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『マリー・アントワネット』(2)

2006.11.12(Sun.) 17:30~20:45 帝国劇場S席 1階Q列センター

MAチケット消化しましょう月間、2回目観劇。今日含め残り5枚。

何というか、普通に楽しめました。2回見て初めて物語のつながりが見えてきたし、言いたい事もとりあえず伝わってきました。
1回でそれを伝えなきゃリピーター増えませんってば・・・・

あとは音響が帝劇でかなりいい方の席にあたってたせいもあるかもしれません。今回、最前列はセットの見切れがありますし、2階席は客席降りが蚊帳の外という、2006帝劇のお決まりパターンなので(ミーマイ⇒V⇒MA)。

タイトルロールがここまで感情移入できないキャラクターの作品を私は初めて見たのですが、何というかタイトルロールのメリットを全然享受できないってのも、かなり気の毒なのかなと。
その分、もう一人のMA、マルグリットに感情移入できるかできないかは、この作品にとっては大きなファクターになるという感じ。

マルグリット役は初回見た新妻さんと、今回見た笹本さんのWキャスト。
この2人はエポニーヌ(レ・ミゼラブル)、キム(ミス・サイゴン)に続いて3度目の同役で、いまだ同じ舞台に立ったことがないわけですが、私見だとこの2人、複数キャストだと1作品ごとにどっちが好きかが入れ替わる役者さん。

具体的にはエポニーヌは笹本さん、キムは新妻さんが好き。となると今回は順番的には笹本さんの番ですが、その個人的な法則そのままに、この役、笹本さんの当たり役に思えます。

新妻マルグリットも嫌いではないのですが、あの一本調子に「自分の境遇すべてに怒ってます」で攻められると、この作品ものすごく単調で退屈この上なく。
笹本マルグリットは得意の芝居表現を随所に織り交ぜ、「怒りで動く」シーンと「迷いながら自分の答えを見つけようとする」シーンの繋ぎがすごく分かりやすく、1幕・2幕がぶつ切れでなくつながったのが何より良かった。
歌声も、感情を入れ込んで語尾を震わせながら歌う彼女の歌い方が好き。

新妻マルグリットと笹本マルグリットは正に好対照の役作りだったわけですが、2人比べてみた印象はというと、2003年レミで言うと、以下のイメージ。

新妻マルグリット:坂元アンジョ
笹本マルグリット:吉野アンジョ

新妻マルグリットは歌声が最大の武器で、歌声で民衆を煽動するが、その背丈から民衆に埋もれてしまうのがもったいない。
笹本マルグリットは歌声こそそこそこだが、存在感に加え、凛としたリーダーとしてのたたずまいが民衆を煽動する説得力を持たせてくれる。

・・・・えーと石投げないでね(笑)

以下ネタバレすたーと

初見で新妻マルグリットを見たときに違和感のあった「マルグリットの一貫性のない動き」が笹本マルグリットではほとんど感じられなかったのも意外。
とはいえ気になるシーンもあります。

マルグリットは民衆を煽動する役割ですが、煽動しても女たちは動かない。オルレアン公がポーマルシェに指示を出し、お金をばらまくことで女たちをベルサイユ宮殿に行進させる。しかも先頭にマルグリットを立たせる。
マルグリットは「正義」を叫ぶけれども、お題目では人を動かせない、しかも自らはその行進の先頭に立たせられる。アントワネットに屈辱を与えられたこと以上に、これは屈辱以外の何者でもないわけで。

フランス革命当時、時代背景的には”女たちが立ち上がる”のはありえないことだし、マルグリットにしたところであの時代では”男たちの操り人形”でしかありえないんだろうけど、同時代のジャンヌダルクの印象をマルグリットに重ねすぎたのかな、とか思う。

マルグリットは勢いはいいけど実は自分の力で民衆を動かしてはいなかったことに気づいて、ちょっと意外。笹本マルグリットは凛々しくて男らしくて(←なんか褒め方おかしいが)造形的にも惚れ惚れするのですが、その実「あの時代を生きたただ一人の平凡な少女」でしかなかったのかなと思うと、少しつまらなくもあったりします。「時代を動かした少女と、時代に翻弄された王妃との、数奇な運命に彩られた表裏一体の世界」を見せてくれるものだと思っていたので。

「正義」に生きつづけた少女が、革命の波の中で自らの正義を実現できずもがき続け、対する王妃は「私」を貫き通した結果として革命の波の中で処刑されるのは何とも皮肉。
あの時代の「女性」としての限界を見せてるようにある意味思えたりもしました。

アントワネットが裁かれる場で、フェルセンに渡された手紙の存在を否定したマルグリットの「心の揺れ」はちょっとした衝撃。結果的にアントワネットが『女としての尊厳を汚される』無実の罪を着せられることになり、民衆と革命の欺瞞を表現してるわけですが、なんだかこの辺凄く分かりにくい。

