« 『ウーマン・イン・ホワイト』(2) | トップページ | 『MOZART!』(18) »

『MOZART!』(17)

2007.12.2(Sun.) 帝国劇場 1FS席(20列前後下手側)

この作品27回目の観劇は、この作品の300回達成公演。
貸切(イープラス、UCカード、セゾンカードの3社相乗り)ということもあり、普通の貸切と同じかな、と予想しつつも帝劇へ。

以前も書いたことがありますが、自分にとっても帝劇デビューのこの作品。
これを機に数えてみたら、帝劇観劇はもう50回を軽く超えていました。わずか5年で50回超えてるということは、年10回通ってるということで・・・・大丈夫か、自分。

●赤いコート
初演、再演、再々演、でヴォルフがどっちかによって全然展開が変わるこのシーン。

今期初回の井上芳雄ヴォルフ(11月22日ソワレ)では、赤いコートに隠れてナンネールにおちゃらけるシーンでの高橋由美子ナンネールの反応がツボで。

「だれ?」

・・・うーん言葉にできない。

振り向きもせずに言った言葉なのですが、ニュアンスが「またヴォルフガングのいたずらね・・・何度言ったら分かるのよもぉ・・・いつまでたっても子供なんだから・・・でも楽しいからいいや乗っかっちゃえ(笑)」みたいな感じで。

言った後流し目でヴォルフガングをいたずらっぽく睨むという小技まで含め、たった2文字1語でこれを表現する由美子さんの演技ってさすがに細かい。

この日のソワレではその「いたずらっぽい反応」がちょっと薄かったかな。

ちょっとびっくりしたのは、レオポルトが出てくる直前、ヴォルフがナンネールの膝にちょこんと乗っかって「もぉ」って言われてるシーン。
今期はよくやっているそうですが、前期以前では全く記憶になく、自分自身は初めて見かけました。
大層楽しそうですごく微笑ましいです。
由美子さんも初演から5年、「人は忘れる」の前のシーンの高音は意識して若い声を出すようにしていますし、このシーンも意識して遊びを入れている感じ。

仲のいい2人が姉弟として素で遊んでいるような感じさえ見えるこのシーンですが(中川君より井上君の方がここは妙に呼吸があってる)、鏡を間に向かい合ってお互い両手を同時に広げるあたりの小ネタ、2人して遊んでます。

由美子さん基準でヴォルフを見ると、今期のヴォルフに関しては中川君には片寄せして合わせる感じですが、井上君とは一緒に合わせる感じ。かつて相手役をやった時(「バタフライはフリー」)の呼吸の合わせ方が今でも生きている感じがします。(中川君とは「SHIROH」でも共演していますが、相手役ではなく、このときも片寄せして合わせてる感じでした)

●星から降る金
2005年再演(大阪)以来、何度となく拝見した香寿男爵夫人も、2007年までに限れば私にとっては今日が千秋楽(出演自体も12月5日で終了)。

歌の安定感に酔いしれられる素敵な男爵夫人でした。
ナンネール視点の自分にとって物足りなかった星金スタートの時のアイコンタクトも今日はばっちりですごく満足。

歌の前、レオポルトの借金額言うまでの「うわぁ」が再演以来久しぶりに復活し会場から笑いが。
リピーターがいかに多いかを実感します。

そういえばヴォルフとレオポルトのやりとりは「パパ」とナンネールが言うことで中断されるはずなのですが、この日はなぜかレオポルトがそれに気づかず。とっさの判断で由美子さんが再度「パパ」を言って本線に戻しました。相変わらず芝居上のリカバリーは上手です。

井上ヴォルフ限定ですが、星金を聞く前にナンネールの肩を抱いていたシーンがあって、「姉さん、僕は大丈夫だから」と表現してるようなシーンにじーんと来てしまう。
姉弟というだけではなく、どことなく恋愛感情も含んでいるように見えたかも。

