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『MOZART!』(14)

MOZART!大千秋楽。

ここにたどり着くまでの道のりは、個人的には紆余曲折ばかりでした。
大阪(梅田芸術劇場)、東京(帝国劇場)、名古屋(中日劇場)と進んだ今年の『MOZART!』、最後だけは外したくないと、福岡(博多座)遠征を計画し、当初は11月29日マチネ(井上君前楽)、同日ソワレ(中川君楽)、30日マチネ(井上君楽・大千秋楽)の3回のチケットまで取りました。

が。担当しているシステムの稼動が12月4日に決まり、とても2日も休めないことが分かり、泣く泣く29日分は現地の方にお譲りしました。喜んでいただけたのが何よりの慰めでした。

そして11月29日夜出発で博多泊、11月30日夜に羽田着の日程を立て、フリープランを申し込んだのが11月10日。
ここで更に運命が暗転。
11月29日は会社帰りに羽田に直行するつもりだったのですが、普段の定時は17時15分なのに、この日は18時30分までの打ち合わせが入り、しかもその時間に終わらない可能性もあるということが11月12日に判明。
羽田発福岡行最終便に乗るには会社を18時40分には出なければならず、それに間に合わなければ完全キャンセル扱い・・・・

結局フリープランをキャンセルして全日空・特割7で往復することになりましたが、当初予定の3公演が1公演だけの観劇になった上に、フリープランのキャンセル料もかかり特割7は早割21より割高だし・・・・のまさに「泣きっ面に蜂」状態。

今さら言っても仕方ないし、とにもかくにも羽田から福岡へ。

『レ・ミゼラブル』(2004年1月公演)以来の博多座。
前回は天神から入ったのですが、今回は祇園方面から歩いていくと、「大きなビルがあるなぁ、しかも見覚えがあるなぁ、なんか見慣れたポスターがあるなぁ」・・・・博多座でした。

博多座に向かう途中、博多土居町郵便局に立ち寄ると、『MOZART!』と『屋根の上のヴァイオリン弾き』のチラシが置いてあります。博多座の営業さんって噂には聞くけどマメだよねぇ。けっこう目に付く所にポスター貼ってあるし、いい意味で泥臭くて凄いと思う。キャストがこぞって博多座のスタッフを褒めるのも、形ばかりのお世辞には全然聞こえないし。

○本編編
・お手振りが流行
 コロレド大司教様(山口祐一郎さん)が中日公演から始めた「馬車の中からのお手振り」、博多座でも健在です。本日はそのお手振りに井上芳雄君便乗。シーンは違いますが(プラター公演だったと思う)、全般的に今日は皆さんお祭りバージョン。
 緊張してる部分も並存しているのか、井上君が歌詞飛ばしちゃったり(「謎解きゲーム」の2歌詞目が出なかった)、世にも珍しいことに市村さんが台詞飛ばしちゃったり(「ヴァルトシュッテッテン男爵夫人がお前にお話があるそうだ」の台詞)してました。

・そしてお手洗いシーンが行き着くところまで
 えーと「ちょっと出ちゃった」だそうです(笑)。とうとうそこまで行ってしまったかと。
 遠征組比率が凄まじく高いこの日の博多座。オペラグラスの上がり方でどなたの贔屓かわかるわけですが、山口さん・井上さんの2強の比率がすごく高そう。
 お手洗いといえば、この日、博多座客席1Fの男性用お手洗いが、女性用に転用。博多座常連さん曰く、「博多座で女性用お手洗いに列ができる日が来るとは思わなかった」と呟いておられました。他の劇場に比べればお手洗いは多いはずなのに、全く足りていませんでした。

・コンスタンツェ4人4様
 大塚コンスタンツェの対ヴォルフぶち切れモード、実は大好きだったりします。(浮気シーン発見のところ)
 ソロで歌ってる「ダンスはやめられない」の歌はいまだに慣れないんですが(高音にするとすごく耳障り良くない歌声になると思う・・・・喉が涸れてるせいもあるんだろうけど)、なぜだかヴォルフを責めてるところはすごく納得がいく。

 今までコンスタンツェ役をやった人より、圧倒的に若い大塚さんですが、このシーンでは「若い」というよりむしろ「幼い」という感じがぴったり。
 ヴォルフガングを支えようにも、ヴォルフガングを理解できるほど精神的に大人じゃなかったんだろうな、と思えて。
 目指すものの高さを仰ぎ見て、必死で今の立場との差を埋めようとしたけれど、もがいてももがいても差は埋められなくて、その差の間に落ちていってしまう様が、「これぞコンスタンツェ」だなと思えます。

 千秋楽を見て今さら思えた、コンスタンツェ4人4様。

 「がぶり寄りコンス」(松さん)
 「無色透明コンス」(西田さん)
 「やぶれかぶれコンス」(木村さん)
 「ヤンキーコンス」(大塚さん)

