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『MOZART!』(1)

 今年の観劇作品メイン、『MOZART!』の観劇スタートです。
 モーツァルトの生涯を描いたミュージカルで、6月(大阪・梅田芸術劇場)、7・8月(東京・帝国劇場)、10月(名古屋・中日劇場)、11月(福岡・博多座)での全国縦断公演が行われます。

 今のところ、チケットは梅田・帝劇が発売済みですが、手元に2桁枚数のチケットがあるのはなぜ(怖)。

6月11日(土)ソワレ 梅田芸術劇場 17:00~20:20

 あいにくの曇天の中、『SHIROH』(今年1月)以来の大阪。この4月から劇場名も改称され、梅田コマ劇場から梅田芸術劇場へ。
 『SHIROH』のDVD予約チラシも挟まっていたりで、なかなか痒いところに手が届いています。
 ちなみに、パンフレットは1600円。

 1週間前からM!の音楽絶ちして、頭をまっさらにして臨んだこの日の公演。
 初演は2回しか見ていない(日生1回・帝劇1回)のですが、ほとんど演出が変わってないのがわかるぐらい、覚えているもんですね。

◎ヴォルフガング・モーツァルト/中川晃教さん(Wキャスト)
 『MOZART!』初演&『SHIROH』で見せた、突っ走り型の勢いが前半はなぜか感じられず、ちょっと物足りなさを感じましたが、2幕の化け方は圧巻です。溜めに溜め込まざるを得なかったエネルギーを、しかもどう出していいのか苦しむキャラクターに胸が締め付けられます。
 「才能」に縛り付けられ自由を与えられなかったヴォルフガングは、やりたいことよりやらされることが立場的に出てきてしまっている現実の彼にシンクロするものがあって、なんだかやりきれない思いもあって。
 初演当時に、何も怖がることなく突っ走っていた様は、若さゆえのものだったのだなぁと痛感させられます。

 出来が良くないとかいうことでは決してなく、初演から「才能」という点についてヴォルフガングそのものだった彼が、再演でもっと「不自由」に苦しむ様は、ある意味、試練なのかもしれません。

◎コンスタンツェ(モーツァルトの妻)・西田ひかるさん(期間代わりキャスト)
 正直、思ったよりは良かった。ほとんどテレビにも舞台にも出ず、芝居勘が鈍っているかと心配したのですが、ある意味、上手なのかなと思う。
 それはいい意味だけでもなくて、「下手じゃない」からそこでレベルが止まっちゃってるってことでもあるわけで。歌も下手ではないのでまともに聞いていられる。演技だっておかしくない。でも、なぜ彼女じゃなきゃいけないのか、彼女がコンスタンツェをどういう人物として描こうとしているのかが、見えてこないのが物足りない。
 ヴォルフガングとラブシーンを演じて、ソロを歌って、それで良しじゃ困るんだけどな。
 歌声を伸ばして欲しいところで無難に終わらせるのがもったいない。いい曲いっぱいなのに。
 初演ではこの役は松たか子さんとのWキャストでしたが、個人的な好みは圧倒的に松コンスでした。
 なぜなら、作品に対する役どころの作り方が明確だったから。
 「私はコンスタンツェという役を、こう作って作品に載せてます」ってところが確立してたから。
 「何も信じられなかった彼女が、ヴォルフガングに出会い、才能に魅せられ、才能に必死で追いつこうとした彼女が、自分の無力さを思い知らされて壊れていく」様が、作品にとって『ヴォルフガングを狂わせ、ヴォルフガングに狂わされた一人の女』として有効に位置づけられていたと思う。

 松さんの場合、当時はまだキンキン声が先行していた彼女の歌声も、それほどの耳障りには感じなかった(彼女も『ミス・サイゴン』のキム役でずいぶんいい方に変わったと思う。あれだけ客寄せとか言われながらきちんと成長できる様はさすが上手な役者だと思う)。