今期の井上ヴォルフはそんな何気ない仕草がすごく魅力的に見えます。

そんなシーンがあってから聞く「星から降る金」、そして3人(レオポルト、ヴォルフ、ナンネール)のお互いの相克シーンが凄く良くて。

「あなた言ってたじゃない、神様の次に大切なのは『パパ』だって」

ここの演技も由美子さん変えてきました。11月23日以降見ていませんでしたが、10日間の間に変わったらしく、パパを指さしながらヴォルフを説得するという技に打って出ました。いい意味での必死さにヴォルフも自然に頷いてるように見えて、このシーンこんな風にも演じられたんだ、とちょっと意外。
今期は、由美子さんは台詞の喉と歌の喉をどうも別々に使っているような感じで、今までは「そんだけ叫ぶと歌に影響でます~」って感じだったのが、「違うところから声出してるから大丈夫ですね」みたいに感じます。

●終わりのない音楽
オルゴールによく合う音楽なだけに、一部には眠気を催す音楽といわれるこの曲。

再演まではメロディーラインに合わせて流す印象が強かったのですが、今期は相当丁寧な歌い方をしていて、いつにもまして歌詞がはっきり聞こえます。(ただし音量は抑え目)

由美子さんの場合、この曲に限りませんが、全体的に伸びる音を上手く使っている感じで、1年間ミュージカルやってなかったにしては、テクニックは巧みになっている感。声量的には絞っているけど、伸ばす声を最大限活用して、耳障りのいい歌声になってる。

この日、レオポルトが一拍ちょっとつっかえたシーンがあったのですが(演技にも見えたけど)、そのシーンを見た直後に「私ががんばんなきゃ。」って感じで存在がぐっと大きくなった瞬間があって。

「私がお父さんを支えるの。」って感じが見えたの、もしかして初めてかもしれない。
(市村さんがスタート地点からかなり弱い感じが見えるのが今期版の特徴かと)

それでか、この曲の終わりに、レオポルト演じる市村さんが、由美子さんの肩をぽんぽん、って叩いていたシーンがとてもじーんと来て。

ナンネールとレオポルトって、娘と父の関係のはずなのですが、父の視線は息子のヴォルフガングばかりに注がれていて、1幕1場の「奇跡の少女です」以降は使用人みたいな扱いしてるんですね。
少なくとも才能は「使いようがない」と思ってるのが悲しい。

レオポルトにしてみれば、ナンネールは「もしお前が男なら、音楽を続けさせた」存在なんですよね。でも、男ではないから音楽家としても蚊帳の外だし、自分の子供としても扱いは2の次、3の次。ナンネールはそういう意味で、親から愛情を注がれなくなった存在とも見えます。

そんな扱いを受けつづけたナンネールなのに、それでも父親の自分を思ってくれたことに気づいた、父親の精一杯の感謝の気持ちが「肩をぽんぽん」、なのだと思って見てしまうと、すごく泣けて。

この作品のヴォルフガングとレオポルトが「親子なんだなぁ」と思うのは、「自分の正直な気持ちを表現するのがとても下手」ってことなんですよね。

ヴォルフガングは父親に認められたい、その一心で自分なりに努力したけれど、父親の言う通りの道は進まず、コロレド大司教の顔に泥を塗った形になって、父親の体面は失われた。それによって、父親はヴォルフガングの気持ちを正面から素直に受け入れられなかった。

父親も、そんな微妙な気持ちをヴォルフガングに正直に打ち明けられずに、どこか理屈でヴォルフガングを納得させようとして、「実績」を残したと信じているヴォルフガングに反発される。

「心を鉄に閉じ込めた」のはレオポルトも、ヴォルフも、実はナンネールも同じ。

「心を鉄に閉じ込めた」ままヴォルフの影として存在していることを自ら納得していたナンネール。
だけれども、レオポルトを「心を鉄に閉じ込めた」まま生涯を終えさせてしまったのは、ヴォルフガングのの存在・素行と思ったからこそ、ナンネールはヴォルフに、あそこまで辛く当たったのだと。

