
主人公の根室、共同経営者の砂川、もうひとりの脚本家の松前・・・北海道の地名目白押しです。


物語前半のちょっとまどろっこしいストーリー進行に比べると、後半のいぶきの叫び、そしてその叫びが実は身体の叫びではなく、魂の叫びだと分かったあたりからの展開は、段違いに引き込まれるものがありました。

いぶきが父親と会えたこと、その「奇跡」のピュアさに一点の曇りもない、確かにそれはキャラメルボックステイスト以外の何物でもないのでした。

いぶきちゃんと父親を応援するみんなという姿は、テレビ版の雨夢の雨ちゃんと父親の姿を彷彿とさせるものがあったし、でも何でかわからないけれど、雨夢にあったカタルシスに比べて、この作品のエンディングへの道のりは、何かちょっとだけ押しが足りない気がします。

「最後に信じるなら、なぜ最初から信じてくれないの」そんないぶきの叫びが、もっと作品の中で生きるように見えてくれば、この作品はもっとよくなる気がします。


登場人物は成井さんを彷彿とさせる脚本家を演じる西川さん(のちょっと押しが出せない感じ)といい、生意気盛りのいぶきを演じる智花ちゃんを初め、キャストはどの方もいい味を出してます。

智花ちゃん、演技にめりはりがもっとあって欲しいかな。
今回は事実上は2役だけど、「全然違う」と周囲が言うのがちょっと首をかしげてしまうほど、差が見えないし。

「力強さ」が見えにくいのは物足りないし(どうしても福田麻由子ちゃんと比べてしまう)、強さを出すのに張り上げだけが武器なのはちょっとつらい。
舞台の声は喉でなく腹から出して欲しい。

脚本家と共同経営者にあたる小説家を演じている大内さん。実は大内さんはキャラメルの男優さんでは一番の苦手な人だったのですが、今回は凄く良いと思う。

無理して出過ぎてないというか、大内さんは上川さんや岡田さんと一緒にやったときは変な対抗意識が表面に出してくる印象を持っているのですが、今回は組んだ相手が西川さんということもあり、無理なく先輩(作品上は恩師)を立てる形になっており、すっきりしていてgood。

そういえば、いぶきという名前は「息吹」にかけているのでしょうね。

表のヒロインがそのいぶきなら、裏ヒロインが岡内さん演じる秘書。「芸能人のような派手さはなく、目も鼻も口も上品で優しげ」という設定(成井さん原作の小説より)からして、キャラメルボックスで演じさせるとするならまぁ岡内さんだろうな、とすぐ想像がついてしまいますが。

素敵なのですが、今回は主人公の別れた妻役を演じた温井さんと役をひっくり返しても多分何の違和感もなかっただろうし、もしかすると春公演の客演・西山繭子さんと入れ替えても違和感なさそう。それこそ木村多江さんでも。

「きれいなお姉さん」であることにとどまってしまっているのは、ちょっと寂しいかも。

でも温井さんの演じた妻役は、何気に出番が少ない技巧者向きな役だから、温井さんじゃないと無理だと思うけれど。難しい役どころをひょいとこなしちゃうようになった温井さん、さつきさんの後を継げるかも。

敏腕プロデューサー、原作では男性ですが今回は岡田さつきさんが演じています。
まぁ男以上に男らしいさつきさん(爆)ですから格好良さは折り紙付き。
實川さんのサポートも上手いことはまってます。

大森さんのおばあさん役もちょいとツンデレ風味入ってて面白いし、おじいさん役の菅野さんは相変わらず微妙にヘタれるし、岡内さんの兄役の三浦さんは相変わらず主人公に余分な邪魔ばかりするし(笑)、畑中さんはメタボ体型を活かして(爆)客席の沸かせ役として存在感抜群だし。脚本家・松前役をやった阿部さんがちょっと「売れっ子の嫌みっぽさ」を出してて、ある意味存在感あるし(ちょっと損な役回りですが)。

全体的に、前半と後半がうまくかみ合っていなかったのが気になりはしたのですが、東京1ヶ月、短いようで長い期間にどれだけ変わっていくのか、楽しみです。

この日、初日特典ということで、初日の半券持参で当日券半額の特典が発表されまして、あ、1回確定(笑)
毎度恒例のビジュアル付キャラメルチケット、欲しいんだよなぁ。

前回のハーフタイムシアター「ハックルベリーにさよならを」と「水平線の歩き方」のDVD(まとめて1枚)も出ていたのですが、2作品まとめて9,800円だったこともあり高くて断念(手持ちが少なかったので。別々に出ると思ってたから油断でした)。
買いに行きたいのでぜひまた行こうかなと。

つかトーク&フォトブックと原作本(成井さんサイン入り)買ってたらDVDのお金が出なくなっちゃったんで(爆)。

火曜日から金曜日までが、お勧めだそうです。
平日ほとんど全部のような(笑)。

そういえば今回、前説が抜群です。
ミニドラマ仕立てですが凄く面白いです。見逃すと絶対損です。

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