『四月の永い夢』

2018.5.20(Sun.) 14:25~16:00
新宿武蔵野館 D列1桁番台

先週から公開になった作品、本当は初日に行くはずだったのですが、急遽仙台遠征を決めたのと、それ以降は尋常ならざる忙しさでこの日まで引っ張ってしまいました。

前日の土曜日は池袋のサンシャイン劇場で演劇集団キャラメルボックスの『無伴奏ソナタ』を見て、この日が『4月の永い夢』。どちらの作品も劇場を出た後の東京の街中の喧騒が、同じ今だと思えないぐらいに、落ち着いた、素敵な空気感でした。

物語に多少のネタバレは入りますので、お気になる方は回れ右をお願いします。

主人公は28歳の女性、初海(はつみ)。かつては中学の音楽教師だったが、3年前に音楽教師を辞め、街中の蕎麦屋でアルバイトとして働いている。演じるは朝倉あきさん。彼女ってイメージ的にはもう少し若い役者さんのイメージがあったのですが、一度一年ぐらい女優さんから離れていらした時期もあるからか、思っていたより少し大人な存在感。

PVで彼女が召している喪服、それは彼女にとって大事な方を亡くしたときのもの。その時から彼女は永い夢に引き込まれていたかのよう。

彼女がアルバイトとして勤める蕎麦屋の娘さん(実質的に女将さん)・忍を(高橋)由美子さんが演じていますが、初海のことを心から心配している様が印象的。友達のような距離感でありながら、自店の閉店を告げ、初海に対して自分の道をきちんと探すよう諭すときの一言が重く突き刺さります。あの、厳しさと温かさを同時に出せる方ってそうそういないと思うので勿体ない。

職探しとして与えられた時間に、本気になれない初海の前に現れた、2人の女性も好対照。

1人はかつての自分の教え子・楓。以前は物静かだったはずなのに今やジャズシンガー。夢に向かって歩く姿は眩しくて、でも実は交際相手にDVを受けており、初海は身体を張って楓を救いに走り、それを成し遂げる。偶然なチョンボを結果的に大金星につなげるあたりの脚本の自然さが素晴らしい。

もう一人は友人にしてかつての同僚・朋子。彼女が産休に入るにあたり、後任の非常勤として初海を紹介するのですが、彼女にとって今の初海は煮え切らず、仕事に対してもアマチュアな感じしか見えない。初海に対して、本当はもっと言いたいのに、でもそれをぐっと堪えて「また連絡ちょうだい」で終わらせる。

この作品にたゆたう空気は、「ホームの黄色い線の少し手前」
初海のことを心配して、みんな初海のことを思うけれど、踏み込み過ぎはしない。忍も楓も朋子も、それぞれの形で初海のことを叱咤するけれど、みなまでは言わない。そこは、見ていて、実は少しだけもどかしさを感じはするけど、過去の彼からの手紙をようやく見られるようになり、彼の実家をようやく訪ねようと、「初海が」思うようになれることが大事なのだということ。

自分を家族のようにに思ってくれた、彼の母親に、今まで言えなかった秘密を打ち明けることができたとき、彼女は「四月の永い夢」から覚めて、周囲の支えてくれた人たちに胸を張れるような一歩を歩きだせたのかと思うと、胸が温かくなります。

彼の実家からの帰り、列車のトラブルで30分待ちとなった駅に降り立ち、その時ラジオから聞こえてきた大好きな音楽と大好きな声、そして大好きになるだろう方からの言葉を聞いた時、その時の初海の表情は本当に魅力的で。それでいて実のところあと20分、30分かけられそうなストーリーをバッサリ切ってあそこで終わらせる中川龍太郎監督の勇気が凄い。

それはこの作品の魅力の最大のところだと思うのですが、「語り過ぎず、語らせすぎず、演出しすぎない」ぎりぎりのところを分かっていて、見た後の余白を観客に委ねてくださる。客席から拝見して、「あとは皆さんで余白を埋めてください」と言って下さるかのようなエンディングが、この作品をより素敵なものにしているように感じられました。

現在は新宿武蔵野館を中心に数館のみの上映ですが、来月から順次全国で上映されます。
素敵な作品です。是非。

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『東京ディズニーリゾート35周年 ”Happiest Celebration!” イン・コンサート』(2)

2018.5.12(Sat.) 17:00~19:20
東京エレクトロンホール宮城 4列10番台(下手側)

東京ディズニーリゾート35周年記念コンサート
『Happiest Celebration in Concert』、仙台公演行って参りました。

当初は仙台公演は行く予定がなく、初日の市川公演の後は、首都圏に戻る6/10の宇都宮公演のつもりでした。

ところが、市川公演を見たら

1)前方で見てみたい
2)直近で行ける日程を見たら仙台の4列目が空いてる
3)しかもこの日は仕事の谷間のたった1日

ということが判明し、即日押さえました。

この日は何といっても、びびちゃんがソロパートを歌う『Thanks To You』。
本当に凄かった。

もう涙を流す1ミクロン前ってこういうことを言うんだなということが伝わってきて。

仙台と言えば、びびちゃんが震災後に山元町に赴いてボランティアで歌での復興支援をされていたこともあるから、ディズニーで仙台に来れるって、私が思っていたよりもとっても大きなことだったんだなということが、今さらながらに分かって。

そして、まりゑちゃんの動画で発表がありましたが、実はびびちゃんはこのコンサート、仙台公演が前半の楽公演。5月後半の静岡(清水)と大阪は、びびちゃんの代わりにMARIA-Eちゃんが入ることになります。

公式には「全キャストが全公演に出るわけではない」という表現になっているのですが、MARIA-Eちゃんは当初から「静岡・大阪のみ」と発表されてましたし、あとは誰が抜けるのかということだけだったのです。

そういう経緯でびびちゃん前半楽となったこの公演。

「Thanks To You」は、このカンパニーみんなに対する感謝の気持ちにも重なって聞こえてきて。また、進行役としてびびちゃんがいっとう引っ張っていたように思えたコンサートも、地方(福岡⇒広島⇒名古屋)を経て、特に女性キャストの個性がそれぞれ出てきていて、盛り上げ上手になっていて、客席も後半はとても盛り上がっていました。

びびちゃんはディズニーハートそのものって感じだし、まりゑちゃんは相変わらずの盛り上げ隊長。ロックバンドのボーカルがシャウトするみたいにマイクを操るし(笑)、そしてオーラの織田さん、気品の和田さん、若さの町屋さんって感じで定着してきた感。

対して男性陣はtekkanさんの説得力と幅が流石。シャウトも、なよっとしたところも両方自在に操れるのはその経験ゆえ。古川さんは、なよっと系専門な気もするし(爆)、長谷川さんはスマート系中心って感じ。

