« 『SHIROH』を語る。(27) | トップページ | 『SHIROH』を語る。(28) »

『MOZART!』(12)

2005.8.26(金) 13:00~16:20 帝国劇場(東京楽)

2ヶ月間続いた帝劇公演も、この日が最終日。
この週の火曜日の公演で200回目の公演を迎え、この日は203回目。
個人的には仕事が超が付くほど忙しかったけれど、東京の最後は見届けたくて、いそいそと台風一過の帝劇に向かいます。

帝劇の表玄関から入るとそこにはこの作品の作曲家、シルヴェスタ・リーヴァイさんをはじめとして、演出の小池修一郎さんもいらっしゃいます。さすが東京楽(リーヴァイさんは前日の東京の井上ヴォルフの楽でも挨拶されています)。

今日の座席は2階3列目センターブロック。しかも、なぜか2階2列目の方が来場されないという、音響・視界ともに最良の席。
この作品はチケットのことで苦労することとは無縁でしたが、さすがにこの東京楽だけは、ことごとく全滅で、何とか譲ってもらったチケット。

●中川晃教さん(ヴォルフガング役)
 ちょっとした印象の違いなのかもしれませんが、いつも通りの歌唱を通しながら、なんだかいつもと違う空気を、1幕では感じてしまいます。緊張してる感じ。

 2幕最後、「レクイエム」で死の影に怯えて表情をぷるぷるさせる(この表現はなんだか緊迫感を表現し切れていない気がするけど)ところは毎回鳥肌が立つ。
 この直後、今日のアマデだった川綱アマデがちょっと中途半端な位置でヴォルフガングにかぶさってしまったのですが、あの体勢で30秒以上耐えた2人のプロ根性はさすがに「並みの男じゃない」((C)コンスタンツェ)のでありました。

●市村正親さん(レオポルト役)
 この日のレオポルトでなんと言っても白眉だったのが、2幕でヴォルフガングの活躍をウィーンに見に行き、最終的に親子の関係が断裂するシーン。
 このお方の演技はいつ見ても「魂」を感じるのですが、今回はそのいつもの演技の上をいく、全ての感情をこめたかのような心の叫び。
 語弊を恐れず言うと、このお方の演技は主役でずっと見つづけると、過剰な思い入れに立脚したようなところがあって、奇妙にいたたまれなくなることがある。(特に『デモクラシー』にそれを感じたかも)それからすると、この作品は市村氏の良いところをエッセンス的に抽出した、バランスの良い役に見えてきます。

●高橋由美子さん(ナンネール役)
 8月以来定着した「赤いコート」の遊びが今日は控え目。小池先生の前であれは見せられないという自主規制なのでしょうか(苦笑)。
 今日はマチネにも関わらず声の伸びも抜群、席も良かったので歌声を存分に堪能。

 彼女は長期間の公演でムラがあるのが今までの悪癖だったのですが、今回は梅芸から帝劇に至るまで、時によっては1週間おきに見たのに、出来のイマイチさを感じることが一度も無く、地力が付いてきたことを実感します。
(『レ・ミゼラブル』『ミス・サイゴン』では出来のいい日と悪い日の差が極端だった)

 舞台の出来とハイライト版CDの出来がほとんど差がないのも彼女の特徴。舞台女優として押し出しが足りないということなのかもしれないけど。
 200回記念カテコ、その場の勢いで「2000回目指して頑張ります」と言ってしまった彼女の、今後に幸あれ(笑)。

●山口祐一郎さん(コロレド大司教役)
 ミュージカルという世界を見る前は、噂だけで聞いていたこの方の歌声。この作品初演で初見、その後レミゼのバルジャン役も拝見。
 この方が出ている作品はチケ取りが大変なのですが、それでも、贔屓見に行ってこのお方の歌声も一緒に聞けるのはすごく幸せ。
 自分にとっての舞台作品は、「舞台でしか聞けない、感じられない」ものを見にいけてこそ。
 この役は市村さん同様、山口さんのおいしい所を上手く切り取ってる。歌い上げ系、威厳系、おまけに暴走気味のコメディライン。

 200回記念カテコで私の贔屓さん(↑)を妙な紹介をされたのは、天然ですか・・・?

