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『MOZART!』(19)

2007.12.16(Sun.) 12:00~15:20
帝国劇場1階F列センターブロック上手側

1週間ぶりの帝劇は、なぜだか久しぶりな気分。
比較的前方席ながらも、前の席の女性が申し上げにくいながら座高が高く、ちょっと残念な状態での観劇。(もちろんご本人にも帝劇の客席係にも何も申し上げませんが。)

●アドリブ大会発動中

さすがに再々演の終盤戦ラストスパートということもあり、どの役者さんもアクセル全開です。

○「最近、近いのっ」@大司教
一部でもはや鉄板ネタと化しているコロレド大司教の、お手洗いプリーズの台詞。大司教の威厳もあったもんじゃない、と不評の声もたまに聞きますが、自分はおっけーの方です。
祐一郎さんが意識されているかどうかは分かりませんが、コロレド大司教の「威厳」そのものが、美女とのお戯れシーンとともに、「結局大司教様も一皮向けば人間なんですな」という、存在に対するアンチテーゼになっているようで興味深くて。
ヴォルフガングに対するコロレド大司教は、存在自体が滑稽な点もあるわけですね。
ヴォルフガングも相当なやんちゃな音楽バカですが、コロレド大司教にしたところで、貴族の割には妙に世俗的な面も覗く、言ってみると「関係悪化の理由はそれこそ『どっちもどっち』」みたいなところ。
結果的にそれをパロディー化しているような点は、ただ威張るだけでなくて、その威張りに「空威張り」を感じてしまうのは、好きかも。

この日のマチネ、井上芳雄ヴォルフは、やんちゃモード大爆発で、自由自在に暴れまくっていたため、一部「大司教様の言ってること、合ってるんじゃないの?」とか思う場所もあり。

○「借金は・・・『げ』」@レオパパ
再演以降、自然発生したレオパパ本編唯一のアドリブどころ。再々演初日では発生せずに、「市村さんお疲れ?」の判断理由ともなっていたところですが、先週あたりから『うわぁ』が復活、この日のマチネではとうとう↑の通りに。

利息が自動計算でもされるんでしょうか(笑)なぜいきなり気づいたかのような・・・・

借金額を書いてある手帳でバシバシとヴォルフガングを叩くアドリブに、井上ヴォルフも圧倒されることしきり。
会場内でも笑いが起こっていましたし、こういう遊びはただでさえ重い1幕の中では貴重だなぁ。

そのシーンに割り込む高橋由美子ナンネール、いつもと違うパパのアドリブぶりに、一瞬驚きながらも何もなかったように次に進める、うーん、さすがストーリー進行担当兼タイムキーパー。

○息吹きかけは反則@井上ヴォルフ
日増しにお遊び暴走の吉野シカネーダーとのお遊び大会「ちょっぴりハートに」。
再々演ではほぼやるようになった吉野シカからのステッキ奪い取り用のアクション「息吹きかけ」。
そういや、井上ヴォルフがあまりに息を強く吹きすぎて、吉野シカのマイクに音が入っちゃって「ぶぼっ」とかいう音がしたことがあって、さすがにその時には笑ってしまったですよ。


●気持ちは伝えられていく
この日のマチネ、ヴァルトシュッテンテン男爵夫人は、12月から登場の涼風真世さん。

男爵夫人は久世星佳さん、一路真輝さん、香寿たつきさんと4人見ているけれど、今まではマイベストの男爵夫人は、芝居系の久世さんでした。確かに歌は弱かったけど、ヴォルフガングを始めとするモーツァルト一家への愛情に溢れていて、いつも満たされた気持ちになれた。

一路さんはリサイタル風味が強くて、良くも悪くも主役の人だなぁと感じたし、香寿さんは歌には安心して浸れるけれど、貴族の一員としてヴォルフガングを利用する方向性がより濃く見えて、役柄的にはある意味正しいのかもしれないけれど、やはりしっくりこなかった。

それでも香寿さんはアマデに対する「人は忘れる」が愛情に溢れ、ヴォルフに対する「星から降る金」が愛情より利己を感じるのは、ちょびっと不思議。

で、涼風さん。

私にしてみちゃ『るろうに剣心』でお聞きして以来(ずいぶん昔だ)、舞台は前作の『マリー・アントワネット』で初見。
役柄もあったし、マルグリット視点で見たせいもあり、初演限りでお別れしましたが、今回お見かけしまして、ちょっと新鮮な驚きだったのですね。

