『ハゥ・トゥ・サクシード』

2020.9.12(Sat.) 18:30~20:50
東急シアターオーブ 3階1列10番台

初日は4日に開けてすでに1週間以上経っていますが、日程調整が上手くいかなかったのとチケット難とで、my初日兼my楽日がこの日になりました。

日本上演、今回の1回前は13年前(2007年)、フィンチは西川貴教さん、ローズマリーは大塚ちひろちゃん。
今回のフィンチはNEWSの増田さん、ローズマリーは笹本玲奈ちゃん。

驚くべきは、ローズマリーの前演のちーちゃんと、今回の玲奈ちゃんはなんと同学年(しかも年齢は玲奈ちゃんが半年上)ということですね(爆)。ちーちゃんが1986年3月、玲奈ちゃんが1985年6月生まれです。

しかしそこはプロのミュージカル女優の玲奈ちゃん。
全くの違和感ゼロで得意の妄想系女子を全力でむっちゃチャーミングで疾走していて、見られてよかったです。
思えば、前作の『ウェスト・サイド・ストーリー』のマリアも似ていて、年齢的には回ってくるとは到底思っていなかった役にも関わらず、今までのキャリアを硬軟取り混ぜて、相手役をサポートするところ。
妄想に突っ走るのに、なぜか全く痛々しくないところ、それでいて同性の仲間から一目置かれることに何の違和感もないところ。
それらが、マリアとローズマリーはとっても似ています。

ローズマリーは恋する少女、狙いを定めたら一直線。
ということで「出世するかどうかとは関係なく」フィンチにロックオンしますが、そんなお花畑の様にも、秘書仲間の女子陣から浮きすぎることもなく、皆を味方につけるところの空気の作り方、玲奈ちゃんがとっても上手い。親友のスミティが上手く仲を取り持ってくれるところもありますけどね。スミティの林愛夏ちゃん、お芝居で拝見するのは初めてですが、玲奈ちゃんとの相性抜群です。(2007年の時はなんと入絵加奈子さんが演じてました)

というところでは存分に楽しめたものの、「この作品がいったい何の理由で今公演しようと思ったのか」は見終わっても全く分からすで(苦笑)。

上演自体は今の事情より以前に決まっていたのでしょうが、いまや「出世」の意味が問われているようなこのご時世に、従来の和訳である「努力せずに『出世』する方法」をテーマにした物語を上演して、それをポジティブな意味で見せるのか、ネガティブな意味で見せるのかもはっきり見えなくて。

企画に対して好意的に見るなら「努力せずに『成功』する方法」を今風に探す、「出世以外のあり方」を見せた方が良かったように思います。もう一つのテーマである「努力(の仕方)も人それぞれ」というところはフィンチのアクロバティックな行動で表現されていたようには思えますが。

まぁ、いわゆる「考えるより楽しむ」系の作品かと思うので、楽しんだ方勝ちではあるのでしょうね。
ラストはしっくりなハッピーエンドだったので、死を纏うことが多い玲奈ちゃんにしては、笑顔で終われるカーテンコールはとっても幸せでした。

何しろ、前作も次作もギロチンで首を刎ねられてしまうのですから…(苦笑)
というか、次はそれこそここシアターオーブでしたね。

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『時子さんのトキ』(1)

2020.9.11(Fri.) 18:30~20:15
よみうり大手町ホール 11列20番台(上手側)

高橋由美子さん主演舞台の初日。

由美子さんは舞台経験が長い(初舞台は1988年。歌手デビューの2年前)ですが、主演舞台は過去1作(2004年『真昼のビッチ』)だけなので、実に16年ぶりの主演舞台ということになります。

昨年の諸々もあり、舞台に戻ってこれるかも心配していたぐらいだったので、主演舞台と聞いて良い意味で大変驚いたことを覚えています。

普段は収容人数500人強のよみうり大手町ホールも、今般の対応で中1席空けの250人前後での開演ですが、ほぼ女性で満員。男性は数えるほどです(多分スタッフの男性の方が多い)。

由美子さんが演じる時子は、道すがらであったストリートミュージシャン、鈴木拡樹さん演じる翔真の演奏する姿に目を惹かれ、彼の活動をサポートするようになります。ボイトレの費用、ライブハウスへの交通費、その他諸々。「必ず(お金は)返すよ」と言う翔真、「いいのよ」と言う時子。
時子は納得して、翔真はそれに甘える日々だけれども、その「歪んだ関係」はいつしか周囲に露見し、時子も翔真もその”歪んだ”関係を抗弁することになる…

全編で100分近い作品ですが、ストーリーテラーを由美子さん演じる時子が行っている関係上、とにかく由美子さんの台詞量が驚くほど多く、出番にしてもほぼ出ずっぱり。由美子さんの台詞の声は特徴的に低いですが、それゆえ時子の心情が覚悟を持って伝わってくるようで。演出の田村さんが由美子さん演じる「時子」を「あて書き」と仰っていて、稽古前・突入直後ぐらいは「あて書きじゃないでしょー」と言ってた由美子さんが、稽古後半・パンフでは「これあて書きですね」って言ってたのに笑います。

寂しがりやで強がりで不器用なさまは、由美子さんに感じるイメージと時子さんは本当に瓜二つで、自分の殻の中に強く閉じこもるきらいがあった、かつての由美子さんにすごく通じるものを感じます。

*少しネタバレ入りますー*


*よろしいですかー*


*よろしいですねー(柏木さん風に)*


「私が翔真にいいと思ってやっていることを他人がなぜ口を出すの」という時子の叫びは、「それでしか寂しさを満たせない自分にとっての唯一の生き方」で、それについては誰も慮ってくれなかったのに、と言うようにも聞こえて、なんだか胸が詰まります。

周囲が無責任に責め立てる中、言葉がまっすぐ伝わってきたのは元旦那の一言。
時子はこの旦那と離婚しており、その時に一人息子(登喜)は自分の元を離れてしまったことが、時子の心を凍らせてしまったことが分かってきます。この息子を鈴木さんが2役で演じていますが、この2役と時子の関係が絶妙で、時子と翔真は姉と弟みたいな関係に見えるのに、時子と登喜(とき)はちゃんと母と息子に見える。

前者がその後、ビジネス的な関係になるのに対して、後者はやっぱり親子なんだなぁという関係になる。
とくに後者の関係では、由美子さん演じる時子さんが、もうただの由美子さんじゃないだろうか的な、心から安心した一言を言うシーンがすんごく印象的で嬉しくて。

久しぶりの舞台主演でプレッシャーもあったと思うのですが、共演の鈴木拡樹さんとの絶品のコンビネーションをはじめ、その他の共演者の皆さんとの、緊張感と一体感を併せ持った取り回しは、さすが舞台人生30年のベテランだからこその味でありました。

この作品の中で、時子さんが本当に客席から共感してもらえるだろうか、主演としてこの舞台をまわせるだろうか、それらの不安に対して、山を越えたように、その一言を聞いたときに感じて。とても胸が温かくなったのでした。

・・・

カーテンコール、最初の回は由美子さん1人でお辞儀して幕。
2回目も同じく由美子さんだけが残ることになりそうだったのを、鈴木さんの裾を引っ張って止めて、2人でお辞儀して幕。
3回目は鈴木さんもわかっていたていで、「はいはい分かりました」みたいな反応で、腕組んで幕。

由美子さん、さすが分かってますね(爆)。

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『Violet』

2020.9.5(Sat.) 18:30~20:30
東京芸術劇場プレイハウス 2階B列30番台

3日間の奇跡、何とか見ることができました。

思えば波瀾万丈な作品。

梅田芸術劇場劇場とイギリスのチャリングクロス劇場との共同プロデュース事業の第1回作品で、日本版で演出をされている藤田俊太郎さんが、イギリスに渡って演出されたのが昨年(2019年1月~4月)。NHKで密着番組が放送されていましたが、さすがの藤田さんも本場の様に苦戦されていた様が印象的でした。

その逆輸入版ということで2020年4月の東京、大阪公演が発表されたものの、舞台を客席で四方から囲む演出プランを実現できる劇場がないという理由で梅芸主催公演にも関わらず大阪公演が中止。
そのあと、コロナ禍に伴い2020年4月の東京公演も中止という、あらゆる荒波を被ってきたのではないか、という作品です。

