« 2005年9月 | トップページ | 2005年11月 »

2005年10月

『MOZART!』(13)

ただいま(10月16日午後4時現在)、名古屋におります。
土曜日の夜行バスで名古屋入り、今日日曜日の夜行バスで東京に戻るという0泊2日の強行軍。
それもこれも、日曜ソワレで超上手ながら5列目などという席を残してた中日劇場HPのせいだったりして。

マチネ・ソワレの間のこの時間に、取り急ぎマチネ分のレポを。
1ヶ月ぶりということもあって、改めて思うこともいくつかありましたし、何より新キャスト2人登場、2者2様の変化は作品をまた違ったものに見せてくれています。

2005.10.16(日) 12:00~15:25 中日劇場
日曜マチネの井上ヴォルフ回とあって、前売りはかなり早い回に完売。ちょっぴり入手に苦労したこの回のチケット。
終わったときには1F正面エレベーター前にプリンスロードが長く続いていたとさ・・・・
みんな日帰り遠征ぽい空気。

この回は2階最後列から2列目、事実上「3階」の扱いをされている席。
中日劇場は初めてなのですが、意外にこじんまりとしており、しかも意外にM!にフィットした仕様。
帝劇は大きすぎるような気がしたので、ちょうどいい感じかも。
音響も悪くないのですが、セットの音を引きずる音がガタガタするのはちょっといただけず。

●大塚ちひろさん/コンスタンツェ役
1幕の「アホアホコンスタンツェ」ぶりがツボです(笑)。
念のためですが、褒めてます。
物分りがいい松コンス・西田コンスと比べると、いかにも「引っ込み思案で目立つのが嫌いな少女、怠け者」と言われるのがしっくりきます。
あんまり他の役に染まってないから、かえって色がついていない分、この役は上手くはまってる感じ。
いい意味でヴォルフを堕落させたコンスにちゃんと見えます。

2幕に入ると、力量不足はそこかしこに現れてくるし、歌もまぁまぁ聞けるとはいえ、かすれ気味で、喉が決して強くない彼女にとっては、けっこう試練のような感じです。
それでも、若さもあってか勢いで最低限のレベルをクリアしてるのは、正直、意外以上で見直しました(帝劇の8月コンスが凄かったからなぁ)。
存在感とかオーラとかとはどうしても縁遠いので、「ダンスはやめられない」とかは薄味。

良かったのは1幕と、2幕のかなり後半、ヴォルフがコンスを拒絶する場面。
浮気を見つかって弁解するシーンです。
あそこの怒り方が、今までのコンスの皆様は「気の強さと我の強さは違うんだけど」的なことをいっつも感じてたりしたのですが(西田コンスがその点では一番「気の強さ」的には弱かったかな)、大塚嬢は地が気が強くなさそうなところが、このシーンでは上手いバランスと化してます。
ずっと耐えてきたけど、とうとう爆発しちゃったコンスと、自分の潔白を自ら果たすことができずに、うっとうしくなってコンスを遠ざけるヴォルフの組み合わせがすごくすっきりわかりやすくて、仲々の好印象。

ヴォルフにとって”才能”を評価してくれる人は、それ即ち自分にとっては身近にいて欲しくなかったと思うぐらい、ことごとく疎遠になっていて、レオポルトしかり、ナンネールしかり、コロレド大司教にしても、果てはヴァルトシュテッテン男爵夫人に至るまで、ヴォルフの身近から去っていきます(ヴォルフ本人から遠ざけたような人もいるけど)。

才能でなく「ありのままの自分」を見て欲しいと願ったヴォルフにとって、ただ一人それをしてくれていたコンスタンツェが、「ヴォルフの才能」に気づき、インスピレーションを与えられないことに焦りを感じたことで、コンスタンツェはヴォルフガングにとって、心の安らぎではなくなった、のかもしれません。

●一路真輝さん/ヴァルトシュテッテン男爵夫人役
帝劇でタイトルロールを務める人が、本人が望んだとはいえ脇役。

今年発売のハイライト盤CDで、あまりに本人酔いモードの「星から降る金」を聞いていたので、正直戦々恐々としていましたが、初見の感想は「さすが」というものです。

私自身、一路さんを舞台で見るのは初めてだったのですが(今気づきました)、周囲を見て芝居を出来る方なんだなという感想。
「星から降る金」はヴォルフ・レオポルトに語りかけるように歌ってくれているのも好みだし、個人的には歌い終わった時にナンネールと頷き合ってくれる男爵夫人役の方はそれだけで点が甘くなります(ちなみに久世さんは見たすべての回でやってた。香寿さんは帝劇最終日以外はやってなかった)。

