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キャラメルボックス『TRUTH』

演劇集団キャラメルボックス、創立20周年記念公演第1弾、『TRUTH』@サンシャイン劇場。
見に行って参りました。(3/13マチネ)

前説で話が出ていたのですが、サンシャイン劇場につながる地上のサンシャイン通り。池袋駅東口から地下道を通るのではなく、年がら年中人であふれる地上のこの通りを通ると、現在、外套から吊るされる「キャラメルボックス20周年記念 TRUTH」の垂れ幕。何気に結構目立ってます。
「10周年は自分達で盛り上がってたけど、20周年は自分達はクールで、かえって周囲が盛り上がっててびっくり」とは制作総指揮の加藤氏。

チケットを入手しながらどうしても行けなかった2週間前の悔しさを晴らせて嬉しいです。
正直見て良かった。すごく心地よい観劇でした。

しっかしサンシャイン劇場823人、ほぼ満席のこの日。
男1人で見に行っている人間って超少数派なんだろうなぁ。

キャラメルボックスは以前から気になっていた劇団で、昨年の『SKIP』を迷いに迷った末に行かなかった前歴があるのですが(あの頃は『ミス・サイゴン』にどっぷり漬かった後で、切り替えが上手くいっていなかった)、『SHIROH』で拝見した上川隆也さんも出演されるし、ということで早くから行こうと決めていました。
よりにもよってチケ獲り困難なキャラメルの、しかも上川さんが出る作品を初見にすることはなかろうとは思いながらも。

というわけで初演は見てません。一応その立場だけ書いておかないとわけわからなくなりそうなので。

いつものごとく内容はネタバレです。内容見られたくない方、ここからは見ずに回れ右お願いします。


鏡吾というか上川さん面白すぎ。噂には聞いてたけどこんな面白いキャラクターだとは想像以上(前半限定)。笑いネタでも真剣シーンでも一人突き抜けてて大きすぎる存在感。

あの血反吐吐くような上川さんの台詞回し、つくづく鳥肌が立ちます。
本当に慟哭の似合う役者さん。
「うぬぼれるな。お前らなんかどうでもいい」
とかもう。

上川さんが予想通り頭抜けていたので、それに対応しきれていたのは弦次郎を演じた岡田達也さんと客演で帆平役を演じた川原和久さんぐらい(私感)。英之助役の大内厚雄さんも悪いわけじゃないんですが、役柄のせいか、内側に篭る方向性ゆえに目立っていなかったというか。
他の方は正直、役者の違いを感じてしまいます。
そしてさすがすぎる殺陣。アクションクラブのジャージをもらっただけのことはあります>上川さん(※)
でもなんだか抑え気味な感じはしました。
本気で斬ったら、全員なで斬りにしてしまいそうだし。

(※)新感線の舞台では殺陣を”よくできましたで賞”の方にアクションクラブから名前入りのジャージを贈呈するのが習わしになっています。

ストーリーもざっとしか予習していかなくて、鏡吾が裏切ることだけ頭に入ってたせいもあってか、隙あれば裏をかこうとしてる鏡吾と、それに全然気づかない鈍いお方たちの落差が役者の大きさの違いとシンクロして、リアリティと言えなくもなく。。
ただ弦次郎は敏感だから、気づいていたんじゃないかなぁ。
鋭い頭の切れに加えて、事故で聴力を失ったことで感覚はより鋭敏になっているわけだし。
鏡吾に対して「同士とはいえ、100%さらけ出していない」感覚を持っていたような気がした。
いつかは直接鏡吾と対峙して、自らの手で決着をつける日がくるという思いはあったろうし。

「お前だけにはバレると思ってたよ」って鏡吾が弦次郎に語っていそうな気がして。
弦次郎は英之助を斬ってしまった時に、鏡吾の目的の全てを知るのだろうけれど、何というのか「パズルの最後のピースがはまった瞬間」を感じてしまった。

