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『SHIROH』を語る。(30)

2005.9.9(金)19:15~22:45 渋谷シネクイント

会社帰りでゲキ×シネ最終回を鑑賞。
定時間際に仕事が入って焦りまくりましたが、何とか滑り込みで会場入り。
シネクイントの入るパルコpart3の1Fの前は、翌日から公開される『タッチ』のポスターと花で溢れ返り、エレベーターだけが『SHIROH』の存在をアピールしていました(笑)。

とはいえ、
当たり前のように帝劇に見に行った日から、はや9ヶ月。
当たり前のように渋谷に通い詰める日々も、この日で終わり。
当たり前のように作品のクオリティの高さに触れ、
当たり前のように作り上げる役者の表情に背筋がぞくぞくした日々は、ひとまずこの日で終わりました。

最終回も中川君のコメントは「お友達をお誘いあわせて・・・・」でした。最終日パターン作らなかったんだ・・・ま、仕方ないかな。


●映像版の好きなところ
一つ目のポイントは、”帝劇C列12番の眺め”。
帝劇1,911席のうち、左にも右にも隣り合う座席がない席が、2席だけあります。
下手側のこの席と、上手側の1席(C列46番)。
明らかにここからの眺めであろう映像が、けっこうツボでした。
要は、舞台をすごーく左から眺める感じ。

左上から眺める映像も意外な視点でした。2階XA列の下手側かな。(XAとXB、2列だけ張り出しています)
「ヘイユー四郎」とか、「幕府の犬に断罪を」あたりで印象的。
正面から眺めるとか、左側から眺めるとかいうことは、実際に帝劇で経験がありますけど、今まで見たどんな作品よりも左に寄ってて、違う劇場を見てるみたいだった。
広さはいつも感じる帝劇だけど、横の大きさを感じたのはこの映像が初めてだったかも。
で、この”左側からの映像”で印象的なのは、キャスト陣の表情が重なる部分。
同じタイミングで舞台上に立つキャスト陣のそれぞれの表情が、一画面に切り取られてる。
新感線の舞台は動きは大きいけれど、静止画の綺麗さも特筆ものだと思う。

「さんじゅあんの屋敷」で立ち上がる決意をするシーン。
小左衛門の決意の表情、四郎の決意の表情の後側に見える凛々しさと喜びをないまぜにした寿庵の表情はいつ見てもぞくぞくするほど綺麗な絵。

緊迫感あふれる「幕府の犬に断罪を」のシーン。
舞台奥から撮ってほしかったカット(※)もあるのですが、客席側から見えるほぼ限界まで活かしきったカメラワークはさすが。
シローの怒り、四郎の達観(*)、寿庵の覚悟、お福の使命感、甚兵衛の力強さ、そしてもちろんお蜜の感情、暴露。様々な感情がわずか5分のシーンの中に渦のように巻き起こる様が絶品。
複数のキャストを静止画にして切り取ったことで、奥行きが増したように思えた。

舞台上で見て好きなシーンだったので、映像版になった時に落胆しなければよいなと思っていたけれど、臨場感に犠牲にせざるを得ない中、シーンの移り変わりを捉えきった映像スタッフの力量は並じゃないと思う。

映像版は細かい所で「このシーンが欲しかった」と思うところはあるけれど、全編見通してみれば、あれだけの作品をここまでの映像にできるのは凄い力量だと思う。観客ほど思い入れがあるわけではないだろう(★)に、作品の流れをつかみ、勢いを殺さない作りは、もう流石としか言えないです。

(※)具体的にはシローを説得する寿庵の表情は見たかった。
似たようなシーンでヴォルフガング@中川晃教氏を説得するナンネール@高橋由美子嬢の「覚えてる? 神様の次に大切なのは、パパだって」も客席から見えないシーンなので、ヴォルフ視点から見てみたい表情なんですけどね。どう見えてるんだろうって。

(★)とはいえ、この作品に関しては、スタッフの熱さも尋常じゃないというか。映像版プロデューサーの金沢さんは「はじめて仕事を忘れた」って言ってるし、「SHIROH」ゲキ×シネ公式サイトの末永さんのVOICE欄のメッセージも熱いし、何と言ってもイーオシバイの岡部さん。超アクセル全開でメルマガ書いてくれてます。悪い意味じゃなくどこかのファンサイトかと思ったぐらい(笑)。

(*)「これは戦だ、遊びじゃない」という四郎(上川隆也さん)の言葉は、この作品の「さんじゅあんの館」での「我々は遊びでやっているわけではない」@小左衛門 と 「私も遊びで闇市をやっているわけではない」@寿庵の言葉と絡み合って、どこか意味深。
四郎はシローに対して、力量は認めつつも「甘さ」を感じつづけていたのだろうなと。

