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2008年4月

『トップランナー』

2008.4.27(Sun.) 24:10~24:50
NHK総合

この日のゲストは、笹本玲奈さん。 公式

NHKスタジオでの公開収録、応募しようか迷っていたけど、こんなに面白いなら応募だけはしておけばよかったなぁと後悔。

基本的に司会の人はミュージカルに興味がなさそうな感じで、いかにも台本通り&事務所予定通りの進行なことは否めませんが、若干22歳にして若手の一番手であることを十分にうかがわせるものではありました。

とにかく負けず嫌い。
司会の方が「負けず嫌いコンテスト第1位」なんじゃないかと言うのもわかります。

最初は猫かぶって(爆)無難に話してたのに、「自分の人生を変えた最初の出来事」としていつも言っている「アニー」との出会いを語る様は強烈。

笹本さん本人が語ったままに書きますと、

「子供たちが歌って踊って、大きな拍手をもらって、ものすごい笑顔で、あいさつもはきはきしてて、そんな様子にものすごく『腹が立ちました』

「はじめてそこで『悔しい』って思いが立ちましたね」

「どうしても子役たちを超えてみたくて」

「なんであの子たちはできるのに、私はできないのって(司会のSHIHOさんがあまりの迫力に手で遮る始末(大笑))」

「でもアニーは受けたくなかった。もっと上を目指したかった。アニーも好きな作品だったんですけど。」


・・・・思いっきり笑ってしまいましたよ。

この人の本質はこの負けず嫌いなんですけど、誤解されやすい性格というか、ねじまげられて理解されやすい性格かもしれないですね。今は勢いがあるのでそんなに言われないのでしょうが。

基本、女優さんは男っぽい性格が多くて、舞台女優ともなると更にそれに輪をかけて男っぽいとは実体験でつくづく感じますが、笹本さんもありえないぐらいに男前。やりたい役にアンジョルラス(レ・ミゼラブル)、オスカル(ベルサイユのばら。ま、女性ですが)って挙げてるのがよく分かります。

岐路に立った高校2年生の時のエピソードも印象的。

笹本さんの「売り」として少し前までよく挙げていた「10代のミュージカル女優主演記録(149回)」の「ピーターパン」(1998~2002年)が終わって、「レ・ミゼラブル」(2003年~)のエポニーヌ役を受けるまでの期間。

2003年のレミゼはキャスト総入替の年で、今から考えても「ミュージカルの世界の人材が入れ替わったターニングポイント」に挙げられる時期。

色々な意味で冒険が成功した時でもありますが、笹本さんはこの時エポニーヌに受からなかったら、この番組では「大学に行く」と言っていました(以前は「宝塚に行こうとも思った」)。

今回の番組で印象的だったのは、このタイミングについて、

「青春時代を割いてまでミュージカル(ピーターパン)をやってきたという意地があった」

「今の年齢じゃないとやれないことはたくさんある」

「今の年齢(10代)だからこそやらなきゃいけないんだという変な使命感があった」

って語っていたこと。

無意識のようにそう語っていた笹本さんなのですが、何だかんだ言っても、彼女の売りは「若さ」そのものということを、本人が本能的に理解していたということは大きいな、と思うのですね。

実際、ミュージカルの世界で20代前半までにプリンシパルクラスで芽が出る人は本当に数えるほどしかいなくて、しかも笹本さんのような叩き上げ自体がほとんどいない。

例えば最近新しく入ってきた人でも、アイドル系から入るパターンでも、若そうに見えるソニンでさえ25歳。笹本さんより3つも年上。(意外に思われるのですが、キムでもエポニーヌでも、実は未だに笹本さんが最年少だったりする現実)同系統の新妻さんでさえ実際には今年で28。

19歳で「新アンの愛情」、23歳で「アニーを銃を取れ」を演じた高橋由美子さんも当時では相当珍しい”若手ミュージカル女優”主役候補ではあったのですから。
その後ミュージカル方面には進まずに、ミュージカルの世界に再び足を踏み入れるのは28歳の「モーツァルト!」ですが、既にこのあたりの年齢からは舞台でも助演の位置付けになるのですね。

去年、「モーツァルト」でミュージカルデビューしたhiroも24歳だったし、「芸能界でそれなりの地位を確保した後に、舞台に流れてくる」という時には、既に年齢は25に近づいているんですね、皆さん。

そこにあって、現段階で22歳というのはそれだけで大きなアドバンテージだと思うのですね。

大学にそのまま進み(彼女は青学の附属中学・高校出身です)22歳で卒業し、それからミュージカルにかかわったのなら、アンサンブルからのスタートになったでしょうし、メインに立てるのはそれこそ25ぐらいになっても無理だったのかもと思うのですね。