「民衆が愚か」なのはわかるし「革命が正義」と限らないのもわかるんだけど、この辺のマルグリットの心の動きがあっちゃいったりこっちゃいったりしてるから、追いかけるので精一杯。
終わった直後には「アントワネットは裁かれて当然よ」だし、一体全体あなたの本心はどこにあったのと。

マルグリットにしてみれば、アントワネットへの憎しみと、無実の罪を着せられたアントワネットへの同情は別物、「自らの正義」と「革命が志向した正義」とは別物なのだろうけれども、じゃぁマルグリットが目指した正義は何だったのかが語られてないから、尻切れとんぼに見える。

アントワネットは断頭台の露と消えたわけだから、「人間の愚かさ」を心底味わったマルグリットが、今後どう生きていくかに存在価値があるのではないかと思う。

というか、正直、MAのエンディング、人多すぎ(笑)。
というか冗談を言うつもりはなく、最後に言わんとしているテーマが全員違ってるから、最後の歌い上げのテーマが全然シンクロしてないように思えます。

同じウィーンミュージカルの『MOZART!』だと「影を逃れて」に役それぞれの「影」を投影して、客も自らの「影」をそこに見て・・・・というシンクロ感とダイナミズムとカタルシスがあるんだけれども、MAのエンディングはオルレアン公、ボーマルシェ、カリオストロ、そしてマルグリットと、「この時点で同じメッセージを出すのはどう考えても無理でしょ」メンツが最後に歌い上げるから、聞いてる方が混乱しまくる。なんだか言いたいことが収斂しきってないタイミングでぶったぎった感じ。

2度見た感想は2度とも同じで、「あと30分ぐらいあったんじゃないですか、元の台本」ってところ。

『ミュージカル「マリー・アントワネット」の真実・200枚の付箋が語る壮大な実験とは』

とかいう本出しません?(笑)

あ、でも曲はすごくいい。
「流れ星のかなた」のアニエスの慈悲深い歌声に、マルグリットの広がりのある歌声、所によりアントワネットの澄み切った歌声。「100万のキャンドル」のマルグリットの力強い叫び声、「心の声」の凛々しくも頼りがいのあるマルグリットの声、「すべてをあなたに」のフェルセンの貴族のふるまい満開の振る舞いと声、「もしも鍛冶屋なら」のルイ16世の頼りなさに混じる本音が痛ましくも心に響く声。
どれも結構好き。(曲の目立ち方からいって明らかにこの作品の主役はタイトルロールじゃなくてマルグリットだよなぁやっぱり・・・・)

役者さんも凄くいい。
井上芳雄氏のかっこよさには惚れ惚れするし、土居裕子さんの無償の愛には感動するし、どの人もいい仕事してるのに、作品として絶賛にならない不思議。端的に言うと「言いたいことがまとまってない」ことが全てのような気がします。

曲がいいからCD早く出してリピーター確保しないとまずいんじゃないかなと思う。
この日ソワレ、終演後チケット売り場は開いていたけど、チケット売り場に行ってる人は本当にごくわずかだった。

あまりの後味の悪さに「見るのは1回でいい」という声が多く聞かれるこの作品、これで6ヶ月もやることがけっこう信じられなかったりします(帝劇2ヶ月・博多座1ヶ月・梅芸1ヶ月・帝劇2ヶ月)。役者の皆さん好演してるのに、なんだか力が出し切れないような感じでもったいないんですよね。

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コメント

由美子さんブログ始めたんですね。
しかも2日からやってたとは、全く知らなかった^^;

寿庵には由美子さんもかなり思い入れがあるようですね。私も一番好きな役なんで、ブログのタイトルに
までしてくれて嬉しいです。

事務所の公式にブログのことを大々的に言わずに、
そっと自分なりにブログやってるのも由美子さんらしいのかなあ?

正直由美子さんはブログなんて絶対やらないタイプの人だと勝手に思ってたので、「想定外」でしたね^^;

私も観に行ってカテコがすごく盛り上がったゴルフの
名古屋公演には感激してくれてたのはすごく嬉しかったです。

投稿: ま~さ | 2006/11/19 06:46

ま~ささん、こんにちは。
こちらにコメント来ましたかw

最小限の場所にだけ情報を書いたのですが、
関係各所への告知wありがとうございます。

それ単独で記事こしらえるのはさすがに思いつかなかったのですが、寿庵に思い入れがあっててくれたり、(私は見れなかったのですが)名古屋公演に目頭が熱くなっててくれたり、そんなところが「想像してた通り」だったことがすごく嬉しかったですね。

お酒の話と他の人の舞台を見に行った話がないのはちょっと不思議ですが、そういう仕事に微妙にからむ話は今後も載せないような気がします。何となくの直感ですけどね。

あ、MA話じゃないw
禅さんも弟さんもM!の子役も出てるし、見に行くんでしょうね。

投稿: ひろき | 2006/11/19 15:59

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