涼風さんは一度聞いたことがある方なら分かる通り、基本が「アニメ声」なので、正直心配していたのですが、何の何の、マイベストにいきなりの昇格です。

歌えるのは最初から分かっているのですが、「星から降る金」の流れが凄く良いのですよ。
イメージ的には、久世さんの芝居と香寿さんの歌を組み合わせたような感じ。

イメージ的には「母親」的要素が強くて、世俗的(庶民的)な点が強いというか、貴族的な香寿さんとは好対照に思えます。

涼風夫人は、モーツァルト一家へのメッセージ、ということに「星から降る金」が特化しているのがすごく良くて。

男爵夫人4人のインタビューの中で、「ナンネール」という役名を出したことがあるのは、自分の記憶している限り涼風さんだけなのですが、とにかく曲早々からナンネを味方に引きずり込んで、終わった時もナンネに後を任せていくわけです。

この日のマチネをみて思ったのが、タイトルにした「気持ちは伝えられていく」ということ。

「星から降る金」は、男爵夫人が、モーツァルト一家に対して「御伽噺」として「親からの独り立ち」を諭すわけです。
ウィーンに行きたくて仕方がないヴォルフガング。素直に息子を解放できないレオポルト。
弟と一緒に歩んでいきたかったけど、男爵夫人の説得にいち早く気持ちの踏ん切りをつけたナンネール。

ヴォルフガングをウィーンに送り出し、ザルツブルグに残ったナンネールが歌う「終わりのない音楽」、この曲は「星から降る金」のアンサーソングにあたるのですね。
男爵夫人からナンネールが気持ちを受け継ぎ、そのメッセージに心動かされるように、レオポルトは息子への押し付けに別れを告げるのだと。

ヴォルフガングのことを思い、いち早く自分の気持ちにけりをつけたナンネールだからこそ、2幕に歌われる「プリンスは出ていった」は、哀しみを誘います。

この曲、初演の帝劇に至った頃には、恨み節風味が強くなっていて、「逆恨み入ってます!(ショムニ風味込み)」ぐらいになっていたのですが、再演~再再演と至るにつれ、その感じが欠片もなくなっています。

女性であるが故に才能とともに生きられず、「せめて女性としての幸せ」を望んだ、その「ささやかな願い」。

ヴォルフガングはその願いさえも叶えることなく、ナンネールは「最愛の人と一緒になれずに」ベルヒトルトとの結婚を余儀なくされます。

そういう流れでみていった時に、今期のナンネール&ベルヒトルトの通称ブリザード芝居は、そこまでのストーリーを丁寧になぞっています。

再演まではどちらかといえばナンネールが弟の活躍に対し、「夢見る夢子ちゃん」状態だったのが、今期はナンネール・ベルヒトルトどちらもが「かりそめの夫婦」であることを自覚していて、満たされない気持ちをお互いが持っているという・・・・

「君の弟は幸せなのかい?」とベルヒトルトに問われた時、ナンネールは「もちろんよぉ!」と「!」付きで反応するのが再演のデフォルトでしたが、今期はここが相当抑え気味。
言外に「あなたと一緒の私よりは幸せだと思う」あたりの心情を組み入れてるところが流石に芸が細かい。

由美子さんの芝居って元々細かいディテールまでこだわりまくるのが持ち味で、いくら見ても飽きない魅力もその辺にあったりします。

そもそも再演の芝居の時点で相当細かかったのですが、今期は夫・ベルヒトルト役の森田さんとますます「仮面夫婦ぶりに呼吸を合わせて」いて、とにかく徹底的に、あの広い帝劇で、下手するとひとけたセンチの単位で演技してます(笑)。

手順も森田さん含めて相当細かい。

編んでいる編物は、編むことが目的じゃないから気が入ってないし、夫が帰ってきたら籠に無造作に放り込む程度の思い入れしかないし(糸が籠からはみ出てます)、入口の輪投げは輪っかが的に入らないまま放置されていてもそのままだし。

で、そんなナンネールの「気持ち入ってない生活」モードの象徴に、ベルヒトルトはことごとく直しにかかるわけで。輪っかを的に入れる、糸を籠に入れる。
でもって妻の弟の活躍なんて積極的に聞く気もしない。

お互いがお互いに「望まない相手」だということがよく分かる演技になってます。
(史実ではベルヒトルトはバツイチで、ナンネールも最愛の人とは結婚できていません)

再演の時も初演と余りに大きく変えてきて、しかも公演中にどんどん演技を進化させていて、今期はもうやりきったかと思いきや、再々演でもここまで新しい夫婦像を見せてくるとは。