それからすると、色々考えた末とはいえ、最善のルートをたどってきた女優さんなんだなぁと。

運にも恵まれてます。事務所が大きいと言うのも無論ですが、「若手の主演女優枠」を喉から手が出るほど欲しい舞台の世界において、「賞を与えやすい」ポジションにいて、「ウーマン・イン・ホワイト」の実績で読売演劇大賞杉村春子賞、その前年に菊田一夫演劇賞と立て続けに取っているのも、結果から見ると「上手いことはまったなぁ」という思いは感じます。

最近読んだものの本の中に、少女漫画家さんが主役の作品(※1)があって、「私は好きなことを仕事にしたけど、『好きでないことを仕事にした人』に引け目を感じてしまう、辛いと思うことはわがままなのかな」という主人公の台詞があったのですが、それに対してのアドバイスが印象的で。要約してしまうと、こんな感じ。

「好きだからこそ大変なことだってあるし、
楽しいことばかりじゃない。
好きなことを仕事にするためにリスクも負ったし、
努力もしたんだろ。
その上で手に入れた今の生活に引け目をもつ必要なんてない」

(※1)集英社クイーンズコミックス(コーラス)「スパイシーピンク」1巻(吉住渉さん)
2巻まで続刊。昔から好きな漫画家さんです。

その言葉を見たときに、この日の笹本さんのコメントと妙にかぶって。

「好きこそものの上手なれ」、昔の人はずいぶんと上手いことを言ったもんだなぁと改めて思います。

笹本さんも今年でデビュー10年。

同じ仕事を10年続けるのは、向いてる証拠。
同じ仕事を20年続けるのは、天職。
同じ仕事を30年続けると、名が残る。
同じ仕事を40年続けると、生き字引。
同じ仕事を50年続けると、第一人者。

そんな感じかな、と思います。

10年記念に銀河劇場でコンサートやらせてもらえるって、しかも玉野さんが演出って、つくづく羨ましい。
無論、見たいんで見に行くんですが。

なんか写真が微妙ですが⇒こちら
吉野さんと東山さんだもんなー、とてつもないダンス大会になりそうで楽しみ。

ちなみに、この番組は再放送予定あり。興味ある方はどうぞ。

5月3日(土)25:35~26:15 NHK教育
5月7日(水)15:50~16:30 NHK BS2

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『空中ブランコ』(2)

2008.4.27(Sun.) 17:05~19:30(休憩15分)
東京芸術劇場中ホール D列下手側

公演1週間経過、夜の部。

1週間経って、どんな具合に芝居がこなれてきたかを見に行ってきました。

今作品は初日(20日)、今日(27日)、楽日(5日)と3回観劇の予定ですが、当初用意した3枚のチケットがちょうど1週間ごとで上手くばらけさせたせいもあって、今のところ追加の予定なし。

悪いと断言するまでの気はないんだけど、他人に「いい舞台」と勧めるには気がひける、そんな感じの出来上がりです。

2回目を見て、前回よりは相当辛口寄りの感想です。

この日座ったD列下手側は、ちょうどスピーカーの直下にあたり、とにかく音響が大音量。
音が良くて好きなこの劇場も、この大音量にはほとほと疲れました。
衣装まで5m(笑)ってとこだけが救い

しっかし、先月の「星屑の町」といい、一昨年の「GOLF THE MUSICAL」といい、30過ぎてまであの手の衣装が着こなせるというのも、うん、目の保養。

この芝居的にはナイスバディー(←死語)はサトエリなんだけど、上手くキャラをかぶせないで由美子さんも何気に主張してます。10代時代にとらんじすたぐらまーって言われたのもあながち間違いじゃないと。

で、2度見た感想ですが、この作品、芝居というよりはかなりエンタテインメント寄りなのですね。
宮迫さんが伊良部先生という時点で、ある意味予想はついたわけですが、とにかく芝居系はかなりの部分を高橋由美子さんが受け持っています。

芝居パートで見ると、酒井敏也さんと尾藤イサオさんの両ベテランが支えてた時間以外は、芝居らしい芝居は由美子さんがらみの場所がほとんど。

某所の感想で「高橋由美子さんの熱演が痛々しく思える」とまで書かれていたのですが、そこは頷かざるを得ないというか。

由美子さんを起点として坂元さん、小林さんの「芝居系」の時間が流れて、坂元さんを起点として「サーカス系」の時間が流れて、宮迫さんを起点としてサトエリ含みの「かき回し系」の時間が流れるのですが、この3者の組み合わせがそれぞれ独立しているので、1つの作品としてはどうも締まりが悪い。初見ではそれなりにまとまって見えたけど、2度見るとぶつ切れ感を感じてしまいます。

