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『ルドルフ』(1)

2008.5.10(Sat.) 17:30~20:30
帝国劇場 2FB列最前列センター

井上&笹本のゴールデンコンビの新作。
初日は祝日でしたが、たまたま別の用事で行けずに、この日が観劇初日。

帝劇はセンターとサブの音響の差がありすぎるので、何も意識しないで取ったのにこの席はラッキーでした。

全体的な印象はといえば、1幕がやたらに長くて、最後の笹本さんのソロでようやく気持ちが乗ってきて、2幕は時間が短く感じます。印象的には「SHIROH」に似てる気がします。

絶賛と言う感じには遠いのですが、台詞が通りにくかったり、音響が雑だったり、とか言いたいことはいくつも出てくるのですが、それでも「良くなるかも!」と思わせるシーンが随所にあって、全部がかっちり嵌った時には、凄いものが見られそう。

ある意味お客さんが舞台の進歩と一緒に歩いていくような感じで、「これから」を思わせるところは楽しみです。

あと耳に残る曲が少ないのは・・・動画とかCD(井上さんの最新CDに1曲だけ収録されています。後述)とかならすごいいい曲なんだけど、不思議。

初っ端からネタバレを混ぜ込みますので、真っ白な感じで見たい方は、観劇後にどうぞ。

ではスタート。

先述の井上芳雄さん&笹本玲奈さんのゴールデンコンビの話は後に回すとして、笹本マリーの両極を固める2人の女性。

知念さん演じるステファニー(井上ルドルフの妻。皇太子妃)と香寿さん演じるラリッシュが2人して実に役として魅力全開。

マリーと合わせてこの3人は、実は2004年「屋根の上のヴァイオリン弾き」の3姉妹(長女:香寿、次女:知念、三女:笹本)で自分も見ていますが、それとも全く違うこの3人の関係。

知念里奈さんは「屋根ヴァ」のほかに「ミス・サイゴン」(キム)、「レ・ミゼラブル」(コゼット)と見ていますが、どの役も「感情」が演技と歌から伝わってこなくて、どちらかといえば苦手な女優さんでした。

が、今回のステファニー役。
彼女で初めて「いいかも!」と思った役でした。
そうか、彼女の活かし方はこんな方向にあったのかと目から鱗でした。

ステファニーは皇太子妃として、皇太子・ルドルフとの関係が冷め切っているのですが、それが彼女のどちらかといえば冷たい声質にぴったりフィットして。

彼女の演技がどうしても淡白に感じる理由の一つに、彼女の声に「温かさ」というものが薄いからかなと思うのですね。
もともと歌手だったわけで、歌手としてはそれでもいいのでしょうが、女優としてみるとどこか他人と距離を取るような彼女の声は、感情移入を許さないようなところを感じていたのですね。

その特性を逆手に取ったかのような、「皇太子と気持ちが通じ合えない皇太子妃」という役どころ、皮肉な褒め方ではありますが、役の特性に合ったということも加味しても、知念さん今回は良かったです。

インタビューで語ってる「皇太子を支えようとして、でも支えられずに壊れていく様子」は、表現されきってなかった気がしますが、これだけ聞くと、そういえば、ステファニーってヴォルフガングにとってのコンスタンツェのようなものにも聞こえますね(エレンもクリスを支えようとしてるけど壊れちゃいない)。

香寿さん、今回は笹本マリーと井上ルドルフの恋のキューピッド役。かつ、笹本マリーの恋の指南役。

姉属性(笑)の私にとってはこんなに物分りのいい姉さんはそれだけで嬉しいのですが、相変わらず出過ぎない存在感が上手すぎです。

前に見たのが男爵夫人、今回が公爵夫人ですから、つくづく「いいところのお嬢様」役を多く見るのですが、香寿さんが演じると、貴族であるとか以前に「人として存在が大きい」ところが好き。

実は香寿たつきさんが演じたラリッシュは、もともとの海外版では、ルドルフとも(ターフェとも)わけありらしいんですが、それがばっさりなくなっているので、マリーのためにルドルフを紹介してあげた、懐の大きなねーさんになってます。

視点が分かりにくくならずに、今の帝劇版の方がすっきりしてる気がして、何よりラリッシュが打算的に見えないのが見ててほっとします。

その2人に挟まれる井上&笹本のコンビ。

笹本マリー、一目ぼれモード一直線。

で、これは笹本さんの役に良くあるのですが、特にお相手が井上さんだと顕著。
井上さんとの芝居の相性も抜群なのに比べると、
ソロの時の芝居の存在感が地味すぎるという・・・

歌はいいのですよ相変わらず。

「ウーマン・イン・ホワイト」1幕ラストの「ALL FOR LAURA」を髣髴とさせる、この作品1幕ラストを飾る「愛してる、それだけ」の笹本さんソロは、圧巻以外の何もでもなく。

歌での見せ方は「ウーマン・イン・ホワイト」で一皮向けた感じはするのですが、存在というか声は元々軽いので、シリアスシーンを飾る重みが欲しいなぁと思います。

”帝劇の広さを埋められる役者”さんというのは意外に少なくて、笹本さんは最近のミュージカル女優では群を抜いて背が高い(キムでも一番背が高い、167cmもある)のに、帝劇2階からは小さく見える。

で、歌とか井上くんとの芝居だとぐいっと背が伸びる(笑)。

あと、笹本さんの芝居で胸を鷲掴みにされる経験というのが、実はほとんど記憶がなくて。
歌なら毎回満足できるんだけど、芝居ではやっぱり若いんだなぁということを痛感します。