女性陣と男性陣の組み合わせはだいたい女性1人にメイン男性1人、サブ男性1人という関係みたいです。
びびちゃんは『Beautiful』ペアの長谷川さんがメイン、サブが古川さんですね。
あとのキャストの皆さんは追々認識してまいります(ぺこり)。

今回、このコンサート初の地方公演を拝見しましたが、「東京ディズニーリゾートに来てもらいたい」という構成で作られていて、東北新幹線1本で行ける仙台だったり、東海道・山陽新幹線1本で行ける広島だったり、飛行機で行ける福岡だったり、地方公演の場所も実に念入りに考えられている感を受けます。

仙台駅ではディズニーリゾートキャスト(アルバイト)募集も出てたりして、思ったよりディズニーリゾートへの心理的な距離って近いのかも、ということを改めて実感しました。

ディズニーへの愛の濃さにはそれぞれ違いがあっても、最大公約数の「ディズニーを好き」という気持ちで共有できる空間。なかなか他には真似できないジャンルなことを改めて感じたのでした。

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『Play A Life』(4)

2018.5.7(Mon.) 19:10~20:30
シアター代官山 G列1桁番台(下手側)

「どんなことでもできる、時間が被っていなければ」(爆)

ということで、職場の新人歓迎会(非主賓)をすっ飛ばして行ってきましたPAL大楽。

雨が強く、汗だくならぬ雨だく(笑)になって辿りついた初めての劇場。
平日の19時開演は、実はかなり辛いです。18時台の半蔵門線西行きの混雑には閉口します。

結局、少し遅れていらした方々を待っての10分遅れの開演でしたが、壇上ではピアノの小澤先生がアドリブで弾きのばしまくり、「あれ、開演前の音楽がやたら長くなったなぁ」と思っていたらそういうオチだったのでした(笑)

3人ミュージカルのこの作品。
教育実習生は平川めぐみさん、今回2回目の出演です。
指導教官は岸祐二さん、奥様は彩吹真央さん、いずれも今回が初出演です。

岸さんは先日の『In This House』以来ですが、今回はPAL史上最年長の指導教官ポジション(ご自身が仰っていました)ということで、大人の安定感。演技の端々に深みを感じさせます。とっても素敵で痺れます。

彩吹さんは宝塚男役出身なのに関わらず、岸さん演じる旦那様の空気に溶けていく様を自然に表現されていて、素敵でした。「溶ける」という言葉はこの作品の重要な要素ですが、この奥様のポジションを演じられた方は、今まで比較的しっかり者で存在感も強い方が多い印象があります。それ故、強すぎたり、責めすぎているという印象を感じることもありましたが、それからすると、彩吹さんの居ずまいはとても素敵で自然でした。歴代だと個人的には、一番好きなやんさん(池谷祐子さん)と似た空気を感じました。

『Play A life』(以下PALと略)には初出演のお2人をしっかりサポートしたのが、今回唯一のPAL経験者だった実習生役、平川めぐみさん。前回拝見した時も、そのスタンスの確かさに脱帽したのですが、今回も『出すぎず、出なさすぎないお節介さ』が絶品です。

思いを言葉にしかできない旦那様、思いを言葉にすらできない奥様。
それぞれが入った迷路は、自分たちだけではどうにもできない行き止まり。

奥様がかつて若かりし教育実習生の彼女に発した心からの言葉は、彼女を救っていて。
だからこそ、彼女は奥様の本心を旦那様に伝えずにはいられなくて。

そして、彼女の言葉は旦那様が「茶番」と断じていた心の壁を溶かしていく。
奥様のハートが彼女には生きていたこと、それこそが奥様が生きていた証。

奥様を自分の部屋に閉じ込めることでしか生きられないと思っていた自分が、本当の意味で一歩を踏み出せるきっかけ。
今を生きるためには、過去を抱きしめていなきゃだめなんだな、と感じさせられたのでした。

PALを拝見するのは何度目か失念してしまいましたが、「猫が来た日から私の時は停まった」という歌詞の意味を今さらながらに理解。意外に早い段階で言及されてたということに気づきました。初見でもちょっとした違和感を感じられるようには作られているんですね。

終演後は大楽ということでご挨拶。

岸さん「DVD・ブルーレイを予約承っております」
彩吹さん「台本も販売しております。珍しいですよね」
岸さん「DVDと台本を並べてみないでくださいね。
 もしかすると違っているかもしれませんので…(笑)」

彩吹さん「(出身地の)大阪でもぜひやりたいです」
岸さん「ぐみちゃん、どう?」
めぐみちゃん「(振られてわたわたした後)沖縄でやりたいです」
岸さん「行きたいだけでしょ(笑)」
めぐみちゃん「北海道でもやりたい(笑)」←めげないw
彩吹さん「また私たちやれるように頑張りたいです」

※ちなみに台本は終演直後に完売していました
DVD予約もたくさん入っていたようで嬉しい限りです。

PALは本当にキャストによって見える空気が違うこともそうですが、初見の方を惹きつける力がある作品だと思っていて、演劇なのに映画的というか、敷居が低い作品と(いい意味で)思っています。
今回のキャストが揃った奇跡にも感謝しつつ、これからも新たなキャストで新たなPALが続いていくことを願っています。

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『1789~バスティーユの恋人たち~』(2)

2018.4.14(Sat.) 17:00~19:55 1階T列10番台
2018.4.20(Fri.) 18:00~20:55 2階G列30番台
2018.5.6(Sun.) 17:00~19:55 2階I列40番台

帝国劇場

さほど行っていないと思いきや、意外にも3回観劇。初演は1回だけだったので、再演は3回でしかもDVD購入ということなので、人並みに嵌ったのですね(爆)。

上手くキャストを割り振れなかったので、メリポピ同様に全キャスト制覇はならなかったのですが、やっぱり自分の気になるのはロナンとオランプの組み合わせ。

今回の再演では4パターン中3パターンを見られたわけですが、自分が好きなのはかーねね。やっぱりかーねね(加藤和樹ロナン&夢咲ねねオランプ)。DVDも勿論かーねね。

少女漫画ど真ん中のラブストーリーが、何の不思議もなく展開されるさま。
その対極にあるのがてぺさや(小池徹平ロナン&神田沙也加オランプ)かと思うのですが、このペアがリアリティーを感じさせる(こちらも好き)のに対して、徹底的にファンタジーなのが、かーねね。

ねねちゃん演じるオランプ(ねねンプ)って、人を見る目が凄いあると思うんです。

王宮にいるのに、人を身分で判断してなくて。主君であるアントワネットさまへの忠心は立場を越えたものを感じるし、王様の弟のアルトワ伯を欠片も信用していなかったりするし。その上ポリニャック夫人の胡散臭さも感じ取ってたりして。ま、ラマールのことは使えないなぁと思ってるだけかもだけど(笑)。ラマールに銃口向ける時の無表情がツボ過ぎて(笑)。

