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『MOZART!』(20)

2007.12.23(Sun.) 12:00~15:30 帝国劇場1階Q列下手側
2007.12.25(Tue.) 13:00~16:50 帝国劇場2階H列上手側

千秋楽まであっという間だった2007年の『MOZART!』。
まさしく時の過ぎるのは早いもので、千秋楽でこの作品の観劇は32回目。

ちなみに由美子さんの舞台は、企画物含めて、再演をそれぞれで数えて、この作品が21作品目、回数にして900演を超えたところ、(自分が数えた限り881演目ですが、一部数えていない公演があるので、来年あたりで1000演に到達しそうです)。

(※)舞台デビュー作「眠れぬ森の美女」(1989年)、「野獣郎見参」(2001年の大阪分)、「居残り左平次」(2002年)は資料が見つからないため含んでいません。「ミス・サイゴン」の公演中止1公演は除いています。

で、ふと数えたら、ナンネール以外に65回見ていた自分・・・・

ということは、私も来年には100回観劇に到達なんだな・・・

振り返ってみると、由美子さんの舞台では観劇漏れは1度もなく、事情による遅刻が数回あった程度。23日は史上最悪の体調での観劇でしたが、何とか乗り切り。

お客さんとしては見ないという選択肢があるので、体調が良くなかろうとなんだろうと、自己責任なのですが、1000演近くやってて休演ゼロというのも、やっぱり鉄人だわ、と思わざるを得ません。

カーテンコールレポは後回しにして、まずは本編話からスタート。
語り逃していたことをとととっといってしまいます。

○家族と才能
この「モーツァルト!」の作品で対極にある2つのテーマ。
この2つの物事に対する距離感が、2人のヴォルフガングの違いを一番よく表現しているように思えてなりません。

『家族を裏切れない井上ヴォルフ』

『才能を裏切れない中川ヴォルフ』

端的に言ってしまうとそういう違い。
そのあたりは、2人と対峙する姉役の由美子さんが再演時にいみじくも言ってた言葉ともシンクロするのですが、

『井上君は秀才、中川君は天才』

って言葉にも表現されます。

井上ヴォルフは、モーツァルト家の家族の一員であるということが前提で、そこに「普通の人にない才能」が乗っかってる。つまり「普通の人が才能を持った」ことによる苦悩、とでもいうか。
対して中川ヴォルフは、才能と不可分ということが前提で、そこに「モーツァルト家に生まれた」という事実だけが乗っかってる。

再演までは、中川ヴォルフの方が「家族の一員」といった趣が強かったように思うのですが、こと再々演に関する限り、中川ヴォルフは家族を見ているように思えなかったのですね。

それがよく表現されていたのは『星から降る金』のシーンで、井上ヴォルフの場合は、姉の説得とアマデの説得との間で、姉に明らかに比重がある(ぐらついている)のですが、中川ヴォルフの場合は、明確にアマデに比重がある(家族や父親に対する未練が見えない)というところに違いを見ることになります。
(ちなみに、中川ヴォルフは説得されても姉と視線を合わせません)

どちらがいいとかそういう話ではそもそもなくて(好みで言えば私はここは特に井上ヴォルフ派なのですが)、中川ヴォルフは「才能」と不可分で「天才」であったからこそ、「家族と一緒にいる姿」自体が「かりそめの姿」だったのだと思えてきます。

ナンネールの役を語られる時によく触れられる、「もし私が男なら音楽を続けた」の歌詞ですが、この歌詞が今期中川ヴォルフと絡めて聞くと、これでもかというぐらいに残酷で。

中川ヴォルフの場合、「才能」がナンネールの「才能」とかけ離れていたであろうと思われる空気が、そこかしこに見受けられて、その「離れすぎた存在」そのものがナンネールの哀しみをより悲劇的にさせていて。
「置いていかれた少女」そのものの悲劇を、感じずにはいられなかったのです。

井上ヴォルフの場合は、ちょっと背伸びすれば届きそうな空気を感じさせられた(ヴォルフ&コンスとの場面で「ちょっとだけ天才」と言ったヴォルフの言葉は、井上ヴォルフだと本音と実態に思えて、中川ヴォルフだと謙遜と嘘に思えてしまう)ので、尚更その印象が強く。

姉弟らしいのは中川ヴォルフの方、と初演以来言われつづけていたナンネールですが、それだけに「近くて遠い」姉と弟、超えられない才能の落差、というものを感じさせられたような気がします。