それぞれを見れば決して悪くはないのですが、お客さんからしてみれば、この作品に求めてきた部分以外のものに関心を持つには、それぞれハードルが高い気がします。

笑いに来た人にとっては芝居系の時間は「由美子さんがドツボにはまってヒステリー起こしまくってる」のは気に触るだろうし、芝居を見に来た人にとっては「宮迫さんは存在はともかく、演技じゃなくていつものお笑いを見ているよう」だろうし、サーカスを見に来た人にとっては一番最初と一番最後以外は退屈でしょうがないだろうし。

でも最初のサーカスシーンのぐるぐる回るわっかはすごい。さすがはG-Rockets。

2度見て思うんですが、サトエリ(佐藤江梨子さん)演じるマユミちゃん。
なんだか奇妙に萎縮してる感じがあるのは気のせい?
声が通らないので、キャラが濃くなりきれない感あり。

アクの強さでは一昨年に由美子さんが演じた「GOLF THE MUSICAL」のキャディーさんが役的にはそっくり。声量があるってそれだけで有利なのね。

演出の都合上、どうしてもラストシーンはリスク回避に走らざるを得ないのは致し方ないとして、ラストのカーテンコールでの某アクション(ネタバレなので詳細略)は、カタルシスがあって好きです。初日もこの日も成功。あれは結構難しいと思うのに、坂元さんも宮迫さんも凄い。

公平は伊良部先生の診察を受けるけれど、「病」である自覚は自分にはないし、空中ブランコが飛べない理由が自分にあると分かってからは、極端な話、伊良部先生の診察を受ける必要さえない。

ところが公平以外のサーカス団の面々ときたら、エリを筆頭に、いずれも劣らぬ壊れ方。
よほど公平以外の方が、カウンセリング受ける必要があるんじゃないかと思うほど、正常じゃないひとばかり。

何しろ登場人物ほぼ全てに一つ以上の悩みが存在するのですから、風呂敷を広げすぎという感は否めません。登場人物ごとに悩みをくっつけちゃったもんだから、メンバーごとの悩みを書き出すだけでも、全部書き出せたら記憶コンテスト入賞、みたいな状態になっちゃってます。

とにかく次から次へと悩みが出てきて、それが最後に全部解決するわけでもないので、とりあえず見ててすっきりとはできないです。これはちょっと辛い。

んじゃ、ここからはネタバレスタート。由美子さんのシーン中心に語ります。






由美子さん演じるエリは、坂元さん演じる公平の奥さんですが、サーカス団のパフォーマンスとしては小林高鹿さん演じる末長と組んでいます。

末長は基本的にナルシストらしく、「ファンに見せるためのパフォーマンスばかりする」、「過去の栄光にすがって現実と向き合っていない」と、エリは厳しく非難するのですね。
「3人のファンに向かって演じる、そんなのに付き合うのはもううんざり」とまで言うんですが。

エリという役は原作時点で由美子さんにイメージがぴったりなのですが、それはある意味、坂元さんとの相性の良さによるものもあって。”苦しんでる旦那を支えるしっかり物の妻”に終始するなら、もっと控えめな役どころになったはずなのですね。

ところが、この役の広げ方のすさまじさといったら何といいますか・・・・サーカス団の相方に当たる末長との不倫(公平が疑う)を作って話を広げちゃってるんですが、そもそも「エリは公平との関係に疲れて、末長と不倫したがっている」のか、「末長が勝手に暴走してエリに迫っている」のかが、よく分からないのですね。
(エリが末長にやけくそに当り散らすシーンがあるんですが、2度見ても腑に落ちない台詞なんですよね)

基本的なストーリーは後者で一貫しているのですが、末長にエリが抱きつかれて「ちょっと待ってよ」という台詞だけがものすごい違和感で。

普通、後者なら「何するのよ!」なはずなんですが、続く台詞が、自分に末長が迫るということ自体に猛烈に反発してるので(「同じ職場で夫婦でいて息子もいて、こんな女よりもっと条件いい女いくらでもいるでしょ!」)、あれじゃエリが末長のアタックに心揺れてるみたいで普通におかしい。

不倫役がいやだとかそういうのはないのですが、「不倫と疑われようと、エリの心の中には公平しかいない」ことは崩して欲しくなかったので、あれは嫌いなシーン。

エリは末長が時間を延ばして演技したいと言うことに対して抵抗するのですが、サーカス団の危機(キャッチャーの内田が怪我して場が埋まらなくなりそうになったとき)に、「末長、今日はやりたいだけやっていい」ときっぱり宣言するところが男前で好き。

