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『MOZART!』(2)

7月4日ソワレ(夜)、東京・帝国劇場初日、観劇してきました。

●データ編
 2005.7.4(月)17:45~21:10(カーテンコール込み、休憩25分)

 ヴォルフガング・モーツァルト:井上芳雄
 レオポルト(モーツァルトの父):市村正親
 ナンネール(モーツァルトの姉):高橋由美子
 コンスタンツェ(モーツァルトの妻):西田ひかる
 コロレド大司教(ザルツブルグの領主):山口祐一郎
 ヴァルトシュテッテン男爵夫人:久世星佳
 アマデ(子役):黒沢ともよ

 パンフレット帝劇版 1,600円
  梅田芸術劇場公演の写真あり
  ヴォルフガング(井上・中川)のインタビューあり

今回は初日ということもあるので、大阪のレポと趣向を変えて、舞台の流れに沿って書いてみます。後ろで初演版CDをかけながら(シーンをすぐに思い出せない自分が頼りない・・・・)。コンスは松さんだったりしますが。

●第1幕・第1場(奇跡の子/人は忘れる)
 初っ端からアンサンブルの出来の凄さに圧倒されます。いくつか東宝系の作品見てるけど、アンサンブルはこの「MOZART!」と「イーストウィックの魔女たち」(7月3日から博多座で公演中)と「SHIROH」(2004年12月~2005年1月)が個人的に3強。

 「人は忘れる」はこの作品の久世さんの曲では一番好き。男爵夫人は今のところ久世さんしか見ていないのですが、ヴォルフガングをどことなく突き放す(大人として扱う)ところと、この曲の空気が合っている気がする。この曲をハイライトCDで聞けるのは嬉しい。

●第1幕・第2場(赤いコート/僕こそミュージック)
 ヴォルフガングとナンネール、弟と姉がじゃれあう唯一の曲になる「赤いコート」。初演版の井上さんCDで音を派手に外しちゃってる由美子さんですが、再演は梅芸で何の苦もなくすりぬけてることを確認済みなので、かなり安心。

 ここでヴォルフガングがふざけてるところで、ナンネールが「ヴォルフガング~」って言うところの言い方が何とも言えず好き。特に井上ヴォルフ相手だとやんちゃぶりに呆れつつも、しょうがないなぁと思ってる感じが声に出てて凄く上手いなーと思う。

 赤いコートを「さいころ一つ」(つまり博打ですな)で儲けたお金で買ったというヴォルフに「またツイてたのね」といたずらっぽく言う所もツボ。
 この日は井上ヴォルフとですが、中川ヴォルフとはまた別の空気が流れてたりする。
 ナンネール推しとしては珍しい楽しいシーンなので、かなり浮きうきします。

 「僕こそ音楽(ミュージック)」。歌詞聞いてると、井上ヴォルフと中川ヴォルフの違いが鮮明に見えるというか、中川ヴォルフが1番(「役者じゃない 芝居は出来ない」あたり)、井上ヴォルフが2番(「バカ騒ぎが大好きさ」あたりw)って感じがする。

 ”ありのままを愛してほしい”という言葉が、この時点だとまだ切迫した感じがないので、2幕見終わってこの曲聞くと、ヴォルフは最初から最後まで、自分自身を分かってほしいと思いつづけて、ついにそれが果たされなかったのかなと感じる。

●第1幕・第3場(何処だ、モーツァルト!)
 歌い上げ第1シーンになるここ。コロレド大司教の傍若無人さが歌ってる山口祐一郎氏に凄まじくハマってる。モーツァルトメインに見ると嫌われ者なのかもしれないけど、何せ歌の力が並じゃないから、敵役としての存在感十分。

●第1幕・第4場(私ほどお前を愛するものはいない)
 この作品、あてがきじゃないかと思うほど、キャストと役がぴったりきてるとつくづく感じますが、それを顕著に感じるのがこの曲。

 「芸術家は自らに厳しくあるべきだ」と言うはレオポルト役の市村正親さん。
 「芸術家は自由であるべきだ」と言うはヴォルフ役の井上芳雄さん。

 なんだか、2人の役者の立ち位置にあててある気がして、見る度にすごく複雑な気持ちになったりします。

●第1幕・第5場(まぁ、モーツァルトの娘さん!)
 ナンネール楽しいシーンその2、ここが終わるとひたすら苦悩するシーンに突入です。
 このシーンもアルコ伯爵の余計なチャチャが入ったりするので、楽しいばかりじゃないのですが、「夢見る少女」のいっちゃってるぶりが堂に入ってます、由美子さん。
 道を歩いてる人が指差してさらし者にするぐらいに。
 自分の世界に入るのはショムニ以来の彼女の特技だしなー

●第1幕・第6場(心を鉄に閉じ込めて)
 レオポルトのソロ。この曲を聞いてると、レオポルトも随分人にだまされた経験を持ってるようで、世渡りの下手さを吐露してるような気さえしてきます。
 これはむしろ褒め言葉みたいなもので、この作品の役って、ある意味、世渡りが下手な人ばかりが集結してるような気がするので、その不器用さが、不完全で人間らしいところに見えて好感。
 人生なんてそんな思うように行くものではないし。

●第1幕・第7場(マトモな家庭)
 ごめんなさい、1幕で一番眠いシーンです(爆)。今日も拍手が一番小さかったシーンだと思う・・・
 ウェーバー家の長女・アロイジアの歌声が絶品(宝塚出身の秋園美緒さん)で、それだけを楽しみにしていたりします。
 コンスもダメダメっぷりが意外でも何でもなくて正直、長くてダレてしまう。

