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『空中ブランコ』(3)

2008.5.5(Mon.) 17:00~19:35
東京芸術劇場中ホール 13列目下手側

東京楽。
初日・東京楽ともに休日という勤め人にはたいそうありがたい日程設定のこの舞台。
中日を含め3回観劇。

中日の時にはさんざん毒を吐きまくりましたが(苦笑)、今日は少し抑え目で行こうと思います。

この日はさすがに楽ということもあり、動員に苦戦したこの舞台も、空席は数えるほどしかありませんでした。中日の時には2回席の人数が、野鳥の会の会員の皆様のお力を借りなくても数えられる(15人)という人数だっただけに淋しかったものですが、この日は数えるほどしか空き席がなく、さすがに何とか面目を保ったという感じ。

とはいえ、舞台が始まる前の諸々の出来事もあって、メディア向けの売り込みが鈍ったせいもあってか、ドガッチを始めとするチケットプレゼントの山でなんとか形にしただけなので、これから始まる1ヶ月の地方公演、動員の面では東京以上に大変な目にあいそうな感じです(後述)。

そういえばロビーに大量に飾ってあった花はほぼ撤去され、「お花ありがとうございます一覧」が出ていました(中日の後からそうらしい)。

この日はロビーに「土曜ワイド劇場」から由美子さんあてに花があって何だか嬉しい。
また使ってくださいね~

それはそれとして。

3回目に見てみると、1・2回目で見逃した伏線も拾えるようになってきます。
が、やっぱり根本的には交通整理漏れだと思う。

色んな登場人物に愛情をかけるのはいいけど、出番をメインに絞らないと物語の主眼が見えにくくなる。
「全員が主役」は聞こえはいいけど、全員の存在が客席にぐいっと迫ってくるほど本がいいとは思えないし、群衆の中から役者の力技で抜け出してくるのを待つというのも、客に対して不親切な気がする。

贔屓目に見ても、感情込みの芝居やってるのって、由美子さんと尾藤さんだけだし。

この日観劇した時の席、後ろにミュージカル好きのカップル(男性も女性も結構な数見てる感じだった)がいて、一昨日かにクリエの「レベッカ」を見たそうなのですが、「空中ブランコ」を一幕見ていわく。

「由美子さんがもったいない、クリエに行って『わたし』をやって欲しい」って言っていて噴くかと思いました。

その昔、由美子さんがファンテーヌをやったとき、祐さんのファンの人から「由美子ファンテと『だけ』妙に恋愛感情を感じる。それもいいけど他のファンテーヌも愛してあげて!」って書いてた人がいました(笑)

うーん、ミュージカルファンには受けが悪いはずだったのに、東宝に熱心に出なくなってから妙にお客さんからラブコールがあるなぁ。

今回、由美子さんの役でしみじみと身に沁みたのは、「もったいない」という言葉。
いわゆる正しい意味での「役不足」。

あの役になったのは、ひとえに2004年「ミス・サイゴン」のクリス&エレンの演技の相性によるものでしょうし、「姉さん女房」ぶりは、あの作品そのままでした。

坂元さんと由美子さんは、実年齢では由美子さんの方が3つも年下。

坂元さん37、由美子さん34。

役柄上の設定は、公平が32でエリも幼馴染ということは、その前後の年齢と思われますが、それでいてあの堂々とした姉さん女房ぶり、いつも演技を見ていて当たり前だと思っている物が、実は当たり前ではないということに改めて気づきます。

今回の舞台はほとんどの人に忘れ去られていますが、アトリエ・ダンカンのプロデュースで、坂元さんはそこの所属。
舞台レポで「宮迫さんより坂元さんが主役みたい」とよく書かれていましたが、それも道理で、本質的には「坂元さんを売り込む舞台」な訳で。

極論、坂元さんを売り込むのにベストな奥さんとして、共演済みの方から選ばれたのが、由美子さんというわけです。

相性という意味で選ばれたのはありがたいところではあります。「相手の芝居を見て自分の芝居を作る」タイプの由美子さんの場合、「相性が悪い」ということ自体があまりないとはいうものの、作品選びでは最近随分「ついていない」というか、当たり役に恵まれないもどかしさを感じずにはいられません。

時期的にはいまは我慢の時というか、しにくい役で実力を磨く時期なのかなぁと、ちょっと溜め息を付いてしまいます。

クリエあたりには使いやすい女優さんなはずなんだけど、東宝に全くといっていいほど評価されていないからなぁ。レミゼを卒業したっきりなのがそんなにお気に召さないのだろうか。5年間務めたナンネール役には何らかの評価がされるかなと思ったけど、ことごとく何もなかったし、あそこまで冷たいと一言愚痴も言いたくなると言うか。

この舞台の存在で、「篤姫」への入りが遅れて、しがいのない役になりやしないかと、日々ひやひやしているんですが。

さて、ここからはストーリー的なネタバレです。


空中ブランコの若手チームの紅一点(恐らく優紀役の関根あすかさん。G-Rocketsのメンバー中、三枝子役の山中陽子さんとともに、芝居参加組です)の方が言った、「丹羽さん(団長)の言うことを聞いてたら、内田さんだけ辛いじゃないですか」ってとこ。

