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『相棒』3rd Series最終回

『相棒』3rd Series最終回、「異形の寺」
2005/3/23(水) 21:00~22:24、テレビ朝日系

 このブログで舞台話以外を出すのは初めてですが、まぁいつもと変わらず書きます。

 まず最初に。このドラマ、3rd Seriesなわけですが、筆者自身、この回とその前の回だけしか見てません。
 ですから、『相棒』の世界観をずっと見てきたわけじゃないので、登場人物の人間関係とか、思い入れとか、すっぱりないです。
 ですから、その辺りをかなり無視した感想になりますので、一応念のため。

(以下、役名は「さん」抜きです)
 このドラマ、メイン主役は特命捜査課の右京(水谷豊さん)&亀山(寺脇康文さん)。で、ストーリー上重要な役回り、というか犯人役にゲストを迎えるのが常。(ちなみに右京さんの名字は「杉下」なのですが、こっちの方が通りが良いので)
 今回のゲストは3人。準レギュラー気味の津川雅彦さん、尼寺の主に高橋恵子さん、でストーリーのメイン、尼さん、
というか犯人役に高橋由美子さん。

 亀山が池で発見した死体から作られた復顔写真、その写真に瓜二つの顔をした尼さんを、尼寺で見かけたという瀬戸内(津川さん)。確かにそこにいたのは正にそっくりの顔、雀蓮(高橋由美子さん)。右京&亀山コンビは雀蓮と会話するが、なぜかその話を自ら切り出そうとしない雀蓮に、右京は違和感を持って・・・・・
 というのが導入部。

 まずもって出色なのが水谷さん演じる右京のねちねちとした(でもそんなにイヤミはない)問い詰め方。違和感の正体を明かすべく、雀蓮を問い詰めていく様が絶妙。全てを知っているのに、それでもあえて周囲からじりじり追い詰めていく演技は流石です。
 そしてその右京に追い詰められる雀蓮。右京と雀蓮の「視線」が絡み合い、右京の物言いに、自らの真実を明かしていく雀蓮。全てを分かっている、そして全てを受け入れる人相手だから吐露できる犯人としての告白。
 目で演技するところがすごく好きなんですよね。
 問い詰められて「はっ」とするところ、戸惑うところ。相変わらず芝居が細かいのです。

 見て感じましたが、このドラマの良かったところは「間」を上手く取っていることですね。”大人向けの刑事ドラマ”の尊称は伊達ではないというか、溜めがじっくりあるところは見ていて落ちつきます。
 で、結末をわかって見返すと、あぁ成る程って作りになってます。

 開始50分地点。
 捜査一課の伊丹刑事(川原和久さん)はじめ3人の刑事が雀蓮を追い詰めるところで、
伊丹がぼそっとつぶやく。
「あれで男だったら化けもんだよな」

 伊丹を睨む雀蓮。立ち上がり食って掛かる。

  ----------------------------------------------
  あたしは・・・・化けもんなんかじゃない。
  もう一度言ってみろ
  あたしは女だ文句あるか

  あたしは・・・・化けもんなんかじゃない。
  ----------------------------------------------

 このシーン、前週の予告のシーンでも使われていたのですが。
 高橋由美子さん出演のドラマをここ15年、8割方見ている自分にとっても、あまたある作品をすべて一気に飛び越えてベストシーンにランクイン。
 今回のゲスト出演、実はなんで起用されたのかぼんやりとしか分かっていなかったのですが、あぁこの台詞を言わせたいがためにキャスティングしたんだな、と合点がいってしまったのです。
 あの”腹から吐き出す”、外見から全く想像できない啖呵。
 『SHIROH』で見せたあの”魂の叫び”を、一度としてテレビで見たことはなかったのですが。
 こういう風に呼んでもらえるゲストっていいな、と思った瞬間でありました。(※2)

 あわてふためく川原さんも上手い。もう流石としか言えない。
 いや上手い以外に、由美子さん&川原さんの組み合わせはある意味、吹き出しものだけど・・・・
 この組み合わせはどうしても『花の紅天狗』を思い出してしまう。

 雀蓮が男であることを知った川原さんが「お、お、おとこ~~!」
 と叫んでしまいそうで(DVD見ると爆笑します)、本気でデジャブでした。

 でここの高橋恵子さんも上手い台詞回しで絡むんですよ。
 台詞、表情の呼吸が津川さん含めて絶妙。
 このシーンを見て、もしかして、この2人、親子なんだろうかと思ったら、実はそうで。
 高橋さんお2人、TBS系『おかみ三代女の戦い』(1997年)、新国立劇場『新・地獄変』(2000年)で母娘役を2度経験済み。

 芝居のテンポは当時から合っていたのですが、5年経ってもお2人とも、繊細な演技の作りは変わっておらず、それが何より嬉しかったですね。

 で、不自然なごとくまでに「地雷」を踏んだ伊丹刑事。
 人間、真実を突かれると激高するというのを地で行った場面。
 後のストーリー展開からすると、雀蓮がこの言葉に激高した理由がわかりすぎるほどわかります(※1)。


 もう放送が終わってますので結末を書いてしまいますと、

 池で吊り上げられた女性の双子の弟が、雀蓮。
 トランスジェンダー(性同一性障害)である弟が出家した姿。
 姉は弟の存在が故に縁談を断られ、自殺しようとしていたが、それを積極的には止めようとしなかった弟。
 弟は姉の名前を名乗り半年を過ごす。
 しかし良心の呵責に苛まれ出家することに。
 その際、姉の戸籍を操作し、名前を変えています。変えた後の名前が「雀蓮」。