●第1幕・第9場(母の死/残酷な人生)
 モーツァルトに付き添った母がパリで亡くなるシーンが入っています。
 この死に姿が由美子さんにそっくり。そりゃ娘と母じゃ似てて当たり前なのですが、『レ・ミゼラブル』の2003年版パンフに載ってる工場での帽子かぶった姿にものすごく似てるので、他人に全然見えなかったりします。(ちなみに実際に演じてるのは、北林優香さん)

 ヴォルフが最初に魂の叫びを発するのがここ「残酷な人生」。
 母の死を目の当たりにして、最初に狂いだすこのシーンが、特に井上ヴォルフのこの3年の成長を一番わかりやすく表現してる感。初演だと歌詞をなんとか乗っけるのが限界みたいなところがあったのに、再演では余裕で叫んでる。軽々と”ヴォルフを乗っ取ってるんだ”ってのが見えて実に頼もしい。

●第1幕・第10場(チョッピリ・オツムに、チョッピリ・ハートに)
 この作品、一番はっちゃけてるシーンは多分誰に聞いてもここと言うと思われます。
 吉野圭吾さん演じる興行師・エマニュエル・シカネーダーは「ハマリ役」という言葉以外で表現しようがないインパクト。初演でも絶賛されてたけど、こういう道下的な役どころ(褒めてます)は、吉野さん、抜群に上手い。
 役に酔っちゃうところがないから、見ていて「エンターテイメントに徹してるよなぁ」って感心できる。

●第1幕・第11場(星から降る金/私ほどお前を愛するものはいない)
 「MOZART!」を代表するソロナンバーがここに入ってきます。ヴァルトシュッテッテン男爵夫人が歌うこの曲、正直、久世さんの声質とスタンスとは、上手く合わない曲だと思う。
 大阪前半のように風邪をひいてはいなかったので、今日は今までで一番良く聞けたけど、やっぱりちょっと無理してる感があり。

 男爵夫人が現れる直前に、ちょっと女遊びしてたヴォルフを、「何やってのよ、もぉ」って感じで服装直してるナンネール姉さん、芸が細かい(笑)。

 このシーン、男爵夫人の歌詞を聞いてニコニコしてるヴォルフと、困ってるレオポルト(男爵夫人の申し出をいきなり撥ね付けるわけにもいかないんで)と、どっちの気持ちも分かるのでどっち向いていいかわからないナンネールと、3者の家族関係がすごく濃い(帝劇パンフにもいい写真が載ってます)。
 
 その直後に「私ほどお前を愛するものはいない」に突入するからなおさら。3人の立場が上手くシンクロするこのシーンで、いつも物足りないのは、由美子さん。贔屓にしてるけどここだけは・・・・。
 高音のしかも裏声が苦手なのは承知してますが、ヴォルフとレオポルトに挟まれると、どうしても埋もれちゃうんですよね。再演でようやく歌詞が分かるようになったけど。

●第1幕・第13場(並みの男じゃない)
 このシーンはヴォルフとコンスタンツェのシーンですが、今まで見た範囲ではなんだかバランスが良くなくて。
 初演の松×井上、松×中川は、松さんの存在が大きく見えすぎたし、初演の西田×井上、西田×中川はシーンが作れていないように見えた。
 先月見た再演の西田×井上、西田×中川は、今度はヴォルフ側が成長しすぎて、西田コンスの呼びかけがなんか浮いてた。

 それからすると、再演の帝劇まで来てようやくすっきり形になった気がする。
 西田コンス、コンスを累計2ヶ月(初演の帝劇と、再演の梅芸)やって、ようやく役がつかめてきたように見えた。

●第1幕・第14場(終わりのない音楽)
 曲に入る前、ナンネールが言う「あのマンハイムにいたウェーバー一家・・・・」とつぶやくシーンが、再演では明確に怒気を含んでます。初演は「ウェーバー一家がどうかしたの?」という疑問形だったのが、今回は「敵視」した声色に変わっていたのが、印象深かったですね。

 ナンネールとレオポルトのデュエット。
 由美子さんの声量が上がって、とてもお得なハーモニーになってます。
 1番は初演当時の滑らかにメロディに乗せる様子から、一言一言感情を込める感じに変わってた(個人的には滑らかな方が好きなんだけど)。
 2番を力強さで押し込んでいくところは変わっていなかったけど。
 帝劇初日は、梅芸とさえ歌い方が変わってた気がする。
 まぁこれからいっぱい見るし(爆)、追い追い確かめてくことにします。

 ナンネールが落としたステッキを、拾い上げ、最後に返すレオポルト。
 「才能」の象徴に見えて、うるっと来てしまいます。

 この曲は東宝公式HPにて、中川ヴォルフが「好きな曲」に挙げてくれてます。なんだか、凄く嬉しかったりして。

●第1幕・第16場(影を逃れて)
 ここは何度聞いても鳥肌が立つシーン。最強のアンサンブルに最強のプリンシパルが合体した最大音量の音の波が、怒涛のように押し寄せてきます。
 ヴォルフの魂の叫びが導入部になって、各キャストが同じテーマに向かって、それぞれの生き様をぶつけてくエネルギーが凄くて、魂が毎回持っていかれます。

 私的ポイントとしては、ヴォルフの背後にいるキャストが、90度右回転(客席から見て)する場面。本当にぴったり90度、同タイミングでキャストが一気に動く。
そのあまりの整然さに、意志の強さを感じて素敵。

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1時間40分地点、ここで第1幕終了。
CDをほぼノンストップでかけているので、この文章自体も書くのに1時間40分要してます(笑)。
第2幕は力尽きて今日中には上がらないかも・・・・

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