あのシーン、大司教様の「神何故」の直後、恐らく作品中一番大きい落差(動→静)のシーンなわけで、何というか場面変わりすぎなのですが、前のシーンの熱気をいい具合に落ち着かせている感じ。

●カーテンコール編
再々演で何が好きかって、カーテンコールラストの、追い出し音楽への拍手です。
それなりにミュージカルを見ているのですが、追い出し音楽の最初から拍手が起こる作品って、『MOZART!』以外に見たことがないんですね(最後に拍手が起こるのは当たり前として)。

オーケストラの演奏への拍手は、蚊帳の後にいるキャスト、スタッフすべてひっくるめての賛辞なわけで、素直な気持ちで拍手を送るお客さんの一員になれるのが、いつもすごく嬉しい。
なんだか、『MOZART!』って、他の作品と違って「家族」というイメージが強くありますね。
どなたかが「同窓会」って言ってたけど、その気持ちも凄いわかる。

幸い、再々演の男爵夫人のキャスト入れ替わり後も、カーテンコール順が変わらなかったので、心安らかに見れるのもいい。

女性陣、涼風男爵夫人→hiroコンスタンツェ→由美子ナンネールはいつも拍手しつづけますので、たまに腕が吊ります(笑)。

由美子さん、今日はいつもよりお辞儀が長く、深々と挨拶していたところに充実感が窺えます。
オーケストラにVサインして(調子のいい時はこれをされてます)舞台壇上のドレス姿のアンサンブルさんにガッツポーズをしてます。いまだ誰相手だかわからないのですが。
初演組の碓氷マキさんでも河合篤子さんでもなさそうな気が・・・

hiroだけに拍手しない、と明言してる人もブログでは結構見かけますが、必死に役に付いていこうとしている努力家さんにそんな仕打ちをする気には、私はなれません。
ただ、拍手への気持ちの入り方は正直な気持ちが反映してしまうけれど。

hiroさん、悪くはないと思うんだけど最初のこの役が難役すぎた・・・・

カーテンコールは、数日前から市村さんが由美子さんを笑わせまくるのがデフォになっているらしく、この日も市村さんに笑かされて満面の笑みを浮かべ、市村さんがあまりのオーバーアクションで手を振りまくるので、ぶつかりそうになってあわてて「まったくもぉ」って感じで笑いながら手を払ってる始末(笑)。

15日から、劇場で売られるパンフレットは再々演2版目となり、稽古場写真から舞台写真に変更されました。値段は据え置き(1,500円)。
全体的に舞台写真のセレクトが上手く、いい形にまとまっています。

●公式動画
東宝公式「モーツァルト」blogのキャスト紹介に、ナンネールの動画が上がっています。

キャスト紹介は、シカネーダー・大司教・男爵夫人(香寿夫人千秋楽、涼風夫人初日)の順で上がっていきましたが、その後更新される気配も全くなく。

正直、思ったより人が入ってるんですね今回の再々演。
確かに得チケも出ているとはいえ、2005年の4都市公演の時の空席が記憶に新しいところから見れば、驚くほど人が入ってます(日曜日のマチネは全席満席でした。満員御礼は出ませんでしたが)

そのせいもあってか、無理して宣伝してないように思えて仕方がないんで、それでキャスト紹介も進まないのかなと。

で、一計を案じまして。ちょっと内緒話なので、反転。

1週間ほど前に、東宝さんのblogの鹿さんのところにコメントを。

「キャスト紹介、ぜひ初演キャスト未登場組も載せてくださいませ」と、ダメ元で。

その時に挙げたのが、由美子さん演じるナンネールと、阿知波さん演じるセシリア。
(市村さん挙げるといの一に市村さんになりそうな上、ホリプロだから色々時間かかりそうで)

それが功を奏したのかはわかりませんが、動画を載せてもらえて嬉しかった~。

初演以来、一度として動画が劇場の外で流れたことがないんじゃないかと(正確には今回の再々演のゲネプロの動画で「終わりのない音楽」が日テレのワイドショーで数秒流れたことがあるそうです)思うんで、嬉しかったですね。