違う世界の住人、というのかも。

しかしながら、そうでありながら、ヴォルフの混乱のシーンで、「家族を引き裂いた!」を言うのは中川ヴォルフで、井上ヴォルフは言わないんですね(井上ヴォルフは今期5回見ましたが、実は千秋楽だけ言っていました)。

才能に生きてきた中川ヴォルフが、混乱した時に浮かべたものは「家族」。
家族に生きてきた井上ヴォルフが、混乱した時に浮かべたものは「家族」ではなかった。

あのシーンの心の動きは、演じる役者側にそうとう任せられているようですが、何だかヴォルフガングとして表現しようとしたものの違いが、出ているような気がします。
今期はここが、曖昧模糊として自分の中でまとまり切らなかったのが、個人的には残念。

○やってきましたカーテンコールレポ

さて語ったところで千秋楽恒例のカーテンコールレポと参ります。
司会はタイトルロールの井上芳雄さん。

「このたび『モーツァルト!』初参加でした。涼風真世さん。」

◇涼風真世さん/ヴァルトシュッテッテン男爵夫人役

いつもは緊張しない方なんですけど、この役は凄く緊張して・・・・
(涙を浮かべつつでしたが、「こんなの私らしくないっ!」と言うかのごとく「えいっ」って言って自分にぐーぱんちして元に戻っていたのは笑いましたです)

稽古にもあまり参加できずにご迷惑をおかけしましたが、
次があったら今度はきちんと稽古に参加して(会場内+キャストから笑いが起こる)
心に響く「星から降る金」を聞かせられるよう頑張りたい。

「そしてこちらも『モーツァルト!』初参加、ミュージカルも初参加でした。私の妻、hiroさん。」

◇hiroさん/コンスタンツェ役

今回は舞台が初めてということで本当に色んな人に支えられました。
キャストの皆様、スタッフの皆様、オーケストラの皆様、お客様に感謝。
言いたいことをずっと考えていたのですが、言葉が見つかりません。
そして選んでくださった小池先生にも感謝しております。ありがとうございました。

「そしてここからは「古株」の皆様です。初演から私の姉を演じています。ナンネール役、高橋由美子さん。」

◇高橋由美子さん/ナンネール役

「古株」ですっっっ(ときっぱり。会場内から大拍手)

(キャストを見回して)「終わってよかったねえ」(としみじみ)

初演、再演とやってきて、
数年前よりは体力的にも精神的にも、もたなくなってきていまして
(超本音モードに会場内笑い)
努力とかそういうものではないんですけれども、大変でした。

(時折こみあげるようなものを抑えきれずに。泣いていました。)

今回、初めて”本当の家族”に、”本当の姉”になれたような気がします。
皆さんのおかげです。ありがとうございました。

(拍手にテレまくって、阿知波さんの後に隠れる)

「そしてこちらも初演からのキャストになります。コロレド大司教役、山口祐一郎さん。」

◇山口祐一郎さん/コロレド大司教役

みなさま先ほどからの挨拶で、「頭の中が真っ白」という言葉を発せられていますが、
私は「頭の外側が真っ白に」・・・・・(会場内オチまくり。笑いと拍手に包まれる)

そんなこんなではありますが、皆様と夢のようなひと時をご一緒でき、
おじさんは幸せです。
(※締めはやはりいつもの祐さんモードでした。)

「そしてこちらも初演からのキャストです。父親・レオポルト役、市村正親さん。」

◇市村正親さん/レオポルト役

劇中で私が歌う曲に「心を鉄に閉じ込めて」という曲があります。
この曲を歌う度に、役者として自分への戒めとして歌ってきました。
明日からも、変わらず役者道を邁進していきたいと思います。

皆様に愛された『モーツァルト!』という作品、
またこの作品でお会いできることを願っています。

◇井上芳雄さん/ヴォルフガング・モーツァルト役

先ほど高橋(由美子)さんがおっしゃられたのですが、自分も5年たってようやく、この作品の輪郭というか、コアというか、そういった部分にたどり着けた思いがします。
本当に今まで申し訳なかったと(爆笑)
もちろん、今まで適当にやっていたとかそういうことではないです(笑)
頑張ってはいたんですけど。
再演をどうするかはプロデューサーと相談します(笑)