四郎とは立場は違うけれど、「TRUTH」で上川さんが演じた役も同じようなテイストを感じた。
「『自らの』正義に対して一途」というのは、上川さんの演じる役に通じる一つの形のような気がする。


●跳べない四郎は、ただの男だ。
「はらいそ」のシロー・寿庵の歌声を聞いて、ふっと浮かんだこのことば。

雨に君は唄う
僕はツバサになる

何回も見ていろいろ考えたけれども、やっぱりこの作品の「君」は四郎だと思う。
そして、その「君」が過去を愛せなくなり、奇跡の力を失った時に、神がリオを通して与えた「ツバサ」がシローだったのだと思う。

雲の上から
君を守るために

ゲキ×シネの映像で初めて気づいたのですが、このあたりでシローは四郎に手をさしのべ、四郎はそれを頼って引き上げられていくんですね。更にその下には四郎の動きと同じように立ち上がる寿庵がいるわけですけれども。

君の弱さが好き
それがツバサになる

四郎の人間としての弱さ、それこそが寿庵が四郎を愛した理由であり、「人間味」そのもの。
寿庵にとっての「ツバサ」は、ただ一人現世に残されても、それでも自分の気持ちを支えてくれた「思いの強さ」。

シローは四郎のツバサとなり、
四郎は寿庵のツバサとなった。

人は支えあって生きる
死は別れじゃない
本当に心が通じ合った人のことは、
心の中に生きている

最後に、そう納得できたことは、何より幸せでした。

発売まで1ヶ月を切ったDVD発売まで、『SHIROH』の話題は封印になるかと思います。

ひとまず、2回目の区切りということで、この素晴らしい作品に心からの拍手を。
ゲキ×シネ地方上演が実現し、より多くの人がこの作品の凄さに触れてもらえますように。
イーオシバイさん、ティ・ジョイさん、期待しています。

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コメント

こんにちは。花梨さんちから来ました。
(いや、でもその前に『SHRIOH』検索でブログサーフィンした時に、
ちらっと拝見させて頂いたような・・・)

私は、これまであまり歌舞伎以外の芝居は観て来なかったのですが、
主体的な意味でのミュージカルデビューが今春のレミゼで(しかも、“ど”ハマり)
あまりにもレミの作品世界にハマったので、
他のミュージカルは別に観なくていいも~ん、くらいに思っていたところ、
友人にレミ好きなら、結構イケると思うよと
『SHIROH』を勧められ、ゲキ×シネ見ました。

新感線の音楽はなぁ~とか言っていたのに、
見終わって数日たった今の方が、直後より心掴まれ、
以来、頭のなかで「はらいそ」がぐるぐる廻っています。
油断するとはらいそ。通勤車内でもはらいそ。って感じです。
(やっぱりロックンロールより、ちょっとメロディアスな曲の方が好みではあります。)

しばらくライブは観れないだろうな~と寂しく思っていたところ、
昨夜このブログの記事を順を追って読ませて頂き
SHIROHの舞台を垣間見れたような気分になれたのも嬉しいし、
この、ひとつの舞台に「心掴まれた」感溢れる筆致にもすごーく共感でき
なんだか、とっても嬉しくなってしまいました。

対象は違っても、私も、追っかけ・遠征観劇には
“気力・体力・財力”投資してきましたから。

私も、四郎と寿庵にかなり惹かれます。
そしてあざとさがまったくない演技で涙を流すリオにも魅了されました。

いや~ホント、『SHIROH』の劇空間にとっても会いたいです!!

長文投稿失礼しました。今頃テンぱっている私をお許し下さい(笑)

投稿: yaya | 2005/09/13 20:49

yayaさん、はじめまして。コメントありがとうございます。

レミ好きならSHIROHはお勧め、という友人氏のコメントは含蓄あって素敵です。
音楽とか場面とかに似てる場面があったりしますが(笑)、
どこかどっしりした空気は何となく通じる所があるような気がします。

このブログを始めたきっかけも『SHIROH』でして、何が理由かいまだに分からない部分もあるのですが、「語りたい」と思わせてくれるエネルギーが溢れていて、どうも居住まいを正して見なきゃいけないんじゃないかと思わされる作品でした。
(気合をいれないと見れないという感じかもしれません)

通勤車内で『SHIROH』の音楽を聴くと危険!なのは身を持って体験してます。「まるちり」とか「さんちゃご」がかかった日には・・・・危うくリズムを取りそうになったり。残業中で誰もいない時は口を突いて出てしまったり。怖いものです(苦笑)。

観劇は気力・体力・財力勝負とはごもっともでして、それでも、こういった素晴らしい作品と出会える喜びがあるから、やめられないんだなと思います。

今後ともどうぞご贔屓に。

投稿: ひろき | 2005/09/14 20:37

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