だからロナンに心惹かれる様が凄い自然に感じるんです。
不器用で直情な、だけど他人を思う心に溢れたロナンのことを、ねねンプは「農民だから」なんて見ることはあり得ない。自分を助けてくれた相手の男らしさ、真っ直ぐさに心惹かれることが良く分かる。「不器用」って言葉は特にかーねねだと「そうだね。」と納得してしまうお互いの不器用さ。てぺさやだと不器用なのは恋だけって面を感じるのですが、かーねねだと恋から仕事まで不器用に感じる(爆)。

それゆえ、オランプがソレーヌと出会った時に、ねねンプだとすぐ分かり合っているように見えるんですね。そもそも人を信じない、不信感の塊のようなソレーヌからさえ、「あなたは真剣なのよね。」のひと言で分かり合えるほどの関係。「人の道を外れない生き方」という父親の言葉がぴったりきます。

さやンプとちょっと違うのが、さやンプだと「自分の道を外れない生き方」って感じがするんですよね。
「公私」という言葉で言うと、「公」に徹して「私」を薄める技術を持ってるのが娘役出身のねねちゃん。「公」に徹しても「私」が出てきちゃうのがさーや(爆)。ただその反面、自分をはっきり出す役(キューティーブロンドとか)はさーやが合うんだろうなと思う。

今回の作品の特徴と言えば、キャストが今までの帝劇キャストとかなり変わっていること。ダンス中心で、オーケストラ非使用ということもあっていつもと違うキャストが多く入られているのも印象的。そんな中女性キャストではソニンちゃんの安定感が流石ですが、準プリンシパル的なポジション、リュシル役の則松さんが印象に残りました。デムーランの彼女のポジションで、立ち姿、踊り姿の華やかさが流石は宝塚出身という感じで素敵でした。

今回、DVDが出るということで恐らくは今キャストは今回限りなのかと思いますが、秋から上演される『マリーアントワネット』との共通点も感じつつ、興味深く拝見できて良かったです。

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『メリーポピンズ』

2018.3.31(Sat.) 17:00~19:55 3階6列2桁番台(B席)
2018.4.8(Sun.) 12:00~14:55  3階6列同席  (B席)
2018.5.4(Fri.) 17:00~19:55  1階17列40番台(S席)

東急シアターオーブ(渋谷)

『メリーポピンズ』観劇は結局3回。

公演期間からするとずいぶん少ない回数になってしまいました。

理由はいくつかありますが、公演開始タイミングが仕事で忙しすぎて所謂”スタートダッシュ”ができなかったこと、期間がそれなりに長いことで後から入ったライブや公演に押し出されたことが多かったこと、そして何よりオーブが苦手なこと(苦笑)…ということもあり、「もう少し見ておきたかった」と思いはしますが、個人的には急遽入れた5月4日ソワレのキャストが自分にとってとても満足いくものだったので、結局これで良かったのかなと思っていたりします。

というのも、なぜだかその日(5月4日)、公演を見ていて、「あ、自分のメリーポピンズはこのキャストで幕を引くのが正しいんだ」と理屈じゃなく直感で思ったから。実のところ、キャストでお2人拝見できなかった方がいらしたのですが、タイミングからすればその方はもっと前に見ておくべき方で、自分の好みからすると、やはり作品の最後は大好きな方で締めたい、となると1幕の間に心は決まっていました。

3回観劇のうち2回は、シアターオーブ3階のぴったり同じ席。今回、3階の後ろ2列がB席で、ここを取れたことが奇跡的ですが、メリーポピンズが最後にフライングしてやってくるところのちょうど下だったので、迫力が凄い。フライングと言えば、「ピーターパン」で玲奈ちゃんや充希ちゃんやふうかちゃんが目上を通って行ったことがあったので慣れているんですが、みんな舞台に戻るんですよね。飛んだら。それなのにメリーポピンズは3階上部のスペースに降り立ち、そこから下手側の屋根裏通路を一目散に駆けてカテコに突入するのが凄い。3階の方が迫力があるという作品を初めて見ました。

さて物語を。ネタバレですのでご注意を!




銀行家のバンクスは、奥様で元女優のウィニフレッド、息子のマイケル、娘のジェーンでの4人家族。使用人2人を抱えていてそれなりの屋敷を持っているが、上流階級にはまだ届かない、そんな家族。
家族それぞれが問題を抱えている中にやってくる新たな子守・メリーポピンズが、バンクス家、そして家族それぞれの心を変えていく、そんな物語。

もう一人の主要登場人物は煙突掃除屋であるバート。メリーとは以前からの知り合いのように見受けられる意味深な動きをしますが、「煙突掃除」に「心の中のもやもやを取り除く」かのような面も感じられたりしました。

かつての子守り、ミス・アンドリューに厳しく育てられて、自由な生き方とはかけ離れた生き方しかできなくなってしまったバンクス。バンクスへの心配、息子娘への心配をしながらも、どうすればいいのか分かっていないウィニフレッド。いたずら盛りで沢山の子守を退けてきたマイケル・ジェーンも、実のところ父親の愛情が欲しくてたまらない。

そんな中やってきたメリーポピンズが、マイケルとジェーンを街に連れ出し、いわば”見聞を広げさせる”シーンに登場する”デキる”アンサンブルさんの皆さま。

公園シーンでは初回こそ区別がつきませんでしたが、郁代ちゃんの「運命の出会い」が観られて素敵。今回、郁代ちゃんと華花さんがお2人でヴォーカルキャプテンということもあり、シンメトリー的に見えるシーンが印象的です。

ウィニフレッドがバンクスの心を開こうとする間、メリーポピンズは子供たちの心を開こうとしていく。
「お砂糖ひとさじあれば、お薬も飲める」そう言うメリーポピンズのことを、マイケルもジェーンも最初は警戒するけれど、どこか”今までの子守の人と違う”と思い始める。

それでも心がなかなか開けないマイケルとジェーンのことを、一度は見放すメリーポピンズの表情はとても悲しげで、「あの子たちは良い子だけど、心を開いてくれなきゃどうしようもない」と言って子供たちから去ってしまうわけですが、その結果、かつての子守・ミス・アンドリューが復帰しバンクスも委縮してしまう。

そんな経緯もあってからのメリーポピンズの復帰はバンクス家の総意として迎えられ、メリーポピンズの作り出す魔法の中、”家族”として、それぞれが自分以外の皆を思うように変わっていく、その「家族の再構成」の様が素敵です。

