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『10ヶ月』

2005.12.18(Sun)18:00~21:15(アフタートーク込み)
六本木・俳優座劇場

ホリプロ&日本テレビが企画の「ウーマンズビュー・シリーズ~ディレクターズ・アイ」第2弾の作品。
女性脚本・演出家3人の競演でこの作品が2作品目。

余命10ヶ月の男性の「最後の10ヶ月」に、大学時代に「何でも話した相手」の女性を呼ぶ。「何かをして死んでいきたいが、それが何か分からない。その手伝いをして欲しい。」

独身でい続けた男性が、なぜその女性を呼んだのか。
女性は別の男性と結婚し離婚。それなのになぜその男性の元に来たのか。
お互いが「触れられたくない部分」と「埋めたい空白」をどうやって埋めていくかの物語。

ネタバレ含みます。まぁ、最大のネタバレを作品紹介に公言してる(男性は亡くなってしまう)ので、今さらネタバレもないのかもしれませんが(苦笑)。

この作品を知ったのは、11月に品川プリンスホテルで見た『Club Seven』の挟み込みチラシ。このとき出演されていた香寿たつきさんが、今回の「女性」であるシナリオライターの橘響子役。

この作品を見ていてふと浮かんだ言葉は、

「男はプライドで生きている」
「女はポリシーで生きている」

という言葉。

この日は舞台終演後に演出家の藤井清美さんと、その「男性」役(島沢昌史役)の田口浩正さんとのアフタートークがあり、その時触れられたこととも重ね合わせて感じたのだけれども、人が死ぬ時、「みっともなく死にたくない」と感じるのは男だからだろうな、と思った。

この言葉はある意味語弊がある言葉かもしれないので、不愉快になられた方は申し訳ないのですが、

「泣き叫んだり、わめいたり、そんな姿を見せたくない。自分が自分らしく最後までい続けるには、本音を言い合ったあの女性が目の前にいて欲しい」

という気持ちは、なんだかしごく納得してしまうものがあります。(この解釈は、演出家の藤井さんがアフタートークで触れられていました。なお、このブログでは何度も触れていますが、『時の輝き』という作品が、ほぼそれと同じシチュエーションで物語を構成しています。)

「何かをして死にたい」という島沢の言葉は、男からしてしごく尤もな感情だったりする。とはいえ、響子が言う「誰も見てくれない作品は、書く気が起きなくなった」という言葉も、ある意味男性的。

自分が生きた証左を何か残したいという気持ちと、突き詰めきれなかった空白を埋めたい気持ち。
島沢が言った「仕事をする知恵はどんどん付いたけど、生きていく知恵はぜんぜん付いてなかったな」って言葉は、すごく身につまされるものがあって。

仕事に追われる身って自分自身も同じだったりするんでよく分かるのですが、「仕事」「会社」という閉じた空間で、それが全ての価値観であるかのごとく生きること-それは仕事がやりがいがあればあるほど陥りやすい点で、まぁ月50時間以上残業して年50回近く観劇してる人間は何だって話ですが(苦笑)、ある意味仕事人間だと自覚してる自分がこういう作品見るというのも、何だか変なめぐり合わせを感じずにいられません。

まぁ冗談はさておき。
物語の軸になる女性・橘響子役を演じる香寿たつきさん。現代劇へは初挑戦とご本人おっしゃっていましたが、立ち姿の美しさに始まり台詞の明瞭さに至るまで、さすがの存在感です。元男役のたつきさんが女性らしく振舞うことになるシーンは、ちょっとぎこちなさがあるかなと感じなくはないですが。でもかえって母親として娘とどう対していいかわからないあたりは、仕事に生きている女性らしいリアリティを感じさせて、さすが女性演出家の作品、と思えます。
(ちなみに、花が夏木マリさん&笹本玲奈さん=『屋根の上のヴァイオリン弾き』<2004年版>の家族から贈られておりました。)

相手役、男性・島沢昌史役を演じる田口浩正さん。すごくいい役者さんです。実はこの方は『こちら本池上署』で初めて演技を拝見した役者さんなのですが、もともとはコメディ畑の人が役者適性があった典型で、今回の役にも凄くはまっています。
終演後に隣のカップルの話をたまたま耳にしたのですが「男女関係に見えないから田口さんをキャスティングしたのかもね」ってところに、失礼ながら心底納得。
役者としてはすごい褒め言葉に思えます。

ところで、私が芝居を見に行く時、一つ基準にしてることがありまして、「気になる役者が2人以上いる作品に外れはない」って点で、今回は香寿たつきさんともう一人が、香寿さん演じる響子の娘役だった阿井莉沙さん。

avexのヴォーカルユニット「dream」の第2期メンバー(2002年7月~2004年3月)として活動後、歌手&女優として活動されていまして、実はその時からちょっと気になっていたお方。

芸能界でやってくにはあまりに純粋すぎて心配になるぐらいの人なんですが、色んな意味で場数を経験してほしい彼女がこの作品に出会えたことは、隠れファンとしてちょっと嬉しかったりします。

演技で是非を語るにはちょっと物足りない点もありますが、「大人でもない、子供でもない」16歳の微妙な感情を出そうと努力は見えて好印象。演技への戸惑いと、娘としての母親への戸惑いがシンクロして見えて。

母親は離婚して、この娘は父親の元にいるのですが、「仕事をしている母親だからこそ、私はあの人のことを、母親として理解することができる」って気持ちは、ある意味痛々しくも感じて、それでも思春期ならではというところかな。
技術ではなく素でそういうキャラクターとして見せられるのは彼女の長所だけど、いつでも自分に合った役が来るわけではないので、まだまだこれからというところかも。

最後に、母親を迎えに来るシーンがあるのですが、娘と母親の心の通じ合う過程がもうちょっとあっても良かったかなとも思いますが、それは響子と島沢との本線とかち合ってしまうので今ぐらいでいいのかもしれません。

何はともあれ、作品が役者を大きくするという点もあるので、これからもいい作品に出て経験を積んで欲しいと思っていたりします。

今回の挟み込みチラシ。
来年5月・6月の地球ゴージャス公演『HUMANITY the musical』の超仮チラシ(出演者と日程だけ)があり。
中川君の『OUR HOUSE』といい、超仮チラシは黄色が流行でしょうか(笑)

唐沢寿明さんに戸田恵子さん、そして高橋由美子さんのお3方メインってどんなのやるんだ・・・・
まさかまた新宿コマ劇場に高橋由美子さんがたつ日が来るとは思っていなかった(1997年『アニーよ銃を取れ』で主演。小池修一郎さん演出で、『バタフライはフリー』のジル役、『MOZART!』のナンネール役のキャスティングのきっかけとなった役)んで、ある意味ちょっとびっくり。

戸田恵子さんに高橋由美子さんとくれば、
当然世間的には『ショムニ』再来ですね。

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