 ・・・・一応悪気はないつもり、なんですが・・・・

○カーテンコール編
 大千秋楽、皆さんご期待のカーテンコール。当日中に東京に帰らなければならないメンバーが結構いるよう(12月1日発表の「M・A(マリー・アントワネット)」絡み)で、巻きが入った結果、コメントメンバーはプリンシパルの皆さまのみ。5ヶ月(稽古も含めると8ヶ月)もあったんだから、最後は1人1分でいいから喋ってもらいたかったかな。

◆井上芳雄君(ヴォルフガング役)
 本日の司会(というかいつもだ)。「初演では中川君とダブルキャストということで、世間の目は冷たくて(笑)、色々比較されもしたけれど、ヴォルフガング役の大変さは2人しか分からない。中川君がいるから、今の僕のヴォルフガングがある。」と役について語った後、「モーツァルトの音楽が今も、そしてこれからも語り継がれていくように、この作品も語り継がれるものであって欲しい。」と続け、「またこの博多座でこのカンパニーで皆さんとお会いできることを願っています」と締め。

 何回かに分かれたコメントを1つに集約していますが、何というかプロの司会者(笑)。ソツのなさは齢26にして超一流。完全にお客さんを味方に取り込み呑んでいる様は頼りになります。

◆大塚ちひろさん(コンスタンツェ役)
 「稽古の回数が少なくて、6回ぐらいしかできなくて、不安だらけだったけど皆に支えられてやってこれた。休演日も仕事が入っちゃって長丁場が持つか不安でしたが、乗り切れたのは皆さんのおかげ」と涙で声を詰まらせながらのご挨拶。

 千秋楽でこういう問題コメントするのは昔は自分の贔屓さん(↓)が恒例でしたが、なんか立場入れ替わっちゃったなぁ・・・まぁ何というか、内輪話もほどほどに。通し稽古の回数までバラしちゃうのはさすがにどうかと思う。頑張って人間として大きくなってくだされ。


◆高橋由美子さん(ナンネール役)
 「朝起きて緊張して、手の震えが止まらなかった」と言ったかと思えば(ちなみにほとんど初めての体験だそうです)、「『昨日お酒飲みすぎたか?』」って思ったんですけれど(笑)、いや、昨日はそんなに飲んでないですけど」とお決まりのお酒ネタで笑いを取った後、ようやく落ち着いたのか、
「今日はパーフェクトに近いものができたのではないかと思います」と断言し、会場内から満場の拍手を浴びます。
 
 初演から皆勤の唯一の女性プリンシパル(大楽が280回目の出演)だからこそ感じるその言葉の重みだなぁとしみじみ。その言葉に恥じることがない出来と胸を張って言えるからこその拍手の温かさ、やっぱりいいなぁと思ってしまいます。

◆一路真輝さん(ヴァルトシュッテッテン男爵夫人役)
 「博多座さんにはお世話になっておりまして、北島三郎さんと博多座登板回数を争っております(会場内爆笑)。実は、今回『MOZART!』出演にて、晴れて北島さんの記録を抜きました(会場内拍手)。」と面白キャラ全開。

 ちなみに、北島三郎さんは5月に博多座登場です。タイトル剥奪でしょうか(笑)

 引き続き、山口祐一郎さん(コロレド大司教役)のボケに一路男爵夫人が容赦なく突っ込むアクションに爆笑。黒沢ともよちゃん(アマデ役)はか細い声ながらとてもしっかりした話ぶり。アマデは大人を食うためにあるのですね・・・・47回の出演、再演でのレギュラー陣以外では、2人のヴォルフ両方に仕えた、ともよちゃんが一番多いのかもしれません。

 すっかりともよちゃんに持っていかれた感のある市村正親さん(レオポルト役)ですが、博多弁もまじえ、来年1月公演の『屋根の上のヴァイオリン弾き』の宣伝もパーフェクト。なんかあのポーズが凄く懐かしかった。

 そしてそしてゲストの中川晃教君(ヴォルフガング役)、木村佳乃さん(コンスタンツェ役)と続き、演出・小池修一郎さんに作曲・シルベスタ・リーヴァイさんのコメントもいただき、最後は主役の井上君が締めて、幕が降ります。

 迎えた2回目のカーテンコール。
 1人足りません。うちのご贔屓さんがなぜか定位置から消えてます。どこ見回してもいない。何となく変な予感がします。悪い方の予感じゃなくて、2003年レミゼの帝劇楽でそんなことあったなぁと(※1)

 博多座以外でも、このタイミングで出てくるのはヴォルフガング&アマデの「投げキスコンビ」なわけですが、なぜか同じ服装が3人います(笑)

 一番右は井上君だなぁ、背やっぱり高いよね。
 真ん中はともよちゃんだなぁ、井上君といいコンビだ。
 一番左・・・・・帝劇楽が前振り(※2)だったのかと思えてしまう・・・・・・・

 それは、

 高橋由美子アマデ。(会場内大拍手)

 帝劇楽で「準子役」として紹介された彼女は、とうとうアマデの服装を着て登場してしまいました。あぁそういえば2人目の高橋アマデ。
 会場内の大拍手にのって大はしゃぎの由美子さん。ナンネールの内に内に向かう演技は仮のお姿でしょうか?ってぐらいノっております。

