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『ペテン師と詐欺師』

2006.11.3(Fri.) 13:30~16:15 天王洲銀河劇場 3F下手

ホリプロが買収、アートスフィアから劇場名が変わった天王洲銀河劇場のこけら落とし公演。東京のほぼ最後の公演を見てきました。
贔屓以外の公演は後半を見るようにしているのですが、その時困ってしまうのがネットのネタバレ度。当ブログもそこそこ気をつけているつもりなのですが、聞きたくなくても評判というのは聞こえてきてしまうわけで(笑)、もろもろの理由で気乗りしないまま、天王洲へ向かいます。

しかも、イメージ的に遠いんですね天王洲。その実、渋谷から15分、新宿から20分、池袋から25分(いずれも埼京線・りんかい線直通電車)というのは帝劇とぴったり同じ時間なんですが、駅から10分弱歩くということもあり、心理的な壁が正直あります。

公演中に大ヒットでもないのに再演が発表されてる作品というのも、何か釈然としないものを感じますしねぇ・・・

天王洲はアートスフィア時代に井上芳雄氏のコンサートに笹本玲奈嬢目当てで来て以来の2度目ですが、近代的なビル空間が景色としては結構好きだったりはします。

で、見た感想ですが。
うん、予想したより良かったです。最後のオチもさすがブロードウェイヒット作、スパイスが効いてたし、スパーンと気持ちいい余韻で帰れる芝居は好きです。

でも。
この劇場、改装する前も後も綺麗でいいんですが、何でこんなに台詞が通らないんでしょう。3階席ということもありますし、曲の故もあるのでしょうが、とにかく歌詞が全然分からない。音楽が響きすぎて、正直、ショーとかコンサート向きな構造に思えます。

キャスト別によしなしごとを。

鹿賀丈史さん。「デモクラシー」以来2度目ですが、ダンディさにお茶目さが入り込んで最強。お金持ちでペテン師なんですが、それが嫌味にならない良さがあります。

市村正親さん。何作品目だか数えないとわからないぐらい拝見してますが(※1)、今回はちょっと痛かったかな。鹿賀さん演じるペテン師に弟子入り志願する”若者”の役なだけに、若々しさを出そうとする空間がちょっと寒かった・・・・

※1 「モーツァルト」「屋根の上のヴァイオリン弾き」「デモクラシー」「ヴァンパイア」で今回5作品目。男性の俳優さんでおそらくもっとも多くの作品で拝見してる役者さん。

高田聖子さん。今振り返ってみてこの方の芝居は「SHIROH」と「真昼のビッチ」しか見てないことに気づきました。”ミュージカル心配でたまらないんですぅ”とおっしゃってたんですが、さすが”新感線の看板女優”の名前は伊達ではないです。
芝居の間の取り方が鹿賀さん・市村さんの大御所の前でも引けを取らないぐらいに上手いから、本来の役以上に役にはじけてて、その分作品にも盛り上がりを与えてました。さすがやんちゃくれ(何のことだか)。

愛華みれさん。実は初見。前半はアンサンブルに隠れて存在感が薄い気がしましたが、鶴見さんと絡むようになってから俄然魅力的に。変に役的に暴走することもなく、まぁ納得。

鶴見辰吾さん。初見ですが、役者的に芯の強さを感じます。主演2人と堂々と亘り合う演技といい、出過ぎない存在感といい、いい役者さんだなと思いました。鶴見さんで印象的だったのは役としても良かったのですが、作品パンフレットのインタビュー。正直感動しました。

・「人を騙してはいけない」というのは現実だけど、「時には人を騙してもいい」というのも真実
・役者は思ったことが意外と表情に出る職業
・役者にとって舞台上の出来事や感情は「現実」ではないけれど「真実」

インタビューで表現される役者の言葉って、役者の大きさを表現してると思うので、インタビューで面白い(=深みのある)ことを言う役者さんって例外なく好きです。

役者さんの力って、役に自分の人生をのっけて大きく見せてナンボだと思うんで、「何も考えないで演じてます」とか言われてしまうよりも、「役者として人間としてこういうポリシーでやってます」と言ってくれたほうが、役を本来の役以上に大きく見せてくれそう。で、そういう期待が裏切られたことは今まであまりなかったりします。今後も気にしていきたい役者さんです。