公平は1幕最後まで、自分のフォームが崩れていることを知らずに、妻のエリもどうしても言い出せずに、夫から頼まれたビデオ撮影も逡巡しているわけです。

エリと団長は公平のために医者を探し、”あの”伊良部医師を見つけるわけですが、このコメントを見る限り、団長である丹羽は、公平の「フォームを崩れている」事実を知りながら、キャッチャーである内田にも口止めしているということになります。

公平はエースフライヤーであるがゆえに、当然にプライドも高いでしょうし(地かわかりませんが、坂元さんはその辺、すごーくはまっています←念のためですが褒めてます)、それだけにどう知らせていいかわからなかったのかもしれません。
この団長の弱気なところがこのサーカス団を混乱させてる最大の原因なのではないかと。

それに加えて「閉鎖的な世界」、エリがいみじくも叫んだ「50人だけの宇宙」という言葉は、この作品を語るにはどうしても逃げられない台詞です。

「50人だけの宇宙」である「閉鎖的な世界」にあって、過去のように「大部屋で皆の考えていることがわかる時代ではなく」、「会社組織」となっているサーカス団。

本当に伝えなければいけない気持ちが伝えられないことで、お互いがお互いを信じることができずに、ばらばらになってしまいそうな空間。

その隙間に入り込んでくる伊良部医師とマユミ看護婦が、ありえないほどのとっぴょうしもない存在感で、それらの問題をかき回してくるわけですが。

前回、「引っ掻き回すだけ引っ掻き回して、一つも解決にたどり着いていない」と書いたのですが、この本の狙い自体は「解決させない」ことなのではないかと思います。

FLIP-FLAP(※1)演じる双子の女の子のうち、内気な子の方(カエデ。姉)の対人恐怖症のことを、モミジ(積極的な方。妹)がマユミに、「伊良部先生に聞いてみてくれない?」と頼んだとき、
「何で私がそんなこと頼まれなきゃいけないの」って一蹴するんですが、「人に頼るより自分で何とかすることを考えるべき」というポリシーは分かる気がするのですね(ただの面倒くさがりやという説もある(笑))

※初稿ではカエデを妹、モミジを姉と書いていましたが、逆でした。演じているFLIP-FLAPのゆうこさん(カエデ役)のブログで初めて認識しました(苦笑)。姉が内気って珍しいなぁというのは、姉属性の私だからの感想でしょうか。

物語的な締めにあたるところで由美子さん演じるエリが言った「一緒に集まることがなくても、みんな『サーカス団にとってよかれと思うこと』を考えてるってことでしょ。良かった。」というのが、結果的にこの物語の結論と。

伊良部医師とマユミ看護婦の存在意義は、かき回すだけかき回して、吐き出させた課題を、「それぞれに解決させる」ことだったのだろうなと思うのです。

ただ、そんなカタルシスとはどちらかというと無縁の結論は、この東京芸術劇場中ホール、そして宮迫さんというエンタテインメント方面のキャスティングとは、どうしても相性が良くなかったようで。

宮迫さんはお笑いで培った間の取り方はさすがだし、それは芝居にも生かせ(て)るように思うけど、今の宮迫さんは「お客が笑わなくなったらどうしよう」ということに怖がる段階からまだ抜け出せていないように思えて。これから芝居をやるのなら、お客さんが笑わないことに耐えられるようにならないと、芝居としては座りが悪いような。

芝居を見にくる層からすると、今の宮迫さんが引っ張ってくるお客さんは、笑いのツボは芝居そっちのけなわけだし、逆に今の宮迫さんファンにしてみればこのディープな結論はカタルシスのかけらもないわけで・・・・

音楽とかを聞いてると、そこかしこにキャラメルボックス風味があって、シアターアプルとかサンシャイン劇場あたりでやると、ちょうどいいお芝居だったんじゃないかなぁ、と今更ながらに思うのです。

(※1)FLIP-FLAPといえば、妙にルックスが知念里奈さん、剱持たまきさんに似てるんですが。
稽古休みの前日に、由美子さんとFLIP-FLAPのお2人で演出の河原さんを囲んで、朝6時まで深酒&ダーツしていたそうです(笑)。


東京芸術劇場中ホールも800人の中規模劇場でしたが、これからの全国公演の席数を並べると、ちょっとした絶望を抱くのに十分です(笑)

東京芸術劇場中ホール     23回×800席
高知県立県民文化ホール    1回×500席
福岡市民会館大ホール     2回×1,775席
神戸国際会館こくさいホール  1回×2,022席
君津市民文化ホール大ホール  1回×1,200席
オーバード・ホール      1回×1,684席
和光市民文化センター大ホール 1回×1,286席
御園座            4回×1,656席
神栖市文化センター      1回×1,026席

