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『MOZART!』(8)

2005.7.30(土) 12:30~16:00

とうとうやってきました、運命の東京役代わり初日。
片や大阪の実績も耳にして期待いっぱいの香寿男爵夫人、
もう一方は唯一のミュージカル経験が恐ろしいほどの出来で心配いっぱいの木村コンス。
怖い物見たさと、8月の観劇の心の準備に、行って参りました。

あらゆる意味(いい意味以外も含めて)で本日の主役、コンスタンツェ役の木村佳乃さん。
昨日まで西田ひかるさんがやっていたわけですが、演出か演技か、けっこう佇まいが違っています。

◆マトモな一家
登場のシーン、西田コンスは髪の毛いじってましたが、木村コンスは客席に背を向けて寝てます。
西田コンスに比べて木村コンスはコンスがヴォルフに目を付ける瞬間がひたすら早い。一目見て恋に落ちたような感じで、アロイジアにヴォルフをモノにさせようとしてる母親に食って掛かってたりします。

アロイジアが歌を歌おうとするとき、そのタイミングで調理具をこつんと叩いて邪魔するのは同じですが、「邪魔できる方法に気づいたわ」ってアクションして、鍋に盛大に野菜を入れ込み、スカートで煽って鍋の火の勢い強める様子に爆笑。
爆発に最初から気づいて、いとも早く回避姿勢を取る様をみてると、コンスが計算高い女性に見えてきたりしたけど、芝居の作りとしてはけっこう非凡。

4人姉妹のハーモニーもそんなに違和感なく、バランス良。

◆並みの男じゃない
このあたりから微妙になり始める木村コンス。『ミー・マイ・ガール』の時に歌うと客席の人に「手に汗握らせる」と言わしめた彼女の、ありがたくない本領が発揮されてきます。
要するに、この人に歌わせるなと。ソロもダメ、デュエットはもっとダメ。
あっきーもパワーを絞っちゃうし、コンスは邪魔さえしなければいいキャラなのに、色んな意味で本来の場所から余分にはみ出る感じがすごーく煩わしい。

コンスの印象は、それぞれ記号で表現すると、こんな感じ。

 △コンスタンツェ:松たか子さん(初演日生、シアタードラマシティ)
 ◇コンスタンツェ:西田ひかるさん(初演&再演帝劇、再演梅田)
 □コンスタンツェ:木村佳乃さん(再演帝劇)

松さんはとがった感じが三角形。ヒステリックでいつも自分の存在が見えなくて自分にイライラしてる感じ。
西田さんは飛びぬけたところを持たないバランス型の感じがひし形。よく言えば無難、悪く言うと自己主張不足。
木村さんは外側のものにぶつかる感じが四角形。しかも正方形ではなく長方形(笑)。小回りが効かない感じ。

木村コンスは声質に艶がないので、声量でカバーしてる(たしかに声は凄い出てる)。
シーンによっては強くて良かったりするんだけど、初日ということもあって要は周りを見て動けてない。
これがいつまでたってもそのままなのか、それともこの後こなれてくるかかな。

※ちなみに彼女は大分・由布院のドラマロケで、出演者一同で行なわれた大声コンテストで、堂々の1位を獲得されたそうだ(142デシベルだったか)。

◆ダンスはやめられない
帝劇で耳栓を売っていないのは幸か不幸か(笑)。

音階は取れてるけど、歌うより叫ぶって感じ。声がハイトーンではないので、キンキンにはならないけど不快な方向に声が伸びる。メロディーの綺麗さなんてどこかに置き去り、ただガナり立てる様はいい曲もらってる役者のスタンスとしてどうなのかと。

でも演技は面白いところあったりするから困る。

この曲の直前はナンネール&レオポルトの「プリンスは出て行った」ですが、父からナンネールの結婚について聞かされたヴォルフは、一度はお金を送ることにしますが、悪友にそそのかされて結局、そのお金で遊びに行ってしまいます。
がらんとした家に戻ってくるコンス・・・うーむもう少し台詞回し何とかならないのだろうか、この棒読み・・・

ベッドに残された父からの手紙を読んで、西田コンスは早く投げ捨てます。「興味ないわ」みたいな感じで。そんなこともあるから西田コンス&高橋ナンネールでは2人の関係はヴォルフを挟んだライバル関係みたいなところがあるのですが、木村コンスの場合、手紙をじーっくり読んで、やるせなげに投げ捨てます。

ここが何だか、やんちゃでどーしよーもなくて困ったちゃんだけど才能がある男(ヴォルフ)に関わることになってしまった2人(コンス&ナンネール)の奇妙な連帯感みたいなものを感じてしまって、自分自身はこの作りのほうが好き。

なんだか、コンスとナンネールがどこぞの酒場で(妙にリアルですな)
「弟にも困ってるのよ。」
「お気持ちわかりますよ、一緒にいて心が読めないですよね。」

とか語ってそうな感じが笑っちゃう。

レオポルトが亡くなって、その事実をヴォルフに伝えにくるナンネール。
その姿にいち早く気づくのはウェーバーの奥さんですが(ところでこの人、なんでナンネールを見てヴォルフのお姉さんだったということがすぐわかるんだろ。存在を知る機会さえ描かれてませんが)、ヴォルフが気づく前に、コンスが咄嗟にヴォルフを「つんつん」と叩く。
「ヴォルフ、お姉さんよ」って感じで。

この辺は西田コンスはかなり曖昧に作っていたので、木村コンスのナンネールへの非敵対的な役づくりはなんだかちょびっとだけ嬉しい。


そして、本日もう一人の新顔、香寿たつきさん(ヴァルトシュッテンテン男爵夫人)。
『屋根の上のヴァイオリン弾き』(2003年、東京芸術劇場ほか)の長女・ツァイテル役で拝見して以来、2年ぶり。木村さんと違い、帝劇は初登板。

大阪での評判を耳にしていたのですが、お歌が素晴らしい安定感。
「星から降る金」は初演以来、久世さんしか聞いたことがなかったわけですが、香寿さんが歌うこの曲は聞き惚れるという言葉以外に思いつかず。

この曲は、今まではヴォルフ&レオポルト&ナンネールの3人芝居のBGMでしかなかったのですが、初めて歌ってる人に目を奪われたですよ。
歌に余力がある反面、久世さんの持った温かみみたいなものがそれほど感じられなかったのは残念だし、この曲の歌い出しのなんだか微笑ましい掛け合い(男爵夫人&ナンネール)がどこかよそよそしかったのは淋しかったけど。
きっと、この辺はこれから小慣れていくのでしょう。

ただ、圧倒されるような存在感とは縁遠かった印象があって、地味という印象強し。

本日の座席はA席の一番前の下手通路側。音はよく通るし、どんなに前に座高の高い人が座っても絶対に視界が邪魔されない最良の席。(直前が補助席ですが、それさえも前にない。帝劇4列からの通路なので)

それもあってか拍手は今までで一番響いて聞こえました。

カテコはいつものバージョン(2回分)+追い出し音楽の後、中川ヴォルフ&黒沢アマデ登場にて、アマデが本日初顔の2人を呼びに行く。
特に挨拶はありませんでしたが、木村コンスは満面の笑みに堂々とした主役ぶり。香寿男爵夫人は控え目なお辞儀。
何かこの好対照さが全てを語っていたような。
木村さんはもう少し引いて欲しい、香寿さんはもう少し出して欲しい、そんな感想でした。

さてさて、明日は『SHIROH』のゲキ×シネ先行なので、これで寝ます。
初回取れるといいんだけど、新感線先行で簡単になくなったって話だからキツイかもなー。

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