バンクスは本業である銀行業の融資で、大口取引先への融資を断り、新興企業家への融資を行なう。そしてその大口取引先がライバル行から融資を受けたことで責任を問われ、自宅謹慎・無給の処分を受け、ますます自信を失い、公園を徘徊して警察官に保護される始末。そんな中、銀行から呼び出しを受けるバンクスに、「私は付いてはいけないの、だって女だから」とふさぎ込むウィニフレッド。

でもここで、マイケルもジェーンも、今までのメリーポピンズからの贈り物ゆえに「心が豊かに、視野が豊かに」なっているんですよね。ウィニフレッドが想像もつかないことを言い出して、ここで初めてメリーポピンズがウィニフレッドにハートを伝える。

その言葉に気持ちを動かされ、バンクスに「付いてこないように」と言われたのに、ウィニフレッドは付いていって、きちんと夫の正当性を主張する。実は大口取引先は融資した相手行を破綻させていて、バンクスの行為は銀行に損害を与えたどころか、巨額の利益をもたらしたことが判明する…とまぁ、ここはかなりご都合主義が入っていますが(爆)、きちんとそこには理由があって「大口取引先の語るビジョンには『お金』はあったけど『人』はなかった。新興企業家の語るビジョンには『お金』はなかったけど『人』はあった。物事を成し遂げるのは結局は『人』なのだ」という思いに、バンクスが”気づき直せた”から」こそのもの。

「昇格させ、報酬も増やす」という頭取からの提案に口をあんぐりさせるバンクス。

そのバンクスを見て「口を開けるんじゃないの、魚じゃないんだから」というウィニフレッドの漢前さときたら(笑)。でも、そのシーンを見て感じさせられたのは、その時ウィニフレッドは『バンクス家のメリーポピンズ』になれたんだな、ということ。

メリーポピンズは、壊れかけた家族を渡り歩いてきた存在で、逆に言うと、問題が解決すればその家族からは去っていく。家族がそれぞれを思い合い、助け合えるようになればメリーポピンズはその家族の中にいるわけだから、自分自身がそこにいる必要はなくなる。

そんな、「成功すれば自分は用済み」という立ち位置にいるメリーポピンズは、めぐさん(濱田めぐみさん)の方がドライな立ち位置で、よりプロに徹しようとしている感じがしました。逆に言うと意図して家族と感情を分かち合わないようにしている感じ。あーや(平原綾香さん)は、ウェットな立ち位置で、家族と感情を分かち合うことも厭わないような感じ。2人は完璧さの方向性がちょっと違うように思えました。めぐさんは完璧な子守、あーやは完璧な家族を目標にしているように感じたかな。どっちも仕事ではあるものの、仕事の成し遂げ方に違いがある印象。

メリーポピンズの存在で、大きく変わったのはウィニフレッドだと思うのですが、彼女が「どうにかしなきゃ」という思いはあっても、どうしていいのか分からなかった、そこに方向を指し示すことで、バンクスも家族の大切さを理解したし、子供たちも「家族の一員であるのだから、父や母を支えなければならないんだ」ということを理屈じゃなく身体で理解することができて。

危機的な日に、ウィニフレッドがメリーポピンズに言った一言、「上流の家庭ならあなたにお休みを変えてなんて申しませんよね」という言葉。
ウィニフレッドは、この言葉でメリーポピンズを説得しているんですよね。使用する側・使用される側の立場だから、実は命令することもできるんですが、そうはしない。
「今日は本当にあなたの力が必要なの。私は全力でバンクスを助けなきゃいけないから、どうかあなたは今日は子供たちと一緒にいてほしい」と。そしてメリーポピンズは決して自分の意思だけで動く女性ではない。それがウィニフレッドの言葉の中にはあったんですね。「私はあなたを信頼しています」と。

メリーポピンズは「いずれいなくなる自分だから、できるだけ感情を持ち込まないように振る舞っている」女性だと思っていて、でも、だからこそ「自身を本当に必要とされたから」こそ、あの時子供たちのために残ったのだと思えて。その心の通じ合いが、メリーポピンズにとっての心の雪解けだったらいいな、と思えたのでした。いつもドライに振る舞わなければならないと覚悟している彼女だからこそ。

ウィニフレッドは観劇した3回とも三森さんだったのですが、今回の三森さんのウィニフレッドは素晴らしかったです。今までもレミやサイゴンで拝見してきたものの、ここまで合う役に出逢えるとは、いい意味で予想外でした。子供たちの目線で泣いて笑って、子供たちと一緒に成長できる役どころが、きっと今の彼女にぴったりで。彼女の成長がメリーポピンズの存在ゆえ、ということも凄く分かりやすく見えていて。今の年齢だからこそ出会えた、そんな奇跡だったんじゃないかなと思います。

「どんなことでもできる、自分で邪魔をしなければ」

そんな言葉がカンパニーみんなに広がっていた作品。夢を現実にするのはいつも自分の心次第。作品を表現される前向きなパワーが、いつもミュージカルを見る層だけでなく、初めてミュージカルを見る人たちにも確実に暖かいものを向けていたこの作品。

東京後半で一気に盛り上がりに加速がついた感のあるこの作品、大阪公演でもますます広い層に向けて温かい気持ちが伝わりますことを願い、信じています。

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『東京ディズニーリゾート35周年 ”Happiest Celebration!” イン・コンサート』(1)

2018.4.28(Sat.) 14:00~16:20
市川市文化会館
2階11列40番台(センターブロック)

1983年(昭和58年)4月にオープンした東京ディズニーリゾート(東京ディズニーランド)35周年を迎える今年を記念しての全国コンサートツアー、この日が初日です。

関東地区はこの回の後はしばらく間が空いて、綿引さん(びびちゃん)も関東で見られるのは6月までないということで、この日を逃すわけにはいかず、行ってきました。

生オーケストラの演奏とともに、バックにはディズニーの映像が流れる中、ステージで歌い踊るのは「Happiest Singer」10名(男性5名、女性5名)の皆さま。

男性は、國松慶宏さん、田中俊太郎さん、tekkanさん、長谷川開さん、古川隼大さんの5名。
tekkanさんは『Count Down My Life(TipTap)』はじめ多数の作品で拝見していますし、長谷川さんは昨年の帝劇『Beautiful』、古川さんは昨年のクリエ『キューティーブロンド』で拝見しています。
ただ、この日は実はオペラグラスを持っていくのを失念してしまったため、男性は歌声でだけの判断だとちょっと辛かったです。

女性は、織田佳奈子さん、町屋美咲さん、まりゑさん、和田清香さん、綿引さやかさんの5名。パンフレットにはMARIA-Eさんも記載されていますが、彼女は5月公演のうち大阪・静岡(清水)公演のみの出演です。
女性キャストで拝見したことがあるのは、まりゑさんと綿引さん(びびちゃん)、和田清香さんのお3方。

