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『空中ブランコ』(2)

2008.4.27(Sun.) 17:05~19:30(休憩15分)
東京芸術劇場中ホール D列下手側

公演1週間経過、夜の部。

1週間経って、どんな具合に芝居がこなれてきたかを見に行ってきました。

今作品は初日(20日)、今日(27日)、楽日(5日)と3回観劇の予定ですが、当初用意した3枚のチケットがちょうど1週間ごとで上手くばらけさせたせいもあって、今のところ追加の予定なし。

悪いと断言するまでの気はないんだけど、他人に「いい舞台」と勧めるには気がひける、そんな感じの出来上がりです。

2回目を見て、前回よりは相当辛口寄りの感想です。

この日座ったD列下手側は、ちょうどスピーカーの直下にあたり、とにかく音響が大音量。
音が良くて好きなこの劇場も、この大音量にはほとほと疲れました。
衣装まで5m(笑)ってとこだけが救い

しっかし、先月の「星屑の町」といい、一昨年の「GOLF THE MUSICAL」といい、30過ぎてまであの手の衣装が着こなせるというのも、うん、目の保養。

この芝居的にはナイスバディー(←死語)はサトエリなんだけど、上手くキャラをかぶせないで由美子さんも何気に主張してます。10代時代にとらんじすたぐらまーって言われたのもあながち間違いじゃないと。

で、2度見た感想ですが、この作品、芝居というよりはかなりエンタテインメント寄りなのですね。
宮迫さんが伊良部先生という時点で、ある意味予想はついたわけですが、とにかく芝居系はかなりの部分を高橋由美子さんが受け持っています。

芝居パートで見ると、酒井敏也さんと尾藤イサオさんの両ベテランが支えてた時間以外は、芝居らしい芝居は由美子さんがらみの場所がほとんど。

某所の感想で「高橋由美子さんの熱演が痛々しく思える」とまで書かれていたのですが、そこは頷かざるを得ないというか。

由美子さんを起点として坂元さん、小林さんの「芝居系」の時間が流れて、坂元さんを起点として「サーカス系」の時間が流れて、宮迫さんを起点としてサトエリ含みの「かき回し系」の時間が流れるのですが、この3者の組み合わせがそれぞれ独立しているので、1つの作品としてはどうも締まりが悪い。初見ではそれなりにまとまって見えたけど、2度見るとぶつ切れ感を感じてしまいます。

それぞれを見れば決して悪くはないのですが、お客さんからしてみれば、この作品に求めてきた部分以外のものに関心を持つには、それぞれハードルが高い気がします。

笑いに来た人にとっては芝居系の時間は「由美子さんがドツボにはまってヒステリー起こしまくってる」のは気に触るだろうし、芝居を見に来た人にとっては「宮迫さんは存在はともかく、演技じゃなくていつものお笑いを見ているよう」だろうし、サーカスを見に来た人にとっては一番最初と一番最後以外は退屈でしょうがないだろうし。

でも最初のサーカスシーンのぐるぐる回るわっかはすごい。さすがはG-Rockets。

2度見て思うんですが、サトエリ(佐藤江梨子さん)演じるマユミちゃん。
なんだか奇妙に萎縮してる感じがあるのは気のせい?
声が通らないので、キャラが濃くなりきれない感あり。

アクの強さでは一昨年に由美子さんが演じた「GOLF THE MUSICAL」のキャディーさんが役的にはそっくり。声量があるってそれだけで有利なのね。

演出の都合上、どうしてもラストシーンはリスク回避に走らざるを得ないのは致し方ないとして、ラストのカーテンコールでの某アクション(ネタバレなので詳細略)は、カタルシスがあって好きです。初日もこの日も成功。あれは結構難しいと思うのに、坂元さんも宮迫さんも凄い。

公平は伊良部先生の診察を受けるけれど、「病」である自覚は自分にはないし、空中ブランコが飛べない理由が自分にあると分かってからは、極端な話、伊良部先生の診察を受ける必要さえない。

ところが公平以外のサーカス団の面々ときたら、エリを筆頭に、いずれも劣らぬ壊れ方。
よほど公平以外の方が、カウンセリング受ける必要があるんじゃないかと思うほど、正常じゃないひとばかり。

何しろ登場人物ほぼ全てに一つ以上の悩みが存在するのですから、風呂敷を広げすぎという感は否めません。登場人物ごとに悩みをくっつけちゃったもんだから、メンバーごとの悩みを書き出すだけでも、全部書き出せたら記憶コンテスト入賞、みたいな状態になっちゃってます。