末長は一瞬、エリが自分のことを思ってくれたと勘違いする直後に、公平に「何とか時間を稼ぐから、お願いね」と言って去っていくんですが、末長がしょんぼりしてるのもおかしいのですが、公平の疑惑も晴れる瞬間で、この芝居のもやもや感がちょっぴり解消する好きなシーン。


エリの名台詞はずいぶんあるのですが、名台詞大賞は以下の台詞。

「心を開くということと、何でも許すってのは違うんじゃない?」

心が通い合ってなかった後輩たちとコミニュケーションを取ろうとする公平。
自分が後輩を信じられなかった引け目からか、言うがままのように動く公平。
エリは公平をいつも見ていたからこそ、本当に必要なアドバイスがきちんとできたのだと思います。

昔の曲で、お気に入りの歌詞に、こんな言葉があります。(※1)

「必要とされることと、都合のいいものとは違うから」

今回のエリの台詞でそんな台詞がふと、脳裏に浮かびました。

心を開いても、自分はきちんと持っていなければならない。
何でも許すのは、「都合のいい人」への入り口。
他人を認めながら、自分を確立しておくこと。

公平にとって、それを教えてくれるエリがそばにいたことは、幸せだったのだと思います。

さて、観劇はあと1回、東京楽を残すのみ。

芝居的にあまり動きがなさそうな感じで、1週間でいい方に変われば、関東圏に戻ってきた時に、短距離遠征も考えたのですが、今回はBS放送の噂もあるし、積極的になれない自分がいます。


(※1)2001年リリース dream「Dear・・・」収録の「カトレア」の一節。
当時、メンバーの一人だった松室麻衣さん(当時18歳)の歌詞で、忘れられない歌詞です。

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『空中ブランコ』(1)

2008.4.20(Sun.) 17:05~19:30(休憩15分) 
東京芸術劇場I列センター

公演初日、夜の部。

東京芸術劇場は自分自身、地元の池袋の劇場ということもあり、「レ・ミゼラブルinコンサート」、「ハウ・トゥ・サクシード」で来ているけれど、高橋由美子さんをここで見るのは初めて。

東京の中劇場以上はほぼ制覇している彼女ですが、池袋は舞台生活20年目にして初めて。
池袋在住11年の自分としては、地元に贔屓がやってきた、てな感じです。

この劇場自体それなりに新しい劇場で音響もよく、ロビーもこざっぱりしてお気に入りの劇場。
今回の題材がサーカスということもあり、縦のピンク色と水色の交互の幕が華やかさを演出します。

原作が短編(50ページそこそこ)ということもあり、どうやって2時間強の舞台に仕上げるのかと気をもんでいたのですが、そこはさすがにプロの仕事、派手さはなくてもしっかりと笑いを作りつつ、ストーリーをちゃんと着地させてくれます。

坂元健児さん演じるサーカス団のエースフライヤー・山下公平の不振を、宮迫さん演じる破天荒な精神科医・伊良部が治療していくというのがメインストーリーなわけですが、このお2人が予想した以上に役にぴったり。

お2人とも、どちらかというと考えて演じるよりも、感性で反応する印象が強いです(宮迫さんは初見なのであくまでイメージ)。

坂元さんは以前「ミス・サイゴン」でクリス役、ジョン役を演じていたのを見ています。今回、奥さん・エリ役の由美子さんとはこの時、夫婦役を経験済みで(クリスとエレン)、そのときの印象は今回もほとんど変わらず。いかにも姉さん女房なところはその意味で予想通りでもありました。

予告ストーリーでは坂元さん演じる公平が病んでるのに重点が置かれてたけど、負けず劣らず病みまくってたのが由美子さんが演じたエリ。

由美子さんの発狂キャラが久しぶりでずいぶん新鮮。
全てにいらだってるこの感じ、過去に演じた役であまり思い出せない。

あえて言うならテレビ朝日系「愛と死を見つめて」の村中智美役あたりか、舞台ならシアターアプルでやった「真昼のビッチ」の球子役あたりが似てるかも。

公平を信じて支えつづける奥さんを好演していました。

表の引っ掻き回しキャラが宮迫さんで、裏の引っ掻き回しキャラが佐藤江梨子さん。
表の苦悩キャラが坂元さんで、裏の苦悩キャラが由美子さん。

この軸がしっかり出来上がった上で、更にキャラクターの濃い人たちが周囲を取り囲んでいるから、空間が上手く固まっている感じで、心がばらばらになっても、作品としては成立しているといった感じ。


以下はネタバレです





エリはサーカス内では小林高鹿さん演じるメンバーとコンビを組んで、アクロバット・バンジーショーをやっています。遠目にはっきり分からなかったのですが、1幕ほぼ最初、天井からぶら下がる紐をよじ登り、地上10m近くまで腕と足で這い上がる役者さんが2人います。