井上君  「着てみてどうですか?」
由美子さん「これすっごく着たかったの~」
井上君  「きつくない?」
由美子さん「ちょっとね。でもココ(と胸を指して)はダイジョウブ

 とまたまた会場内の爆笑を誘います。

井上君はいつもと同じくともよちゃんをおんぶ。で、
井上君  「じゃ、このまま(僕を)おんぶして」
由美子さん「やだよぉー」

 と即効で断られるありさま。普段のお2人の会話が想像つきます(笑)。
 いつものごとく上手に行き、下手に行きでご挨拶。
 そして最後の投げキス。

 実は由美子さんのアマデ姿は本邦初公開というわけではなく、知る人ぞ知る『花の紅天狗』(劇団☆新感線、2003年)で中川君のヴォルフをめいっぱいパロってヴォルフガング役をやっておりまして(この時の相手役は宝塚元娘役トップの森奈みはるさん)、「男役」が似合うことは知っていたりするんですが。
(ちなみにイーオシバイからDVDも出てます)

 その時も思いましたが、何と言うか

 ミュージカル界のコスプレ姫様

 の称号を捧げてしまいましょう。

 ヅラ付けて仰々しい衣装を着て、それが何の違和感もないのはもはや才能(苦笑)。

 5ヶ月にもわたる長い公演、その大楽となった博多、そんじょそこらの出し物じゃ誰も納得しないだろうなと思っていたら、まさかこんな隠し玉で来るとはびっくり。
しかもすごいのがお客さんみんな納得してるという、それが凄く嬉しかったりしました。

 私にとってのこの作品は、徹底哲尾、ナンネールから見た作品なので、ヴォルフガングから家族の存在が小さくなっていく物語後半はすごく悲しくて。最後までヴォルフガングの成功を望みつづけて、でも父を失って、愛した弟に、「貴方を許さない」と言わなければならない、身が裂けるような悲しみに同調してしまって。
 才能に飲み込まれて自ら命を絶ったところに駆けつけ、崩れ落ちる彼女の姿は何度見てもショックで。
 アマデの箱を開けた彼女の見たものは、またしても劇場中たった一人しか見れない壮絶な景色なのかもしれないなと(※3)。
 千秋楽の最後、魂が抜けたかのように、歩き出すことさえままならないかのような、「アマデの箱を開けた後の衝撃」の表現は、何十回も見た『MOZART!』の中でも、全てを呑み込んで納得させてしまえるほどの、素晴らしいものだったと思います。

 本編でそこまでのものを見せられたからこそ、そしてある意味『MOZART!』の作品の中で「決してメインになることはないけれども、大切な下支え役として物語を支え続けた」からこそ、大楽の場面で、出し物として出ることを許され、そしてお客さんもそれに絶大な拍手を送ってくださるという。

 あらゆる意味で、心の底から嬉しかったです。

 見過ぎたことで見えなくなったこともあるし、見えたこともあるし、それは自分にとって諸刃の剣でもあったのですが、それでも、最後の最後に、自分の気持ちに区切りを付けるために行った博多で、素敵な贈り物をもらえたことが、何よりの幸せでした。

 2005年の『MOZART!』は終わってしまいました。
 最高のカンパニーが織りなす、最高の作品。またどこかで再び見られることを、心から楽しみにしています。

(※1)ファンテーヌ役で出演した彼女、2幕冒頭で演じるピエール役の服に着替えて登場したことがありました。(2003年9月28日)
(※2)アマデが3人並んだ横で、ちょっと屈んだ彼女は、小池先生から「準子役」との称号を拝命し、会場内から拍手を浴びておりました。
(※3)『SHIROH』DVDの副音声(2幕最後)、ネタバレのため内容は省略。

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コメント

ご無沙汰してます
大楽行かれたんですね
いつものように熱いレポートありがとうございます
私も行ってたんですが、やっぱりすぐレポかかないと忘れてますね(笑)
コンス比較、面白いです
ちーちゃんのヤンキーコンス、私的にはとても好きなコンスでした
まぁ、日常のルックスそのまま愛すべきヤンキーですから・・・

高橋アマデ可愛かったですよね
『花の紅天狗』観たいなぁ、DVD買おうかしら

投稿: 小凛 | 2005/12/12 16:38

コメントありがとうございます。
ご返事遅くなって申し訳ありません。

コンス比較はふと大楽のあの瞬間に思いついて、終わってから必死でメモ取りましたです(笑)。個人的には、4コンスの中で一番回数を見たはずの西田コンスに上手い喩えが見つからなかったのが心残りですかね。

高橋アマデは博多座公式とかでも全く触れられていませんので、あの場にいた人だけのお楽しみでしょうか。

新感線のDVDは昨日から全国の紀伊國屋書店店頭でも売っております。
イーオシバイでも「コミックセット」なる称号をもって売られております。
ぜひぜひ見てみてください。きっと噴き出せます。

投稿: ひろき | 2005/12/16 01:32

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