その作品がこの9月、3日間だけの奇跡の再出発。

それを聞いた時には、嬉しい思いとともに、まさかそこまでするとは、という驚きが先に立ちました。
客席は半分での稼働を余儀なくされている現在、そんな短期間の公演では費用が全くペイできないだろうに「それでもやる」という執念、その熱さは、作品作りに確実に熱を与えていました。

ヴァイオレットはWキャストで、この日は唯月ふうかちゃん。

*ネタバレ入ります*


*よろしいですね?*

藤田さんとふうかちゃんといえば新演出版『ピーターパン』で接点はありますが、ヴァイオレット役をふうかちゃんで上演する、と聞いたときに意外な気がしました。どちらかといえば「人を信じる」役を多くやってきたふうかちゃん、それからすると事故とはいえ父親に端を発した自らの顔への大きな傷ゆえに、自らに向けられる好奇の目にさらされ、「人を信じられない」人生を生きていくヴァイオレットは、ふうかちゃん『らしくない』役だなぁと、そう思ったのが見る前の印象でした。

今回Wの、シンガーソングライター・優河さんのヴァイオレットは拝見できなかったのですが、どちらかといえば彼女の方がこの役にはイメージとしてあっている気がします。というのは、「自らの顔の傷故に触るもの皆傷つける」ヴァイオレットの痛々しさが、ふうかちゃんの役者としての持ち味とフィットしない痛々しさと、二重に見えてしまう気がして。なんというか、無理して強がるという感じがして。

自らの顔を治してもらうために、お金を貯めてバスに乗る。評判の伝道師になら、自分の顔を治してもらえるのではと思いバスに乗り込むが、バスで出会う人、降り立った街でのどの人とも、ヴァイオレットは壁を作り自分から遠ざけようとする。傷のある顔を好奇で見つめる人には慣れているけれど、傷つくのは嫌。

「顔を治さない限りは、自分は誰にも認めてもらえない」-その思いは凄く伝わってきたのが、ふうかちゃんのバイオレット。
頭が切れて、出会うものすべてを取り込んでいく彼女だけれど、実は自分の見えている世界が狭いということを、”全く気付いていない”のが、ふうかヴァイオレットの特徴でもあり、強みでもあるように思えました。

顔の傷を嘲笑され、傷つけられることの痛みは誰よりも分かっているはずの自分が、肌の色(黒人)故に非難や攻撃にさらされるフリックに対してかけてしまう無神経な言葉。それが、自分にかけられる言葉と何ら変わらない罪をもったものと理解できないさま。

聡明で優しかったであろう少女が、顔の傷への中傷ゆえに誰のことも信じることができず、だれにも頼れず生きるようになってしまった痛々しさ。それはいつしか、モンティとフリックという2人との出会いによって少しずつ変わっていく。2人ともヴァイオレットを手に入れたいと思うのだけれど、プロセスは全く違って、しかもそれがモンティ(成河さん)とフリック(光夫さん)の役者としての色とも相まって、あまりに違いすぎて、それでいて、ふうかヴァイオレットのあの気の強さのままじゃ、どっちも成功しないと思えてしまうところが何だか面白い(笑)。

この作品の舞台は1964年。同じ軍人であるモンティとフリックだけれど、片や白人のモンティはベトナムへ、片や黒人ゆえにフリックはアメリカに残る。黒人ゆえに差別され続けたフリックはベトナムに行くことにならず、優秀ということもあってベトナムに送り込まれるモンティ、という皮肉。

そして一度は心が通じたように思えたモンティとヴァイオレットだったけれども、ヴァイオレットが最後に自分をゆだねられたのはフリック。

この作品の後半で、回想シーンとして語られる、父親とヴァイオレットとの対話も印象的。
自らの顔を傷つけた故に、今まで父親に対して抱いていた「許せない」という気持ちと、自分のことを思ってくれていた父親の思いと接したことによる、今までの自分の気持ちとの折り合いの付け方。

ここがふうかちゃんは流石だな、と思いました。
強がることには慣れてないけど、折り合いをつけることには慣れているタイプに思えるふうかちゃん。

父親の本当の気持ちを知った時の、湧き上がる父親への感謝の気持ち。
他者に傷つけられることに慣れざるを得なかった、フリックとの共通点。
その共通点を踏まえたからこそ、フリックからかけられる、「ヴァイオレットを分かっている」言葉の温かさ。

それらが重なり合ったときに、ふうかヴァイオレットは初めて、何重にも重ね着をしていたかのような”他者への鎧”を脱ぐことができ、自分の足で歩きだすようになれたのかな、と感じました。

・・・

そういえば、ヴァイオレットは、ふうかちゃんとしては珍しい役だと思ったけれど、なんだか既視感があって、振り返ってみるとちーちゃん(大塚千弘さん)がシアタークリエで演じた『この森で、天使はバスを降りた』のパーシー役とイメージがかぶるんですね。聡明な少女なのに、意識的に強がって周囲にぶつかっていく様が、なんだかリフレインしました。

物語としても、「赦すことは癒し」といった面は、両作品、強く被っているように感じました。

自身に闇を抱えて、他者に心を開くことができず、でも他者との交流を通じて自分の価値観が絶対ではないことを知って、過去の自分と折り合いを付けながら、傷を受け入れて未来に対して歩きだせるようになる、そんな作品の役は、若い伸び盛りの女優さんが、一度は経てほしい役と改めて感じます。

『この森で、天使はバスを降りた』で心に闇を抱えたパーシーにとって、「森」が癒しになったように、

『ヴァイオレット』で心に傷を抱えたヴァイオレットにとって、「旅」が癒しになったように感じました。

・・・

ヴァイオレットの唯月ふうかちゃん。
最初にも書きましたが、今までのふうかちゃんらしくない役ではありましたが、挑戦という意味も含めて、今のふうかちゃんが演じるべき役だったのかな、と思います。
声が高いだけに、他者を責めるときに厳しめに感じてしまうのは、次回作『生きる』初演の渡辺一枝役でも感じたことなんですよね。声質的にはポップにはじけるもう1役、とよの役がしっくりくるのはそんなところもあるのかもしれません。

モンティの成河さん。
激しく跳ねるイメージがとっても成河さん(笑)。拝見するのは本当に久しぶりでしたが、縦横無尽な動きといい意味で役者としてのポリシーを見せない(役にストンと落とす)佇まいが素敵です。なんというのでしょう、あの「誰にも嫌われなくない」と思っているモンティが、成河さんそのものだと思わせてしまう見せ方の巧みさが、変わらず流石でした。

フリックの吉原光夫さん。
やっぱり持って行くんだなぁ、というのが感想です(笑)。強気で引っ張るモンティに比べて、弱点を正確に突くフリックと申しますか、ヴァイオレットへの最後のアプローチがもうね、ずるいですあれ(笑)。
役者としての「無条件の説得力」を持っているって強いなぁ、と実感します。

島田歌穂さん。
3役を演じてましたが、さすがとても素晴らしくて、エポニーヌの先輩としてふうかちゃんを見つめる姿は、12年前に『ベガーズ・オペラ』で(笹本)玲奈ちゃんを見つめていたさまと、何だか印象がかぶりました。
これから伸びていく若手女優さんを、まるで母のように見つめる様が本当に有難く感じました。

・・・

わずか11人で演じられたこの作品。

終演時のカーテンコールでは、幻となった、舞台四方を取り囲む客席があったかのように、四方にお辞儀をする役者の皆さま。

「3日だけでも、今上演することに意味がある」ことを強く感じた上演でした。

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『野の花』(2)

2020.8.19(Wed.) 18:30~20:40
 中目黒キンケロシアター E列10番台

2020.8.23(Sun.) 12:00~14:10
 中目黒キンケロシアター D列1桁番台

ミュージカル座のストレートプレイ、再演です。
初見は同じ中目黒の、キンケロシアターと全く逆側で、実のところ間違いやすい(爆)ウッディシアターでした。

舞台は第二次世界大戦前後のドイツで、ドイツ人少女のリーザとユダヤ人少女のルイーゼとの友情を描いた物語で、初見(2018年1月)では、リーザは平川めぐみさん、ルイーゼは千田阿紗子さんでした。
ちなみに過去、ルイーゼは岡村さやかさん、田宮華苗さんも演じられています。

今回の再演は、リーザは大胡愛恵さん、ルイーゼは清水彩花さん。Wキャストですが、今回は2回ともこの月組キャストで拝見しました。

「内気な少女」リーザは中学校に入学しても、周囲とも溶け込めずにいじめられる日々。そんな中、同じクラスにいたルイーザは対照的な行動的な少女。行動的とは良い言い方で、実際のところは行動的が過ぎて学校始まって以来の「問題児」。そんなルイーゼはリーザを折に触れて世話をし、助けます。