次回はっきり確認しようと思いますが、下手側の役者さんは非常に由美子さんに似ています。
背格好というのか、動き方というのか・・・・言葉では表現しにくい感覚なんですけど。

「HUMANITY」でもご一緒したG-Rocketsの皆さんかなぁと思ったんですが、パンフレットにも「アクロバット曲芸」という役説明が由美子さんについているので、そこしか該当シーンがないんで。

そういえば、エリと高鹿さん演じる末長が不倫をしてる、って公平が疑念を抱くというシーンがあるのですが、疑うのもむべなるかなというか、こっちはこっちで演技の波長が合ってるというか。

小林高鹿さんとは「真昼のビッチ」で共演したことがある由美子さん。
演技の相性が良いのですが、実は末長の片思いだったことが分かるシーンのエリの拒絶の仕方がけっこう衝撃的で。

「同じ職場で夫婦でいて息子もいて、こんな女よりもっと条件いい女いくらでもいるでしょ!」って叫んだシーンは色んな意味でショックだったなぁ。

ここは末長視点で見てて、エリに迫ってくのが羨ましかった(爆)ので、この拒絶の仕方は「100%望みなし」の拒絶だなぁと思って。

エリは公平のことを心配しながらも、何もできない自分が歯がゆくてしょうがなくて、末長に「女として迫られること」も自分への侮辱としか捉えられない。

「私のことが好きなのは貴方の勝手だけれど、好きならなおさら、今の私が一番に何を心配してるか、それを分からないわけじゃないでしょ?」と。

自分の不甲斐なさが、ある意味自傷的台詞につながっていたのが、痛々しかったなぁ。

「そこまで自分を卑下しないでもいいのに。」と喉まで出かかったけれど、それを言うことは本当の破滅なのかもしれない、と何となく末長の気持ちでそう思った。

見た目的にはきらきら光る赤い衣装(レオタード風)もかっちり決まっていたし、2小節だけだけど、歌もあったし(お姫様風)、思ったよりずーっと楽しめた。

カーテンコールでは愛想振りまかないことが多い由美子さんですが、珍しく手を振ってたぐらいだから、手ごたえはあった感じ。パンフレットの満面の笑みも○。

本人のブログで「髪の毛を明るくした」と話してましたが、若干の茶~金色系。明るい感じになっていますが、明らかな色違いというほどではなかったです。

東京公演は5月5日までの2週間。思った以上には楽しめそうで何より。

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『レベッカ』(1)

2008.4.12(Sat.) 17:00~19:55 シアタークリエ 下手側

東宝新劇場・シアタークリエ初体験は、同劇場3作品目にして初のミュージカルとなるこの作品。

隠れ大塚ちひろフリークとしては(笑)、気になってはいたのですが、先行ですっかりチケットを取り忘れ(最近、数が多くもないのにこういうのが多い)、初日後にふと覗いた東宝ナビザーブに、なぜか土曜ソワレの残席ありの表示が・・・・たった1席で慌てて購入。

まぁ、劇場に行ってみたらなぜか当日券がまだ残っていたという情けないオチもあったんでございますけれど、それでも「満員御礼」でしたから、恐らく戻り券が存在したのでしょうね。

噂には聞いていましたが、ロビーが狭いこと狭いこと。
地下ではないですが、先週行ったPARCO劇場に近い感じを受けました。

とにかく客席を多く取ることに執心した中劇場、という趣が。
どちらも600人前後の劇場ですから、雰囲気も似るのでしょうが。

この作品、基本的には女性上位の舞台で、「わたし」役の大塚ちひろか、ダンヴァーズ夫人役のシルビア・グラブか、もしくは前妻のレベッカ(役者はいない)の誰に感情移入するかのような気がする。

役者の凄みでいえば、内容的な主役と思えるのはダンヴァーズ夫人役のシルビア・グラブ。
前妻を崇めるかのごとく振る舞い、後妻の「わたし」をいたぶり続ける、家政婦頭。

様々な舞台を見てきましたが、あそこまで「悪意」そのもので他人を攻撃する役って、ついぞお目にかかったことがないです。

むろん、ダンヴァーズ夫人にとっては、表面的に「社交界の華」であったレベッカは崇拝すべき主であるのでしょうけど、でもあそこまで後妻をいびるって・・・と思ってしまうのだけれど、逆に言えばそういう役回りにあそこまで嵌るとは、完全に当たり役です。

当初から「わたし」視点で作品に入り込む私のような客にとっては、自分が責められているような感じでたいそう怖いです。ちひろ嬢が「怖い、泣きそう」という理由が今なら大げさでも何でもなく、正に真実だったことが痛いほどわかります。

