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2008年3月

『いのちのいろえんぴつ』

テレビ朝日系 2008.3.22(Sat.) 21:00~23:11

普段は土曜ワイド劇場枠のこの枠、先週と2週連続でスペシャルドラマ枠に。

北海道・厚岸を舞台に、脳腫瘍で帰らぬままとなった少女・豊島加純ちゃんを主人公にした物語。
少女が慣れない左手で、色鉛筆で絵と字を書いた作品、その絵本を原作とした作品です。

同じテレビ朝日の難病物(という括りは安易なのでしょうが)の、2006年夏クール「電池が切れるまで」と兄弟番組的なこの作品(プロデューサーは同番組と同じテレビ朝日の中込P)。

主人公を演じた藤本七海ちゃん、子役のこの子のことを私は知らなかったのですが、明るく感受性が豊かで、聡明なところがはっきり伝わってきて、とても好印象。

自分が脳腫瘍であることは、両親から伝えられていないのですが、自ら身体が自由にならなくなっていく様などを通じて、だんだんと気づいていくのに、それを表に出さないように振舞う様が実に自然に思えます。

自ら苦しくてしょうがなかったろうに、明確に他者を拒絶したシーンはただ一度だけだったし、この種の作品なのに「闘病」というシーンをあえて全くといっていいほど排したことで、湿っぽくなくてかえって良かったかも。

加純ちゃん自身も、そういった弱音を見せないような印象を抱かせるほど、彼女の演技はピュアで清々しくて、この作品の温かな作風を形作るのに、大きく貢献していたと思う。

両親役は父親に杉本哲太さん、母親に高橋由美子さん。
日本テレビ系ヒューマンドラマスペシャル「生きのびて」で中国大陸での夫婦役を演じて以来、12年ぶりの夫婦役。

お2人の役作りは、作品の公式HPでのご自身のインタビューに詳しいのですが、”不器用な父親”に徹した杉本さん。

杉本さんのインタビューで印象的だったのは、母親役の由美子さんについて触れたこんな一言。

お母さん役の高橋由美子さんがプロデューサーに「爆笑家族みたいになってるけど大丈夫かな?」というメールを送った話を聞いたんですけど、僕的には”爆笑家族になればOKだな”って思いがどこかにあったんですよ…。

プロデューサーにメールを送ってる一出演者というのも相当ですが(この作品の中込Pは由美子さんをゲストに呼ぶことで業界一の人で、前述の「電池が切れるまで」の他にも、「雨と夢のあとに」「愛と死をみつめて」「未来講師めぐる」にゲストで呼んでいただいています)、恐らく杉本さんと由美子さんの間に、打ち合わせもしていないだろうことで、気持ちが通じ合っているようなところが妙に嬉しくて。

学校でよもぎ餅の作り方を教わり、家に持って帰る加純。「冷凍すると1年もつ」という先生の言葉に、微妙な表情をする加純ちゃん。恐らくここで既に自分の死期を悟っているように思えます(物語としてはずいぶんと前半です)。

2つ目を食べようとして加純ちゃんに止められる父親。
「いつ食べるの?」と聞くと「来年」と答えられて、一瞬顔を見合わせる両親なのですが。

何も言葉が浮かばない父親に代わり、意味ありげな表情をした後に、「来年は来年でまた作ればいいんじゃない」と加純ちゃんに話しかける母親。

この、役者としての七海ちゃんと由美子さんの絶妙の間というか、お互いすごいなぁと。

「来年」という言葉を言った時点で、娘に真実を話していない親としては、どう反応するか困るわけですよ。娘は多感だし聡明なのはわかっているし、変な言い方では感ずかれてしまう。だから不自然にならずに納得させる必要がある。どうしよう・・・・

そのときに出た言葉が「”来年”が自分にあることを、親は信じてくれているんだ」というものを感じさせるものだったから、その思いに力をもらって、加純ちゃんは笑顔で返事することができたんだな、と思う。

