« 『愛と死をみつめて』 | トップページ | 『ミス・ダンディライオン』 »

『あずみ RETURNS』

2006.4.15(Sat) 17:00~20:10 明治座

今日この公演を見てしまって激しく後悔。
というか、初演で気になったのに見逃して、再演で東京千秋楽1日前までこの演目を見ないようにしていた自分が悪いのですが。

もっと早く見とけばリピートできたのにぃ(と、歯ぎしり)

って感じでございました。

上記の通り東京公演は今日で終わり(当日券が出るそうですが抽選・・・・)なので、ネタバレもちょっと入るかもしれません。というわけでご覧になる方はご注意いただきたく。

ストーリーですが、あずみは徳川お抱えの少年少女・暗殺団のホープ(なんつー言い方なんだか)、演じるは黒木メイサさん。初演時16歳、今回の再演で17歳ですが、迫力から剣術から普通にあり得ないほどの凄みです。惜しむらくは叫びすぎのこの役、声が枯れ気味になっていたのが残念。
相手役のうきはは生田斗真さん。そしてもう一人の相手役・豊臣秀頼役の長谷川純さん。3人とも完全な初見、しかもこのメンバーとなれば当然観客は女性比率が高い高い。

メインで絡むもう一人、涼風真世さん。豊臣秀頼の母親・淀君(要するに豊臣秀吉の側室、今年の大河の『功名が辻』では永作博美さんが演じます)と、剣士・美女丸の1人2役。

ここまでのメインキャストは初演と同じ、しかも初演でも凄く評判の良かった皆様。
その評判は伊達じゃなかった・・・

使命のままに人を斬るあずみだけれど、ちょうど思春期にさしかかり、「迷い」を持ち始め(パンフでは演じる黒木さん自身、「同じ年代だからあずみの迷いが良く分かって共感できる」とおっしゃってます)、そのあずみがあまたの苦しみを乗り越えて斬っていく過程が、不憫でなりません。
声が枯れ気味とあって迫力が少し減っていたのが残念なんだけれども、これでベストの状態だったらどんなものが見られるのだろうと、少し恐怖してみたり。

あずみは運命に翻弄される中で、自ら愛した者たちも次々とその手で斬りかからざるを得なくなるわけですが、その叫びは悲痛で悲痛で。”精神的にも体力的にもいっぱいいっぱい”という意味が良く分かります。

演じた黒木メイサさん。まだ17でここまでの迫力を出せるとは衝撃。芝居はまだ粗いところがあるし、流しているような印象も受けるけれど(感情表現という意味でちょっと弱い気がする)、それでも決め所をきちんと決めてくる集中力はさすがの一言。殺陣も上手いし、音と絶対に外れない。なよっとしたところがついぞなく、剣に絶対の自信を持ちながら、自らの位置に迷う様を上手く表現してる。

その彼女と剣で向かい合う人たちはたくさんいるわけですが、一番印象に残ったのは涼風さん演じる美女丸。本気の殺し屋ですこの人。

淀君が秀頼の尻を叩く”姫”の役回りで”表の顔”だとすれば、こちらの剣士はまさに”裏の顔”。美女丸の剣とあずみの剣を評して、前者を「人殺しの剣」と断言した様はなるほど分かる気がします。あずみの迷いを「人を斬りたくて斬ったことなど一度もないだろう」と言って振り切らせたくだりは、正直胸に迫るものがありました。

そうそう涼風さん。この方も初見なのですが、今冬、東宝・帝劇の『マリー・アントワネット』の主役、マリー・アントワネット役に決定しています。

そのイメージで今回の淀君を見たら・・・・どはまり役決定(笑)。つか「パンがないなら菓子を食えばいい」って本当に言っちゃいそうで凄まじく似合いそう。
それでいて裏の顔でどす黒いエネルギーを発散しそうなところは・・・誰なんだろうこのキャスティング考えた人は・・・凄いわ。
というか正反対とも言える淀君と美女丸を1人でやれてしまう涼風さん、普通に超人だと思ふ・・・あずみ役のメイサさんも出番多くてずっと斬り合って動いてるけど、それぞれ違った大変さがありそう。

『マリー・アントワネット』は相手役(敵役)のマルグリットがいつもの東宝常連の笹本さん、新妻さんコンビで正直新鮮味に乏しくて(何だかんだ言っても出来が想像できる)、涼風さんこれならソロで当たり役に出来ると思われ、なんだかそっちが楽しみに。(元光GENJIの赤坂さんとデュエットしてて、上手すぎて逆に浮いていて会場苦笑。「そういう芝居は帝劇でやれ~ここは明治座だ~」という突っ込みに会場爆笑。)


で作品の全体の印象はというと。

『SHIROH』そっくり

と言ってみたり。

どちらも江戸時代だから似ていて当たり前、と言われそうですが、ポイントとしていくつか。(あ)はあずみ、(S)はSHIROH

その1.時代背景
(あ)徳川家康にとって目の上のたんこぶだった豊臣秀頼を、あずみを使い追い詰める(大坂夏の陣)
(S)徳川家光にとって邪魔な天草四郎を松平伊豆守信綱が命を受けてお蜜や柳生十兵衛を使い追い詰める(島原・天草の乱)

その2.立ち位置
(S)お蜜はくの一
(あ)あずみはくの一に似てる(徳川に養成された逸材だからくの一とは微妙に違う)

その3.光の演出 そうとう似てる

その4.迷い
 剣の腕は凄いのに使命に迷いまくってる1幕のあずみ、四郎そっくり

その5.人斬りの剣
(あ)NO→あずみ YES→美女丸
(S)NO→四郎  YES→十兵衛

その6.ラスト
 皆の命背負って現世に残る2幕最後のあずみ、
 人斬ってるというとこなければ寿庵そのまんま。

その7.おまけその2
 新感線『野獣郎見参』にも似てる。
 3人揃ったなんだか役に立たない戦闘員は「ミドロシスターズ」にしか見えない
 人を斬って斬って斬りまくってたあたりは美泥そっくり。
 (剣の上手さはあずみの圧勝だけれども・・・・)

 でもこの『あずみ』は結構メッセージ性をストレートに出してるから、そこで気づくことも多かったりする。「戦いに正義も悪もあるわけないだろう」とあずみに言い聞かせるかのように出てる言葉もそうだし、「人斬りの剣ではない。おまえの剣には菩薩が宿ってる」だったかの言葉も、「あずみが一人残っていくと皆に認められた証」に聞こえて凄く胸に染みた。
 苦しみながら迷いながら、でも、去っていった仲間の思いを胸に秘め、仲間の分まで生きていく、そういう強さは表現されていたし、その強さを表現できるだけの力量が黒木さんにあったからこそ、きちんと物語として形にできたのだと思う。

 あと印象的だったのが「けじめ」と言う言葉で、あずみがこの言葉を凄く意識していたところ。自ら人を斬るという行為に、どこか後ろめたさを感じていて、その後ろめたさを消さないと、どうにも生きていけないのかもしれない、そう思えて仕方なかった。

 東京で1回しか見なかったのが個人的にすごく悔しかったりするんで、なんかの拍子に遠征してしまいそうな悪い予感が(笑)。今月忙しいから厳しそうだな・・・

|

« 『愛と死をみつめて』 | トップページ | 『ミス・ダンディライオン』 »

コメント

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74093/9613172

この記事へのトラックバック一覧です: 『あずみ RETURNS』:

« 『愛と死をみつめて』 | トップページ | 『ミス・ダンディライオン』 »