◇小池修一郎さん/演出家

『モーツァルト!』が愛されている作品だということを、改めて今日感じました。
出演者の皆様、また他の場所で素晴らしいお仕事をされると思いますので、
お客様におかれましては、ぜひそれを応援していただければと思います。
私も頑張りますので、応援よろしくお願いします(笑)
再演はどうなるかはわかりません(と正直に)


・・・一言一句メモを取っているわけではないので、多少のニュアンスの違いはありましょうが、ご容赦くださいませ。
いずれ、東宝公式ブログ(2008年1月31日18時で閉鎖が決まっています)に編集アップされることかと。(もうアップされてます)

前日に千秋楽を迎えたあっきー、あと2人のアマデも登壇していました。

今回のカーテンコールの挨拶は↑に挙げた皆様とあっきー、ということで合わせて8人だったのですが、実は時間にして一番長く話していたのは、うちのご贔屓さま(高橋由美子さん)でした。
数えていませんが、たしか2分ぐらい話していたような・・・・

過去、本心を明かさずに、笑顔で終わることが多い由美子さんのカーテンコールなのですが、今回は異例と思えるほど、まぎれもない本音モードが全開。

ご本人のブログでは少し前まで年齢話が本人から言われることが多く、閲覧者から突っ込みが入るほど多かったのですが(笑)、まさかカーテンコールまであそこまで言うと思わなかったので、正直びっくり。

千秋楽とその前(23日マチネ)は、私的な印象で言えば、由美子さんは明らかに本調子ではなくて、初見なら気づかない程度の綻びが、特に歌に感じられて。

今期「99点の由美子さん」しか見てこなかっただけに、最後になって「95点の由美子さん」に直面した事実は、正直、気持ちが付いていくのはなかなか難しかったのです。

でも、カーテンコールの挨拶を聞いて、「由美子さんも人間だもの」という当たり前の事実に今更ながら気づいて。常に「99点」を維持してきた裏にあったものの存在に。

今期の『モーツァルト!』を振り返ると、ヴォルフガング役2人の安定度は別格として、市村さんが予想外の不調に陥ることが多い中、かつコンスタンツェも初役、後半に至っては男爵夫人も初役という状況の中、由美子さんにかかる重圧は、いつも以上に大きかったことが容易に想像できます。

そんな重圧の中、ほぼ全期間パーフェクト状態を保ちながら、最後までたどりついたからこその涙だと思ったし、結果として群を抜いて長かった挨拶に贈られる惜しみのない拍手が、今期『モーツァルト!』の「収まるところに収まった」終演だったのではないかと思います。

芳雄君のいつもながらの名司会者ぶりにも拍手。(今日はちょっぴりぐだぐだな場所もあったけれども(笑))

そして楽日の公演に一言。

hiroがコンスタンツェだった。

嬉しかった。

何はともあれ、キャスト、スタッフの皆様のご尽力に心から感謝!
また、できるだけこのメンバーで早い時期に再演が見られますことを心よりお祈りいたします。
(と、アンケートに書いてきました。)

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コメント

私も今日観ました。由美子さん最初のところで声がひっくり返ったのでびっくりしました。そのあとは伸びの良い声で聞かせてくれました。もう終わってしまったのですね。ひろきさんの、解説?いつもながら感心しています。たくさん見てらっしゃるから言える言葉ですね。私も由美子さんの舞台はたくさん見ていますが中々冷静に捉えられない カテコの挨拶結構長く話してくださったのでうれしかったですが、今回やりつくした感が出てて、再再再演出演されるのかしら?心配になってきました。ナンネールは由美子さんしか考えられない私。

投稿: てるてる | 2007/12/25 22:59

てるてるさん、こんばんわ。
今日の由美子さん、正直、でだしで心配したのですが(でも久しぶりにヴォルフの膝上座りが見られて嬉しい)、何とか乗り切られましたね。

カテコは由美子さんの今期の演技が、並々ならぬ努力の上に成り立っていたと、改めて実感してじーんと温かいものを感じました。

由美子さんが話している間、後ろの方のプリンシパル・アンサンブルの皆さんが微笑ましく見守っていたのも印象的で、愛されているのが良く分かります。

時の流れには逆らえないけれど、由美子ナンネールは「完璧」で締めくくりたいのが本音で、また次の機会にやってほしいと願っています。

投稿: ひろき | 2007/12/25 23:55

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