さてさてこの作品のヒロインさんを最後に語ってしまいます。奥菜恵さん。
お金払って見るのは初めてですが、よくよく考えるとデビュー15年来名前を知っているのに、テレビでさえ実際の演技を見たことがない、今まで私には縁がなかった女優さん。
今まではどちらかといえば私生活でいろいろあっても、役者さんとしてはそれなりに評価されてたという認識でしかなかったのですが、あれだけ色々観劇記で書かれていれば見たくなくても入ってくるその評判。

百聞は一見にしかず。

見ました。観客が10人中8人まで同じこと言う時は真実なのねと(笑)

一般論としての個人的な印象ですが、歌と演技だと、磨かなかった時に結果が残酷なほどに見えるのは歌だと思ってます。演技が元々上手な人が劇的に下手になるとか、その逆というのはあまり接したことがないのですが、歌だけは磨かないとガクンと魅力が落ちる印象があります(あくまで私見です)。

今回の奥菜さんの出来には、正直「磨き忘れた歌」でミュージカルに出てしまった、そういう印象を持ちます。ただでさえ台詞が通らないこの劇場で音楽から外れた歌を歌えば他の劇場以上に目立つわけで・・・・。芝居勘だって悪くないはずなのに、役に萎縮してる感じがありあり。演技もかなり雑な出来で、正直、ヒロインとして作品を支えることができたとは思えませんでした。

私生活を役者に投影しちゃうのはよくないとは思うけど、前半のクリスティーン(奥菜嬢が演じる役)は演じてる人が演じてる人だからカマトトぶって見えてしまうというか、10年前ならともかく今の彼女に清純さを仮想できるかというと正直・・・・

その辺は、豹変振りを見せるところがこの作品のキモだから、最初の清純さに軸を置いてラストに意外性を持たせるか、逆にするか、キャスティングの腕の見せ所なんですけどね。

ミュージカル界の二大大御所の鹿賀・市村コンビの真ん中で歌う栄誉にあずかるポジションに、彼女をあてなければならないほど日本のミュージカル女優の層は薄いの?とか思ってしまうけれど、よくよく考えてみると「知名度」と「役との相性」に「年齢」(20代後半~30代前半)ってものをヒロインに求めると、あそこに立てる人はあまり思いつきません。

知名度抜きなら2003年コゼ2人(河野由佳嬢、剣持たまき嬢)とか思いつくし、時期さえかぶってなきゃうちのご贔屓さん(高橋由美子さん)でも見てみたかった役なんだけどそれもありえませんし(※2)。

※2 アイドル時代にホリプロの某大御所タレントさんと行き違いがあった関係上、ホリプロ主催の公演や天王洲銀河劇場の公演に出演することはおそらくこの先ないです。

ちなみにどうでもいい余談ですが、高橋由美子さんは今回の騙し騙されの舞台になる南フランス・リヴィエラをテーマにした曲を出したことがあります(1992年『コートダジュールで逢いましょう』)。

芸能プロダクションが劇場を持つというのはかなり珍しい試みではありますが、ホリプロは最近自分のところで公演を打ってもいたので(ジキル&ハイドとか)その延長上にあると思えば不自然であるわけではありません。
でも思ってしまうわけですよ。芸能プロダクションはたとえ大手であってもというか大手であるからこそ、他の芸能プロダクションとの利害関係の対立があるわけで、どんなにいい役者さんでも、ライバル会社の役者なら使わないとか、そういう話が出てきてしまいかねません。

その辺を乗り越えてナベプロのマルシアさんとハロープロジェクトに宝塚の演出家呼んできて公演をやってしまうアミューズ(新宿コマ劇場を持ってます)の懐の広さ。ぜひ、ホリプロにも見習ってもらって、「ホリプロが劇場を持ったから作品の幅が狭まった」なんて言われないよう、頑張って欲しいなと思います。

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