「なぜ私を助けるの?」と問うリーザに、ルイーゼは「ほかに助けたい人がいないから」と言いますが、独立独歩だけに学校になじめないルイーゼにとって、リーザはかけがえのない親友だったのだろうなと。

リーザからルイーゼへの「かけがえのない親友」感と、ルイーゼからリーザへの「かけがえのない親友」感が、ぴったり同じものでないことも興味深いです。

リーザにとっては、ルイーゼは「彼女がいたからこそ生きてこられた」存在。学校ではいじめられ、家庭では優秀な兄に比べると生まれつき身体に障害を持つ自分の影は薄くて、生きる希望も持てなかった少女だったけれど、戦争への波・ドイツの時勢が親友のルイーゼとの仲を引き裂く中、自分を救ってくれたルイーゼのために生きることこそ、自分の生きる道と感じていく。

ルイーゼにとっては、リーザは実のところ「自分が助けなくてもいい」存在なのだけれども、彼女の正義感はリーザを助けないことを許さないし、ルイーゼは自分にないリーザの魅力に惹かれて助けるうち、「なんでも自分で解決しようとする自分」がどうにもできない危機に陥った時、リーザから手を差し伸べられ、自分の生き抜く道を勝ち取ることを成し遂げる。

劇中、ルイーゼはこの作品のタイトルである『野の花』を指して、「自分は野の花になりたい」と願うのです。そのすべての理由をここで言及することはしませんが、その理由の一つに「何も頼まず」ということがあります。

それを聞いたときに、ルイーゼはリーザ以上に孤独だったのかもしれない、と思えて。
自分が突っ張ることでしか生きてこられなかったのかもしれない、と思えて。
だからリーザから「頼みごとはない?」と聞かれたときに、「ない」としか突っ張れなかったけれども、リーザとの最後の時に、本当に頼みたいことを頼めたことで、リーザも本心から「ルイーゼに親友として認めてもらえた」と感じたんじゃないかと、そう思えました。

・・

リーザ役の大胡愛恵ちゃん。直近で拝見したのは『スター誕生』のアイドル役で、どちらかというと言いたいことをバンバン言う方がイメージに合う役者さんですが(爆)、リーザは内に秘めた思いを、実は熱くたぎらせるさまが魅力的で。親友・ルイーゼのためなら数多の危ない橋を渡る様に説得力があって、この作品は全体のストーリーテラーを晩年のリーザ(白木美貴子さん。素晴らしかったです)が務めていますが、晩年のリーザにつながる、まっすぐとした芯の通り方が印象的で素敵でした。

ルイーゼ役の清水彩花ちゃん。とにかくカッコいい。外見も、人としても、舞台映えが素晴らしい。ミュージカル女優さんとしては少し長身(162cm)なことがいいアクセントで、その自信も相まって前半の存在感がまさに漢前で、リーザが心酔するのもわかります。それでいて後半、ユダヤ人であるがゆえに多くの苦難に直面する様、そこに纏う絶望感は、「明」の印象が多い彼女では珍しい役回り。拝見した中では『ロザリー』(2016年版)のマリーアントワネットにとても似ていました。(逃避行しているあたりも)

そして大胡ちゃんと彩花ちゃんの親友力の凄さが今回のなんといっても見どころでした。
親友であることを一欠けらも疑わせない説得力は、役としても役者としても、2人が一緒にいられる時を拝見できてよかったなぁと実感しました。
今回は役柄上、シリアスに尽きる面があっただけに、もう少しラフな、例えば…

彩花「頼みごとがあるんだけど」
大胡「頼みごとは嫌いじゃなかったの?」
彩花「またそういう意地悪するー」

みたいな世界線も見てみたかったです(笑)

・・

ストレートプレイといえ、久田菜美さんのピアノが切なく物語を作り上げる様もとっても素敵です。
物語に寄り添う優しさが曲にも演奏にも感じられて、心温まるひと時になりました。

今般のコロナ禍の中でストレートプレイ、ミュージカル座作品を拝見するのもこの作品が初めて。休憩中の窓換気、休憩時・退出時の整列退場の徹底をはじめ、演者はマウスシールドを付けての上演。初見では多少気になったものの、作品の熱さにマウスシールドの存在をも忘れる、エネルギーに満ちた作品でした。

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『THE MUSICAL CONCERT at IMPERIAL THEATRE』

帝国劇場

2020.8.14(Fri.) 13:00~15:15
 Aプログラム/帝国劇場2階L列20番台

2020.8.17(Mon.) 18:00~20:15
 Aプログラム/配信

2020.8.20(Thu.) 13:00~15:15
 Bプログラム/帝国劇場1階XA列30番台

2020.8.22(Sat.) 18:00~20:15
 Bプログラム/配信

帝劇復活から2公演目、通称『帝劇コン』と呼ばれる帝劇ミュージカルコンサート。

舞台興行の全面復活ままならない中、それでも再開しやすいコンサート形式が帝劇は2作品続いています(再開は7月の『ジャージー・ボーイズ・イン・コンサート』)。今回の時勢を意識しての企画かと思ったら、Aプログラム・CプログラムのMCを担当した井上芳雄さん曰く、「2020年東京オリンピック・パラリンピックで来日される外国の方に日本のミュージカルを伝えたい」、といった趣旨での企画だったそうです。

出演メンバーは3パターン(Aプログラム・Bプログラム・Cプログラム)ですが、スペシャルゲスト等の理由により複数のセットリストや、複数の歌い手が存在します。

というわけで、AB混合のセットリストです。
(AB両パターン担当の場合は「AB」と表記)

●セットリスト
1.レビュー THE IMPERIAL
(「モルガンお雪」より~マイ・フェア・レディ/踊り明かそう
(A:井上、B:山崎、AB:瀬奈・朝夏・田代)
2.サウンド・オブ・ミュージック/サウンド・オブ・ミュージック
(A:生田、B:平原)
3.シャル・ウィ・ダンス?/王様と私
(A:一路・今井、B:瀬奈、藤岡)
4.ソウ・イン・ラブ/キス・ミー・ケイト
(A:一路・今井、B:瀬奈、藤岡)
5.陽は昇り又沈む/屋根の上のヴァイオリン弾き
(AB:オールキャスト)
6.見果てぬ夢(騎士遍歴の唄)/ラ・マンチャの男
(A:井上、B:福井<前半>、海宝<後半>)

=MC=

7.ビッグ・スペンダー/スイート・チャリティ
(AB:朝夏)
8.明日は/アニー
(A:和音、B:平原)
9.グイードの唄/ナイン
(AB:田代)
10.オール・ザット・ジャズ/シカゴ
(AB:瀬奈・朝夏)
11.コーナー・オブ・ザ・スカイ/ピピン
(A:城田<16日なし>)※Bなし
12.心は愛にあふれて/レ・ミゼラブル
(A:田代・生田・新妻<~16日>)※Bなし
13.Bring Him Home/レ・ミゼラブル
(A:今井<17日>、B:福井<21日・22日>)
14.カフェ・ソング/レ・ミゼラブル
(B:海宝<19日・20日>)※Aなし
15.民衆の歌/レ・ミゼラブル
(A:今井・和音・新妻・生田・森、
 B:福井・笹本・藤岡・山崎・海宝)

 

=MC=

16.ありのままの私/ラカージュ・オ・フォール
(A:市村<17日>)
17.エニシング・ゴーズ/エニシング・ゴーズ
(AB:瀬奈)
18.愛はどこに?/オリバー!
(AB:田代)
19.はじめての恋/ガイズ&ドールズ
(A:朝夏・加藤、B:海宝・笹本)
20.もしも あなたを愛したら/回転木馬
(A:和音・B:涼風)
21.バニラ・アイスクリーム/シー・ラヴズ・ミー
(A:森、B:涼風)
22.命をあげよう/ミス・サイゴン
(A:新妻)※Bなし
23.神よ何故/ミス・サイゴン
(B:山崎)※Aなし
24.世界が終わる夜のように/ミス・サイゴン
(B:笹本・藤岡)※Aなし
25.すてきな人に恋してる/南太平洋
(A:一路)※Bなし
26.42丁目/42nd ストリート
(A:森、B:涼風)