とにかく次から次へと悩みが出てきて、それが最後に全部解決するわけでもないので、とりあえず見ててすっきりとはできないです。これはちょっと辛い。

んじゃ、ここからはネタバレスタート。由美子さんのシーン中心に語ります。






由美子さん演じるエリは、坂元さん演じる公平の奥さんですが、サーカス団のパフォーマンスとしては小林高鹿さん演じる末長と組んでいます。

末長は基本的にナルシストらしく、「ファンに見せるためのパフォーマンスばかりする」、「過去の栄光にすがって現実と向き合っていない」と、エリは厳しく非難するのですね。
「3人のファンに向かって演じる、そんなのに付き合うのはもううんざり」とまで言うんですが。

エリという役は原作時点で由美子さんにイメージがぴったりなのですが、それはある意味、坂元さんとの相性の良さによるものもあって。”苦しんでる旦那を支えるしっかり物の妻”に終始するなら、もっと控えめな役どころになったはずなのですね。

ところが、この役の広げ方のすさまじさといったら何といいますか・・・・サーカス団の相方に当たる末長との不倫(公平が疑う)を作って話を広げちゃってるんですが、そもそも「エリは公平との関係に疲れて、末長と不倫したがっている」のか、「末長が勝手に暴走してエリに迫っている」のかが、よく分からないのですね。
(エリが末長にやけくそに当り散らすシーンがあるんですが、2度見ても腑に落ちない台詞なんですよね)

基本的なストーリーは後者で一貫しているのですが、末長にエリが抱きつかれて「ちょっと待ってよ」という台詞だけがものすごい違和感で。

普通、後者なら「何するのよ!」なはずなんですが、続く台詞が、自分に末長が迫るということ自体に猛烈に反発してるので(「同じ職場で夫婦でいて息子もいて、こんな女よりもっと条件いい女いくらでもいるでしょ!」)、あれじゃエリが末長のアタックに心揺れてるみたいで普通におかしい。

不倫役がいやだとかそういうのはないのですが、「不倫と疑われようと、エリの心の中には公平しかいない」ことは崩して欲しくなかったので、あれは嫌いなシーン。

エリは末長が時間を延ばして演技したいと言うことに対して抵抗するのですが、サーカス団の危機(キャッチャーの内田が怪我して場が埋まらなくなりそうになったとき)に、「末長、今日はやりたいだけやっていい」ときっぱり宣言するところが男前で好き。

末長は一瞬、エリが自分のことを思ってくれたと勘違いする直後に、公平に「何とか時間を稼ぐから、お願いね」と言って去っていくんですが、末長がしょんぼりしてるのもおかしいのですが、公平の疑惑も晴れる瞬間で、この芝居のもやもや感がちょっぴり解消する好きなシーン。


エリの名台詞はずいぶんあるのですが、名台詞大賞は以下の台詞。

「心を開くということと、何でも許すってのは違うんじゃない?」

心が通い合ってなかった後輩たちとコミニュケーションを取ろうとする公平。
自分が後輩を信じられなかった引け目からか、言うがままのように動く公平。
エリは公平をいつも見ていたからこそ、本当に必要なアドバイスがきちんとできたのだと思います。

昔の曲で、お気に入りの歌詞に、こんな言葉があります。(※1)

「必要とされることと、都合のいいものとは違うから」

今回のエリの台詞でそんな台詞がふと、脳裏に浮かびました。

心を開いても、自分はきちんと持っていなければならない。
何でも許すのは、「都合のいい人」への入り口。
他人を認めながら、自分を確立しておくこと。

公平にとって、それを教えてくれるエリがそばにいたことは、幸せだったのだと思います。

さて、観劇はあと1回、東京楽を残すのみ。

芝居的にあまり動きがなさそうな感じで、1週間でいい方に変われば、関東圏に戻ってきた時に、短距離遠征も考えたのですが、今回はBS放送の噂もあるし、積極的になれない自分がいます。


(※1)2001年リリース dream「Dear・・・」収録の「カトレア」の一節。
当時、メンバーの一人だった松室麻衣さん(当時18歳)の歌詞で、忘れられない歌詞です。

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コメント

ひろきさんとまったく同感です。
26日に観てきましたが
もう何と言っていいか
宮迫のコントみたいな演技
坂元のどなりっぱなしのセリフ
余計なエピソードがごちゃまぜで、
見てい笑えなかったです。
観終わってドット、疲れが出ました。
由美子さんが一生懸命演技しているのが
空回りみたくなっていて・・・。
今まで、存在感があってリピートしても
またみたくなったのですが、今回は
少し考えようかなって思いました。

投稿: てるてる | 2008/04/28 19:26

てるてるさん、こんばんわ。

てるてるさんのブログも拝見していますが、容赦なく辛口ですね(^^;)

存在感がないとは思わなかったけど、わざわざ由美子さんがやる必要のある役とはちょっと思えなかったかなと。由美子さんに限りませんが、何とかの持ち腐れのような方が多数・・・・

孤軍奮闘なのが報われないところが、エリが由美子さんとかぶって、何だかちょっと切なかったです。

見る人が見ればその苦労はわかってもらえる、今はそれを信じるしかないかなぁと思います。

投稿: ひろき | 2008/04/29 02:04

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