『レ・ミゼラブル』(1)
1月近いごぶさたです。
2003年シリーズから見始めたこの作品も、かれこれ観劇は20回近く。
今年の20周年記念バージョンには、5回の観劇を予定していて、今日までで2回が終了。
2007.6.14(Thu.) 18:15~21:25 S席、1階2列目下手側
2007.6.17(Sun.) 17:00~20:10 B席、2階10列目上手側
S席で見た14日ソワレより、B席で見た17日ソワレの方が、音も終了後の感想も、圧倒的に後者が良かった不思議。
キャスト別に振り返ってみます。
●ジャン・バルジャン
=14日:橋本さとし、17日:山口祐一郎(この項目含め以下、敬称略です)=
期待していた橋本バル、歌に気を取られて芝居までが引っ張られた感強し。
やっぱりバルジャンの歌って難しいんだなぁということをつくづく感じたというか。
芝居では随所に「おぉっ」と思わせる要素を組み入れてくるのが侮れません。
砦が落ちた後、マリウスをかつぎながらジャベールと対峙するシーン。ジャベールが「24653」と叫ぶ時に、否定するかのように手を振るシーンが、なぜか強く印象に残った。
バルジャンは人として扱われなかった「24653」を否定するために、人に尽くしてきたのだなと思うと、それを理解できずに自滅したジャベールとの対比が、より深く見えた感じがします。
山口バルは良く考えると久しぶりな気がする(2005年シリーズでは見ていないので2003年以来)。初レミのバルが山口バル(2003年7月6日ソワレ)だったので、自分にとってはオリジナルバル。
橋本さんとは逆に、芝居に気を取られて歌が引っ張られた感じ。エネルギッシュに特攻する歌バルという初印象とは裏腹に、どこか手探りのようにバルを演じているように見えた。
そういえば17日ソワレでハプニング。
暗い森でリトルコゼットと出会い、宿屋に帰ってきたシーン。
テナ夫妻に「悪いたくらみがあるとか」と疑われて椅子を蹴り飛ばすシーン。
机も一緒に倒れちゃいました(笑)。
ええそりゃもう勢い良く。
2000人が一瞬息を飲み、そしてあちらこちらから「いつもと違わない?」というささやき声が聞こえ、「いつもは倒れないよね」という呟きに変わり、笑い声が上がる。
祐一郎氏、一瞬のためらいの後に、お札を叩きつける机がない変わりに、テナのおでこにお札を貼り付けて終わらせる。会場爆笑。
んで机そのままにしておくと盆が回転できないんで内側に倒してEND。
さすが、ハプニング対応スペシャリストの山口さんらしい対応でした。
(ちなみに先述の私の初レミの時は、山口バルでしたが、お相手の内野ジャベが出てこなかった「伝説の一人対決」だったんで、自分的には山口さんは危機管理バルです(苦笑))
●ジャベール
=14日・17日とも石川禅=
何の因果か2日とも禅さん。14日は一般発売開始後に見つけた前方席ということもあって、結果的にそうなったのですが、凄く良いです。
「Stars」も掛け値なしに凄いし、「自殺」に至ってはあれだけの拍手になる理由が分かるというか。
不思議なのは、アンジョルラスの死には拍手する気にどうしてもならない自分が、禅ジャベの自殺には、自然に拍手するということ。
職務にただ忠実であった故に自らの矛盾を解決できずに自滅したジャベール。
そんな人物像をはっきり際立たされてくれた禅さんは、橋本バルとも、山口バルとも相性抜群。
バルジャンの本気をこれでもというぐらい沸騰させてくれました、
ただいまマイベストジャベールに昇格です。
私が禅さんを見たのは、高橋由美子さんの相手役をやってた「アニーよ銃を取れ」のフランク役が初めてなんですが・・・・あれから10年なんですね。
禅ジャベが高橋ファンテーヌを足蹴にする日は・・・きっと来ないんだろうな。
●ファンテーヌ
=14日:渚あき、17日:岩崎宏美=
このお2人を並べて語るのにはあまりに無理がある、と思うぐらい岩崎さんの貫禄が印象的でした。
岩崎さんは以前2004年のレミコンでお見かけしたことがあり、かつ2005年の本公演でも見ていますが、いずれも本調子ではなく(確か体調を崩されていたはず)、今回が初めて本調子という感じでしたが、一部お歳を感じさせる部分もあるにせよ、母性をはっきり表現した歌(特に「夢やぶれて」は流石です)は心を洗い流してくれるに十分です。
もともとレミを見るようになったのは2003年キャストのこの役に高橋由美子さんがキャスティングされたのがきっかけですが、やっぱりそれでも岩崎さんは別格だと思う。
開演前にレミ20周年記念番組(4分30秒)がOAされていて、バルジャンはクレジットと演技が一緒に流れ、それ以外の役はメイン1人がクレジット+演技、他が全員の名前出しつつも、演技を細切れで。
由美子さんの場合は、臨終の場面が入っています。マルシアさんが工場のシーンかな。エピローグが誰だか忘れてしまったけど、今度見るとききちんと見てこようっと。
(ちなみに幕間は、「イーストウィックの魔女たち」、「MOZART!」のCMが放映されています。ナンネール姉さんの歌声が聞けたのでそれはそれで良かったのだけれど。)
放映箇所は、1Fのクローク前と、2Fの中央。つまりいつもの2箇所。
(以前は売店奥の階段前も放映スペースでしたが、今回は「司教館」になっています)
●エポニーヌ
=14日:坂本真綾、17日:笹本玲奈
2003年キャスト3人、今回登場の1人+SPキャスト1人の5人体制の同役。
自分的にお気に入りの2人を前半に持ってきました。
まず一言。
笹本さん、成長したなぁ。