=MC=

27.ジャージー・ボーイズ・メドレー/ジャージー・ボーイズ
Oh What A Night~Sherry
~Can't Take My Eyes Off You~Who Loves You
(B:中川・藤岡・海宝・福井)※Aなし
28.二人を信じて/ルドルフ ザ・ラスト・キス(再演)
(A:和音)
29.愛してる それだけ/ルドルフ ザ・ラスト・キス(初演)
(B:笹本)
30.フィナーレ/ダンス オブ ヴァンパイア
(A:新妻、B:朝夏)
31.さあ、声を出せ!/天使にラブ・ソングを~シスター・アクト~
(A:森、B:瀬奈・朝夏)
32.サ・イラ・モナムール/1789 -バスティーユの恋人たち-
(AB:加藤)
33.ナチュラル・ウーマン/ビューティフル
(B:平原)※Aなし
34.僕こそ音楽/モーツァルト!
(A:古川、B:中川)
35.私が踊る時/エリザベート
(A:花總・城田<前半>、一路・井上<後半>)※Bなし
36.闇が広がる/エリザベート
(A:城田・田代<前半>、城田・古川<後半、17日夜なし>、B:山崎・田代)
37.私だけに/エリザベート
(B:涼風)※Aなし
38.塵と灰/ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート・コメット・オブ・1812
(A:井上)※Bなし

 

=MC=

39.百万のキャンドル/マリー・アントワネット
(A:新妻)※Bなし
40.明日は幸せ/マリー・アントワネット
(B:花總)※Aなし
41.あなたに続く道/マリー・アントワネット
(B:笹本・田代)
42.秘めた想い/レディ・ベス
(AB:花總)
43.踊り明かそう/マイ・フェア・レディ
(AB:オールキャスト)

今回、自力でチケットをとれたのはAプログラムで、ナビザーブさんが珍しく微笑んでいただいてのゲット。Bプログラムは友人の方に譲っていただきましたが、帝劇を訪れてこの方17年、初めて座ったXB列。
今回はオケピが舞台上にある(かつ出演者とはアクリル板で仕切られている)ため、XA~XC列が爆誕しているのです。いやはや絶景で、カーテンコールに至っては目の前2mに玲奈ちゃんという、至福の場所でした。

Aプログラムでは新妻聖子さん、Bプログラムでは笹本玲奈ちゃんがメインで見たいキャストですが、自分自身の帝劇観劇歴17年は、お2人の帝劇出演歴17年と完全に一致している(聖子さんは2003年7月デビュー、玲奈ちゃんは学業の都合で2003年8月デビュー)ので、2人が帝劇の歴史をたどるこの企画で、女性陣の若手代表として堂々と活躍されているさまに、何より感動です。

何しろ2人とも、シングル・デュエットで歌われたほぼすべての曲(+レミゼ)が持ち歌。
聖子さんはご自身大好きなジュリー・アンドリュースの『サウンドオブミュージック』が来るかなと思っていましたが、登場シーンは後半に集中して出演枠を使いつくしたようで。持ち歌はサイゴンのキムが流石の圧巻でしたし、久しぶりすぎる『マリーアントワネット』の「百万のキャンドル」が聞けて嬉しかった!(「心の声」は昨年のコンサートツアー初日だけで披露されているので)。

初日見ていい意味でぶっ飛んだのが『ダンス・オブ・ヴァンパイア』の「フィナーレ」。無茶苦茶カッコいい!マグダでシャウトし、サラでお嬢様風にお辞儀し、伯爵として高らかに歌い上げるなんぞ、さすが小林香さん、”ニイヅマセイコの使い方を世界一知っている”お方。「誰かに小突き回され生きるなんてイヤだろう」ってまさにまんまです(笑)。この演出でやるならマグダとサラを両方やった、ちーちゃん版も見てみたいなー。

玲奈ちゃんに至ってはオールキャストで歌った「日はまた昇る」(サンライズ・サンセット)もホーデルパートだったので、回転木馬のジュリーも帝劇上演キャストの涼風さんでしたが、これも玲奈ちゃんの持ち役。

持ち歌といえば、2008年の楽以来、帝劇で初披露になる『ルドルフ・ザ・ラストキス』の「愛してる、それだけ」を聞けたことが、何より至高でした。再演では演出も歌い手も変わり、「二人を信じて」となったこの曲。Aプログラムでは再演版を再演キャストの和音さんが歌われ、Bプログラムでは初演版を初演キャストの玲奈ちゃんが歌われ、長かった封印の期間が解かれたこと、そしてあの時のマリー・ヴエッツェラの面影を残す、熱量ある歌唱に酔いしれました。

2人を同じコンサートの場で見て思うのは、聖子さんはソロ、玲奈ちゃんはデュエットで持ち味が出るんだなと。聖子さんは持ち歌の「命をあげよう」でも、久しぶりに解禁された「100万のキャンドル」でも、1を10にも100にもする方と感じますが、玲奈ちゃんは「世界が終わる夜のように」でも「あなたに続く道」でも、「1+1」を10にも100にもする方と改めて感じます。玲奈ちゃんは「世界が終わる夜のように」でクリスに叫ぶ「あなたとーーー」が玲奈ちゃん史上一・二を争う大好きな歌唱で、「相手を求めずにいられない」心からの思いをありのままにぶつけられる様が本当に魅力的。聖子さんの「拳を上げて戦え、邪魔者は押しのけろ」も、心からの思いをありのままにぶつけていますが(爆)、喩えると、玲奈ちゃんには「心を奪われる」、聖子さんには「魂を奪われる」違いなのかなと思います。奪われるのは本望なのでいいのですが(ここだからと言って何を言ってるのだ笑)

あと、これも封印だと思ってた『ガイズ&ドールズ』のサラも玲奈ちゃんで復活!
今回、配信に映らないこともあるのですが(意識的に映してないとも思うのですが)過去の舞台写真も流れてまして、ガイズの時は中央に玲奈ちゃん(本物)、下手側に玲奈ちゃん(ウェディングドレス)、上手側に由美子さん(ウェディングドレス)が映り、一人テンション上がっておりました。

聖子さんはただ1曲「フィナーレ」を除けば予想通りの選曲で予想以上の歌唱を堪能でき、玲奈ちゃんは持ち歌ほぼ担当されるという「当たり前のことが当たり前に実現した時点で凄かった」ことを体感できて、幸せなひとときになりました。

Bプログラム最終日の玲奈ちゃんのMCでは、メインMCを担当したいっくんと丁々発止の掛け合い。

玲奈ちゃん「幼いころに、若いころに『僕はこういう役者になりたいんだ』『私はこういう役者になりたい』と言い合ってた育三郎が、『偉そうに』(会場爆笑)、いえいえ『立派に』司会を務めていることも嬉しい」

…MCもすっかり上達されて(笑)

レミゼ12年、エポニーヌをやり続けることの大変さ、「常に新しいものを見せていかなければならないプレッシャー」に悩まされた玲奈ちゃん。「卒業してからしばらくはレミゼの曲を歌うこともなかったけれど、それでも今の自分を作ったのはレミ、全部レミに育ててもらった」、という様はとても印象的で。帝劇の神様はそんな若いころからの大変さも全部受け止めて、そして成長しようとする人を成長させてきたんだなと。

帝劇デビュー同期(2003年)の聖子さん、玲奈ちゃん。

帝劇に育てられた若きベテランの2人が、帝劇の真ん中で堂々と歌われる姿を拝見でき、帝劇に育ててもらった恩を全身で返されているかのような様を拝見できたことが、感動では言い切れない、素敵な時間だったのでした。

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『むこうのくに』

2020.7.23(Thu.) 14:00~16:40 配信

2020.7.26(Sun.) 20:00~22:40 配信

 完全配信の「劇団ノーミーツ」の新作公演。といってもこれまでの作品は拝見しておらず、今回青山郁代さんが出演(Wキャスト)ということで、初日公演を拝見しました。

※さきほど千秋楽が終わりましたが、追加公演(8月1日・2日)が決まりましたので、まっさらでごらんになりたい方は回れ右をお願いします!
ネタバレを含んでいます。

 仮想世界「ヘルベチカ」に「友達を見つけたい」という思いで入っていく主人公のマナブ。現実世界で友達がいない彼にとって、仮想世界で友達を見つけるのはそう容易いことではなく。

 そんな彼に人懐っこく絡んでくる女の子・スズ。2人の間には、どことなく仲の良い雰囲気が生まれつつも、突然彼女はヘルベチカから消えてしまう。
 消えた彼女の本意はどこにあったのか、マナブは再びスズを見つけ出せるだろうか。

