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『MOZART!』(9)

2005.8.4(木) 17:45~21:05 井上ヴォルフ
2005.8.7(日) 17:45~21:05 中川ヴォルフ

 先週は辛かったです。体調が優れずに観劇中に咳をすること複数回。特に4日の回は咳止めを持っていかずに、2階席で観劇された方には大変失礼なことをしてしまいました。演者の方には聞こえないと思いますが、大変失礼をしました。この場をお借りしてお詫びを。
 2階席のセンター辺りはちょうど空調の出てくる場所に当たっておりまして、身体が冷えたのが理由らしく、素直に週明けに病院に行ってこようと思います(今週火曜日マチネが良席なので何とかしたい)。

 4日の回が井上ヴォルフ&木村コンスの初観劇。
 先月30日マチネの散々な出来を目の当たりにしているだけに、相当の覚悟をもって臨みましたが、意外や意外、まっとうにラブシーンだったし、まっとうに演技は噛み合ってました。むしろ、井上ヴォルフとしか合わせ稽古をしてなかったんじゃないか?と思わせるような結果でした。

 7日の中川ヴォルフが木村コンス初日以来1週間ぶりだったのですが、中川ヴォルフが過度に抑えることなく良さを出し切っていたので、要は1週間かけてプレビューやったのと同じ結果になったよう。
 ほかの共演者陣が一定以上の結果を残しているだけに、こんな中途半端な状態で舞台の上に上げるというのは、観客に対しても失礼に思いますし、かつ、この舞台をずっとやってきている共演者に対しても失礼極まりなく思います。

 初演以来の共演者は2002年9月から数えて、7ヶ月も接してきたこの作品に、7月10日から個人稽古入り、合わせは数日前から数えるほど、それで上手くできると思うほうがどうかしているわけで、木村嬢・演出家双方に憤りを感じざるを得ません。

●役者さんの力量で見せる作品
 6月の梅田芸術劇場公演で初登板、現在帝国劇場公演にも出演中の香寿たつきさん(ヴァルトシュッテン男爵夫人役)が、『月刊ミュージカル』2005年8月号でいみじくも語っている言葉が、この作品の本質を見事に言い当てているように思います。

 例えば『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』はストーリー先行、曲先行、役者は与えられた範囲で最善を尽くす、といった雰囲気が強いのに対して、『MOZART!』は演出サイドの意向がそれほどまでに感じられない作品です。
 もちろん、作品の根幹であるヴォルフとアマデの関係をはじめとして、どうしてもずらせない軸はぶれませんが、それ以外の演技や歌については、ずいぶんと演じる側に任せている印象を持ちます。

 コロレド大司教のトイレシーンなど、外国の演出家が見たら速攻でダメ出しが入りそうですが(笑)、客もそれを望んでいるしいいじゃん、みたいな、いい意味のアバウトさがおよそミュージカルらしくなく、格式ばってない。
 ミュージカルと言えば歌い上げ系のキャストが揃う、という想定を覆して、歌派のキャストは中川君と山口さん、それに香寿さんぐらい。井上君、市村さん、高橋さん、久世さんはじめ、芝居派の人が多い。(井上君は微妙に中間派かも)

 キャストに共通してるのは、1つのシーンを任せられる力量を持つという点で、いわゆる「間が持たない」ことがない。
 で、7月末に木村佳乃さんを見て、『MOZART!』に出る大前提が、「役者として力量がある」ことだったということに改めて気づかされて。

 1幕の『マトモな家庭』はまぁいいんだけど(とはいえここのシーンの拍手は1幕で1・2を争う少なさです)、2幕の『ダンスはやめられない』の酷さと来たらもう言葉にしようもなく。

 この曲の段取りを感じさせることなく上手くこなしていた西田ひかるさんの凄さにあらためて感服しながら、しかもそこに感情までプラスされていた松たか子さんの壮絶さにあらためて絶句。

 この曲、「愛してるのに愛してくれない、だから好きでもないダンスに行って踊るの、それでも気持ちは満たされない、夫に何も与えられない、でも何とかしなければ、ともがく」物語だったはず。なんだけど、そんなストーリーを思い浮かばせる以前の問題として、歌として成立していない上にとにかく聞き苦しい。