何より少しく驚いたのは、2幕、ヴォルフが皇帝陛下の前で演奏し、満場の喝采を浴びる場面の男爵夫人の演技。
ここ、実はいままでの男爵夫人役の方ではなんだかしっくりこなかった場面で。
男爵夫人はレオポルトに語りかけます。「さぞかし誇らしげでしょう」と。
それに対してレオポルトは答えるわけです。「誇らしくはあります、が満足は出来ません」と。

ここで、ヴォルフはレオポルトの存在をアマデに指摘されて会いに行くわけですが、その前に、男爵夫人の手にキスをするのが、今までの流れでした。ウィーンに引き上げてくれた男爵夫人への、最大限の感謝の印でしょう。
ところが、今回だけなのか、ヴォルフが井上君であったのにもかかわらず、これがありません。
雰囲気的には、男爵夫人がそれを回避した感じ。
(なお、ソワレの中川ヴォルフの際には、ヴォルフから手を取りに行っていたので、なくなったわけでもないようです)

直前にレオポルトが「息子の成功を、手放しで喜んではいない」ことを知ったから、ヴォルフを手放しで賛辞するわけにはいかない、そんな複雑な表情が男爵夫人に見えました。
ヴォルフの気持ちもわかる、レオポルトの気持ちもわかる、でもどうすることもできない立場は、一路さんがそう演じたからこそ、自分にはかなりのインパクトでした。
レオポルトの気持ちを聞いておきながら、一方的にヴォルフの立場に立つ男爵夫人というのが、どうもよく人物的にわからなかったもので、どっちにも立たない立場が新鮮。

その分、父が亡くなったことをナンネールから知らされ、アマデを責めた後に歌われた「星から降る金(リプライズ)」が凄く優しげで、その上、その後の父との別離を促すくだりは逆に必要以上に厳しく、男爵夫人としての動きが綺麗につながっていて好印象。

このあたりは中川ヴォルフとだとまた別の印象になるかもしれません。

●続投キャストの皆さま
・井上芳雄さん/ヴォルフガング役
 いやはや、遊ぶ遊ぶ(笑)
 吉野圭吾さん演じるシカネーダーとのじゃれぶりが帝劇比+50%ぐらいすごいです。
 シカネーダー初登場のシーンで「知らないわよっ!」って返して会場内の笑いを誘ったかと思えば、「魔笛」を作曲してるシーンでは吉野さんを背後からハグしてるし・・・・
 なんか変(爆)。

 演技的には、「溜め」を多く使うようになった感じがあります。0.5拍ぐらいの間を上手く使って、芝居の空気を厚くすることにつながってる感じ。やりすぎると緩慢な印象になるし、なさすぎると余裕がなくなるから、ある意味「ヴォルフガングがこの舞台を支配してるんだなぁ」というのが分かりやすい。
 あらゆる意味で余裕を感じさせる動きを感じて、さすがと言えましょう。

・高橋由美子さん/ナンネール役
 いつ見ても変わらない安定振りはこの日も健在。
 「赤いコート」や「野菜市場」ではちょっと遊ぶとはいえ、本線の演技でぜったい遊びを入れない(役的にも入れられないと言ったほうが正しいですが)上、出来はいつも常に同じ。
 
 むしろここまでの完成度をいつも出すこと以外に、この役で残されていることってあるんだろうかとちょっと思ってしまいます。それはきっと凄いことなんだけど、凄く見られないところが実在のナンネールとシンクロしていっつも複雑な思いをかみ締めてしまったりします。
 何といっても名古屋・博多は女性陣は東宝芸能所属の一路さん・大塚さんが共演だから、いろんな面で割り食ってしまうし。

 ちなみに、カーテンコールの順序が変わってまして、

梅田・帝劇 男爵夫人→ナンネール→コンスタンツェ
名古屋   コンスタンツェ→ナンネール→男爵夫人

 になっています。
 「星から降る金」をバックに出てくる大塚コンスタンツェは、何か変な図式。

 これに伴い、パンフレットのキャスト順序も変わってまして、

梅田・帝劇 ヴォルフ→コンスタンツェ→ナンネール→男爵夫人
名古屋   ヴォルフ→ナンネール→コンスタンツェ→男爵夫人

 になっています。

 ナンネール役の高橋由美子さん、東宝系登場4年目にして初めてキャスト順が女性1番手に。
今回が最初で最後なのかもしれないけれど。
 中日劇場版パンフは、帝劇写真がふんだんに盛り込まれており、お得感ありますね。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

『SHIROH』を語る。(31)

とうとうDVDが発売です。
大阪千秋楽から9ヶ月(行ってないけど)、ゲキ×シネ東京最終日から1ヶ月、クオリティの高さはそのままに、ようやく手元に来た映像に、感慨もひとしお。