 主人公のマナブが、ヘルベチカに自ら作ったAIを投入した…という時点で何となく感づいてはいましたが、なるほど、そういうことだったのですね。

 AIというのは言葉だけが先行する典型的なものであったりして、それだけに映画で「AI暴走」みたいな捉えられ方をしますが、基本的には「与えられたデータを解析して方向性を見つけだしていく仕組み」を指すので、この物語のAIの扱われ方を見たときに、あぁ、彼は優秀なAI作者だったんだな、と感じました。

 AIで作られた「女の子」は、主人公の意思をしっかり読みとって、主人公が想像しないような、でも主人公が本当に望んでいた未来を作り出した。

 それは、作者が「本当に望んでいたこと」をAIにインプットできたからこそ得られたものだと思うのです。

 女の子役を演じられた尾崎由香さん、声優をメインに活躍されているそうですが、笑顔もチャーミングで、人懐こく、心閉じていた彼の心を開かせるのも納得です。

・・・

 もう一つの物語が、サイバー空間を現実空間同様にコントロール下に置きたい意思を抑えきれない、政治家・綾小路役をWキャストで青山郁代さんが演じ、その政治家の秘書・氷室という男性がペアで「別世界」の空気を醸し出します。

 現実空間を生きていて、ある意味社会を「支配」する立場からすれば「むこうのくに」である電脳空間は、畏怖する存在でしょうし、そこに対して楔を打ち込まんとする行為というのはあり得そうな物語ですね。

 志高く意思を語る女性政治家・綾小路役の青山郁代さんは今までにない役どころ。今までだと、サイバー犯罪を取り締まる女性刑事の役の方をやりそうな印象がありますが、なかなかはまっていて、それでいて自らの信念に迷い悩む辺り、その繊細さは(意思を実現するという点において)政治家にとっては弱点だったのだな、というのを見せて流石でした。

 オンラインで(自身の)芝居は変わるか、という問いに対して、郁代さんは「あえて全く変えない」と仰っていて、だからこその存在感であったと思うのですが、「オンライン演劇」といえど、「オンラインであることに無用な優位性を(少なくとも)芝居上に持ち込んでいない」のは流石と感じました。

 「舞台に生の迫力は不可欠で、それは劇場でのみ実現できる」、という考え方は今回のコロナ禍の中で価値観が揺らいだ大きなものだったと思うのですが、そこで劇場を否定するのではなく、オンラインの可能性を突き詰めることで、見えてくることは多かったように思えて。

 オンラインの場に、劇場で技術と心を磨かれてきた郁代さん、そしてキャラメルボックスの鍛治本さんといった「芝居のプロ」が入られていたことで、より意味のある試みになったのでは、と感じさせられました。

 役者と脚本、それぞれに「伝えたい思い」と「伝えたい技術」があってこそ、物語は伝わるのだと改めて感じたのでした。


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『SHOW-ISMS』

『SHOW-ISMS』

2020.7.22(Wed.) 13:00~15:15
 シアタークリエ 3列20番台
2020.7.24(Fri.) 11:30~14:15
 配信(Streaming+)
 シアタークリエの復活作品となったのがこの『SHOW-ISMS』。
 7月公演予定だった『マトリョーシカ』が中止になったものの、短縮バージョンとして復活することになり(Bプログラム)、それに先立って過去2回上演されている『DRAMATICA/ROMANTICA』チームが再結集して前半部を担当するのがAプログラム。
 Aプログラムの上演予定は7月20日から25日まででしたが、25日の公演は出演者に体調不良者が出たとのことで開演1時間前に急遽中止が決定。
 係員の方に感染者が出た帝劇は無観客上映のみに切り替え(『ジャージー・ボーイズ・イン・コンサート』)、出演者に体調不良者が出たシアタークリエは配信を含めて全て中止、というのは事前に対策を検討してあった感を抱かせます。
 私の場合は25日の観劇予定が中止となったため、20日に劇場で観劇(これが3月20日『星の大地に降る涙』以来、実に142日ぶりの劇場での観劇でした)、24日に配信で鑑賞と2回拝見したことになりました。
 セットリストですが、セットリストを取る瞬発力が戻りきっておらず、フォロワーさんにお願いして快諾いただき、お借りしました。厚く御礼申し上げます。
 では、セットリストです。


●セットリスト
※曲目につき、フォロワーのみやびさんの全面協力をいただきました。感謝です。

■第1部:DRAMATICA/ROMANTICA
 ※カッコ内はメインボーカル
1.The Show Must Go On
 /ムーラン・ルージュ
2.Cinema Italiano/ナイン(知念)
3.A Question Of Honour
  /サラ・ブライトマン(新妻)
4.Vメドレー2020
 4-1.Circle Of Life~
  /ライオン・キング(Jkim)
 4-2.ラ・マンチャの男(新妻)
 4-3.You Can't Stop The Beat~
 (彩吹)/ヘアスプレー
 4-4&4-5.それ以上の/それは私
  /ルドルフ・ザ・ラスト・キス
  (井上・Jkim・知念)
 4-6.雲の上のお城(リトル・コゼット)
  /レ・ミゼラブル(新妻・知念)
 4-7.夢やぶれて~
  /レ・ミゼラブル(Jkim・彩吹)
 4-8.Memory~/CATS(Jkim)
 4-9. Don't Know~/next to normal
  (JKim)
 4-10.種を蒔こう~/キャンディード
  (井上・新妻)
 4-11.守ってブレンド
  /シャボン玉とんだ宇宙までとんだ
  (井上)
 4-12.サタデー・ナイト・イン・ザ
  ・シティ/ウエディング・シンガー
  (彩吹)
 4-13.STAY~/ラディアント・ベイビー(知念)
 4-14.Fly, Fly Away
  /キャッチ・ミー・イフ・ユー
  ・キャン(新妻)
 4-15.1812年の大彗星
  /ナターシャ・ピエール・アンド・ザ・グレート
  ・コメット・オブ1812(井上)

5.Listen~/ドリームガールズ(彩吹)
6.V(クインクエ)/※オリジナル歌詞
7.ガブリエラの歌/歓びは歌にのせて
 (井上)
8.The Rose/ペット・ミドラー
 ※オリジナル歌詞(彩吹)
9.Where You Are/ジョシュ・グローバン
10.Joyful Joyful~/天使にラブ・ソングを2


■第2部:ユイット(∞)
11.マンボ・イタリアーノ
 (井上・彩吹)


■第3部:マトリョーシカ
12.月明かりの下で(美弥)
13.Empathy1(今・平方)
14.Empathy2(美弥・保坂・樋口・夢咲・下村)
15.翼をください(チーム全員)

■第4部:フィナーレ(公演全員)
16.漕げよマイケル(Hallelujah)
 ※オリジナル歌詞
 『DRAMATICA/ROMANTICA』、通称『ドラロマ』は初演以来見ていますが、初演から10年、再再演以来7年経っても、そこにあるのはプロの仕事でした。

 5人のバランスが絶妙で、黒一点の(井上)芳雄さんが回し役とはいえ、最強の女性陣を前にたじろぐこと度々。歌では一切の隙を見せないのに、MCでは隙あらば突っ込もうとする対決が、主に(新妻)聖子さんとの間で繰り広げられ、残り4人が生暖かく見つめる(ある意味放置する)のも、『あぁこれぞドラロマ』って感じ。

 天然MCでかき回しながら心は熱いJkimさん、誰よりも自由に泳ぎ回る新妻さん、すべてのまとめ役彩吹さん、その間で緩衝材となりつつ美味しいところをなにげに持って行く知念さん、という絶妙なバランスに酔いしれます。

 「センターに立ったことしかなくてハーモニーが皆できなくてびっくりした」とは24日の本編前配信で新妻さんと対談した演出の小林香さんの言葉でしたが、5人にとっても大きな大きな場だったことを伺わせます。

 この作品の前では、舞台ではどちらかというと引っ込みがちだった知念ちゃんが、例えば『Cinema Itariano』でガンガンに踊りまくったり、新しい面を見せてもらえたことを懐かしく、今回も拝見できたことは幸せでした。

 とりわけ『ルドルフ・ザ・ラストキス』曲が聞けたのは嬉しかったです。知念ちゃんステファニーは本役とはいえ、びっくりでしたが。

 Aプログラムでは新作の『マトリョーシカ』は劇中の4曲だけの披露でしたが、物語の触りを見て感じるのは、小林香さんの描きたいことは『個々の多面性』なのかな、と思えてきます。
 ドラロマが5人それぞれの個々の多面性を引き出して輝いたように、美弥さんが教師として赴任した定時制高校に通う「それぞれ問題を抱えた生徒たちに寄り添い、それぞれの個性を引き出す」という『マトリョーシカ』の物語も、そんな『SHOW-ISM』の系譜を確かに踏む物語なのだろうな、と感じさせられました。