●香寿たつきさん(ヴァルトシュッテンテン男爵夫人役)
 7月までの久世星佳さんに比べ、”冷たい”という印象が拭えなかった彼女。
 しかしこの日の彼女は少し違いました。
 「星から降る金」の歌唱一辺倒でない、温かみの加わった「天からの歌声」。モーツァルト一家との空気とのフィット感が素晴らしいです。こういうのを待ってました。本当に嬉しい。

 この役は中日劇場公演(10月)・博多座公演(11月)は一路真輝さん。つい先日発売されたハイライト版CDで、言葉にならない感想を持ってしまったのが悲しい・・・(1番はいいけど2番はちょっと・・・・)。歌が上手いと言われる人はどうして自分に酔って、突っ走ってしまうのだろうか・・・。

●木村佳乃さん(コンスタンツェ役)
 キャスト順で一番最後に来るところに彼女のこの作品での位置が窺えます。
 いやもう、今月1ヶ月、よく客が暴動起こさなかったものだとある意味感服します。
 今日はそれでも今までに比べてかなりまともだった方の歌だけど、この方の場合、演技はいいのに、台詞回しがいちいち現実世界に戻らされてしまう。甲高い地声をそのまま持ち込んでるんで、感情が読み取りにくい。

 まぁ要は、喋らず歌わずにいれば、いい女優さんということです。それってアマデのことか(苦笑)

 あと象徴的だったのは、1幕の「マトモな家庭」のシーン。派手な爆発して鍋から飛び出してきた風船の切れ端をヴォルフに投げつけちゃってます。
 ・・・・そんなの舞台の前方に投げちゃったら拾う人が大変なんですが・・・
 舞台なんだから、こんなことやったら周りに迷惑かけるとか、ちょっとは考えましょうよ・・・・

 拾う人のウェーバー家四女・ゾフィー(徳垣友子さん)、本当にフォローお疲れ様です。こういう人が舞台を支えているんだよなぁ。

 再演梅芸・帝劇の西田ひかるさんの成長を目の当たりに目にしてきただけに、8月公演、ただ一つの心残りではありました。

●吉野圭吾さん(シカネーダー役)
 今日の舞台にアドリブ発生。

 「私が誰だかご存知か?」→「エマニュエル・シカネーダー!」

 ・・・・やっぱりやったんだ・・・初演帝劇楽に不意打ちで出たアドリブは、帝劇楽のお約束とするのか、今回も登場です。

 前回の返しも最高でしたが(「私も有名になったものだなぁ、そう、その有名な、俳優にして偉大な劇作家、プロデューサー・・・・」という風に本線に戻っていった)、今回は「気分がいいなぁ~ じゃぁもう一回」の一声に会場中が爆笑。

 「チャンチャンチャララのところから」という指定までしてるのですが、それでシーンがすぐ想像がつく妙な擬音語だ・・・

◆カーテンコール編
 通常のカーテンコールが終了後、帝劇楽の特別カーテンコール。
 まずは、ヴォルフガング役の中川君からの挨拶。
 「初演でキャスト、スタッフ、オーケストラの皆さん、そしてお客様に助けていただき、『舞台は1人で作っていくものではないんだ』ということを痛感した作品。」という主旨のコメント。

 そして、この日で千秋楽となる2人からの挨拶。
 男爵夫人・香寿さん。
 「最後の男爵夫人であることを気にせずに平常心で、と思ったが(ここで声を詰まらせて、会場内から満場の拍手を受ける)、素敵な衣装で素敵な歌を歌わせてもらって嬉しかった。またぜひ、男爵夫人をやりたい」とのコメントがあり、大拍手を浴びます。

 この方の男爵夫人は歌が安定していて、千秋楽は醸し出す空気も良くて、今後もぜひ見てみたいキャストです。会場を埋めた満員の観客の皆さんの見守る様子の温かいこと。

 コンスタンツェ・木村さん。
 「1ヶ月という短い期間でしたが、もっとやりたいです。途中からの参加でしたが、キャスト、スタッフの皆さまに支えられました。客席の皆さまに背中を向けてごめんなさい、キャストの皆さまにお礼を言わせてください。ありがとうございました。オーケストラの皆さま、歌がたまに変になってしまったことがあってごめんなさい(会場内爆笑、キャストも苦笑を通り越してみんな笑ってる)。いやいや、そこそんなに笑う所じゃないですから(会場内失笑が止まらない)。私事ですが、20代最後の夏でした。とても素敵な夏になりました。ありがとうございました。」