 「がなる、叫ぶ、夢に出てくる」(※)って感じで叫ばれてみれば、この曲はメロディーラインの綺麗な曲じゃなかったんだろうか、と首をかしげることしばし。

※日本版原詩は「燃えて 載せて 夢に溶ける」

 この曲のソロさえなければ、芝居はまぁまぁ上手いんですが、これが全てをぶち壊しているというか。

 あとは「引っ込み思案で目立つのが嫌いな少女」という役どころが、帰国子女2連発の西田さん(アメリカ)・木村さん(イギリス)という2人とは似ても似つかず、かといえばその素と違うところを演じきる演技力があるわけでなく、どうにも消化不良な思いだけが残るのです。

 不倫現場(ではないんだけど)押さえて激怒するところも”怒り”一辺倒だし、もう少しやるせなげなところがあってもいいと思うんだけど、歌にも演技にも強弱が足りないというか、とにかく引く演技が全然出来ない人みたいですね。

 芝居は良いと言っておいて難なのですが、2幕、セシリア&トーアヴァルトがヴォルフの家に押しかけ、署名を強要する場面の話。ヴォルフに結婚&年金支給の署名をさせた後、コンスタンツェを連れて行きますが、ここでなぜか自分からスタスタ行ってしまうコンスタンツェってあり得なかろう・・・・
 セシリアに連れて行かれそうになって、それこそ力いっぱい抵抗して引きずられていく場面だと思うんだけどな。

 同じ場面、トーアヴァルトが署名を強要する文書を読み上げ、「300グルデンの年金を支払います」の後、「そんな馬鹿なっ!」とヴォルフが反論する掛け合いがあるのですが、何でか「年金を」あたりでヴォルフのかけ声がかぶさってました(7日ソワレ)。
入りミスというより、むしろトーアヴァルトの台詞が終わってもいないのにヴォルフの反論するための音楽に入っちゃった指揮ミスの感じが濃厚。
 8月に入って指揮が西野さんから塩田さんに変わってからというもの、あらゆる意味で進行が早いんだよなぁ。
(2幕の終わりが確実に5分近く早いです。7月はカーテンコール終わりは21時10分だったのに、8月は21時5分)

 もう一つ気づいたところ。
 2幕最後『影を逃れて』のシーンで、直前にヴォルフの死に直面して呆然としたままのナンネール(高橋由美子さん)は、泣きそうな表情で声もたどたどしく歌ってる、のが今まででした。正確には「歌えないぐらい涙ぐんでる」とでも申しますか。
 4日ソワレで見た時に気づいたのですが、ヴォルフガングの声が聞こえてきた瞬間に、それに背中を押されたかのように精一杯の熱唱に変わって、ちょっと「うっ」と来てしまいました。
 ヴォルフの姿が見えるわけではないけど、ヴォルフの声は心に届いたんだな、と思うと、ただ最初から力いっぱい歌うよりも、ヴォルフとの心のつながりを感じて、気持ちに迫るものがありました。

 そういえば、ふと初演帝劇のパンフを見ていたら、最後の『影を逃れて』の並び順が初演・再演では変わってるんですね。
 初演は下手側から、男爵夫人・大司教・コンスタンツェ・レオポルト・ナンネールの順
 再演は下手側から、男爵夫人・レオポルト・コンスタンツェ・大司教・ナンネールの順

 山口祐一郎さんと高橋由美子さんの背の差(30cm以上あります)って、レミゼのカーテンコールでは記憶にあったけど、MOZART!でこんなのあったっけなぁ?と思ってパンフを見てみたら、初演とは違ってた、というお話。

●「SHIROH」ゲキ×シネ予告版放映中
 幕間の休憩中に、帝劇入り口側に一番近い場所にあるテレビ(1階6扉前)にて、8月20日から放映される『SHIROH』ゲキ×シネの予告版が流れています。
 休憩時間は25分(一部30分)ですが、「SHIROH」→「ジキル&ハイド」→「屋根の上のヴァイオリン弾き」の順でリピートで、1周り10分。8/7ソワレ観劇時は、19:16と19:26の2回流れていました。(休憩は19:10~19:35)

 上川さんの表情さすが、中川君の十字架ビックリ顔ちょっと変(笑)、杏子さんの歌声あの曲はすごく好き、由美子さんの呆然と見送るアップは2列目で見たときの迫力以上。 メインの登場人物ほとんど全部映ってる秀逸な出来の予告版。

 公式HPに載っているものと同じなのですが、このレベルの「大画面」(ワイドテレビです)でもかなりの迫力なので、映画館で見たらどんなことになるのやら、始まる前からけっこう期待です。

 そして『SHIROH』ゲキ×シネのチラシ、帝劇では7日マチネを持って一旦在庫切れ。
 果てさて入手できる日が来るのやら、なんだかちょっと心配。

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