 前半日程の最終日7月25日が休演になり、今後予断を許さない情勢ですが、Bプログラムが上演できることを祈っています。

※7月26日東宝さんより発表あり。7月25日体調不良者含む全員がPCR検査「陰性」だったとのことで、当初予定通り7月28日から公演再開となるとのことです。

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『ジャージー・ボーイズ』(5)

2020.7.20(Sat.) 18:00~20:00

 配信(Streaming+)


2020.7.24(Fri.) 18:30~20:30
 帝国劇場 1階K列30番台(上手側)

 新型コロナウィルス感染拡大に伴い中止が相次いでいた舞台興行ですが、この7月から順次再開。この作品『ジャージー・ボーイズ・イン・コンサート』が帝国劇場での再開作品になります。

 元々シアタークリエで初演・再演された『ジャージー・ボーイズ』ですが、当初発表されていた本作品での帝劇公演は中止が発表され、その後、帝劇再開作品としてコンサートバージョンで公演されることが決定

 当初は7月20日に初日を迎えることになっていたものの、公演初日直前に帝劇係員の方に新型コロナウィルス感染が判明し、急遽7月20日から21日は配信のみに切り替えとなり、7月23日から劇場公演としての再開。2月の『SHOCK』以来、148日目の再開とのことです(あっきーがカテコで言ってました)。

 初日延期は正に英断だったと思います。「保健所からは公演実施に了解を得ている」とはいえ、あくまで他者の判断。どうしても不安が先行する昨今では、興行主である東宝さんが「自らの」判断として初日延期を判断されたことは適切だったと、初日チケットを持っていた私としてもそう思います。今は「より安心」を指向せざるを得ませんし。

 四季4つに分けて物語が進むのは本作品と同じですが、出演キャストがフォーシーズンズ4人はフランキー・ヴァリのあっきー(中川晃教さん)以外は2人ずつ。経験者1人と新キャスト1人のペアが基本。
 後方で過去の舞台映像を流しながら進んでいき、初演・再演キャストのまりゑちゃんも映ったりします。

 とはいえ、さすがに初見の方への説明としては尽くしきれてはおらず、その辺りは将来の帝劇初演(!)に期待といったところ。

 配信だとどうしても見たいアングルが見えなかったりするので、劇場で見て「おおっ」と思ったのは、「永遠の愛」であっきーフランキーが歌うとき、びびちゃん(綿引さやかさん)と(小此木)まりちゃん「だけ」にライトが当たっていない!ことに背筋が寒くなりました(言い方笑)

 びびちゃんが作品内で演じるのはフランキーの妻・メアリー。イタリアからの移民で自らも居場所を見つけられていなかった、フランキーの2つ年上のメアリーは、フランキーと恋に落ち、娘フランシーヌをもうけます。それでいて家庭を省みることに不得手なフランキーとは喧嘩が絶えず、最後は別れることになります。

 翻ってまりちゃん演じるのは記者のロレインで「聡明な女性」として描かれ、フランキーにしてみれば「メアリーとの『悪夢』(メンバー談)」からの心の隙間を埋める女性として登場します。コンサート版ではロレインがフランキーに愛想を尽かしていなくなることまで描かれていませんが、その2人ともをライトから外して、「真実の愛」ではなかった、という見せ方が流石藤田さん、と感じました。

 コンサート版の見所としては何といってもエンジェルスのシーン。
 フォーシーズンズのコンサートの最初の出し物として人気急上昇の女性3人グループ「エンジェルス」を登場させるパートなんですが、ここ、前回まではセンターにるんさん(遠藤瑠美子さん)、下手側が(小此木)まりちゃん、上手側がまりゑちゃんだったんです。でも、まりゑちゃんは今回パルコ劇場で三谷さんの作品に出てるので出られない、そして女性キャストは今回3人だけ…。

 ここから導き出されてお目見えした結論が「びびちゃんがエンジェルス入り」でした。びびちゃんは前回まではまりゑちゃん演じるフランシーヌのお母さん(メアリー)だったので、「母が娘の仕事を継いだ」ことになりますが(笑)、若い素敵なお母様が、娘以上にノリノリでやっている姿があまりにしっくりきて超ツボに入りました(爆)。

・・・

 今回、期せずして帝国劇場の再開作品になった『ジャージー・ボーイズ・イン・コンサート』。配信ではそこまで感じずに、劇場で見て強く感じたこと。

 『ジャージー・ボーイズ』の作品の中でフォーシーズンズは殿堂入りを果たし、「これはどんな賞よりも価値がある。それは、一般大衆がくれたものだから」と言うくだりがあります。

 この言葉を帝国劇場で聞いたとき、この作品が帝国劇場の再始動、東宝演劇の再始動に選ばれた理由、それが分かった気がしたのです。

 まだ何一つ解決していない世の中で、舞台の幕を上げることが果たして正しいことなのかもわからない。
 舞台を観劇することができない人もいる中で、観劇することが果たして良いことなのかもわからない。

 でも、それは当事者が、不断の最善の努力・協力をもって乗り越えない限りは越えられない壁だし、帝国劇場に集った、観客役を含む『ジャージー・ファミリー』が一体になった拍手の熱量こそが、「観客が演劇を欲する」体現であったように思えて。その熱さが配信という形で、「舞台を見たくても見られない」立場の方に一人でも多く伝わる機会になるのであれば、そこに「幕を上げる意義」があるのではないかと思えたのでした。


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最近思うこと。

すっかりご無沙汰です。

舞台観劇がなくなってからはや2か月。

私の観劇日程上は、2月29日日生劇場『天保十二年のシェイクスピア』から始まった中止。
3月になると本格化し、多くの中止を経て、3月20日池袋BIG GREEN THEATERのミュージカル座『スター誕生』が現時点で最後の観劇となっています。
3月で観劇できたのは4作品。ミュージカル座『ロザリー』(綿引さやかさん)4回、地球ゴージャス『星の大地に降る涙』(笹本玲奈さん)1回、ミュージカル座『スター誕生』(大胡愛恵さん)1回、そしてライブの『one on one Live』(岡村さやかさん)1回。

そして5月15日現在で延期・中止が決まっているものは18作品54公演。

そのうち、宝塚大劇場公演で見られた雪組『ONCE UPON A TIME IN AMERICA』、1度は見られた『天保十二年のシェイクスピア』、『星の大地に降る涙』は何とかなりましたが、以下の作品は見ることができませんでした。

・『ホイッスル・ダウン・ザ・ウィンド』
 (3月、生田絵梨花さん)
・『リトル・ショップ・オブ・ホラーズ』
 (3月、井上小百合さん)
・『ボディガード』(3~4月、新妻聖子さん)
・『CHOICE』(4月、大胡愛恵さん)
・『Violet』(4月、唯月ふうかさん)
・『EDGES』(4~5月、綿引さやかさん)
・『アイ・ハブ・ア・ドリーム』(5月、岡村さやかさん)
・『WEST SIDE STORY Season3』(5~6月、夢咲ねねさん)
・『ミス・サイゴン』
 (5~10月、青山郁代さん、松原凜子さん)

前者3つは1週間以内ではありましたが、3月20日頃から28日頃まで、わずか1週間の間のみ公演で、その期間は仕事の繁忙と諸々の疲れで観劇できず、週末を待ったところ3月20日頃の三連休で一気に環境が悪化し、土曜日から相次いで劇場閉鎖となり、再び見る機会が訪れることはありませんでした。
ちなみに、チケットの払い戻し手続きは大体半分ぐらい完了しましたが、現時点で払い戻し済みの金額合計と、今後払い戻し予定の金額合計が、それぞれで特別定額給付金の金額を超えております(爆)。

ICカードリーダライタまで買ってオンラインで申し込んだんですが、郵送より遅れるそうですね(笑)。

・・・

コロナ禍の中、明るい情報よりも気が滅入る情報が多く、改めて、観劇はじめエンタメは自分にとって大きかったんだなぁと感じます。とはいえ、先行きが見通せない中、あまりまとまった形で見かけない、『観劇する側から見た今後の演劇』に対して、色々感じていることを書いてみたいと、久しぶりにblogを書いています。