シルビアさんを見るのはレミゼのファンテーヌ役、「ライト・イン・ザ・ピアッツァ」のフランカ役を経て3作品目ですが、そういえば「ライト・イン~」の時も主人公(新妻聖子さん演じるクララ)に悪意でぶつかる役でしたので、2作続けて憎まれ役ということになります。

シルビアさんはうちのご贔屓さん(高橋由美子さん)と同い年(そう言ってしまうと私とも同い年)なのですが、34という年齢は女優さんにとっては非常に微妙な年なのですね。

女優さんの一つの壁は「35」という年齢にありまして、30過ぎると女優さんは主演の仕事が超一級の人を除いてはほぼなくなり、脇で生きていくことになります。
それはテレビだけではなく舞台でさえ同様で、30代で舞台で主演かヒロインをさせてもらえる女優さんは、驚くほど少ないのが現状です。

今年の帝劇を見ただけでも、メインヒロインが30代なのは、現在公演中の「ラ・マンチャの男」の松たか子さん(31歳)と「細雪」の三女・檀れいさん(37歳)、「エリザベート」の新シシィ・朝海ひかるさん(36歳)の3人だけ。年間でメインヒロイン13枠の中で見れば、層が薄いと言われる20代が6人とほぼ過半数を占めています(キム4人が20代というのが例年になく平均を押し下げているのですが、サイゴンなければレミが来るし、レミはエポとコゼのどちらをヒロインと見ても20代だし)。

よって、そういう30代という立場の方は、皆さんファンテーヌ役かエレン役(かどちらも)を経験するというのも当然の帰結。マルシアさんも似たような活動のされ方で、ネームバリューのある30代の実力派として、サブヒロインとして舞台上で活躍する、というのが定石になっています。
フジミューだったり、ハロプロ物の脇だったりします。新宿コマ劇場は何気に30代サブヒロインの宝庫です。

話をちょいと戻しますと、30代の女優さんの立場は、ことほどさようにサブヒロイン役、ともすれば敵役にならざるを得ず、役柄によっては下手をすればお客さんに役と同化して見られかねないという、実に大変な立場になります。

「わたし」視点で見てると、ダンヴァース夫人を演じるシルビアが怖ければ怖いほど、「シルビアって、もともとこういう性格なんじゃ?」と思われてしまう(爆)という怖さですね。

敵役、つまり客に共感されない危険性をもつ役柄を、どう作品の中で必要とさせて演じるか、その立ち位置を試される30代女優。

ことほどさように難しく、12月にル・テアトル銀座で見たフランカ役のシルビアは、自分の”敵役”という位置に、少し気後れしていると言うか、躊躇いを感じてしまったのですね。
「主人公をいじめることで、自分が嫌われたくない」かのような迷いを今からすると感じるのです。

「今からすると」というのは、シルビアのダンヴァース夫人を見たから。

この役、ダンヴァーズ夫人にはそういう迷いが何一つなかったのが素晴らしかったと思う。
海外版も何もかも、全てを見ないで行ったので、他の要素と一切比較できないけれど、「敵役」という役どころに怯むことなく、「レベッカを信じることが自分の正義」、そう思いつめた女性の悲劇。

もしかすると、「レベッカが存在することが、自分の存在意義」だったのかもしれない。そこまで思わせるほどの執念であったと思います。

レベッカという存在の実は最大の犠牲者だったかもしれないダンヴァース夫人の生き様は、「わたし」のピュアさと、並べられるだけの価値があるものだったように思う。

対する、本来はメインヒロインである大塚ちひろ演じる「わたし」。

存在感としては先述のダンヴァース夫人、シルビアに圧倒された彼女だけれど、この女優さんは最初に白状したとおり、自分にとっては隠れフリークの女優さんだったりします。

舞台デビュー作の「シンデレラ・ストーリー」を私は見ていないのですが、その時、この作品と同じく山田さん演出のもと、いじめられ役のシンデレラを演じているわけで、このたび、再びいじめられ役の「わたし」として舞台に立つ彼女を見ると、虐げられ顔がこれほどまでにはまる女優さんもそうはいまい、と思わせてくれます。

デビューのきっかけがそもそも東宝シンデレラの”準”グランプリということもあり(グランプリは長澤まさみさん)、デビューからしてメインヒロインではなく、一歩下がったところで生きていくことを余儀なくされるかのような立場というのが、何というか「大手の割に即メジャーにならない」という意味で、妙に肩を持ちたくなってしまうのですね。