仕事が超多忙だったのに、誘惑に耐えられず会社休んで佐川急便の配達員さんを待ってしまいました。その代わりに今日は休日出勤を余儀なくされましたが。

ゲキ×シネ東京で映像・音声を堪能してさほど期間を空けていなかったため、1回目から副音声での鑑賞。今回の副音声(コメンタリーと呼称されています)は、中川晃教さん、高橋由美子さん、杏子さん、大塚ちひろさん、中島かずきさん、岡崎司さんに、池田成志さん(司会)。
主役のお一人、上川隆也さんがいらっしゃらないのは残念ですが、大河の拘束期間に入っちゃってるせいか、それとも、あまり後から芝居のことを語りたがらないためなのか、光速の突っ込みは楽しみにしていたのですがねぇ・・・

DVDを見た後にCDを聞くと、CDだけでも音声がさらに肉付けされて聞こえて、ちょっとした驚き。やっぱり映像の力ってすごい。

とりあえず、副音声をこれから聞かれる方にお知らせ。
2幕、20分00秒地点から21分30秒地点までは、「絶対に」飛ばして聞かれることをお奨めします。
そして、以下の拙文は副音声込みの内容になりますので、できましたら副音声をお聞きになった後にご覧くださいませ。


◆中川晃教さん/シロー役
四郎様と寿庵殿の波打ち際のシーン、副音声であっきーは由美子さんになんでそんなに遠慮して突っ込んでるんですか(笑)。
ヴォルフは2人してナンネールに頭上がらないという話はあながち冗談でもないのでしょうか・・・・(井上君については『SHIROH』パンフを参照)

お蜜と寿庵がやりあってる時にあっきーが意味不明な手ぷるぷるさせてるの、ゲキ×シネで確認していたけど、上川さんの突っ込みが「何ぷるぷるさせてるんだよ!」だったのはDVDで初めて気づいて噴き出したり。

コメンタリーに関してはあまり自分から積極的にコメントするタイプではないわけですが、それでも歌い手としてミュージカルに関わる彼らしく、仲々含蓄のあるコメントをしており、特に岡崎さんとの音楽主体の話や、中島さんとの話は聞かせてくれます。

彼は『MOZART!』初演で見て以来、どうしても天才肌の完成型・感性型という印象が付いて回るのですが、今回のコメンタリーを聞いていると、苦悩や考察といった作業を、人並み以上にしているように感じて。

彼の発言の端々に「今までのミュージカルにない」味が出た理由を、きちんと組み立てて理解していたことが、彼への今までの印象とちょっと違って、実はちょっぴり意外。
特に1幕最後の「天の御子を我らに」の時のコメントは目から鱗。

そういうのを直接表に出せないタイプなのが、ある意味気の毒に思えたり。真面目すぎるような気がするので、いい意味でいい加減になれれば、限界ぎりぎりで演じる彼に、また別の味が付くような気がします。

あと某お方と某お方の仲が悪いネタとか安易に作らないように(爆)。

◆高橋由美子さん/山田寿庵役
「さんじゅあんの闇市(リプライズ)」の説得シーンがまさか
ノンフィクションだとは、想像のさらに上を行く影のフィクサーぶりにびっくり。

「まるちり」内で歌うゼンザ(泉見洋平さん)に関するコメント、泉見君が年上だってこと忘れてませんよね?(笑)(2歳上)

口数は「花の紅天狗」の副音声同様、少ないのだけれど、口を開くとおいしいところを持っていってるのはかなりの高確率で彼女だったりする。

胸鷲づかみの時(「お蜜と寿庵」)の秋山菜津子さんとのエピソードに笑い。多分元の言葉通りに言ってるんでしょうが、”女優の会話”でしかも2人の受け答えが個性通りだったから、なおさら面白かった。

副音声の中であっきーの歌のことを激賞してるコメントとか、上川さんを酒場で説得したシーン(笑)とか、何のてらいもなくああいうこと言える女性なのがすごいなぁと思う。

そういえば、由美子さんのコメントで意外だったのが、とことん動きまで完璧に決める傾向があるいのうえさん演出の舞台にあって、何箇所か演じ方に明確な指示がなかったと思われる点。
「さんじゅあんの闇市(リプライズ)」もシーンの作り方の方向に迷ったとか、お蜜さんの最期の十字架の十字斬りも自分で考えたとか、かなり意外。

これは邪推ですが、いのうえさんが「心残り」とか言ってるのは、やることが多すぎて手が回りきらず、各シーンの細かい演出までやり切れなかったことを指してるように思えてしまいます。その分、キャスト陣が百戦錬磨だっただけに、ステージ上で皆が最善の演技をしたことが、『SHIROH』の完成度を高めたのかもしれない、と思えてきます。

