『喧嘩農家』(1)
2008.10.28(Mon.) 19:00~21:00 新宿・シアタートップス 2列目
劇団HOBO、旗揚げ公演。
このメンバーの中でも、高橋由美子テイストは全開。
おじさん群の中でのマドンナって役回りは2月の「星屑の町」も同じだけど、飲み屋の中の話から発生したとはいえ(真昼のビッチ以来か)、とにかく不自然なくはまる。
妙に田舎っぽいのも現代的でないのも、すべてが奇妙にはまる。
劇団HOBOという劇団名は、「ほぼ」つー、「劇団らしきもの」というのが思いつきの発端らしい。
振り返るとこの舞台への登場が判明したのは、今年4月の舞台「空中ブランコ」で初日近辺にわずかな数配られた1枚のチラシ。
ある意味1人でずっと役者を生きてきた彼女が、ほとんど初めて集団に属すというのは、ちょっとした衝撃でもありました。
でも、「小劇場でやってみたい」というのは中劇場作品だった2004年「真昼のビッチ」(新宿・シアターアプル)の時に彼女自身が言っていた夢だったし、ある意味”役者としての贅沢”を共有しに行ってきました。
このシアタートップスも、来年3月で閉館ですが・・・
ストーリーをさらっと。
地方のとある農家に、入り婿を迎えるが、先行きの見えない農業一家は、焦るばかりに空廻りして、借金ばかりがふくらむ一方。
いつも喧嘩ばかりしている農家の、行く先やいかに。
古川悦史さん演じる「入り婿」がいる以上、その奥さんは紅一点の由美子さんがやるわけですが、実は末っ子。
それなのに、実は兄貴はこの末っ子に頭が上がらない。
わらび餅食いコンテスト2位で表彰された経験を持つ(居間の表彰状に注目)照美は農家の長女にして一家の大黒柱。兄貴の誰からも怖がられる切れのある蹴りは、照美最大の武器(笑)
由美子さんへの世間一般からすると随分イメージが違うようなこんな役どころですが、まぁなんつーか、久々に全開に黒いので見ててめっさ楽しい(笑)
「篤姫」での由美子さんが「静」の由美子さんなら、「喧嘩農家」の由美子さんは「動」の由美子さん。「動」というよりか「激動」ぐらいかも(苦笑)。
やっぱり彼女ははじけさせてなんぼだとつくづく実感。
表情の特性から「耐える女」を演じることが多いですが、無難にこなしても存在感はどうしても見いだしにくくて。
無限のエネルギーを暴発させてなお、まだまだエネルギー余ってるようなのが、由美子さんには合ってます。
やっぱり、ぶち切れさせてなんぼですよ(爆)。
今までも能動的なキャラの方が好きだと言うことを改めて実感。
寿庵にしろ茜にしろ球子にしろアクティブ方向に走れば存在感もupなのに、どうしても内向的なキャラばかりになってくる30代中盤。そんな欲求不満も、こういう場所に参加することを選んだ一つのきっかけかも、とか思えます。
閑話休題、作品について。
この作品の中で印象的だったのは、借金まみれになってつぶやく、「ずっと農業やってきて、もう、やめ方わかんねーんだよ」という言葉。
きっと三度の飯より芝居が好き、でも芝居より酒が好き(笑)つー役者たちにとって、もはや「ずっと芝居やってきて、もう、やめ方わかんねーんだよ」、だから劇団作っちまいました、というように聞こえて。
今回の芝居で実に興味深かったのは、メンバーのひとりである古川悦史さんのこんな言葉。
○俳優というのは個の仕事でありながら、個では成立しない矛盾を抱える悲しい仕事であるがゆえに、どこかに『ヤリタイ』事を共有できる人間をどの現場でも常に探してしまうものなのです
○演劇は不毛な時間の繰り返しの中で何か目に見えないものが積み重なって具現化していくものだと思います
○この『目には見えない、不毛なもの』を多く体現してきた連中には具体的な言葉などいらない
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かっこいいなぁ。
若くないからこそ、こんな味わいのある言葉が自然に出てくるんだろうなぁと思う。
芝居の全体的な印象としては、無理に笑いを取りに行こうとしないという意味で大人の芝居。しかし決して笑えないというわけではなく、けっこう馬鹿笑いしました。
それにしたところでやんちゃな感じは、さすが酒席発劇場経由酒席行。
それでいて作りは丁寧。派手さはないけどほんわかする。
怒ってばかりいる由美子さん演じる照美の存在も、ちょうどいい刺激みたいになって、現状に甘んじて危機感を見せない兄貴たちと上手いコントラストとなっていました。
あぁいうとっぴょうしもない役どころを何の違和感もなくやらかして、しかも笑いを持って行くところ、さすがはがぶりより演技専門家。
だてに「みんなの姉御」と言われた経験を持っちゃいない(この作品じゃ末っ子なのに、兄貴全員相手にしても勝っちゃうんだもんな・・・役柄的に)。
(ネタバレのため白反転)
やーまさか由美子さんの巫女さんが見られるとは、眼福。
つか今年の舞台3作ともそうですが、おじさんたち、由美子さんに5歳以上若返る衣装を着せて面白いのでしょうか(面白いんだろうなぁ)。
無理してイメージを捨てようとはしてない、ただひたすらに自然体、いつも緊張するカテコさえ他人につっこむ余力あり。
大劇場で気負わない彼女は、劇場のサイズが変わろうと、やっぱり気負わない向こう見ずなタカハシユミコなのでした。
どんな場所でも箱に合わせて必要十分な芝居を作る技術は、一欠片も錆びることなくさすが。
本人からのコメントで「小さい身体で大冒険。今まで『石橋も叩かず勘だけで生きてきた』自分を支えてくれた人々に感謝」と。太字部に爆笑。その通りでございます。
そういえば、「空中ブランコ」で共演して、由美子さんがFCイベントにコメントだしてた上山竜司君から律儀に花がきてて嬉しい。
見てもくれたらしい→こちら
事務所社長から花が来てるのはこれが事務所公認の課外活動ってことか(世の中で所属事務所から花が来ている舞台なんて初めて見た)。
なにげに電通から花が来ていてびっくりだ。
あと1回、千秋楽(11月2日昼)観劇予定ですが、案外、当日飛び込みで増やしたいかも。
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