舞台の外で色々なことで賑わせる、東宝芸能にしては珍しい脇の甘さで、休憩中の観客席でさえ「東宝芸能は彼女を売り出したいんだろうけど、色々とミソつけすぎだからね」とまで言われる始末(しかもそれが普通の光景)で、そんなところまでフォローする気はないのですが、彼女の魅力はと聞かれると、ある意味「何も秀でていないところ」かな、と思う。

4年ほど前、ご贔屓さん(高橋由美子さん)のことをこうたとえていた人がいまして、今だにこの表現を越す褒め言葉を聞いたことがないので勝手に採録してしまいますが、

「うますぎず、下手すぎず、かわいすぎず、美しすぎず、若すぎず、としすぎず、超人気すぎず、程よい知名度、程よい聞きごたえのある歌唱力。いい意味での、手ごろな欠かせない存在」

これ、ぴーったりちひろちゃんにもあてはまると言うか。
(アングルによっては由美子さんとちひろちゃんは驚くほど似ています。姉妹と言われても驚かないほどに)

若手で言うと、ミュージカル界のヒロインの先頭を走る笹本さん、新妻さんに比べれば、大塚さんは歌唱力では及ばないし、演技力でも存在感でも勝るものは見つけられないかもしれない。

でも、だから魅力がないかというとそうではない。それがすごく不思議なんですね。
歌が上手ならばそれに越したことはないけれど、歌が上手でないから全てダメなわけじゃない。

大切なのは「役者としての味」なんだなということを、ちひろちゃんを見るたびに思い出します。

もう少し、色々と余計な雑音は排除して欲しいんだけど、それを除けば、見る側に無用な疲れを持ち込まない「味」は、今回のような作品では、意外なほどに上手く作用してるように思えました。

(歌が技術的に上手い人の舞台は、時として観客としてすさまじく疲れを催すことがあります。特に、技術的に上手くて感情が伝わってこない時はなおさら。オールースターキャストで臨んだ「マリー・アントワネット」とかはそんな気持ちを持った記憶が。)

自分に自信が持てずにいたみじめな女の子が、自らの意思で愛する人のために立ち上がる。
その心の動きに「嘘」が見えなかったのが、技術的にどう、とかいうことじゃなくてこの役にとって、ひいてはこの作品にとって大事なことだったんじゃないか、と思う。

それは「ダンス・オブ・ヴァンパイア」でサラ役を演じた時も、ちひろちゃんには感じた。

以下はちょっとネタバレ!







「わたし」が支えたからこそ、マキシムも「真実に向かいあおう」と決心することができた。
取引ではなく、真実を突き止めようとしたことで、本当の真実を知ることができ、それにより前妻の鎖から解き放たれることができた。

最後のシーンは、前妻の「恨み」のこもった場所がこの世から消える、マキシムにとっての本当の意味での「人生の再出発」なのではないかと思えて。

そのときに隣にいた「わたし」が「マキシムのために戦った戦士」であって良かったなぁと、胸の奥がじーんとしてしまった観劇なのでした。

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『ガマ王子vsザリガニ魔人』

2008.4.6(Sun.) 13:00~15:30 パルコ劇場 下手側

私の場合、舞台を見に行く基準がありまして、
「準贔屓が2人以上出ていれば観劇対象」。
この条件に見事に引っかかりながら、なぜか観劇候補から
外していたこの作品。

会社の芝居好きの人から「良かった」との感想を聞くに至り、
頑張ってチケットを取って見に行きます。

タイトルから内容が全然想像できなかったのも、当初回避していた理由なのですが、見に行って初めて合点が行きました。

あの噂に良く聞く『ガマザリ』ってこの作品のことなんですね(爆)。

登場人物10人いる中で、舞台で見たことがある人が
実に5人。

口の悪い看護婦役・新妻聖子さん:5作品目(レミ、サイゴン、MA、ピアッツア)
名医師役・岡田さん:3作品目(レミ、星の王子さま)
そっち方面の役:山内圭哉さん:2作品目(地獄八景・・・浮世百景)
再起不能な役:中山祐一朗さん:2作品目(真昼のビッチ)
おせっかいな役:楠見薫さん:2作品目(雨と夢のあとに)

まずこの人に触れないわけにいかない新妻聖子さん。口が悪い看護婦こと光岡役。
彼女のストレートプレイは初観劇の私ですが、この役のきっかけは演出のG2さんが、「マリー・アントワネット」(MA)のマルグリット役を見たからだそうです。

MAの1幕初っ端、庶民丸出しの「すっげー!」って台詞回し、確かに今回の役につながるようなところがあります。

もう一人のマルグリット、笹本さんのその台詞が「ミー&マイ・ガール」で同じような台詞回し見たから、やっぱりこの2人、似てないようで似てて、似てるようで似てないんだなぁと思う。