 この人も天然なのでしょうか・・・。わざわざこんなこと言わないでもいいのに、と思わないでもないですが、その時の反応が客席・キャストともども「多少は分かったのかい」みたいな冷笑だったところが、ある意味象徴的。

 客席に背を向けてキャストにお礼言ってる辺り、会場から拍手が上がっていたのですが、それはその木村さんの行為に対してではなく、初演キャストに対する満場の拍手であったと。
(カーテンコールで客に背中見せるキャストなんて聞いたことないし。)

 お2人のご挨拶終了後、演出家の小池先生登場。中川ヴォルフが川綱アマデに耳打ちし、小池先生を呼びに行くよう伝えるのですが、ここで川綱アマデの本領発揮。何と、

山祐コロレドのおトイレシーンの真似をして呼びにいく(爆)。

彼は伝え聞く所によれば、前回エリザのカテコである意味「神」になってしまった役者ですが、さすが期待は裏切らない、お笑い志望。

 今回のアマデ4人が登場し、小池先生が順番に紹介していきます。200回記念カテコと異なり、アマデからの挨拶はなし。川綱アマデまで4人紹介し終わった後で、すぐ右隣にいた高橋由美子さんがかがむポーズをして会場から笑いが。200回記念カテコで初演アマデにことごとく身長を抜かれてたのを市村パパ・阿知波母・井上ヴォルフに指摘されてしまった彼女の、お遊びだったようなのですが、その構図が面白すぎた上に、小池先生もすかさず気づいて

「高橋由美子、準子役でした」

と紹介する辺りが秀逸。(自称、子役のアンダーだそうです。『ミス・サイゴン』でも同じことパンフで言ってた)

 前日の井上ヴォルフ楽と同様、リーヴァイさんからの挨拶もあり、「素晴らしい。また日本に来たい」という言葉はリップサービスかもしれないけど嬉しい。
 一度幕が上がった後、セットの上に座った記念撮影風の光景になって幕。

 本音を言えばカテコで歌があって欲しかったところだけど、大楽でないから仕方ないのかもしれないですね。

 この作品、10月は名古屋・中日劇場、11月は福岡・博多座で公演されます。
 個人的には新キャストにそそられるところは少ないのだけれど(一路真輝さんが男爵夫人、大塚ちひろさんがコンスタンツェ)、音響の良さに度肝を抜かれた博多座、最終日から遡って3公演を狙います。
そろそろチケット先行始まりますねー

|

« 『SHIROH』を語る。(27) | トップページ | 『SHIROH』を語る。(28) »

コメント

こんばんは、コメントありがとうございました。
私も木村嬢の歌がどのくらい進歩したのか、楽までに一度見に行きたかったのですが、やはり日程の都合がつかなかったので気になっていました。いつもながら詳しく内容を書いていただいて、舞台の様子が目に浮かぶようです。
会場内の失笑も、共演者の方々の苦笑いも彼女には「労いの笑顔」に見えているかもしれませんね。己を知らなさすぎるといいますか、ノウ天気なお方です。確かに初日に比べれば多少はよくなってるんでしょうけれど、それで本人は満足してしまったのかもしれません。いくらネームバリューがあるとは言え、ミュージカルをやりたいのならばもう少し出番の少ない脇役から入って勉強すればよかったんですよね。回りの出演者が素晴らしい方ばかりなので、本当に残念な配役でしたね。
名古屋、博多の大塚ちひろちゃんも、適役ではない気もしますが、彼女ならしっかり稽古して謙虚な気持ちでコンスタンツェに臨んでくれると思うので、応援したい気持ちも沸きますね。また、その時のレポも楽しみにしてますね(^^)
当分、ミュージカルを見る機会がないのですが、今後お勧めのものなどありますか?ジキルとハイドは見たいと思っているのですが・・・ミュージカルは詳しくないので、良かったら色々教えていただけると嬉しいです。では、長文失礼しました。