2003年8月2日に他キャストから遅れて登場して、その時も絶賛だった笹本エポ。
今回はそれとはまた違う成長ぶり。
演技巧者が我を出さない技術を身に付けた絶妙さが、今までにもまして素晴らしい。
MAでの苦労は無駄ではなかったと、思わずにいられません。
今回「おおっ」と思ったのはバル&コゼが逃げた後、マリウスが「どちらに行ったか」を聞くシーンで、橋の上からエポが指差すシーンなのですが、
指差した後、エポが橋の欄干に足を掛けてうなだれるシーンが凄く良い。
「私、何やってるんだかなぁ」って言葉が聞こえてくるよう。
仕草は前からエポっぽかったけど、それでも今まではどことなく自分を出してるような感じがあったのに、本来のヒロインであるコゼットを立てながら自分も光ってる。
エポはコゼを立てることでエポも光る、そんな綺麗な図式を間近で見られて、凄く得した気分。
今までもそうだったけど、「バリケード」&「ワン・デイ・モア」なら笹本エポを選ぶ。
笹本さんばかり褒めてしまったけど、真綾さんもさすがの貫禄で安心してみていられる。
「恵みの雨」スペシャリストの真綾エポは今期も健在。
波長の合い方が抜群に良いんだとは思うんですが、2003年当時、心労で倒れそうなほどに「レミゼ」という作品に押しつぶされそうだった真綾エポが、堂々した面もちでレミについていっぱい語って、堂々と帝劇に立ってる姿には、涙が出てしまう。
小器用ではないけど、でも努力型のキャストって、なんだか判官贔屓ではないですが、どうしても目が離せない感じ。
そういえば、笹本さん、17日はホリプロの株主総会で「ウーマン・イン・ホワイト」の歌を歌った後、帝劇入り。役者って大変だなぁ・・・
先日(6月15日)に誕生日を迎えた笹本さん、
「20歳と24ヶ月」
って(笑)
どこかの世界には永遠の17歳とかいますが・・・パクリましたか(笑)。
●コゼット
=14日:辛島小恵、17日:菊地美香
今回キャスト一新のこの枠。
声楽コゼの系譜をたまきコゼから引き継いだ辛島コゼと、可憐系コゼの系譜をゆかコゼから引き継いだ(ように思える)菊地コゼの組み合わせ。
辛島コゼの歌はファン感謝祭の動画で見ていたから、その安定した歌唱通りで安心したけれど、意外に音がマイクに乗らないのが気になるところ。この日、前方での観劇だったけど、声量を心配してしまうぐらい、声が小さかったのが不思議。
そうはいっても、「高音出ないかな」と心配する必要がないのは安心。
でもコゼとしてのキャラとしては、菊地コゼがきちんと仕上げてきたのは良い感じ。
菊地美香さんといえば、今回のキャストの中では恐らく最も「ミュージカルを見たことない人を帝劇に引っ張ってきてる」人。
もともとのデビューは舞台作品だけど、特撮から声優を経由して今回、レミゼ登板。
で実は私、特撮当時の菊地さん(テレビ朝日系「特捜戦隊デカレンジャー」のデカピンク役)と、声優当時の菊地さん(テレビ東京系「舞乙Hime」のユメミヤ・アリカ役)を両方知っていまして。
この両作品を見ていた上にレミを以前から見ていた、なんて人はあんまりいないかと自負しているんですが(NHKの「にゃんちゅう情報局」を見ていたという人はそれなりにいると思いますが)、デカピンクをやってた当時のインタビューとか見ていると、とにかく(悪い意味ではなく)融通が利かない生真面目さが窺えて、なんかうちのご贔屓さん(ちょっと前に書いた2003年ファンテです)の若い頃と重なるというか、不器用そうで損してる感じがなんかほっとけなくて(苦笑)。
何というか、エポとしては笹本さんがいいと思うし、コゼとしては辛島さんがいいとは思うけど、でも、真綾さんと菊地さんは気にかかってしょうがないというか。
軽々とハードルをこなすのも、それはプロの仕事として感服はするんですけど、役者に対して思い入れを持つには、どうにも「隙」が欲しくて。
※笹本さんがブログ始めたところ、素の感じはけっこう「隙」いっぱいだったりするから、けっこうツボを突かれてるんですが(笑)。
そうですか、ゲキイエロー(今年の戦隊物の唯一の紅一点です。イエローだけど)もホリプロなんですか。
話を戻すと、菊地コゼを見て驚いたのが、ソプラノがきちんと出ていて地声を感じさせない完成度。声量を除けば十分だと思う。
バルジャンへの甘える様子とかも、ストーリーにきちんとはまってるんですが、自分的に好きだったのは、菊地コゼの「じと目」こと、お父さんをなじるシーン。
「お願い、話してよ過去の真実全て」のところなんですが、娘にあんな目で問い詰められたお父さん・・・・生きた心地しないでしょうね。
基礎はきっちり仕上げてきてるので、あとは持ち味をどう組み込んでこれるかに期待。
2ヶ月後まで見られませんが、楽しみ。
他キャストでは、山崎マリウス(17日)、岸アンジョルラス(同)、三谷テナルディエ(両日)、瀬戸内テナ妻(17日)あたりがヒット。アンサンブルでは伊藤グランテール(17日)が突出して良い感じ。
全体的に、17日の回に圧倒的に軍配が上がって終わりました。
今回変わった演出はちょっと慣れるのに時間かかったし、2幕最初のコメディチックオープニング音楽とかはどちらかといえば勘弁して欲しいです。
が、砦が落ちた後の「教えなかった死ぬことなど」は話に聞いていただけ(2003年シリーズからの短縮バージョンでは存在しなかった)ですが、戻ってみるとやっぱり感動できるものがありますね。
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