■インスタライブほか、配信花盛り

4月下旬あたりから急激に増加したのが、インスタライブをはじめとした動画配信。
インスタライブであれば1時間で強制切断ということもあり、日によっては1日いくつものインスタライブを梯子することになったりして、無茶苦茶忙しくなることも度々(笑)。インスタライブは2人までならコラボ(共同配信)もできるので、交友関係も垣間見れたりしてなかなか面白いです。毎日必ず配信している原田優一氏(15時~、インスタライブ)は凄いですよね。
人によってされない方もいらっしゃいますが、アーカイブ保存していただくとありがたい限り。24時間以内しか見られませんが、実は皆が在宅勤務になっているわけでもなかったりするので、昼間の配信分についてはある程度保存していただいた方が気持ち的には有難く思ったりします。


■動画配信、相次ぐ
普段はネットでは見られない舞台作品の動画配信も相次いでいます。TipTapさん、ミュージカル座さん始め複数の配信がされていますが、気にかかるのは配信が基本的に無料配信であることです。
有料配信だったのはconceptさんで、有料配信プラットフォームの貸し出しもされていたりして、おそらく今後はいかにして広い範囲から課金して収益を上げるか、という段階に入ってきているように思います。

良きにつけ悪しきにつけ、限られた人が見るという演劇の世界に比べれば、例えばアイドルの世界や声優の世界だと、課金ということが少額でラフに行われている傾向があります。SHOWROOMの投げ銭だってそうですし、ゲームの推し関連アイテムとなれば、スマホ連動の課金がかなり容易になっています。
今回のことをきっかけに、今まで舞台を見なかった人に見てもらうような試みをして裾野を広げておき、再開した暁には劇場に新たな層を呼び込むことが必要なのではと感じます。


■動画は見るかというと
ただ、その相次ぐ動画配信を見るかといわれると、実はそのハードルって結構高いんですね。
劇場で舞台を見るのは2時間3時間気にしなかったのに、家で見ると同じ時間集中するには、いろんな雑音(音というより視界に入るもの)が多すぎるんですね。劇場に入れば、その時間はスマホも切れるし、携帯も切れる(切らない人は何でそのメリットを感じないのかよくわからない笑)。もともと物語に没入しようという「意思」を持って行っているから、意識が散逸しない。
それに比べると、家で見るのは存外にハードルが高いんだなぁと思うわけですが、思いつくもう一つの理由が、「舞台映像を見ると、『舞台をやっていない』現実を否が応でも思い知らされる」のが辛いんじゃないかなと感じています。普段は「劇場に行って非現実に浸っていた」のに、今舞台動画を見ると「劇場に行けない現実を知らされる」のではないかな、と思ったりします。


■舞台を再開するには-全国ツアー公演の弱み
空前のミュージカルブームと言われた2020年ですが、どの作品も中止になっているとはいえ、目立つのは、長期間の作品、いわゆる全国ツアー公演を行う作品が、かなり早い段階で中止になっているということです。東宝作品だけでも『エリザベート』『ミス・サイゴン』『ジャージー・ボーイズ』等々。

基本的に東京公演を1か月単位で行い、その演出とセットを基本的に移動させることで行っている全国ツアー公演ですが、今回のコロナでは「都道府県をまたぐ移動を極力避けるよう」が大きなウィークポイントになってしまいました。キャスト、スタッフそしてお客さんの安全をどう担保するか。他地方から公演地に感染者を持ち込んでしまったら、興行元は地方主催者に対して大きな損害を与えてしまいかねず、興行元としてもそのリスクを許容できなかった、ということなのでしょう。


■舞台を再開するには-海外スタッフの存在
今回のコロナは全世界的な感染症であるために、海外が権利を持っている輸入ミュージカルにあたっては、かなり多くのスタッフを海外から招かざるを得ず、これも全国ツアー公演作品の大きな弱点となりました。
海外から持ち込まれた場合、もしくは日本から持ち帰った場合、どちらも大きな問題になることは間違いなく、一国・一興行主・一作品だけの問題ではない、高度な判断が求められたということになります。
公演前2か月の時点で多くの作品が中止になっているのは、具体的な準備に入れないからということが大きいということのようです。


■舞台を再開するには-演者内のリスクとは
当初はあまり言及されていなかったことでようやく認知されだしたのが、稽古や本番における役者同士の空気の共有です。『ミス・サイゴン』の某出演者が「この作品は濃厚接触のミュージカル」と言っていたことは言いえて妙で、他作品の演出家さんですは「今までのように(距離が近い)ラブシーンは難しい」と言及された方もいらっしゃいます。

また、5月14日に公表された業界団体(全国公立文化施設協会(公文協))による「舞台再開ガイドライン」に記載された「(演出上困難な場合を除き)マスク着用が望ましい」という表現は、「そんな姿を見たいと思う人がいるのか」という類の、かなり強めの反発も見られます。

ただ、この表現は「舞台を行うにあたって『必要な対策を講じていた』と説明できるレベルでないと、キャストもスタッフも、もちろんお客も安心して舞台を見ることができない」という前提をきちんととらえる必要があると思います。

舞台好きにとって、大好きな舞台を見られないのは辛いことです。でも、無理矢理に「舞台を開く」ことを目的にし、リスクを見て見ぬふりするのであれば、それは安心して見ていることはできないし、心から応援することはできないように思います。

ただでさえ、コロナに関しては見えていないことが多すぎ、感染すれば、完治しても肺に『舞台の特性上必要な技術』の点で元に戻らない可能性もある(スポーツ選手について言及されていましたが、歌唱や台詞などについて、役者さんも似ている部分があると思います)となれば、一時の焦りで再開を早まるべきではない、と思います。


■舞台を再開するには-客席の座席配置について
もう一点強く反応があったのが、いわゆる客席のソーシャルディスタンス対応という、販売客席の間を空ける手法で、すでに映画館ではこの方法が多く取られてきました。ですが、それを遵守すると収容人員の15%~20%ぐらいしか入れられず、現実には開催するだけ赤字、という状態になります。

この点についての公的補助の要請は今時点では聞いていませんが、「Go To Theater」施策として、販売できない座席について原価ベースでの補助(もしくはそれに相当する会場費用の負担)を働き掛けてもよいのではないかと思います。

舞台・イベント関係は2月末から、他業態に先駆けて自粛をしたものの、その費用は全く補填されていません。「あくまで要請にすぎないので休業補償は行わない」という政府に逃げを打たれてしまうと、それに反駁する有力な理由を出せずにいます。

座席配置の間引きをしたうえで再開するのであれば、前提として補助に類する政策の保証を受けたうえで採算計画を立てるべきと考えます。


■舞台を再開するには-新しい作品を作る余裕があるか
2月末以降の公演の中止に関しては、基本的にすべての作品でチケット代の払い戻し(興行元によっては手数料・送料も含めた払い戻し)を行っており、興行元の損害は甚大なものがあります。生じた損出についてクラウドファンディングを募るケース(ミュージカル座、わらび座さんなど)も出ています。

現実、作品を1つ上演したその収入を持って次の作品の制作費に充てていたケースも少なくないとみられ、次の作品が制作できない、ホールの使用料のキャンセル代が少しでも少ない段階で中止を決断せざるを得ない状態もあると聞きます。

稽古に入れず終わった作品もあれば、稽古はやったが本番ができなかった作品、本番の公演が予定通りに打てず回数を減らした作品、それぞれ様々な事情があります。

ただ、次の作品を作る金銭的な余裕がないことを考えると、現実的にありうるのは、「公演を予定していた作品をスライドして公演する」ではないかなと。権利関係を(この非常時なので)ある程度そのまま引き継げると思いますし。(一部作品では再演の可能性を検討し始めているという話も聞きました。)

スライドの期間は興行主によって違うでしょうし、現時点で知る限り一番短いスライドは6か月(ミュージカル座さんの『アイ・ハブ・ア・ドリーム』が5月中旬から11月上旬へ)。一般的には1年スライドが現実的な線でしょう。

ただ、1年延長された東京オリンピック・パラリンピックが実施できるかどうかはワクチンが開発できるかにかかっている、ということと全く同じ問題点を抱えます。「感染している人かどうかが確認できない」というコロナの特性も、この問題を難しくしています。

各興行主が足並みをそろえてスライドすれば、キャストさん、スタッフさん、劇場もそのままスライドできますが、現実にはすべてそうなるわけではないので、改めての調整となるでしょう。