1幕では各キャストが各々のテーマカラーのドレスで登場します。
びびちゃんはすっかりディズニーでは定着した黄色(劇団四季『リトルマーメイド』で主人公の姉・アクアータ役で出たときが黄色のドレス)。
まりゑちゃんは赤いドレスで縦横無尽に踊りまくっておりました。ダンスの時にとんでもなく足を上げていてびっくり。運動能力凄いなぁ。織田さんは緑系のドレス、町屋さんが紫系、和田さんが青系(水色)のドレスでした。

2幕ではみんな白いドレスに変わりますが、びびちゃんとまりゑちゃんだけがショートドレス、それ以外の皆さんはロングドレスでした。

コンサートの進行は東京ディズニーリゾート35周年の歩みを振り返る、ということで2幕合わせて6部構成。

●Act 1
1.オープニング&アニバーサリーソング
2.七つのテーマランド 音楽の巡り
3.エンターテインメント・メドレー

●Act 2
4.東京ディズニーシー・ミュージックメドレー
5.夢と魔法あふれる四つの季節
6.みんなで踊ろう、みんなで祝おう!&フィナーレ

6部合わせて、曲数が多くて全部で76曲とのこと。

全セットリストはこちら(ネタバレです)

※パンフレット掲載のセットリストと一部異なりますが、こちらのHPの方が最終版です。

完全なソロ曲はなくて、最小構成がデュエットの2人。最大構成が全員の10人ですが、大体の感覚で言いますと(もはやメモしていられるレベルではなかった笑)、デュエットが10曲ぐらい、最大勢力の3ペア(6人)構成が30曲ぐらい、そして残りが最大構成10人での30曲ぐらいということで、平均するとシンガーの皆さん、1人あたり30曲ぐらい歌っていることに…驚愕です。

とりわけ印象に残った曲と言えば、織田さんが歌われた『Once Upon A Time』(第3部)と、全員で歌われた今回の35thテーマ曲『Brand New Day』(第3部)。あと自分のディズニーの記憶的にはシーよりランドなので、なんだかんだでエレクトリカルパレードの曲は懐かしかったなぁ。

ラスト曲としてびびちゃんがソロパートを歌った『Thanks to you』(東京ディズニーシー1周年のアニバーサリーソング)は凄く良かったです。→こちら動画

ラスト曲の前、1人捌けていったびびちゃん、何か起きるんだろうなと思いましたが、驚くほど長いソロパートにびっくりでしたし、9人のメンバーをバックに、1人センターに立って歌われている姿を見て、言葉にならないほど感動しました。

びびちゃんは実際、立ち位置もセンター付近が多かったですし、進行MCもかなりの回数任せられていましたし、ラストのパラパラの客席参加パートの説明は全パート、綿引先生(ディズニー愛ゆえにかなりのスパルタ風味笑)が担当されておりました。

進行されるMCで素敵なのが、ディズニー好きがあふれていることですよね。前回の舞台(『In This House』)の終了からわずか2週間しかたっていないのに、驚くほどメインでしかもそれを立派に務めていて、「(シンガー以外に)司会を立てない」ことがとてもいい方向に作用していました。びびちゃん筆頭に、シンガーの皆さんがそれぞれの適材適所で生き生きと生きておられ、それをディズニー音楽とディズニーの空気をもって、客席と共有した時間がとても素敵で。

びびちゃんが終演後にtwitterで書かれていた「ゲストの皆さま」って言葉は、東京ディズニーリゾートのポリシーでもあるわけですが、シンガーの皆さま、生オーケストラの皆さまの演奏から伝わってくる、純粋なディズニーへの思いがとても温かかったです。

適材適所といえば、まりゑちゃんは”予想通りに”お祭り娘で(笑)。

びびちゃんのように純粋ディズニーという感じとはちょっと違って、どちらかと言えばエンタメな盛り上げ系といういつものライン(笑)。でも、それがとても良かったんですよね。ディズニーコンサートって何回か経験していますが、ディズニーそのもので、もちろん素敵ではあるものの、それだけだと方向性がちょっと固定化しちゃう面があるんですね。で、それに容赦なく茶々入れる感じのまりゑちゃんの立ち位置と動きは中々客席を和らげていてGJです(笑)。なんか演歌みたいなコブシも入っていましたが(爆)。

某男性シンガーが「東京ディズニー、ラ、ランド」って噛んだ時にすかさず「ララランド?」ってツッコんでいたのが通常営業過ぎて爆笑しました(笑)。会場も爆笑してましたね(笑)。

歌声では和田清香さんの歌声を初めて意識して聞けて素敵でしたし(舞台作品としては『手紙』で拝見しており、レミゼのアンサンブルでも拝見していましたが)、とにかく1回だと見逃し聞き逃しがありすぎて今から次に見聞きできる日が楽しみで仕方ないです。

首都圏は6月10日が宇都宮、30日が大宮、その後が空いて8月10日・11日が東京国際フォーラム2daysです。

4月25日発売の「東京ディズニーリゾート35th Happiest Celebration」CDを会場で購入。
35thテーマ曲の『Brand New Day』が初収録ですが、英語詞なので、この曲含めて今回のhappiest Singersでの音源化をぜひ期待したいところです。次はちゃんとアンケートに書くことをここにきちんと宣言しておきます(爆)

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『In This House』(3)

2018.4.11(Wed.) 19:30~21:00
2018.4.15(Sun.) 16:30~19:00
東京芸術劇場シアターイースト

水曜はE列10番台後半(センターブロック)
日曜はD列10番台後半(上手側)

「In This House」(勝手に略してITH)、4回目・5回目、そして日曜日が楽公演です。

カルチケは日曜日楽公演で全部が出終わって終了という素晴らしい結果に。

物語の中での伏線が随所に張られていて、複数回見ると「あ、なるほど!」と膝を打つことしきりですが、ただ謎解きをするという意味ではもったいない、というわけで謎解きをしながら物語の魅力に改めて迫ります。ひとまず終演しましたので、ネタバレ完全解禁です。ご注意ください。




●「出会う」の意味
ここでは、blog1回目の文章を再掲します。

『大人ペア、岸祐二さん演じるヘンリーと、入絵加奈子さん演じるルイーサの「いる」家へやってくる、若手ペア、綿引さやかさん演じるアニーと、法月康平さん演じるジョニー。

2組のペアが「出会う」ことで生まれる物語を描いた作品。』

blog1回目で書いたこの文章は、ネタバレ要素を極力防ぐために、かなりぼかした表現にしました。

ネタバレが最初に分かってしまうことは、観劇する側からしてもできるだけ避けたい要素で、拙blogではネタバレを必ず明言して書くようにしています。とはいえ、ネタバレなく作品の魅力をどう伝えるかは、素敵な作品ほど悩み困るので、とてもエネルギーを必要とするのが実際のところです。