がしかし、ヴォルフガングが夭逝し、アマデの箱を見つけたナンネールは、ヴォルフも「心を鉄に閉じ込めた」存在だったことを知るわけです。「才能」というものに翻弄されたヴォルフの苦悩が見えた。
だからこそ、自分がヴォルフガングを責めたことをも、自らへの責めとして「影を逃れて」に気持ちを込めているように思えた。

ナンネールにとっての「影」は「ヴォルフガングにとっての影の存在」であると同時に、「ヴォルフガングの本当の気持ちを汲み取れなかった自分への後悔」でもあるように思えながら、いつも見ている由美子さんの壮絶な表情を見ていたのでした。

●カーテンコール
前述の通り、今回は300回達成公演ですが、あえて「300回記念公演」と書かなかったのは、この回が貸切だから。

「記念」であるからには普通一般発売するわけで、貸切公演で300回を迎えるあたり、商売っけのない「MOZART!」らしいというか何というか。小池先生、この作品完成度上げる気はあるけど、商売する気はないんですよね?(笑)

ちなみに「MOZART!」の上演履歴を載せておきます。

初演(2002年) 日生劇場(東京)       37回
       シアタードラマシティ(大阪) 21回/累計58回
       帝国劇場(東京)       38回/累計96回
再演(2005年) 梅田芸術劇場(大阪)     31回/累計127回
       帝国劇場(東京)       76回/累計203回
       中日劇場(愛知)       38回/累計241回
       博多座(福岡)        38回/累計279回
再々演(2007年)帝国劇場(東京)       53回/累計332回

特別カーテンコールは通常の貸切と同一仕様で、ヴォルフ&アマデ(今日は野本ほたるアマデ)のご挨拶ですが、井上君発言によると、ヴォルフガングはこの日までで井上君が159回だそうです。

300回の区切りなのに貸切にしたのは、東宝のミスオペレーションなのか、それとも特別な区切りでもないからあえて貸切にして特別カテコを排除したのかはわかりませんが、あえて「MOZART!」なりの後者のこだわりと好意的に認識しておくことにします。

次回は12月6日のソワレ。
仕事の絡みが気になる平日ソワレですが、涼風夫人初日、どんな具合になるのか楽しみ。

|

« 『ウーマン・イン・ホワイト』(2) | トップページ | 『MOZART!』(18) »

コメント

ひろきさん、こんにちは♪
300回公演に参加出来て羨ましいですo(^-^o)

由美子ナンネ、井上ヴォルフとはそんな表情も見せるんですね。実は、今まで私は中川ヴォルフしか見たことが無いんです。(ちなみに、私は6日マチネ行きます☆)終盤は井上ヴォルフも観るので、楽しみになりました♪
それにしても、この作品は私もナンネール目線で物語を見てしまっていますが、一言では言えない切なさがありますね(・ω・`*)
PS、市村さんはお疲れなのでしょうか、コンセプトなのでしょうか…少し気になっています;

投稿: なんねる | 2007/12/04 00:11

なんねるさん、こんばんわ。
300回は勢いで行ってしまいましたですよw
お風邪、大丈夫ですか?

井上君とは何だか恋人みたいな姉弟の関係で、今期のhiroコンスと近い空気の中川君とは好対照の感じです。再演以来、自分の好みはどうしても井上君に偏ってるのは、井上君のヴォルフの中には、ナンネがいるように見えるからかもしれません。

井上君はナンネもコンスも「あえて切り捨てた」ように見えて、中川君は「ある瞬間から眼中に入らなくなる」ように見えて、2者2様ですね。

市村さんはこの作品以外でも拝見していますが、コンセプトにしては前半が老けすぎに思います。
「ありのままの父親」だった市村さんが「厳格さを演じる」市村さんになったのはどこか寂しくもあり。
それからすると、初演以上に「奇跡の少女」になってる由美子さんには相当に驚愕のものがあります。

投稿: ひろき | 2007/12/04 01:15

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74093/17259068

この記事へのトラックバック一覧です: 『MOZART!』(17):

« 『ウーマン・イン・ホワイト』(2) | トップページ | 『MOZART!』(18) »