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『SHIROH』を語る。(3)

キャスト編その2。

◆高橋由美子/山田寿庵役
 一揆軍の軍師であり、四郎を最初から最後まで愛しつづける女性。
 そして今作品、一揆軍側で最後まで生き残るただ一人のひと。
 ストーリーテラー役。

 彼女のデビュー以来、ほぼ全ての舞台作品を見ている私からしても、今回の役は迷うことなきベストの役。

 可愛らしさ、場面の読み・動きの鋭さ、感情表現の深さ、いずれも全力で良さを出し切っている感じ。
 今まで演じてきた役は、どれかに偏っていたことが多かっただけに尚更それを感じる。

 例えば、前作の『ミス・サイゴン』エレン役や『レ・ミゼラブル』ファンテーヌ役は「感情表現の深さ」に重点を置いた役、新感線初出演の『野獣郎見参』美泥役は「可愛らしさ」、新感線2度目の『花の紅天狗』茜役は「動きの鋭さ」に重点を置いた感じ。
 昨年の『真昼のビッチ』球子役は「動きの鋭さ」と「感情表現」、2002年の『MOZART!』ナンネール役は「可愛らしさ」と「感情表現」を兼ね備えた、役だったように思う。

 作品の要所要所、流れを変えたり締めたりするところに彼女の声が多く入り込んでいるのですが、元々声が通るのに加えて、叫び声の迫力が生半可でない。

 二幕後半、松平伊豆守からの和睦の提案の場で、四郎は闇討ちを仕掛ける。
この時、闇討ちを諌める寿庵の前に飛び出すお蜜。
 寿庵とお蜜とはお互いにライバル関係で、警戒しあった相手なのですが、お蜜は四郎に闇討ちを諌める言葉を吐く。その言葉を聞いた寿庵は直ちに反応する。

 「退きましょう、四郎様。ここは我らの死に場所ではない!」

 この叫びが”凄い”という言葉で表現しきれない迫力。

  四郎が闇討ちを仕掛けたことへのやるせなさ、
  ことごとく対立してきたお蜜が自分と同じことを感じていた衝撃、
  狂い始めた流れを止められる最後の機会という認識。

すべてを一言にこめたこの叫びは、この作品のハイライトシーンに挙げていいほど。

 しかもそこは「お蜜の死に場所である」、と寿庵がはっきり認識していたという、哀しすぎる現実。
最後の最後にきて心がシンクロしたことの重みをひしひしと感じます。

 歌も完全に本領発揮。
 特に一幕中盤、「さんじゅあんの館」での、四郎への愛情をこめた感情表現豊かな歌は、長く感じる一幕の中で、はっきりと作品の動きを感じさせてくれます。

 歌に関しては、デーモン小暮閣下(今作品で作詞をされています)の言葉にお応えできてよかった(笑)。
(去年10月のフジテレビ「笑っていいとも・テレフォンショッキング」で、閣下から由美子嬢に紹介していただいた際、「歌が上手いんだよ」って言っていただいたもので。あの頃、『ミス・サイゴン』では歌に苦戦していましたから・・・・)

◆秋山菜津子/お蜜役
 松平伊豆守が放った隠密。くの一。天草のシローの歌声に魅せられ、最後は一揆軍側で果てる。

 まごうことなき今作品の実質的ヒロイン。幕府のスパイだったのにも関わらず、まさに「ミイラ取りがミイラになってしまった」状態。

 史実では、天草・島原の乱で生き残った一人は山田右衛門作、幕府のスパイとして生き残ったこととされていますが、「生き残った一人」という設定だけ娘の山田寿庵に持っていって、「スパイ」という設定をこのお蜜に持ってきています。

 おかげでおいしい役となったこの役。シローとお互いに愛情関係があったかどうかは特に公演後半では抑え気味にされていた感じでしたが、それでもシローの腕の中で、洗礼を受けながら死んでいくお蜜は本当に幸せそう。

 そして「演技巧者」と、いくら言っても言い足りないぐらい素晴らしい。
 さすがは杉村春子賞受賞者であります(ちなみに中川氏が同賞を受賞した時のプレゼンテーターが前年受賞者のこのお方)

 秋山女史の存在感の余りの凄さに、キャラがかぶってしまった高田聖子さん(お蜜の妹で同じくくの一・お紅)が個人的にはかなり不憫に感じてしまった。

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