ちなみに全部足すと(2階席・3階席も全部足すと)、36,292席(笑)
何のお手伝いもできないけど、頑張って欲しいものです。

つまりいまのところ遠征もするつもりがない、と。
和光は会社帰りに何とかならないこともないし、
君津は日曜でもあり東京駅から直通バスあるけど・・・

君津の会場から見える高校は、由美子さんのゴールデン枠初ソロ主演作「お願いダーリン!」(フジ系、1992年)のロケ地だそうです。へぇ。

追記
由美子さんのところの事務所では、事務所枠で後輩に舞台を見せているようで、今回はお2人がそのときのことを書いてました。20代前半の方からは「大先輩」なんだなやっぱり。

吉井さんのところに書かれてた由美子さんからのコメント、

『頑張り過ぎても、空回りしちゃうから ほどほどにね』

って言葉は、ガス欠を起こさないための、由美子さんならではのアドバイスなんだろうなぁと思ったり。

千葉さんのところで、エマ役の太田 緑ロランスさんが同事務所であることを初めて知りました。

吉井宇希さん→こちら

千葉ひとみさん→こちら

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コメント

私も、今日マチネに見に行きました。
由美子さんの使われ方が、本当にもったいない
あんな脇役を演じる必然性がないような気がします。今回のポスター宮迫と、サトエリのみがクローズアップされた時点で、これは?と思いました。
坂元さんのための舞台のような気がしました。あんなにわき役陣に気を使う必要があるのか・・また辛口になってしまいますが
由美子さんと坂元さんのミュージカルの方が良かったのでは・・由美子さんストレート芝居の方が演じたいのでしょうか?
ひろきさんは、どう思われますか?

投稿: てるてる | 2008/05/06 02:09

由美子さんはミュージカルには強い思い入れはないようで、「芝居歌」となる作品だけに選んで出ているような感じがします。ミュージカルを避けてるわけではないけれど、ミュージカルで生きていくつもりはないということかと。

あとは役者の自由度が高い作品を選んで出ている気がします。昔、映画に出た時に「映画は監督の色(考え方)で作る部分が大きいから、(自分が満足した)演技であっても採用されないことがある(ので積極的には出たくない)」という主旨の話をされていたことがあります。舞台においては演出家さんの許容範囲を見極めたうえではあっても、舞台は役者の自由にできるというところが由美子さんの性格に合ってるんじゃないですかね。

ミュージカルに限っても、「モーツァルト」のナンネール役に出続けて、出続けておかしくなかった「レ・ミゼラブル」のファンテーヌ役が2004年限りになったのも、後者が長期間拘束というデメリットがあるにせよ、小池先生という役者の自由度を認めることによって良さを生かすタイプの演出家さん、という要因が大きいように思います(義理人情系の人ですので小池先生に頼まれて断る気がしないという点もあるでしょうが)。

あと、由美子さんは稽古場では演技プランを演出家さんと議論するタイプのようで、そういうのを役者からされるのを嫌う演出家さんとは合わないでしょうね(そういう時は由美子さんが無難に演技して済ましてますね)。

昔「出演する作品」の判断基準を聞かれて、台本より前に「共演者」を聞いて、やりたいときはすぐ手を挙げる、とおっしゃっていたことがあります。

投稿: ひろき | 2008/05/06 13:41

今回の舞台は、無難に演技の方ですか?
由美子さん以外の、女優さんの力量不足が
すごく感じられて・・・。だから中堅なんて言葉が出てきたのかしら?
サトエリの、胸強調ラストの、バク転は
自分の立場を感じ取ってのことかな?
あれで、女優ですなんて言ったら失礼ですよ。またまた過激なこと書いてしまいましたが・・・今回ほど欲求不満の舞台は今までなかった。あと3回観ますが・・。少しつらいです。

投稿: てるてる | 2008/05/06 17:22

今回のお芝居は、ファンが思ってるよりは本人、楽しんでると見てるんですが。

いままで「無難な演技に収束させてる」を思ったのは、野田さんの「透明人間の蒸気」ですね。今回のサトエリと比べものにならないぐらい、脇扱いでしたよ。
個別には好きなシーンもありましたが、後から振り返ると気乗りしてない感じが。

あとは「ミス・サイゴン」のエレン役ですね。歌唱で不評が多かった作品ですけど、松キムと組むときと、それ以外のキムと組むときの違いは結構なものでしたよ。後期は新妻キムともけっこう容赦なかったですが。

「レ・ミゼラブル」もそうですが、外国人演出家で、かつ輸入物ですから、役者の感情表現に「基本通り」を忠実に求めるところが、窮屈なんじゃないかなと勝手に認識しています。

気が進まないときは、積極的に見ないというのも一つの選択肢じゃないですかね。
あえて見るならいいところを探して見ないともったいないですし。

サトエリの側転は、楽日だけじゃないですかね。サトエリはいい娘だと思いますけど、あの役に思い悩みすぎてる気がします。

別にあの側転で由美子さんはじめ他の方の演技が霞むわけでもないし、存在感が甘い気がする劇中のサトエリ・マユミ看護婦の位置づけが変わるわけでもないですし、あれはあれでいいんじゃないかと思いますけど。

投稿: ひろき | 2008/05/07 01:29

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