投稿: hikaru_kimi | 2005/08/28 00:35

コメントありがとうございます。いっつも毒舌ですいません(^^)。

私もミュージカル歴は長くないので(贔屓がミュージカルに出始めて以降なので)、木村さんはある意味カルチャーショックでした。東宝さんも最近はネームバリュー重視が程々だったので。木村さんがここまで言われたので、大塚さんはやりやすいかもしれないなと、ちょっと思ってしまいます。
大塚さんを見るのは博多座公演最終の11月末になりそうです。コンスタンツェは存在感が表現しにくい難しい役ということを痛感していますので、良くも悪くも公演中の進歩を期待するしかないと思うので。

ミュージカルは来年の東宝作品がぼつぼつ発表になってますが、個人的に食指をそそられるのは『屋根の上のヴァイオリン弾き』(2月・日生劇場)と『ミー・マイガール』(6月・帝国劇場)の2作です。前者は市村座長の抜群の存在感と、新メンバーでは次女役の剣持さんの澄み切ったソプラノに期待してます。後者は『ミス・サイゴン』で証明された絶妙なカップルの井上&笹本ペアを楽しみにしてます。作品派というよりは役者さん先行型で作品にはまるパターンなので。
普通は『レ・ミゼラブル』(4月・帝国劇場)と『ヴァンパイアの舞踏』(7~8月・同)なのでしょうが、とりあえずこっちの2作は出演者発表待ちで保留中。

今の所、ご贔屓(高橋由美子さん)の動きが未発表なので、それによっては他の作品をどこまで組み入れるのかが変わってしまいそうです。

こちらこそ、今後も拝見させていただきます。ありがとうございました。

投稿: ひろき | 2005/08/28 22:40

こんにちは。
注目のミュージカルを教えていただいてありがとうございます。私もお気に入りの方が出演されるかどうかで、見に行くか決めることが殆どなのです。今回のモーツァルト!もあっきーが出ていたから・・・という理由だったんですよ(笑)でも思いの外、素敵な作品だったので選り好みせずに色々なものを見たらいいのかな、なんて思ったんです。
「屋根の上のヴァイオリン弾き」は吉野圭吾さんが出るので、1回くらいは見てみたいですね。「ミー・マイガール」のお二人も言われてみれば確かに魅力ある配役ですね。奇しくも木村嬢の初ミュージカルの演目ですが・・・(^^; あとはやはり「ヴァンパイア」ですね。こちらはチケット取りが大変そうですが・・・
↓で「SHIROH」のことを書かれた日記も最初から読ませていただきました。たくさん通われたんですね(^^)うらやましい~ しかし日ネタをよく覚えてらっしゃいますね。私は成志さんのオケピネタが一番好きでしたよ。そして由美子さん演じる寿庵は本当に素晴らしかったですね。ラストの場面は何度見ても美しいし感動という薄っぺらい言葉では言い尽くせないものがありました。
それでは、また~♪

投稿: hikaru_kimi | 2005/08/29 12:58

こんにちは。ご返事遅くなってすいません。
前回書き忘れたのですが、ちょっと気になってるのが「ベガーズ・オペラ」(1月・日生劇場)。笹本玲奈さん&島田歌穂さんの演技・歌唱の新旧エポニーヌ直接対決は、結果が読めないので興味をそそられます。

成志さんのオケピネタと言えば、本当にオケピに落ちた日のことは永遠に忘れないでしょう(^^)。「SHIROH」、32回しかなかった帝劇公演にそういえば10回通いました。我ながらよく通ったなぁと思いますが、それ以上にも書き倒したなぁと。あれだけの長文、読んでいただいてありがとうございます。

寿庵役の由美子さんはファン歴十数年の自分でも、あんな表現が出来る役者さんになったんだと、驚きとともに圧倒されました。いまやゲキ×シネに通い倒す日々。あと10日間で東京分の放映は終わりですが、あと2回行きます(^^)

「MOZART!」公演中に「寿庵見てるとナンネール(という役)がもったいない」と書かれていましたが、いっぱい読んだ「MOZART!」の感想の中でも初めて聞いたコメントで、驚きつつも嬉しかったです。
では、また。

投稿: ひろき | 2005/08/31 23:55

コメントを書く



(ウェブ上には掲載しません)




トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.cocolog-nifty.com/t/trackback/74093/5653475

この記事へのトラックバック一覧です: 『MOZART!』(12):

« 『SHIROH』を語る。(27) | トップページ | 『SHIROH』を語る。(28) »