■舞台を再開するには-ガイドラインは貴重なたたき台
前述した「舞台再開ガイドライン」は原文こちらを読むと、かなり多方向に微にわたり細にわたり記載がされていて、舞台側の立場も、社会側の立場もそれなりに踏まえて書かれています。少なくとも「理由をつけて舞台を止めさせよう」などというものでは決してなく、「いかにしたら舞台をやれるか」ということに対してリスクを抽出した文書に読めますので、その『思い』は大切にすべきではないか、と思います。

・表面上、症状が出ている方は入場不可
 この点については、「払い戻し可」をセットにすべきと考えます。劇場のリスクを減らすためには「調子が悪ければ払い戻しできる」というのはリスクの回避費用として必要なものと思います。

・稽古場、舞台上でのキャスト、スタッフの「三蜜」対策

・入場者のトレース(連絡先の確保)による万が一の時の感染調査ルートの可視化

この3つを最初にやろうとしているのは、今のところ6月下旬から再開予定の劇団四季さん。何作かの新作は断念し、実績のある既存作に限定して作品を間引き、稽古場の蜜を防いでいるとのことですので、それが新しいスタンダードになることを願っています。

東宝さんは海外・全国ツアー公演が多く、おそらく今年内は身動きが取れませんし、宝塚さんは2月~3月に一時的な公演再開が少し早かったという理由だけで最前方でかなりの非難を浴びており、なかなか先陣を切ることは難しいと思いますので、動向を見守っていきたいと思います。

その時に大事にしてほしいのは「なぜこうしなければならないのか」のきちんとした共有です。
興行主の都合だけでなく、キャストとスタッフ、お客さんを守るために、舞台を守るために必要であるという説明と、その理由をきちんと説明すれば、まさに同じ方向を向いて乗り越えようとしてくれるはず

人を動かすのも、舞台を動かすのも、「言葉」「思い」だと信じています。

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『星の大地に降る涙』

2020.3.20(Fri.) 14:00~17:00
舞浜アンフィシアター 22列10番台(下手側)

初日公演です。

元々は3月10日(火)開幕を予定していたこの作品でしたが、新型コロナウィルスに伴う大規模イベントの自粛要請を受けて2回にわたって開幕を延期し、この日が初日になりました。

舞台関係は概ねこの日からの再開が多く、前日19日に政府専門家会議からの「主催者がしかるべき対応をとる前提で一律の自粛要請としない」主旨と捉えたものと思われます。

そして個人的な私のことを言ってしまうと、この作品のもともとの初日・10日は観劇予定でお休みを取ってましたが流れ、そしてこの20日・21日は梅芸で『ボディーガード』を観劇するために遠征の予定でした。

ところが、状況を鑑みて3日前に遠征中止。
JR東海ツアーズ様、東横イン様、梅田芸術劇場様のお蔭ですべて無手数料取消となり、まだこの段階では公演予定があったため、若干の心残りはあったのですが、20日午前2時台に3月20日~22日の公演中止が発表され、あのまま強行することにすればどうなっていたか…。

大阪行きがなくなったため、前日に急遽舞浜の20日のチケットを取りました。
今回、仮に公演中止になっても、また万が一体調不良で自ら止めても払い戻しがされるためリスクは低いと判断しました。

今回、主催者の方の配慮で公演を行う場合にも払い戻し可というケースが多いですが、公演のリスク低減のためにも必要な策と思います。払い戻しがないと無理して来ちゃう人もいるでしょうから。

ともあれ、会場の舞浜アンフィシアターは実は初めて来ました。
東京ディズニーリゾートが営業休止中のため、休館中のイクスピアリでしたが、舞浜アンフィシアターへの最短ルートになる関係で、開演2時間前~終演2時間後までチケットを提示しての通行が可能です。

この日朝には、急遽『SHOCK』の当日休演が発表されて、びくびくしながら会場に向かい、開演しそうとわかるまでは結構不安でした。

会場では入り口でアルコール手指消毒があり、係員の方がハンディサーモグラフィーを持って熱を計測。
物販はパンフレットのみで、パンフレット以外はweb(アスマート)のみでの扱いとなり、自販機も販売中止、ペットボトルのみ販売。

滞留しないよう随時声かけが入るのと、退場時の分散退場(ブロックごと)ぐらいが変わったところでしょうか。
特に分散退場は滞留防止にかなり効果があったので、事前告知の上で(帰りが急ぐ方もいるでしょうから)、他でも有効活用できればいいなと思います。

考えられうる最大限の対策を取った感じです。

・・・

作品の話にようやく移行しますが、この作品は「地球ゴージャス25周年記念祝祭公演」と銘打たれ、今まで再演がなかった地球ゴージャスで初めての再演作品となります。

海に投げ出され、島に流れ着いた一人の男を演じるは新田真剣佑さん。
部族・タバラ族が暮らすその島で彼を優しく介抱するのはタバラ族の女神・ステラ、演じるは笹本玲奈さん。
その男を運んできたシャチにあやかり、とっさにその男を「シャチ」と名付けるあたり、ステラはなかなかの天然キャラでもあります(笑)。

タバラ族の女神として、自然に女神として崇められるに相応しい存在感と歌声。
誰にも優しく振る舞い、それでいてその天然さから、お高く止まっていない様を見せる。しかもそれを計算高さを一切見せずにいる様は、「演じている」ようにまったく見えなくて、玲奈ちゃん当てがきですか、ぐらいな嬉しい驚きです。

脚本は再演にあたって岸谷さんが変えているそうで、岸谷さんには玲奈ちゃんの天然さんは見抜かれているようなので(笑)、その辺りがとってもしっくり。

真剣佑さんのシャチが不器用ながらもまっすぐで、心が折れてしまいそうになるとき。
タバラ族と人間(和人)が争うことを止められず、大切な人を次々失ってしまうとき。

それでも、玲奈ちゃんが見せるステラは、人を信じること、人を愛することを決して諦めないんですね。
この人は、本当に人を恨むことも憎むこともしないんだろうか、そんな不思議さにかられるほどのまっすぐな心を感じさせる存在。

母となってから演じるからこそ、自ら子供を育てることのリアルさ、温かさを感じるし、本当の強さも伝わってきて、女性の偉大さをすごく感じます。

この作品は地球ゴージャス唯一の再演作品となり、企画時点では「初演段階で願っていた『反戦』がいまだなくなっていない」ことに慄然としながら決めた再演だったと聞いています。

ところが、もちろん反戦へのメッセージはダイレクトに伝わってくるものの、この日10日遅れでようやく初日の幕を開けられた中で感じたこの作品のメッセージは、「コロナ前」の「戦いというものの無意味さ」だけでなく、今の「コロナ中」の「戦いというものがいつでも発生しうる社会の脆さ」をも同時に伝わってきて。

幕を開けたいと必死に思うだけではどうにもならなくて、そもそも敵がウィルスではなくて人間なんじゃないかと思うような日常の中、人が視野が狭くなると、自分のことしか考えられないようになってしまいかねない極限状態、それを目の前で見せられているような気がして。

だからこそ、「それでも分かり合うことが大切」と説く玲奈ちゃんのステラは、眩いほどに神々しくて。そして、お母様になった玲奈ちゃんだからこそ、いや、玲奈ちゃんでしか出せないオーラで、今この『星の大地に降る涙』のステラ役で拝見できたことの嬉しさに涙が出ました。

元々こういう事態になることを予想だにしていなかったのに、ここに女神そのものの玲奈ちゃんがいてくれる心強さ。
「ウェスト・サイド・ストーリー」のSeason1のマリアシングルキャスト13連投といい、最近の玲奈ちゃんのハイパーぶり凄い…。

カーテンコールでは、客席からの拍手が本当に長くて、いつまでも鳴り止まなくて、舞台上の皆さんもみんな涙を流されていて。本当は泣き虫の玲奈ちゃんは最後は涙涙でした。

そんな中、岸谷さんからのご挨拶も涙涙。
長い長い初日への日々でした。
 世界中がこのような状況の中、この劇場においでくださったお客様1人1人に本当に感謝します。ありがとうございました。また皆さまにごらんいただける機会があることを願っています」

本来なら満席で埋まるであろう舞浜アンフィシアター(1900席)もこの日は6割の入り。それでも、舞台に立った皆さまは客席からの拍手が何よりのエネルギーになったと思いますし、お客さんみんなの拍手は、初日を見届けられ、また明日への一歩が踏み出せる喜びに溢れていて、とても温かい時間になったのでした。

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