話は戻りますが、「いる」と表現したのが実は裏を返すとネタバレで、「実体はいない」のですね。

少なくともルイーサはアニーとジョニーの「時」とは時を共有していない。
ヘンリーはルイーサとの心のすれ違いを埋めるためにかつて住んでいたこの家に来たけれど、おそらくルイーサは既に亡くなっているんですね。ヘンリーとルイーサの間に生まれた娘は、病気によって亡くなり、娘が亡くなって20年後まで「ヘンリーとルイーサの間には埋める言葉が見つからなかった」とルイーサが歌っています。そして現在でも心が離れていて、ヘンリーからの言葉をことごとくかわしていくルイーサを見ると、2人は「それ以来、心通じ合う機会がなく離れてしまった」ことが感じ取れます。

だから「出会う」と表現したのも、これまた裏を返すとネタバレで、「物理的に出会っていない」のですね。大人ペアと若者ペア。

でも、そのことをネタバレで表現すると、その固定観念を前提に見てしまう。それはこの作品の初見としてはよくないと思ったので、その辺は配慮した、という次第です。

●トリアージナースは火を起こせない
4回目に拝見したときにうっかり見逃していたこの言葉が、実は大きな意味を持っていることに気づきました。ジョニーがアニーの本質を理解していたことをはっきり表現している言葉。

戦場や災害地で命の消える瞬間と向かい合い、目の前の人すべてを助けられるとは限らないことを身をもって知っているアニー。アニーはなぜそこまで厳しい環境に身をおくのか、その使命を果たすことが自分の存在意義と思うほどにトリアージナースを務めているのか、それはあえてなのか言及されていませんが、私はあえて触れていないのだと思っています。

私見として書きますが、アニーは他人を助けるという方向で他人と向かい合うことで、自分と向かい合うことと避けてきたんじゃないかと感じています。自分が助けたいと思う人は世界中を見回せばどこにでもいる。自分が他人を助ければ、自分が生きている理由を感じていられる。

ジョニーがアニーについて言った「トリアージナースは火を起こせない」の言葉は、アニーの一番弱い部分を、さりげなく言及することにジョニーの鋭さと、優しさを同時に感じたんですね。

トリアージナースは目の前に起きていることに対処はできる。どうすればいいかを的確に判断し行動すればいい。体力的に精神的に厳しい場であっても「どうすればよいか」を考えることで対応が決まる。

つまり、トリアージナースは火は消せるけど、火は起こせない

blogの第2回で書いたテーマで、「なぜあんなしっかりしたアニーという女性がジョニーのような男性に惹かれたのか」と書いたのですが、一つの可能性として「アニーは自分ができない面をジョニーに見たから」と思っています。

アニーはジョニーの告白に対して立腹しますが、心落ち着いた後にジョニーに対して「どうすれば上手く生きていけるか、やっていけるかは分かっていない」と言っていて、それは自分の未来をジョニーと作っていくにあたっての道筋を、実はアニー自身が分かっていない、のではないかと思えてきます。

アニーがジョニーに対して「フェアじゃなかった」と言っている言葉も印象的でした。

嬉しかった言葉をかけてくれた相手に対して、自分が突かれたくなかった急所を突かれたからといって、傷つける言葉をかけていいわけじゃない、ということに聡明なアニーは当然に気づいた、ということなのかと。

自分ができていなかったことを気づかせてくれた人に対して怒るのはおかしい、と。大好きなジョニーとこの後のことを考えていきたかったのに、自分から動き出さないでおいて、先にジョニーが「自分の望まない方向で動いたから」といって怒るのはおかしい、わけですね。

ルイーサがいみじくも語った言葉。
『大好きな人に「こうしちゃいけない」と思うことは辛いことよ』

ルイーサにとっては、自分が娘を身ごもったことで、愛するヘンリーが野球をやめたことへの贖罪の気持ちだったでしょうし、アニーとジョニーのすれ違いは、昔の自分たちを見るようでいたままれなかっただろうなと。
ヘンリーは薄々過去の過ちに気づいていて、ルイーサは過去の過ちを振り返ることでさらに自分の生きた意味がなくなることに怯えている。

ヘンリーが言った
『なぜ俺たちはやり続けなかったんだ』
その言葉が胸に迫ります。

人と人が関わるとき、100%同じということはありえない。
言葉を交わし、思いを交わし続ける限り、アニーとジョニーの道は重なって、本当の『家』で生きていくことができるのかなと、思わされたのでした。

壁をいくら築いてもすべての危害を防げるわけではない。最後に必要なのは、どこまで心の壁なくお互いを分かり合えているかなのかなと、感じさせられました。

●アニーのバックボーンにあるもの
この作品で明確にされていないことの一つに、アニーのバックボーンがあります。
なぜアニーはトリアージナースとして世界を飛び回るのか。
子供を作ることに対して極端なほどの抵抗感を持つのか。

いくつかの想定はできるのですが、まずもって可能性が高いのが、「アニーは幸せには生きてきていない」という点。ジョニーに優しくされ「私は優しくされる資格のある人間ではない」と呟いていることから見ても、愛されることにも幸せになることにも慣れていないことが見えてきます。

トリアージナースとして命の終わる様に常に接している彼女にとって、「幸せが長く続く」ことは信じ続けても叶うとは限らないと分かっている。だからこそジョニーと長く過ごす「家族」よりも「ただ1日ジョニーと一緒にい続けられればいい」と思っている。危険を常に肌で感じている彼女にとっては、「失う」ことを極度に怖がっている。もちろん幸せになりたいと思っているけど、幸せが続くことは自分だけではどうにもならない、だから幸せになることを望まなければ、これ以上傷つかないでいられる…千穐楽のびびちゃんを拝見して、何となくそれを感じました。

そう考えると、アニーは「幸せを失った経験のある女性」ではないか、と想像しています。
例えば、両親を事故で一気に亡くしたような、感情が空虚になった過去を持っているように感じるんですね。そしてそんな「幸せを感じていない」過去をもつ女性って、私がびびちゃんを見始めてからは一度も拝見したことがなくて。何となくですが、自身の過去にないものを求められたからこそ、今回、ここまで試行錯誤され、仕上げるまでに数多の苦心があったのではと想像しています。

しかるに、千穐楽のびびちゃんアニーは間違いなく公演中最高で、アニーの感情を余すことなく伝えようとする使命感に溢れていて。はっきりと力強くなった相手役の法月くんジョニーとの真剣な感情のぶつかり合いも凄くて。公演前半では岸さん・入絵さんの大人ペアが強いきらいも感じましたが、この日は若手ペアの進境著しくて、若手ペアのエネルギーに大人ペアの思いも動かされたように感じて素晴らしかったです。

