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『SHIROH』を語る。(29)

2005.9.4(日) 15:00~18:25 渋谷シネクイント

ゲキ×シネ4回目にして、とうとうやってしまいました。
痛恨の20分遅刻。日曜日の明治通りをバスが定時運行してくれる読みは甘すぎました。
選挙演説(池袋)に買い物行列(新宿)、歩行者天国にお祭り(原宿)までやっている・・・・

今日の座席、通路側かと思ってまだ入りやすいか、と勘違いしていたら、なんとまぁ、こともあろうにどセンター。
時はあっきー登場直後、視界を遮ってしまった方々に深くお詫びします。

席に着いてみると、4回目で紛れもなく最良の席。素直にJRを使っていればと後悔しても後の祭りなので、さっさと17世紀の島原の空気へワープします。

●四郎様&寿庵殿
このお2方の話は途切れ途切れに書いてしまってるので、今日はツボだったところを2箇所ほど。

◆1幕23場「天の御子を我らに」
中川晃教さん演じるシローが同じく牢獄にいる仲間を奮い立たせて皆で牢を破る。
(今日見て気になったのですが、人が出入りできるぐらいの牢ですね(笑))
そんな中、兵を挙げた四郎(上川隆也さん)率いるキリシタン軍がキリシタン目付の屋敷に押し寄せる。

シローと同じく捕われていた四郎の父・甚兵衛(植本潤さん)&四郎の姉・お福(杏子さん)が絶体絶命になった時に助けに現れる四郎。

「良くぞ兵を挙げた」と甚兵衛に声をかけられた時の四郎の表情が何ともいえない表情。
はにかみながらも「俺の力だけじゃないけどな」みたいな、いたずらっぽい表情を寿庵(高橋由美子さん)に向けてる。そんな四郎の表情を見て、すかさず「いえいえ、四郎様のおかげですよ」と返す寿庵はさすがに如才がないというか何というか。

四郎様&寿庵殿は通じ合う場面が少なめ、ってのは舞台版からのお約束ですが、何気にこのシーンが一番ツボに入ったかも。他のシーンはあと一歩足りなかったり邪魔が入ったりするんで。

◆1幕18場「さんじゅあんの闇市(リプライズ)」
このシーンだけでゲキ×シネのチケ代払うよう言われても自分は納得します(笑)。
寿庵殿の四郎様説得シーン。

公演初日前の物語説明で、「寿庵が四郎を説得する」と言われて、言い知れない不安を感じた自分。あの上川さん相手に、どうやって由美子さんが説得できるのか、寒いシーンにならなければいいなーとか思ってたのも、今は昔のお話。

もっと昔だったら由美子さんもこんなには説得力のある歌い方もできなかっただろうなぁと、作品との巡り合わせの偶然さに思いを馳せたり。

ことごとく四郎様の逃げ道を潰してく手腕がさすが闇市の主。

幼い頃に知っていた四郎様からの、余りに変わってしまった彼に驚きながらも、それでも彼の偉業を思い出させるかのように語り、その中で発せられる彼の言葉から、なぜ彼が苦しんでいるのか、何に苦しんでいるのかを掴み取っていく。

このシーンを見ながらだと途中まで、寿庵殿に「そんなぁ~」というコミック風吹き出しを付けたくなってしまうのですが(笑)、四郎の苦悩の原因を掴み取ってからの押し返しが何度見ても華麗。

「あなたまで私を追いつめるのですか」と言っていた四郎が、何度も励まされた最後のとどめが「ただの人だからいいのかもしれませんよ」と言われた時の表情は、まさに「意表を突かれた」表情そのものでした。

神に選ばれた少年が追い続けさせられた「天の御子」という名の重し。奇跡の力を失った自分にとって、その言葉がどれだけの重さになってきたか。父親・姉・そしてキリシタンの仲間たち。首領になれと言われる度に苦しんだ、現実と理想の大きすぎる乖離。それは現在と過去の大きすぎる乖離とも言えるかもしれません。

「ただの人だからいいのかもしれませんよ」

寿庵のこの言葉は、”キリシタンの上に立つ”ということをもしかすると「人より力量を持つ」ことにより自らを安心させようとしていたかのような四郎にとって、突かれたくない部分のように聞こえます(「力のない自分は人の上には立てない」と思い込んでいる)。
もう一面として、四郎よりもシローよりも、キリシタンの戦いの本質を最初から見抜いていたということなのかもしれません。
「人の上に人が立つのではない、人の上に神だけがいる」という点において、寿庵は最後までキリシタンだったのでしょう。

そんな寿庵の思いは、実は四郎にもきちんと伝わっていなかったのかもしれない、と思うのが伊豆守の闇討ちの場面。
分かり合えたからと思うからこそ、四郎が暴走したのが毎回悲しくなる。
最期はそんな四郎に生かされて、結局生き残るのは彼女自身。悟りを開いてしまいそうな勢いですね。

●敬称の法則 そして例外
この作品の面白いところが、各役の敬称。標準パターンがそれぞれあって、みんな役の属性を一語で切り取っているところが秀逸。

四郎様:あの威厳は「様」以外の何物でもなし。
 法則に逆らった人:別名うざえもんこと、姉婿(河野まさとさん)の「しーちゃん」

シロー:ピュアな彼には呼び捨てが何よりの敬称。
 法則に逆らった人:「様」を付けて呼んだ寿庵(「幕府の犬に断罪を」)
  シローが聞く耳持たないと知るや、それ一回きりでその後呼び捨てに戻った寿庵、お蜜さん並に機を見るに敏です。

寿庵殿:この威厳も「殿」なしでは表現しようもないかも。本人が「こんな『こつぶっこ』がと言いたげですね」と言った時に笑いが起こらないのは、その威厳のせい?
 法則に逆らった人:四郎様。軍師として迎えて以降は全ての場面で呼び捨て。当然、寿庵喜ぶ(笑)。
  お蜜さん:「あの女」呼ばわりしてます(「海はつながってる」)

お蜜さん:実際に呼んでるのはシローだけ。他の人は名前を一度も呼んでない。
 法則に逆らった人:四郎様。「さん」を付けないことただ1回。そりゃ裏切り者断罪する場じゃ、敬称付きがおかしいのは自明ですが(「幕府の犬に断罪を」)
  シロー。彼女に裏切られて最後に感情むきだしで向かっていくシーン1回(同上)
  お紅さん。常に「姉さん」ですね。


はてさて、ゲキ×シネ観劇、あとは最終日最終回を残すのみになりました。
長いようで短かった3週間。最終日ちゃんと行けるように仕事がんばろ。

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