そして井上さん。

男だてらに5月8日発売のミュージカルCDを買ってしまった私がここにおりますですよ。
(今後ろでは「明日への階段」が流れてます)

2作連続amazonで買ったので、顧客データベースに「30代男性」の購買履歴という、世間一般では異常値としか思えないものが残っている気がします(笑)

ルドルフ役者として有名な彼ですが、私はエリザには縁のない人間でして(ラスト井上ルドと言われた一昨年のエリザも見逃しているので)、実在の人物であるルドルフへの思い入れは、本人からの又聞きでしかわからないのですが。

ルドルフと井上さんの共通点を一語で語るなら、『責任』の一語でしょうか。

自分が何とかしなくてはという理想を求めるばかりに、政治的に行き詰まり、追い詰められていくという、この作品で語られているルドルフ。皇太子であるより前に、人間としての『責任』を追い求めたルドルフは、妻・父が必要とした皇太子の『義務』を果たすことはしようとはしなかった。

自らが抱く『責任』をまっとうしようとした彼にとって、その『責任』に見向きもしない妻にも父にも、愛想を尽かしていたのかもしれません。
その時、「自分にしかできないことを自らやるべき」と背中を押したマリーの存在は、孤独なルドルフにとってのただ一つの光だったのかもしれません。

が。一回見た限りは、マリーに惹かれるルドルフの心情の説得力が、笹本&井上の相性頼りというか。
このキャストだから何とかなっているとはいえ、それでも力技というか、丁寧さに欠けると思う。
この辺は慣れればよくなるかも。

芝居のシーンで印象的だったのは、
笹本マリーと岡ターフェ(首相)の対決シーン。

ターフェはルドルフを止めるためのキーになるのはマリーだと見抜いていて、誘い出すわけですが、このお2人、笹本&井上と別の意味でお互いの芝居を知り抜いているので、あらゆる意味でスリリングです。

「ミス・サイゴン」ではアオザイ着た笹本キムの登場シーンで、こちょこちょくすぐって笑わせようとした岡ジョン、というシーンが幻に終わったことがあるんですが(笑)。

「愛」に生きるマリーですが、実は、「マリーの考え方」-「ルドルフへの愛」=「ターフェの考え方」みたいなところがあって、お互い超がつくほど現実的なんですね。

マリーにしても恋愛指南元・ラリッシュから「恋は戦争」って言われてるぐらいで、「男漁り」に精を出そうと思ったら、その過程でたまたま運命の人となるルドルフとに一目ぼれしただけ。ルドルフ相手じゃなきゃ、男を利用しただけの人生だったような気がする・・・・

現実的な考え方を持ったマリー、ターフェはお互いの手ごわさを知った上での直接対決。
この後の女同士の戦いのマリーvsステファニーよりずっとスリリング度は高かった。

マリーとターフェはある意味似たもの同士のように思えて、そのターフェの攻撃はとてつもなく嫌なところを突い来るという。それを毅然とした態度で跳ね返したマリーの、ルドルフへの気持ちの強さは否が応でも印象付けられた。

その後、そんなマリーの気持ちはわかりながら、現実との妥協を促すラリッシュは、その行為そのものにも苦しさが表現されていて、さすが香寿さんの重みだと思う。

そういえばシーンとしてはマリー&ターフェは、どこか「ウーマン・イン・ホワイト」のマリアン&フォスコ伯爵ぽかった。別にマリーがターフェを誘惑するわけではないですが、あの赤いドレスの奇妙なミスマッチさが妙にデジャブ。

そういえばこの日、開演前に帝劇前で配布されていた笹本玲奈さんの10周年記念ショー。
(多分配っていたのは帝劇の人でも東宝の人でもなく、何となくホリプロの新人ぽかった)

個人の名前を出したショーということもあり、共演経験者からのメッセージが付いているのですが(これっていい企画だと思います。最近はパンフでもこういうのやらないんですよね・・・)、演出家の鈴木裕美さんからのコメントに爆笑。

「玲奈はとてもチャーミングなくせに、どっか底意地悪いところが素晴らしい」

そう!そうなんですよ!(机を叩いて同意を力説・・・笑)

さすが有能な女性演出家さんの目の付け所は他の人と違いすぎる!

昔、笹本さん自身が一度だけおっしゃっていたことがあるのですが、この鈴木裕美さんは「自分を叩き直してくれた人」だそうです。

ピーターパンを5年続けた彼女、最後の2年間は鈴木裕美さんが演出だったのですが、開口一番「若いことに甘えている。それじゃダメになる」と言われたことが、笹本さんの負けず嫌いに火をつけちゃったようで。

今の笹本さんあるのも鈴木裕美さんあってこそ。本当に一緒に舞台やって欲しいものです。

さてさて。
「ルドルフ」、開幕前の3枚のチケットに、2枚を追加して5枚。
たった1か月間なのに。

何しろ、25日ソワレの後の、女性キャスト勢ぞろい&井上・新納の真っ黒トークとあっては、ファン感謝デー、行かないわけにはいきますまいて。

あ、いまさら、なんか盛り上がってきた(笑)

ところで東宝ナビザーブ、なんでセブンイレブン受取が選択できないんだろう・・・と思ったら、5月公演がシステム切替時期にあたってるようですね。6月公演以降は、申込日と受け取り可能日が間が置かれた形でセブンイレブン受け取りが復活するそうです。

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