今回の役を笹本さんでやるのは想像つかないし、「ウーマン・イン・ホワイト」のマリアン役を新妻さんでやるのもそれぞれなんかずれてる。

それはともかく、もっと無理してじゃじゃ馬言葉を発すると思ったんで、ここまでガチにかっこいいキャラクターを作ってこれたのは意外。
MAでは、かなり無理した下町っ子具合だったんで。

歌の大声量に比べると、台詞の声量のなさは明らかで、もっと声が聞こえれば会場内さらうの間違いないのに・・・みたいなシーンがいくつかあったのは残念。
耳そばだててるから聞こえるけど、もっとどかーんとはじけて欲しい部分はありました。

でも台詞が一事が万事面白くてねぇ。

がんこじじい・大貫へ畳み掛けるかのごとき「聞け!夜通し聞け!道道聞け!」って宿直室に連れ込んで朝まで酒飲むのに、翌日に「二日酔いが身体に残るなんてやわな育ち方してねぇよ。こちとら津軽の庄屋の娘だぜ」でしたか。噴いちゃいましたよ。(ここの啖呵がもちっと発声しゃんとしてればな・・・・でした)

自殺未遂を繰り返す患者さん、室町。笠原浩夫さんが演じられていますが(内田朝陽さんが降板したため)、男だてらに「なかよし」「りぼん」とか読むとか爆笑。
「有閑倶楽部」とか「ときめきトゥナイト」とか蘭世とか、すみません、私は男ですが、名前全部分かります(爆笑)。35overあたりにはこの辺直撃でしょうな。

医師役の岡田さんと新妻さんといえば、2003~2005シーズンの「レ・ミゼラブル」マリウス&エポニーヌ役の組み合わせで、いずれも初見だったためにこのお2人の最初のイメージが「恵みの雨」で出来上がってしまってるのですが、今回に至っては

「室町さんの担当、(今度も)君でいいよねー」
「へーいっ」

(笑)てな具合で、余韻もへったくれもありません。逆にいうと演じる側がそういうことを微塵も感じさせないという点で、新妻さんもいい方に変わったなぁと思うのですが。

さて、他のキャラクター。
何といっても山内圭哉さんですよ。
あれは誰がなんと言おうと反則です!

どこまでアドリブなのかどこまで台詞なのか分からないあの爆発力。
「浮世八景・・・地獄百景」で経験済みではありましたけど、涙が出るほど笑って、息苦しくなるほど笑った、って芝居では初体験かもしれない。

そんな笑いも随所に織り交ぜつつも、基本は泣かせる芝居。

以下はネタバレ大会です。問題ある方は回れ右です。この作品、これから地方公演ですんで。


では。

”ガマ王子”にあたる気難しい”じじい”大貫が、少女パコと出会うことで、自らの行為が周囲をどれだけ傷つけたかに気づかされる1幕後半。
岡田さん演じる医師に対して投げかけた「涙はどうやったら止まるんですかね」に対する医師の答え、気難しい大貫に「名医」と言わせるだけの人間の大きさを感じます。

2幕はそんな大貫が心を入れ替えて皆に頼み込み、劇中劇である「ガマ王子vsザリガニ魔人」をパコの前に見せるわけですが、印象的だったのは、パコから大貫への感情も、大貫からパコへの感情も、表面的には成就したようには明確になってはいなかったこと。

大貫は1幕最初で「お前が私を知っているだけで腹が立つ」と他者からの関わりを拒絶していたのに、2幕でパコと触れ合うことで、「俺をあの娘の中に記憶として残しておきたい」と願うのですが、最期のシーンではパコは既に死の淵をさまよい、そして大貫の願いの叶わぬままなくなってしまいます。

パコは記憶に障害があり、眠ることで前日の記憶を忘れてしまうのですが、大貫がパコの手に触れた瞬間だけ、「昨日触れられた」事実だけを思い出すのです。
だからこそ、パコに今日触れていないということは、パコの最後の記憶に大貫は残らないのですね。

”因果応報”と言ってしまえばそれまでなのでしょうが、「パコの中に自分の記憶を残しておきたい」というのは単に大貫の思い入れというかエゴに過ぎないのではないかなぁと。

とはいえ、「人が人として生きていく」ためには「他人の記憶の中に生きている」ことこそが必要なのだな、と改めて感じさせられました。

パルコ劇場、相変わらずいい作品を上演しますね。

8月公演の「ウーマン・イン・ブラック」も楽しみですが、チラシが入ってた7月公演の「sisters」も楽しみ。松たか子&鈴木杏(確かにこの2人は姉妹と思えるほど似てる)に長塚さんですからね、期待大。

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