意地悪な言い方かもしれないけど、加純ちゃんは両親に「来年」という言葉を投げかけることで、両親から自分への気持ちを、再確認したかったのかもしれない。

”試す”って言葉は良くないけど、「不安」をどう和らげてもらえるか、その期待に、応えてくれたからこその笑顔なのかな、と思った。

七海ちゃんの演技勘もそうとういいセンスしてると思うけど、「演技する相手がやりやすいような演技を心がける」由美子さんのアシストも相変わらずさすがだなぁと思う。

「なんかたくらんでいるかのような」由美子さんの表情と、母親の愛情を素直に受け止められたからこその七海ちゃんの笑顔、いい関係だな。

今回の役作りについて、作品公式で由美子さんは「最初はかわいそうな感じの役作りをしたけれど、監督から『実際のお母さんも前向きな人だし、あまり重くしてほしくない』」と言われたことで、演技の方向性を変えた」とおっしゃっています。

由美子さんが難病物をやると、本人は生命感にあふれすぎているので、基本的に常に見送る側(例外は「レ・ミゼラブル」のファンテーヌ役で、ジャン・ヴァルジャンに看取られる)なのですが、「時の輝き」(1995年・松竹系)を思い出さざるを得ません。

この時、山本耕史さん演じる峻一を見守る看護学校の生徒・由花役を由美子さんは演じていますが、「患者をかわいそうと思うのは健常者の驕り。患者は自分も誰かの役に立ちたいと思っているし、”一緒に”戦ってほしいと思ってる」というストーリー(一部続編のストーリー部分も含んでいます)だっただけに、この役を演じているのにかかわらず、それでさえ由美子さんが今回の役を「かわいそうな感じで役作りした」のはいささか意外。

どちらかと言うと一つ一つの役をその場その場で対応していくタイプだけに、作品をまたいだ役柄の一貫性みたいなものを求めてしまうのは、ファンの悪い癖なのかもしれません。

とはいえ「リアリズムだけを追ってやらない方がかえっていいのかと思った」という由美子さんの言葉は、うーんと考えさせられるものがあります。

この言葉が由美子さんの演技を一般論として指したもののように自分は思えて仕方ないのですが、基本的に由美子さんの演技は”リアリズム”が根底にあるように思えるのですね。
ファンタジーの中に生きても、根底にあるのは「真実味」であるかのような。

例えば代表作の「南くんの恋人」のちよみ役であるなら、作風はファンタジーそのものなのですが、「15cmとしてその世界に生きている」ことにリアリティを与えようと演技していたように思えます。

「SHIROH」の寿庵役とか、「モーツァルト」のナンネール役とか、しっかりした存在感の裏にある支えが”リアリズム”によるものだと思うと、なんだか腑に落ちるものがあります。

ただ、由美子さんの演技にとって、「リアリズムだけを追う」だけではない演技を求めようとしているようにも思えて、”いつもと違う”演技をしているようにも思えたのが、新鮮な収穫でもありました。

こういう発言で、『だけ』と付けているのが由美子さんらしいというか。
「今回の役でリアリズムを捨てているわけではないけれど、他の要素も組み入れた結果」として表現されているところ、あいかわらず言葉の使い方が巧みです。

全編に流れる葉加瀬太郎さんの音楽にも心癒され、思った以上に温かい気持ちになれました。
正直、いろいろと意外な思いができた、そんな作品でした。

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『きみがいた時間 ぼくのいく時間』

2008.3.14(Fri.) 19:00~21:40 サンシャイン劇場1階後方列下手端

ホワイトデーにこの芝居を男一人で見に行くのはどういう人種なのだろう(笑)という疑問を感じつつ、サンシャイン劇場へ。

「サンシャイン劇場」「キャラメルボックス」「上川隆也」のAND条件で結ぶと、3年前の「TRUTH」以来になります。

今回の作品は「時を飛び越える」クロノスシリーズの4作目。

キャラメルボックスの作品は、気に入った時だけ見に行く軽いファンの自分ですが、クロノスシリーズは全部見ていて、案外にタイムトラベル物好きということに、今更ながら気づきます。