 作品の中盤、45分地点で右京はその仮説を打ち立て、他の刑事から呆れられます。
 残りの45分は、右京の仮説をいかにして雀蓮に認めさせるかに注ぎ込まれます。

 右京と亀山は雀蓮に対し、雀連が発見された女性の”弟”であることを認めさせます。認めただけでその場を去ろうとする雀蓮。
 しかし亀山がそれを止めます。公正証書原本不実記載の罪。
 戸籍を書き換えた罪を自供としたのと同じことになるわけです。

 正直言ってしまうと、このシーンを見た時点では、たまらなく不快でした。
 雀蓮サイドに立って物を見てるからではあるのでしょうが、『まるでだまし討ちですね』という憎しみを込めた雀蓮の言葉、そして睨みつける目線に、心底同感してしまいました。
 誘導尋問だし。
 死体遺棄の時効まであと1週間(3年)。がしかし、公正証書原本不実記載の時効は5年。死体遺棄として裁くのでなければ、誘導尋問をする必要がないわけで、なぜわざわざあんなことをしたのかと。

 でも見進むにつれ、感じてしまったのですね。
 右京が雀蓮を追い詰める、といってもむしろ真実を語らせていく人間としての大きさ、罪を罪として明らかにさせていく流れ。いや弟であればこそ、実の姉の死を、自ら下してはいないものの、それでも背中を押してしまった後悔。
 雀蓮に過去をすべて語らせ、本当の罪の重さを自覚させたからこそ、最後には雀蓮は右京を恨まなかったんじゃないかなと。

 「一度、女として生きてみたかった」

 その言葉は、すごく重かったです。
 外見は男。内面は女。
 「女として生きてみたかった」がゆえに、姉を積極的に救うことはせず、男であること、女であること以前に、「人間として」罪を犯してしまったこと。
 それが何より皮肉じみていて、何か物悲しかった。

 性別として、ではなく人間として許されないことをしてしまったこと。

 それこそが「罪」なのだと自覚できた時、男として女として以前の問題として、”人間”として、新しく人生を踏み出せたのだと。それを明らかにしてくれた右京に、最大限の感謝をもってして。
 そう思わずにはいられませんでした。

 「私、人殺しですかね」雀蓮は呟きます。

 「その答えは、あなたがもう出されているんじゃありませんか?
  だから、出家なさった」右京が言葉を継ぎます。

 「どうです。この際、お姉さんを引き取って、供養してみるというのは。もちろん、1週間たってからということもできますが。・・・・それに、1週間経っても時効にはならないんですよ」

 雀蓮は驚くが、亀山が後を継ぎます。

 「死体遺棄の時効は3年ですが、公正証書原本不実記載の時効は5年なんです」

 右京は語ります。
 「死体を棄てることの方が大それたことに聞こえますが、戸籍をいじることの方が、実は重罪なのです」

 雀蓮はすべてを理解するわけです。
 自らしたことの罪深さを。
 自らの最大の理解者だった姉を、救うことをしなかったばかりか、戸籍まで乗っ取ってしまったこと。
 それが姉に対する、どれだけの罪であるか。

 法社会としての「罪」は確かに明文化された罪。
 がしかし、もともと法律は常識とかけ離れた物であるはずはなく。
 常識に則り、社会の秩序を守るために存在するもの。

 その「法律」上の「罪」によって裁かれるのは物事の一面に過ぎず。
 罪を犯した人に本当の罪を自覚させ、その罪を償ってこそ、罪を犯した者は本当の意味で生まれ変われる、そう問い掛けているように感じたのです。

 そして最後のシーン。雀蓮が母親である庵主に問い掛けます。

 「なんで・・・私をちゃんと産んでくれなかったの?・・・わかってる。誰のせいでもないよね。でも、私のせいでも、ないよね。」

 泣けました。

(※1)
「あれで男だったら化けもんだよな」

そう。
姉になりすましているが、自分は男。
自らを「化け物」扱いされたのは、偶然だったかもしれないけど、
一番言われたくない一言だったのでしょう。

自分は姉の戸籍を乗っ取った「仮」の姿だから。
実体が伴わない、ある意味「化け物」であることを、自覚していたから。

・・・そしてその違和感から何らの答えを導き出さないのが、
捜査一課の3人たるゆえんでしょうか。
ここに右京さん・亀山さんがいれば一発でしょうね。

(※2)
由美子さんが起用された理由、『ショムニ』か『SHIROH』か、
と思っていましたが、前者は時期的にどうにもつながらず、
後者はスケジュール的に遅すぎ。
かつ、制作サイドに過去出演作とのつながりもありません。

何となくですが、
『真昼のビッチ』ではないかと思われます。
出演をオファーしたきっかけは。
感情を激する部分、ということでいくとそれが一番、
納得がいきます。


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 閑話休題。
 ここからはストーリーに関係ない余談。

 少し上に書きました、あの啖呵切るシーン。
 TVでは恐らく初登場である、あの類のシーン。
 ああいう決め台詞が合うんで、やり手の探偵とか刑事役とか、鋭く射抜く感じが似合う気がするんだけど、いまだかつてそういう風に使ってもらったことがない。そこが、ちょっと寂しい。

 火曜サスペンス劇場の『軽井沢ミステリー』シリーズはどことなくそういう空気がなくはないのだけれど、ソフトイメージが要求されるので、なんだか消化不良になります。
 後味はいいんだけど、インパクトに欠ける。そこが、彼女がテレビドラマで演じる役の、最大の弱点かなと毎回思っていたりします。

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