◎ナンネール(モーツァルトの姉)・高橋由美子さん
 梅田まで私を引っ張る引力をお持ちの方です(笑)
 主役の中川さんほどではないけれど、初演当時に相当の当たり役と言われた役。
 久しぶりに見て、やっぱり舞台経験の多さは伊達じゃないというか、初演の欠点といわれた微妙な歌唱のぶれを技術の向上でカバーし、抜群の安定感。
 初演当時にひたすら苦手にしていた、「金のししゅう~」のくだり(M5『赤いコート』井上版CDでは音ひっくり返してます)も難なくこなしていたし、何より『プリンスは出て行った』が出色の出来。
 もう一方の『終わりのない音楽』は彼女らしくもなく、ちょっと濁った感じの歌声。
 8月末に発売の決まっているハイライト版CDは『終わりのない音楽』の収録が決定してるけど、『プリンスは出て行った』の方が個人的には好み。

 初演はもっと由美子さんの地声をそのまま活かした歌い方だったと思う。なんだかんだいってもミュージカル的な歌い方にはなってきてるから、歌い上げ系にちょっぴりだけ物足りなさを感じ、台詞じみた歌の滑らかさに感嘆。

 そして初演でも再演でも変わらないところ。
 2幕ほとんど最後、父・レオポルトが亡くなったことをヴォルフガングに伝えた後、妻・コンスタンツェと対峙するシーン。なんか叫びあってて、コンス・ナンネールともに言ってる言葉がわかりません(爆)。
これ、松コンス相手だともっととんでもなかったなぁ(遠い目)。

 彼女の表情を見ているだけで、作品がどっちの方向に進んでるかわかります。M3『奇跡の子』での表情の変化なんて見ててショックなぐらいの変わりようでした。

◎お3方以外の方を駆け足で。
・コロレド大司教(山口祐一郎さん)
  一部遊びすぎなシーンがあるけど(ちなみにトイレのシーンね)、ショーストップかかりそうな『神よ、なぜ許される』に鳥肌。劇場全体が物音一つしない空間になり、ただその最後の叫びだけを待つ瞬間。
 歌っている方も気持ちいいと思いますが、聞いているほうも相当に感動です。

・レオポルド役/モーツァルトの父(市村正親さん)
 この方の壊れていく様は『MOZART!』のもう一つの柱。才能を見抜く力に利けながら、息子の成長を心から喜べはしなかった哀しさを、身体全体で表現されていました。市村さん、落胆と絶望で弱っていく様がリアルすぎるほどリアルで、ある意味怖い。世の父親は大なり小なり、子供に対してこういう面を持たざるを得ないということなのかもしれません。

・ヴァルトシュテッテン男爵夫人(久世星佳さん)
 予想よりは良かったです(何かコンスと同じ様なこと言ってますね)。
 ただ本音は、ウィーンに行きたがってるヴォルフガングに、表面切って異議は唱えないナンネールはともかく、レオポルトを説き伏せるにはあの歌じゃどうにも・・・・
 あの”レオポルト”をオーラで圧倒するようじゃないと、さすがに話が成り立たないんじゃないかと。

・シカネーダー(吉野圭吾さん)
 パフォーマーの本領発揮です。
 『SHIROH』のしげちゃんこと板倉重政役と同系統の超はまり役。
 パリの市民が蜂起するところで「我々も立ち上がろう」って拳上げるあたりは、それこそその時のパリを描いた『レ・ミゼラブル』の某赤いチョッキの役を思い出したりして。
 ただの思いつきだけど、『MOZART!』のこのタイミングと、『レ・ミゼラブル』のABCカフェのシーンを時間を合わせて公演なんかしたら面白そうなんだけど(1時間30分遅くレミゼ始めればちょうどかな、レミゼはM!と違って子役出てないし)。いまや、山口さんぐらいしかキャストがかぶってないし、山口さんだってレミゼはクアトロキャストだし。
 梅田芸術劇場、メインホールとシアタードラマシティで同時公演とか、いかがでしょ(ただのネタだけど)。

 ・・・・初回観劇の感想としてはこんなところです(でも長っ)。
 本当は、作品物語の中身を考えたりとかってのもネタとしてはあるのですが、それは追いおいということで。

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