●タイトルの「最後の夜、最初の朝」について

2人の気持ちが通じあっていない夜は、今日が最後
2人の気持ちが通じあった朝は、今日が最初

それこそが、4人が出会ったことで見つけた、心の宝物だったのかと思います。
その心が客席に伝わってきたからこそ、暖かいものが客席に残ったのだと感じました。

●千穐楽の景色
4日に初日を迎えたこの公演、15日が千穐楽。18公演あったこの作品ですが、正直、集客面では苦戦した面が多く、学生向け無料チケット”カルチケ”も回によっては用意しても全く出ない(引き取り手がいない)公演もあったように聞いています。

ところが千穐楽は客席ほぼびっしり。客席からの「千穐楽を見届ける」空気の真剣さが伝わる中、舞台上でもまさにその期待に応える以上の風景が繰り広げられ。何度も繰り返されたカーテンコールの後半ではびびちゃんがうるっとくる中、会場中のスタオベと一緒に拍手を贈ることができたのが何より幸せでした。

定位置が上手側端だったびびちゃんを、カーテンコール後半でセンター方向に寄せてくれた岸さんに深く感謝。

音源化や再演、願っています。

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『LIVE SPINNER』

2018.4.14(Sat.) 13:00~15:00
渋谷JZ Brat

岡村さやかさん&上野聖太さんジョイントライブ、3回公演の1回目に行ってきました。

この日の昼と夜が渋谷JZ Brat(渋谷セルリアンタワー2階)、翌日昼が六本木Clapsでしたが、日程の都合上、この回のみ拝見しました。

この回は前半がディズニー、後半が『ダディ・ロング・レッグス』特集ということで、一度でも拝見できて良かったです。この日の夜がディズニー&『ジェーン・エア』特集、翌日昼が『ダディ・ロング・レッグス』&『ジェーン・エア』特集のため、ひとまず一度見られれば最小限は聞けたということになります。

2人の共演はかつては最多共演同士だったとのことですが、実は久しぶりとのこと。
上野さんと久しぶりなことへの、岡村さんからの感想がこの日一番の出色なツッコミで、

陽気さが増しましたよね(会場内爆笑)」

…流れ作っちゃいました、さやかさん(笑)

関係性としてはレミ2007年で一緒になって以来とのことですが、ちょくちょく出るさやかさんの黒い系(笑)のコメントに「上から目線ですねぇ」と返す聖太氏が流石です。

立場的にも聖太氏が先輩にあたるために、さやかさんも安心して頼れるようで、いつも以上に伸び伸びなさやかさん。聖太氏と言えばRiRiKAさんとされた時もこんな風に立ち回る感じ、と個人的に納得(爆)。

ディズニーパートの選曲では「どうしても客席から練り歩いて登場したい」のさやかさんオーダーでM1。
このお店に行かれたことがある方ならわかると思いますが、入口から客席に一部段差があるので、特別感がある演出でした。M3はシンデレラ実写版からのさやかさんセレクト。「強さを真っ直ぐに伝えるヒロインが魅力的」と仰っていました。第1部最後のアナ雪はAnotherさやかさんで噴きましたが、一番面白かったのは最後のパートで、

さやかアナ「おかしなこと言っていい?」
聖太ハンス「そういうの大好きだ」
・・・・
聖太ハンス「この曲が1幕最後の曲だったんだ」
さやかアナ「知ってた」

が最強でした(笑)

●Act.1 Disneyコーナー
1.Be Our Guest/美女と野獣(2人)
2.Go the Distance/ヘラクレス(上野)
3.Strong/シンデレラ(岡村)
4.So close/魔法にかけられて(上野)
5.Color of the wind/ポカホンタス(岡村)
6.You're the music in me
 /ハイスクール・ミュージカル2(岡村・上野)
7.とびら開けて/アナと雪の女王(岡村・上野)

●Act.2
 ~ミュージカル「ダディ・ロング・レッグス」の世界
8.ミスター女の子嫌い(岡村)
9.年寄り(上野)
10.知らなかったこと(岡村)
11.いつ会おう?(上野)
12.あなたの目の色(岡村)
13.ショーウィンドウの女の子(上野)
14.やな奴(リプライズ)~いつも(岡村・上野)
15.幸せの秘密(岡村・上野)

●アンコール
Enc1.A Whole New World/アラジン(岡村・上野)

そして第2部は、『ダディ・ロング・レッグス』特集。
もともと今回の企画は去年、銀座の親の顔ライブでの作曲家・ポールゴードン特集で2人が久しぶりに共演したことから出発しているということで、第2部の構成はさやかさんが担当。

手紙を使った会話&音楽での構成が素敵で、舞台を見たことのない方にもわかりやすい構成。
聖太氏が最近は某テーマパークに出演されているということもあり、いつも舞台をご覧になっていない方が客席に多かったようで、舞台好き派からするとかなり丁寧な説明になっていましたが、客層からしてちょうど良かったのかと思います。

さやかさんのジルーシャは新人公演でやって欲しいぐらい好きな役ですが、本役の坂本真綾さん同様、「女の子としての本音が厭らしく聞こえない」ところに知性を感じて好きなんです。大層怒っているシーンでも、怒るプロセスが理路整然としていて、感情に依らないところに共通点を感じます。

今回は新バージョンにするか迷われたそうですが、結果は前回までの初演バージョン。初演バージョンが好きだったので嬉しかったなぁ。「卒業式」がなかったのだけが寂しかったですが。

さやかさんジルーシャと聖太さんダディを聞いていて思いましたが、2人の距離感の絶妙さ。
依存しすぎずお互いを必要とする感じが近すぎも遠すぎもしないこと。女優さんにとって相性が良い俳優さんを見出すこと、その逆もとても大切なことだと感じていますので、また2人で共演する機会が実現することを期待しています。

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『In This House』(2)

2018.4.7(Sat.) 17:30~19:00
2018.4.8(Sun.) 16:30~18:50
東京芸術劇場シアターイースト
土曜はB列10番台後半(センターブロック)
日曜はB列1桁番台(下手側)

「In This House」(勝手に略してITH)、2回目・3回目です。

回数を見て見えてきたものもあり、分からなくなるところもあり、作品の奥深さに酔いしれる日々です。

何というか、ついつい「物語を理解しよう」という視点で観劇する癖が付いていると、「あぁなるほど!」と思う、謎的要素があったりするわけですが、「何かわからないけど良かったなぁ」と思う観劇もいいんじゃないか、そう思える作品です。

といいつつも、やっぱり物語の整理はしておきたいわけで、そして今回はプレイビル的なペーパーはあるものの、パンフレットがないので、恐らく映像化もないわけですから記憶にしか残らない、ということで今時点の感想や気づいたところを、今回は書き留めておきたいと思う次第です。

というわけで、もちろん今回もネタバレです。
前回以上にかなり危ないネタバレまで行きますので、ご注意ください!