主人公を演じるはキャラメルボックスに3年ぶりにゲストに登場(←日によってはこういうトークで笑いを取っている)の上川隆也さん。
ヒロイン役は客演の西山繭子さん。上川さんとはテレビドラマ(シンデレラは眠らない)で共演経験がある女優さん。

キャラメルボックスで客演で「まゆこ」といえば福田麻由子さん(雨と夢のあとに)を思い出すのですが、なぜそんなに「まゆこ」に縁があるのは不思議。高部あいさん(カレッジ・オブ・ザ・ウィンド)を挟んで客演3人に「まゆこ」2人ですから妙に高い比率。

この作品、上川さん演じる里志と西山さん演じる紘未とのストーリーを、里志の妹を演じる岡内美喜子さんがストーリーテラーとして進行させるという流れです。

客演の西山繭子さん、清楚で綺麗な素敵な女優さんですが、上川さんとの演技の相性はというと、悪くはないけれど、もっと胸を鷲掴みされると思っていたのに、何かが違う。

繭子さんの役がどこかで見た感じと思ったら、クロノスシリーズ第1弾の「クロノス」で菅野さん演じる吹原さんの相手役だった来美子役-というか演じたのは岡内さんなのですが-どことなく雰囲気が似ています。

男主人公が技術者として女性に関心もなく脇目もふらずに研究に没頭するあたりが、どうにも上川さんと菅野さんがだぶってしまい、ひいてはその相手役の岡内さんと繭子さんにも共通点を感じてしまって。

結果。岡内さんと妙にキャラクターがかぶっているせいで、どうにも岡内さんが2人いて上川さんの面倒を見ているように思えてしまうのですね。

男性が自分の命をかけて女性を救いにいくというストーリーが同じというせいもあるのでしょうけれども。

個人的な話ではありますが、上川さん演じる役名と、実は私の本名の読みは同じでして、繭子さんが愛情を込めて自分の名前を読んでくれるということでありまして、多少こそばゆい思いはしてしまうのですが(笑)。

以下、ストーリー的にはネタバレです。
ちなみに、会場でも販売されている原作本とは、多少展開が違い、個人的には舞台版の方に若干違和感を感じます。






では。

ストーリーをざっくりなぞりますと、
里志と紘未は結婚し、紘未は里志の子を宿しますが、ある日交通事故に遭い、母子ともども亡くなってしまいます。
里志は紘未を救うべく、過去の瞬間に飛び、事故の瞬間を自らの手で回避しようとします。

ストーリーブック等でも語られていますが、他のクロノスシリーズが「クロノス・ジョウンター」という機械で、過去に飛ばされ、それより大きい幅で未来に飛ばされる、のに対し、今回は「クロノス・スパイラル」という機械で、過去に飛ばされたまま過去にとどまる、という点が異なります。

未来を知る人が過去からを生きるということで、「未来におけるデータ」を持って過去に行った里志は、一財産を築くわけなのですが、その舞台が原作では工務店、舞台ではホテルになっている等等、もろもろの相違点があります。

タイムトラベル物というと、基本的なお約束として「過去は変えられない」があり、応用編として「変えてしまった過去は、もともとそうであったように再構成される」あたりがあります。
今回の作品は更に再応用編といった感じで「(未来で)里志と紘未が出会う前提に基づいて、過去を変えていく」という、よく考えるとけっこうマイルール気味な構造になっています。(時の神様は本当に怒らないのだろうか?)

舞台版を見終わった後に原作を読んでみると、設定の無理のなさという点では明らかに原作に分があるというか、原作の巧みな構成を舞台版はかなり無理をしてごちゃごちゃにしてしまっている印象があります。

ホテルに作業員として入りながら徐々に信を受け、坂口理恵さん演じる副支配人・純子に一目置かれ、最後まで寄り添われることになります。

が、里志と紘未との関係と同じぐらい、里志と純子との関係も重く作りこんでしまったもんだから、どっちがメインなのか分かりにくくなった感じ。
そのうえ、上川さんと坂口さんは演技の相性がいいから、なおさら西山さんの存在が薄くなってしまったようで。なんだかちぐはぐな感じでした。