ちょうどここを書いてる時に寿庵が十兵衛に斬られていたのですが、改めて見ると、四郎様の十兵衛への斬り筋は、「初めて本気で人を斬りたいと思ったんだ、この俺が」と剣が語っていた気がしてちょっとうるうる。(何せ四郎の剣は「人斬りの剣」じゃないし)

ゲキ×シネで改めて鳥肌の立った最後のシーン(「はらいそ」直前)の表情が「おいてきぼりの子犬」と評されてた(中島かずきさん)けど、確かにその表現がぴったり(彼女のキャラはどちらかというと「子猫」ぽいけど)。

最後の最後で現世に置いていかれた彼女が見ていた景色について副音声で語っていたけれど、帝劇・梅コマでこの舞台をキャスト、スタッフ、お客さんとして携わった7万人の中で、

たった一人しか見たことのない光景

だったのかもしれないと。
それでこそ、最後に伊豆守に向けられる言葉がすごく重くて。
生き残るのは一人だけど、一人じゃない。使命の重さを繋ぎとめるのは、鮮明に残る、「3万7千の魂」そのものなのかもしれないと思えて。

◆杏子さん/レシーナお福役
1幕のコメンタリーでちょっと自分語りが過ぎるかなぁとか思ってたけど、上には上がいて(後述)なんだか普通に思えてしまった。

けっこうキャラが素で面白い。相手役の河野まさとさんになかなか心開いてもらえなくて、河野さんと仲が良い由美子さんにジェラシー、とか爆笑してしまった。
(自分以上に黒川智花ちゃんの母親にはまってたところにもジェラシー感じてしまうのだろうか>『雨と夢のあとに』で由美子さんが偽母親役、杏子さんが本母親役)

杏子さんのいいなと思うところは、場面にはまった時のハスキーボイスの破壊力の凄さ。1幕の登場シーンの「空気を動かす心の叫び」は凄くいいし、何と言っても2幕の「御子は我らと」の杏子さんの歌はもう絶品としか言えない。

1幕だと、シローの歌から「希望」を感じる反面、お福の歌から「絶望」を感じてしまう。
それが、2幕後半になると逆転して、シローの歌は「絶望」に対して真っ直線に進んでしまうのに対し、お福の歌は「希望」へと進んでいく。
それは「はらいそに行くことで救われる」という、キリシタン的な希望ではあるから、四郎は止めるわけだけれども、その点から考えるともしかすると、

シローの歌は「普通の人の『希望』が崩れていく」流れ
お福の歌は「キリシタンの人の『希望』が成就する」流れ

なのかもしれないなと思う。

◆大塚ちひろさん/リオ役
えと、問題児(笑)。

彼女は唯一2幕からコメンタリーに登場。
1幕はレギュラー出演してるアニメ「焼きたてじゃぱん」(テレビ東京系)のアフレコのため欠席でしたが、このアニメもヒロイン格で出ている割に一向に上達しないんですよね。ちょっとは上達したかと興味半分でつい先週見てみたら、最初の頃と全然変わってなかったのに呆然としてしまった。

若さを強調するのはまぁいいとして(何も突っ込まないお姉様2人はもう流石としか言えませんわ)、2幕、20分00秒地点から21分30秒地点まではどうにもフォロー不能。副音声とはいえ、本編の感動を殺ぐような発言はお願いだから勘弁してください・・・・

上川さんの腕に抱かれた由美子さんのシーンの裏話をしてくれたのは嬉しかったですね。
あそこてっきり上川さんの腕で支えているものとばかり思っていたもので。

とはいえ、『MOZART!』でも共演している先輩を「由美ちゃん」呼ばわりはどうかと思うけどなぁ。
この呼び方はつい先日まであっきーもしていたぐらいですが、アッキーの呼び方にはリスペクトを感じるのにちひろ嬢の呼び方には友達感覚しか感じないのに違和感があって。
それだけ懐かれてるように思えなくもないんだけど(カーテンコールでちひろ嬢から腕を組みにいってたことがある)、なんかちょっともやもやとしたものを感じてしまう。
由美子さんがそういうことに頓着しないキャラだから普通に笑っておくべきなんでしょうが・・・・。

そんなちひろ嬢のコンスタンツェは今週末に夜行日帰りで名古屋に見に行ってきます。
評判悪くないようですね。

以上のメインキャストを作品の視点から中島かずきさん、曲の視点から岡崎司さんが絡みつつ、締める所は締める、今回のメンバー中唯一の常識人(笑)である池田成志さん。

なるしー、今回は本編でキリシタン目付、副音声でちひろ目付みたいな感じで大活躍。とにかく司会の大役を見事に務められました。本当に流石です。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2005年9月 | トップページ | 2005年11月 »