さてあとは日曜マチネと火曜マチネ(大楽)。
泣いても笑ってもあと2回。
後悔することなく終わりたい。

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コメント

いつも拝見しています。私もちょうどその日に観劇してました。由美子ナンネールは
初演再演今回と、進歩していて観ていて
感心します。私はナンネール目線で観劇してますので、ひろきさんと同じ感想です。
今回少し抑えめにしていますね。プリンスも、終わりのない音楽も
由美子さんの歌は、あまり拍手ができにくい状態の場面が多い気がします。野菜市場
とか、プリンスは出て行ったも
その分カテコが大きい拍手をもらっている気がします。hiro頑張っているのに、隣の人は拍手しませんでした。コンスタンツェは、誰がやっても難しい気がします。
長々とごめんなさいね。

投稿: てるてる | 2007/12/17 16:47

てるてるさん、こんばんわ。コメントありがとうございます。

由美子さんの演技は今回は抑え目というところもありますが、力を抜いてどういうものが
出せるかを意識されているような気がします。
歌も、力任せだった場所も力まず丁寧に歌うことで、前にも増して綺麗に聞こえます。
(昔「由美子節」と言われた伸ばし方が大好きだったのですが、これはこれでありかと)

以前も書いたのですが、ナンネールは展開的になぜか拍手がされない場面ばかりなだけに、
今回はカテコの大拍手がすごく嬉しいですね。
今まで由美子さんはどちらかというとカテコでは拍手がもらえにくいタイプだったので
(じわじわとくるいぶし銀タイプだからかも・・・)正直意外な感じです。

コンスタンツェは簡単なようで難しすぎる役だとつくづく思います。
難しい役を平然と簡単なようにこなしている由美子さんで見てみたかった役ですけど、
コンスタンツェをやっていたら、ここまで続けることはできなかったでしょうね。

とある場所では、由美子さんが2人いればいいのに、と言われていました(笑)。

投稿: ひろき | 2007/12/17 22:43

こんばんは♪私も急遽日曜日のマチネも観る事になり、初めての芳雄ヴォルフを体感してきました。同じ日に観劇していたとは、嬉しいです♪

皆さんのアドリブ全開モードは私でも感じられました。ただ、本当に芝居が作りこまれていると言うか、初日観た時に感じたもの(少々辛口モード)は無くなりました。この日は芳雄ヴォルフ初と言う事もあって(やはりナンネールの反応も違いまして)新鮮で、改めて感動しましたね。

あと、カテコはソワレも市村さんやアンサンブルの方と何かやっていましたよ。でも、すっごく楽しそうですね♪大楽で何かやらされれば良いのにな~なんて思っちゃいます☆笑

長々と失礼しました。

投稿: あさみ♪ | 2007/12/18 00:25

ごめんなさ~い、別に分かると思いますが…モーツァルト中はナンネールと言うのもねぇ…と友達の所に行っていたので、そのままあさみでコメントしちゃいました(笑)すみません;

投稿: ネール | 2007/12/18 00:30

なんねるさん、こんばんわ。(と、あえて言ってみる(笑))
日曜日はあっきーをご覧になるということで入れ替わりかと思ってたのですが、井上君もご覧になったのですね。

ヴォルフガング自身ももちろんですが、ナンネ&レオパパ&大司教様はそれぞれ使い分けた当たり方をします。さすがです。

由美子さんはM!の大楽にはエピソードを残す人でして・・・
2002年帝劇の時は、自家製のプラカードを持って出てきて場を一気にさらっていったそうですし、
2005年博多座の時は、アマデの衣装着て出てきて(当時ちゃんと入ったのが凄い)大歓声を浴びてました。

今回は何があるかなーと楽しみです。

投稿: ひろき | 2007/12/18 00:51

あはは…ナンネール、またそれで作られたあだ名のあだ名がナンネ・ネール・なんねるetcと色々ありまして…本人すら分け分からなくなっております(^_^;)

初演時は自作プラカード!?知らなかったです。色々やられる方なのですね、お忙しいはずなのに(@_@)今回は私も大楽に行けるので、本当に楽しみにしています♪しかし、M!も残りあとわずかですね…寂しい;

投稿: なんね | 2007/12/19 00:51

なんねさん、こんばんわ。
もう来週に入れば大楽なんですよね。今回は時が経つのが早いのなんの・・・

そういや自家製って書きましたが、レポ探したら記憶違いでした。
「小道具」ってプラカードを小道具さんに作ってもらって、風車を手に持って
スキップしながら登場して、会場内を撃沈させたそうです(笑)。

初演の時は「楽しいシーンがない」とか、「自分のキャラと違いすぎる」とか
由美子さんご自身が言われていたのも、今となっては遠い遠い思い出です。

投稿: ひろき | 2007/12/19 01:23

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