純子が里志を思うほどに、紘未は里志を思えていたのかどうか。
そのあたりが純子(坂口さん)が良すぎて、若干、本末転倒方向に行っていたかも。

岡田達也さんの素が黒いのは前述「雨と夢のあとに」舞台版の福田麻由子ちゃんにさんざ暴露されてっきり、すっかり慣れっこなのですが、役柄上黒いのを見たのは初めてで結構な衝撃でした。
(上川さんの黒い役は「TRUTH」で経験済み)

そんなこんなをいいながら、ラストに向かうキャラメルテイストの「人が人を信じることで奇跡を起こす」は健在で、1幕・2幕の長かった微妙な気持ちを吹き飛ばすかのようなハッピーエンドは、やっぱりほっとするものがあります。
今回は年老いた里志の存在が、「人が人に支えられて生きている」、「思いは人から人へ受け継がれていく」ことをあわせて感じさせ、心温まるものがありました。

キャラメルお得意の小ネタも随所に健在。
あまりに多すぎて覚えきれない(笑)のですが、そうとう笑いました。
いまだに通用する「山内一豊の妻@功名が辻」(会場内笑い付き)も絶賛公言中だし、キャラメル内では上川さんのニックネーム一番手の「メカ」ネタも登場し、色々笑わせてもらいました。

それにつけても上川さん、自分自身は「SHIROH」「TRUTH」と来て3作品目ですが、前2作のような揺ぎない存在感とは別の役柄で、しかしながら芯はまっすぐで一途な感じが良かったかなと思います。
が、正直な本音を言ってしまうと上川さんはずしっと重く存在してこそ上川さんって感じなので、里志という役は、心なしちょっと軽い感じがしました。なんとなくの印象ですが、どことなく本人の素のイメージが含まれているように思います(あんまり素は表に見せない人ですが)。

そういえば、今回はキャラメル初の休憩付き芝居!(15分休憩)
場内アナウンスもそれに合わせて「初の休憩付き」を煽って、客席から期せずして笑い声があがるのは、キャラメルのアットホームムードとあいまってなんだか素敵。
休憩内で販売される新聞(売価100円・税込み)つー企画が大好き。
ついつい買ってしまいましたとさ。

あと里志が未来から持ってきたノートパソコン(mac)を力いっぱい地面にたたきつけるシーン。
windowsなら確実にだめだけど、macならなんとか回復できそうな気が。
よっぽど水に漬けたほうが壊滅しそう。
昔、ビルの屋上から落として起動したとか、象が踏んでも壊れなかったとか、macのノートPCにはいろいろ伝説があったんで。

そんなことは過去に生きてる人にはわからないわけで、あれは里志の賭けみたいな感じはしました。

自らの大切な人の思い出が詰まっている機械の大切さあってこそ、それを勢いよく地面にたたきつけることでしか、岡達演じた男の暴走を止められないという判断なのでしょうから。
なんとなくあの後も、あのmacは普通に動く気がします。
何しろ里志は技術屋さんだし、多少の故障なら直しそうな気もします。

起動しないと思い込んでいたPCだったけど、奇跡が起こって起動したとか、何かそんなシーンがあったら涙腺刺激されちゃいそう。
お金貯めるのに使ってたデータは全て消して、紘未の写真を見るためだけに起動するようになるとか。
何か微妙に別のストーリーですが。

未来のデータでお金儲け、うっほほーい、って話は意外にタイムトラベル物でお見かけしたことなかったんで、「必要に迫られて」とはいえ、罪悪感が表現されていないのはちょっぴり不思議。

最後の挨拶より。本日の担当は史上最高の台詞数となった岡内さん。
「今年のキャラメルボックスは4つもお芝居をやります」
「私たちはいつでもここにいます」
「かっこ上川隆也を除く」(原文のまま。敬称なし)

・・・ああそういえば、キャラメルボックスにとって上川さんは、「いなくて当たり前」「いるとネタ」という存在ということに思い至り。お互いそれを分かって掛け合いやってるのが面白いです。
(日によって「ゲスト」として西山繭子さんご指名の際に横入りする上川さん(笑))