弦次郎はパンフでも「キャラメル史上最も辛い役」と書かれているけれど、さもありなんというか。
なまじ真面目なだけに、自分の取ってしまった行動が、例え鏡吾の策略の結果であっても、それを受容する、せざるを得ない性格なのだろうし。
別に弦次郎に限った話ではないけれど、性格が自らの行動を制約することはあるかなとは思う。
人間の根幹はそれぞれの人で違うとはいえ、自らが”譲れないもの”を持っていて、それが長所とすることもできるし、それに苦しめられることもある。
自らの”譲れないもの”とどう向き合い、どう答えを出していくか、その人生における”譲れないもの”が「TRUTH」なのかなと思う。

2週間前に観た『デモクラシー』でも同じようなことを書いたけれど、「これを否定したら、自分が自分でなくなる気がした」と吐露する自らの根幹の部分。

弦次郎が鏡吾を憎んだとしても、”憎みきれない”部分はあったのだと思うし、それ故に、全員にことさらに鏡吾の行為を暴き立てることはしなかった、というかできなかった。
それが弦次郎にとっての「TRUTH」だったのかなとちょっと思った。
語らない、語れないところに真実があるという印象。

最後に弦次郎が手紙を書いたのも、全員に向けてではなかったわけだし、愛する女性(初音)にだけは真実を知っておいて欲しい、ということだと思うし。

この作品、痛感したのは、女性キャストの存在感の弱さ。
『SHIROH』と比べちゃいけないのはわかっちゃいるけど、初見なだけになおさらその念が強く。
キャラクターがきっちり確立してたのはふじ役の岡田さつきさんだけかも。
男性の念、特にメイン3人の念が凄すぎるので、女性3人の関わり方が全然噛み合えてなくて。
幕末だから女性は男性に何も言えなかったの?とか聞きたくなってしまうぐらい薄い。

それでも『SHIROH』も江戸時代中期の話だから、男性をあそこまで動かせる女性というのはそれだけでそうとうありえない設定だと今にして思うけど、やっぱり女性だから男性を支えられる部分ってあると思うし、あの時代だからあの時代なりの、女性としての関わり方ってあると思うし。
姉さん女房のふじのキャラが立ってたのは、全然偶然ではないと思う。
どういう形で男性を立てるのかが、あの時代の時代背景を含めて、きちんとはまっていたように感じた。

女性が男性に対してできること、それがそれぞれの役に消化されていなかった感じが惜しかったかな。
ばりばり男性が主役とはいえ、それを支える女性がはなっから”私はお役に立てないのですね”を地で行ってはまずかろうと。
女性なりの存在の仕方、支え方が欲しかった。


さて閑話休題。
本編終了後のカーテンコールが本編以上にツボ。
日替わりカーテンコール挨拶の初音役、小川江利子さんは天然入ってる感じでゆえに、上川さんの光速のツッコミ全開モードを引き出して面白すぎ。
「ゲストを紹介します」でいきなり一歩踏み出す上川さんも笑えたし。

でも何より面白かったの、この掛け合い。最後、上川さん&岡田さん2人で出てきてのトーク。
上川さん「もうこの男も37になりましたし」
岡田さん「あなたこそ39じゃないですか」
上川さん「歳の話はいいんですよ(会場笑)」
岡田さん「あなたがしたんじゃないですか(再び会場笑)」

上川さん「客席の方々、あなたがたがあと一つだけできることがあります。
     ・・・・帰んなさい
    「一本締めで参りたいと思います」(会場大いに沸く)
    「そんなに喜ぶならやらない(なぜか拗ねたように)」
    「それでは不本意ながら一本締めで」(再び会場笑)

・・・・てな具合。面白かった。


余分な余談
1.「光速の突っ込み」はNiftyシアターフォーラムの動画での製作発表で観ていたので心の余裕がありました。てか、楽しみでしたが
期待通り(笑)

2.現在発売中の『シアターガイド』4月号はキャラメルボックス創立20周年特集が巻頭に。製作総指揮・加藤氏いわく、「初めて」のことだそうです。
 推薦人として『SHIROH』で上川さんの相手役を務めて、
何気に上川さんともキャラメルボックスの劇団員とも飲み友達っぽいお方(=高橋由美子さん)がコメントを寄せられております。
 「キャラメルボックス」の文字に惹かれて雑誌を手に取って
書店でのけぞりました(笑)。

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