« 『いのちのいろえんぴつ』 | トップページ | 『レベッカ』(1) »

『ガマ王子vsザリガニ魔人』

2008.4.6(Sun.) 13:00~15:30 パルコ劇場 下手側

私の場合、舞台を見に行く基準がありまして、
「準贔屓が2人以上出ていれば観劇対象」。
この条件に見事に引っかかりながら、なぜか観劇候補から
外していたこの作品。

会社の芝居好きの人から「良かった」との感想を聞くに至り、
頑張ってチケットを取って見に行きます。

タイトルから内容が全然想像できなかったのも、当初回避していた理由なのですが、見に行って初めて合点が行きました。

あの噂に良く聞く『ガマザリ』ってこの作品のことなんですね(爆)。

登場人物10人いる中で、舞台で見たことがある人が
実に5人。

口の悪い看護婦役・新妻聖子さん:5作品目(レミ、サイゴン、MA、ピアッツア)
名医師役・岡田さん:3作品目(レミ、星の王子さま)
そっち方面の役:山内圭哉さん:2作品目(地獄八景・・・浮世百景)
再起不能な役:中山祐一朗さん:2作品目(真昼のビッチ)
おせっかいな役:楠見薫さん:2作品目(雨と夢のあとに)

まずこの人に触れないわけにいかない新妻聖子さん。口が悪い看護婦こと光岡役。
彼女のストレートプレイは初観劇の私ですが、この役のきっかけは演出のG2さんが、「マリー・アントワネット」(MA)のマルグリット役を見たからだそうです。

MAの1幕初っ端、庶民丸出しの「すっげー!」って台詞回し、確かに今回の役につながるようなところがあります。

もう一人のマルグリット、笹本さんのその台詞が「ミー&マイ・ガール」で同じような台詞回し見たから、やっぱりこの2人、似てないようで似てて、似てるようで似てないんだなぁと思う。

今回の役を笹本さんでやるのは想像つかないし、「ウーマン・イン・ホワイト」のマリアン役を新妻さんでやるのもそれぞれなんかずれてる。

それはともかく、もっと無理してじゃじゃ馬言葉を発すると思ったんで、ここまでガチにかっこいいキャラクターを作ってこれたのは意外。
MAでは、かなり無理した下町っ子具合だったんで。

歌の大声量に比べると、台詞の声量のなさは明らかで、もっと声が聞こえれば会場内さらうの間違いないのに・・・みたいなシーンがいくつかあったのは残念。
耳そばだててるから聞こえるけど、もっとどかーんとはじけて欲しい部分はありました。

でも台詞が一事が万事面白くてねぇ。

がんこじじい・大貫へ畳み掛けるかのごとき「聞け!夜通し聞け!道道聞け!」って宿直室に連れ込んで朝まで酒飲むのに、翌日に「二日酔いが身体に残るなんてやわな育ち方してねぇよ。こちとら津軽の庄屋の娘だぜ」でしたか。噴いちゃいましたよ。(ここの啖呵がもちっと発声しゃんとしてればな・・・・でした)

自殺未遂を繰り返す患者さん、室町。笠原浩夫さんが演じられていますが(内田朝陽さんが降板したため)、男だてらに「なかよし」「りぼん」とか読むとか爆笑。
「有閑倶楽部」とか「ときめきトゥナイト」とか蘭世とか、すみません、私は男ですが、名前全部分かります(爆笑)。35overあたりにはこの辺直撃でしょうな。

医師役の岡田さんと新妻さんといえば、2003~2005シーズンの「レ・ミゼラブル」マリウス&エポニーヌ役の組み合わせで、いずれも初見だったためにこのお2人の最初のイメージが「恵みの雨」で出来上がってしまってるのですが、今回に至っては

「室町さんの担当、(今度も)君でいいよねー」
「へーいっ」

(笑)てな具合で、余韻もへったくれもありません。逆にいうと演じる側がそういうことを微塵も感じさせないという点で、新妻さんもいい方に変わったなぁと思うのですが。

さて、他のキャラクター。
何といっても山内圭哉さんですよ。
あれは誰がなんと言おうと反則です!

どこまでアドリブなのかどこまで台詞なのか分からないあの爆発力。
「浮世八景・・・地獄百景」で経験済みではありましたけど、涙が出るほど笑って、息苦しくなるほど笑った、って芝居では初体験かもしれない。

そんな笑いも随所に織り交ぜつつも、基本は泣かせる芝居。

以下はネタバレ大会です。問題ある方は回れ右です。この作品、これから地方公演ですんで。


では。

”ガマ王子”にあたる気難しい”じじい”大貫が、少女パコと出会うことで、自らの行為が周囲をどれだけ傷つけたかに気づかされる1幕後半。
岡田さん演じる医師に対して投げかけた「涙はどうやったら止まるんですかね」に対する医師の答え、気難しい大貫に「名医」と言わせるだけの人間の大きさを感じます。

2幕はそんな大貫が心を入れ替えて皆に頼み込み、劇中劇である「ガマ王子vsザリガニ魔人」をパコの前に見せるわけですが、印象的だったのは、パコから大貫への感情も、大貫からパコへの感情も、表面的には成就したようには明確になってはいなかったこと。

大貫は1幕最初で「お前が私を知っているだけで腹が立つ」と他者からの関わりを拒絶していたのに、2幕でパコと触れ合うことで、「俺をあの娘の中に記憶として残しておきたい」と願うのですが、最期のシーンではパコは既に死の淵をさまよい、そして大貫の願いの叶わぬままなくなってしまいます。

パコは記憶に障害があり、眠ることで前日の記憶を忘れてしまうのですが、大貫がパコの手に触れた瞬間だけ、「昨日触れられた」事実だけを思い出すのです。
だからこそ、パコに今日触れていないということは、パコの最後の記憶に大貫は残らないのですね。

”因果応報”と言ってしまえばそれまでなのでしょうが、「パコの中に自分の記憶を残しておきたい」というのは単に大貫の思い入れというかエゴに過ぎないのではないかなぁと。

とはいえ、「人が人として生きていく」ためには「他人の記憶の中に生きている」ことこそが必要なのだな、と改めて感じさせられました。

パルコ劇場、相変わらずいい作品を上演しますね。

8月公演の「ウーマン・イン・ブラック」も楽しみですが、チラシが入ってた7月公演の「sisters」も楽しみ。松たか子&鈴木杏(確かにこの2人は姉妹と思えるほど似てる)に長塚さんですからね、期待大。

|

« 『いのちのいろえんぴつ』 | トップページ | 『レベッカ』(1) »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74093/40797228

この記事へのトラックバック一覧です: 『ガマ王子vsザリガニ魔人』:

« 『いのちのいろえんぴつ』 | トップページ | 『レベッカ』(1) »