後から検索して気づいたこと。
いつもの社長前説がないと思ったら、あのアナウンス前説は上川さんの生アナウンスだったのか!
「何よりも危険なのは油断です!!」

最後の挨拶、上川さん編
「今年のキャラメルボックス、たくさん芝居をやるそうです」
「ま、私はいませんけど」
「どこまでも他人事です」

・・・・あぁそんな上川さんテイストはやっぱり大好き。
上川さん演じるコメディ、いまだ未体験。見たいなぁ。

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『星屑の町~新宿歌舞伎町編~』(3)

2008.2.24(Sun.)16:00~19:35/新宿コマ劇場S席2列目下手側
2008.2.29(Fri.)13:00~17:00/新宿コマ劇場S席10列目センター


とうとう千秋楽を迎えました。
公演観劇合わせて5回、色々な思いもありましたが、ひとまずは「終わったなぁ」と。

今回の話は特に前川さんファンの方には辛口になりますので、そういうのがお嫌いな方は最初から回れ右でお願いします。







では。

24日夜の部は、2列目下手センター寄りの通路際。由美子さんの衣装までわずか2m。
心臓が鎮まらないぐらいの席だったけど、芝居的には今までで最悪だった。
芝居にクレームを入れるのが嫌いな自分が、アンケートを書こうと思ったぐらいひどかった。
結局思い直してやめたけど。

前川さんが芝居に不得手なのはわかるから、ある程度は納得してきたつもりだったけど、何しろこの日は台本から超逸脱、台詞回しも壊滅的で何を言ってるんだかさっぱりわからない。

ハローナイツが金を持ち逃げされて、警察より役立つ人がいる、ととん平さん演じる元ヤクザを連れに行くところなんて、手旗信号と意味の通らない、つながらない台詞の数々。

お客さん笑ってるけど、わけわかんなくなっているところ見て面白いもの?
完璧な芝居の中に入り込むアドリブだからこそ、アドリブが生きるんじゃないの?
リピーターが多くなってきたからといって、客全員がストーリーを事前に読んでくると思ってる?

初見の人に台詞と演技と歌で理解・感動させてナンボだと思うよ、芝居ってものは。

「芝居が熟成する」って感じでもなくて、ただ単にぐだぐだが許されている、そんなのはお金取ってみせるプロの作品じゃないと思う。

本業が歌手であれ、役者として評価されるか否かを判断されるべきだと思う。
台詞回しが不自然なことに文句を言いたいんじゃなくて、台詞をきちんと発して、きちんと芝居として台詞を発しようとしない姿勢に文句を言いたくて。
心から悲しい思いで劇場を後にしました。

ハローナイツのみなさんも、由美子さんも、もちろんほかのみなさんもきちんと芝居をしようとしているのに、客を呼べれば全て許されるの?と不愉快な気持ちでいっぱいになって悲しかったです。
この作品は笑顔になって帰れるのが一番いいところだったのに。

今回の作品、初日を確保しなかったかわりに平日の楽を確保。
何しろ、平日にチケットを追加できない作品で、最後の日曜夜の部で最悪な物を見せられては、リカバリのしようもなかったわけで、日曜日の夜が最後になると、最後の最後で良くない思い出で幕を閉じるところでした。

幸い、平日に休みを取れて楽の29日を観劇。

この日は10列目どセンターで、由美子さんの衣装まで(なぜこの基準なのだ(笑))5mと離れたものの、音響最強な上に視界もほぼさえぎるものがなく(前列がちょっと右にずれ込んでいるために前が開けている)、とてもいい席。

24日には相当のダメ出しを出したくなった前川さんの演技も、この日は従来の台詞回しに戻り、むしろ24日夜の部は突然変異のぐだぐだだったのか、疑いたくなってしまいます。
あまりの戻り方に、もしかしてどなたかから「さすがにあれはどうかと」と言われたのではないかと推察します。それぐらいヒドかったので。

5回見ましたが、間違いなく千秋楽が一番いい舞台でした。
普通、千秋楽はお祭りモードで芝居を楽しみにくい空間になるはずなのですが、芝居と歌がきっちりはまった、そのはまり方が間違いなく一番でした。
むろんアドリブは千秋楽仕様でいつもより多いですし、小噺が新作になっていたり(笑)いろいろと変更はあるのですが、出演者の方々のパーツがきちんとはまった感じで、いい意味の混成チーム兼親睦チームのいいところが出ていました。

せっかくですから、今回の芝居で気になった方々を、つれづれなるままに。

○田島令子さん/クラブJのママ(新宿の現顔役)
とん平さんとの年の差が気にならないカップルというのも凄いです。(58歳と70歳ですから本当に1回り違いです)
姐御肌の感じが出ていて、ただ綺麗なだけではない「曲者」な感じがいいです。
由美子さんとは作品としては「南くんの恋人」(1994年)、「愛と死をみつめて」(2006年)で2回共演していますが、いずれも接点が少なかったため、事実上の初共演でした。

○池田貴宏さん/喫茶店のウェイター
最初の喫茶店のシーン、事実上登場人物の説明シーンですが、ここのウェイターさん。
お客さんの顔見て対応変えるところとか、演出なんだろうけど分かりやすい演技で肩をほぐしてくれました。
千秋楽のこの日、全員の挨拶がありましたがトップバッター。実はとん平さんのお弟子さんだそうですね。なんとなく空気が似てる感じが分かる気がします。

○有薗芳記さん/ハローナイツメンバー
背が小さい(小学生の息子さんと同じ背だそうです)でラサールさんにさんざネタにされていましたが、実は初見ではなく由美子さん舞台の「居残り左平次」(2002年)「透明人間の蒸気」(2004年)で2度も見ていたのですが、後から「あぁあの人だ」と思い出す始末。基本的に縁側でトークが似合うハローナイツメンバーの中で、若い暴走してる感じが良かったです。

○平良政幸さん/新宿署の刑事
立ち姿がいかにも刑事って感じで、そのすらっとしたコート姿に感服。
ああいう身のこなしは男から見ても羨ましい。

○新納敏正さん/ホストクラブコザの社長
人生が滲み出た感じの沖縄訛りが聞いていて心地よかったなぁ。

○斉藤レイさん/スリーポピンズ次女・裕子役(兼酔っ払い役)
とにかく背が高くて舞台栄えします。
当初チケットを取った17日の夜の部で、酔っ払いの演技をしていたらコマの舞台から落ちたそうです(本人ブログによる)。新宿コマの1列目って、結構スペースがないのですが、そしたら案の定、お客さんの膝の上に乗っかっちゃったとか。

○植野葉子さん/スリーポピンズ三男・和子役
「三男」は誤植ではありません。
千秋楽の全員個別挨拶、「三男を演じました」とぶちかまして会場内の爆笑を誘っていました。

○高橋由美子さん/ハローナイツ新ボーカル・赤羽ミミ役
1ヶ月間、アフターの後に午前11時からキューティーハニーを歌う試練(本人談)を乗り越え、無事に千秋楽。

歌は高値安定が信条ですが、今回は音域ど真ん中ということもあり、見る限り1度の歌詞ミスも喉枯らしもなく、最後までリードボーカルらしい存在感を見せていました。

特に千秋楽の歌は感動したなぁ。公演最初の頃も良かったは良かったんだけど、ただ歌う以上に、感情で歌い上げる歌は、文句なしに最高でした。
千秋楽の「MISS YOU」に至っては、千秋楽の挨拶と相まって聞いてみると、何だか違うストーリーが浮かんできて。

ちなみに千秋楽の挨拶は、こんな感じでした。
--------------------------------------------------------------------------
10年ぐらい前は歌を歌ってたんですけど
こういった姿(立ちマイク)で歌うのは10年ぶりぐらいで。
(昔は)心から楽しんで歌えるということが
実はなかったんですけれども、
今日歌ったときに、本当に心から楽しんで歌えました。
(会場内大拍手)
キャストスタッフのみなさま、お客様のおかげです。
--------------------------------------------------------------------------

由美子さんがアイドルをやっていた当時は、「孤軍奮闘」という言葉が正にぴったりくる感じで、「楽しむ」よりむしろ「パーフェクトなアイドルを演じる」ところがあったので、あの当時の精神的重圧はそうとうなものだったんだろうなぁと改めて感じます。

その昔「なんであなたはそんなに(アイドルとして)一点の曇りもないの?」と問われた時に「(アイドルとして)そういう暗い部分は見せたくない、光っている部分だけ見せたい」と言っていた、10代らしからぬ責任感には、常に感服していました。

アイドル時代の「孤独な歌い手」とまた違う、「芝居の中で必要とされる歌い手という立場」、いわば「みんなの歌姫」としての心地よさは、とても幸せだったんだろうなと、ふと思ったのですね。

「一人で歌ってからいくつの季節が過ぎた
今はお芝居の中にこの歌があるから」

という歌詞が、ふと浮かんでしまって、なんだか温かい気持ちになってしまったのでした。

そういえば「10年ぐらい前は歌を歌っていたんですけど」と言ったときに、隣のおばさん方が「あぁ、なるほどね」とおっしゃっていたのですが、前段があって「彼女、歌が上手いのねぇ」から始まっていたので、「昔歌手だったのなら、あれだけ上手くても納得だわ」という評で、大変嬉しゅうございました。

今回大変だなぁと思ったのは、2幕で前川さんと2人きりになる芝居。
前川さん、アドリブ入れまくるんだもの(笑)。

基本的にラブコメの場面で、由美子さん演じるミミが前川さん演じる正木さんに告白する場面なのですが、どうにも前川さんはここで遊びまくるのは、やっぱり照れてるからでしょーか。

千秋楽では「おにいちゃんの匂い」と言われた前川さんが「そーか、2月5日から着てるからなぁ。なんだ言ってくれば着替えたのに。何で言ってくれなかったの」と返しており、仕方なく由美子さんまで「だって言わない方が面白いかと思って」って返事をしていたという(苦笑)。

前川さんのいつもより長いアドリブに、由美子さんの普通の台詞がかぶさってしまって、見方的には由美子さんの入りミスに見えちゃうんだろうけど、「おにいちゃんのアドリブを上手くかわして、いかにして不自然にならずに芝居を恋愛モードに持っていくか」を頑張っていました。

脇が長いせいか、自分の土俵で演技する主演をフォローするのって、由美子さんは達人的に上手いから、あまり注目はされないんだけど、何気に結構ハイレベルな技術な気がする。

どんな男性を相手役にしてもしっかりと空気を作るのって、その辺りの技術が寄与している気がします。今までの相手役で前川さんは一番年の差がありましたが(24歳差)、多少無理目な線が残ったとはいえ、何とか形になったといったところでしょうか。

由美子さんの発した「おにいちゃん!」の台詞。
24歳差を埋める凄い技だと思う。
あれ以上でもわざとらしくなるし、あれ未満だと関係がつながらない。
34歳と58歳の組み合わせが何とか見れる形になるってそれだけで凄いんですが。


思ったより楽しめた2月でした。

そういえば新宿コマ劇場は、公式リリースはまだですが、今年9月の北島三郎公演を最後に閉館し、再開発の見込みです、と聞きましたが、今年12月には宝塚出身者の公演が既に発表されており、実際のところは不透明です。
10・11月の休館は間違いないところですが。

自分にとっては1997年「アニーよ銃を取れ」以来、「HUMANITY」、当作と3作品でお世話になりました。今期は西武新宿駅から由美子さん行きつけの沖縄料理屋「かちゃーしー」を横目に新宿コマに入るのが順路でしたが、それも2008年2月29日をもって終わり。
1つの時代が終わったのかなぁ、と思わせられた日でした。

[おまけ]
3次会は出演者のお一人、外波山さん経営する「クラクラ」で真夜中までされたそうです。
椿組HPの写真から→こちら
うちのご贔屓さんは最後列左から3番目、ラサール石井さんの隣。いかにも飲んでる(笑)

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