前回紹介した「カルチケ」(実質は学生無料チケットですが、正しくは「耕すチケット」という意味の「カルチベイト・チケット」の略です。作品を応援する方がした積み立てで、若い方に作品を見てもらおうという企画)も、毎回、用意された枚数が全部は出ていないようです(今のところ1回10枚)ので、興味を持たれた学生の方はぜひご覧になっていただきたいです。そして学生ではない方も、ぜひ見ていただきたい作品です。




では、ネタバレパートスタートです。

よろしいですね?




●「時の共有」
この物語の最大のポイントは、登場する4人の時が、実は重なっていないところ。

ヘンリーとルイーサの大人ペアと、ジョニーとアニーの若手ペア、この2組×2人がヘンリーとルイーサの旧宅で出会うことでこの物語は始まっていますが、実は大人ペアは若手ペアと同じ時代に生きていないんですね。

日曜日のトークショーで演出の板垣さんが仰っていましたが、ご覧になった方も意外に気づいていないのだとか。確かに劇中では、岸さん演じるヘンリーが言う「俺たちが埋葬された墓が崩れかけた場所にある」というところが一番明確です。

ここ、「生前墓かなと思った」とびびちゃん(綿引さん)が仰っていて、確かに今のご時世からするとそれもあり得るなと思いつつ、もう2つほどポイントがあって、ヘンリーの活躍していた野球チームが20世紀初頭のチームだったり、「AP通信」をルイーサが知らなかったり(ただしAP通信自体は19世紀に出来ていますので、少し時系列がおかしいです)、自家製醸造酒(通称「ウィスキーみたいなもの」)は禁酒法(20世紀前半)当時の名残というのが公式さんの豆知識に書かれていますね。

若手ペアからすれば大人ペアは要するに幽霊、なんですが、大人ペアの間にも「時」の分離があるように見えます。過去は夫婦だったヘンリーとルイーサは、自分の想像ですがルイーサの方が先に亡くなり、ヘンリーが年を重ねた後亡くなって、過去のすれ違いをヘンリーが埋めたくて、旧家にやってきている、ように見えます。

若手ペアのすれ違いを通して、ヘンリーがルイーサとの過去のすれ違いを埋めようとしている様はとてもいじらしくて岸さんとってもチャーミングです。

●カップが4つでなくて3つな理由
4人が出会った夜に、アニーが持ってきていたインスタントコーヒーで乾杯するシーン。ここにカップが4つなくて3つしかない理由が涙を誘います。つまり、ヘンリーとルイーサとその娘さん、この家には3人しか人がいたことがないんですね。だから4つ目のカップがない。

でも悲しいのはその先のルイーサの独白。「4つ目のカップを出したかったがなかった。それを皆が気づかないのでそのままにしていた。それは自分の存在が気づかれていないかのようだった」というところの入絵さんの淋しそうな表情にいつも強く惹きつけられます。

ルイーサは後述しますが、自分の人生が何か意味があるものだったのかを確認できなかったかのように見えて、だからこそこの独白と、そのルイーサの様をよそに3人が楽しそうに振る舞う様とのコントラストに胸が痛いです。

●大晦日は記念日
この4人の共通点と言えば大晦日。もちろん2ペアが出会ったのが大晦日の夜だったことは前提ですが、大人ペアにとっては2人の心が離れたきっかけの日。ヘンリーが酒に酔い家に帰らず、娘が高熱を出してルイーサが一晩中看病し、翌朝ヘンリーが医者を探しに走ったが間に合わず、一週間後に2人は娘を失った…

ルイーサの思い込みの中では、ヘンリーの雄姿を奪ってまで(*)自分のために得たかすがいだっただけに、娘を失ったことは自分の生きてきた意味も失ったのではと思えてなりませんでした。

(*)ヘンリーはマイナーリーグで野球をやっていたが、ルイーサが子供ができたと告げたことで街に帰ってきたため、ルイーサは自分の言ったことで彼の夢を奪ってしまった、と思い込んでいる

片や若手ペアはといえば、2人が出会った名実ともに記念日。アニーが速度違反でジョニーに捕まったのが2年前の大晦日。だからこそジョニーはこの日に「自分が信じる最高のプラン」でアニーに告白しようとしたのですね。その後来るすれ違いを想像もせずに。

●保守と革新
この物語では大人ペアと若手ペアという組み方で分けるのが一般的ですが、実のところ、保守ペアと革新ペアという分け方も可能かと。保守ペアはルイーサとジョニー。ルイーサは敬虔なクリスチャンで「伝統」を重んじる女性。ジョニーは「伝統的な家族」にこだわりをもつ男性。

翻ってヘンリーとアニーは革新ペア。ヘンリーはルイーサの伝統にこだわる姿勢に辟易している以外の面を見せてはいませんが、アニーは「家族」という概念に極端なほどの抵抗感を持つあたり、かなり革新的。ユダヤ系だからといって家族を軽視するわけではないと思いますが(作品は違いますが『屋根の上のヴァイオリン弾き』ではむしろユダヤ人だからこそ家族の結びつきを重視する描かれ方)、考え方はルイーサとアニーは全く合わないんですよね。実際にはかなり派手に議論を吹っかけようとしてますからね、アニー。

●アニーとジョニーの通じ合うところ
この物語の最大の不思議と言えば、なぜあれだけ自立したアニーという女性が、ジョニーのことを思い、好きなのか(爆)。この日のトークショーで法月氏が愚痴っていたのですが、「(ファンの方から)お手紙をいただくんですが、(女性の)みなさん全員アニーの味方なんですよね(苦笑)」という(爆)。

アニーを演じたびびちゃん(綿引さん)もそれに答えて、「自分自身の年齢とも近くて、結婚や人生に対して感じる迷いといったことについて、同世代の女性の皆さんの中にも通じるところが多くあると思いますし、自分もそれを感じながらやっている」と仰られていました。

劇中では「あなたと一緒になりたい、あなたの奥さんになりたいという思いも一面としてある」と言いながらも、結婚に対しての外堀を埋められたからなのか、当たり前のように子供を求められたからなのか、「フェアじゃなかったことについて謝る」と言いはしつつも、「どこが問題だったのか」は明言されていない印象です。

アニーがトリアージナースだったことが、ここのストーリーに大きくかかわるという話もあったはずですが、そこの話が少し飛躍しているように感じます。戦場や非常事態の場に多く接し、命に対する儚さを知っているだけに、軽々しく命を生み出す行為に「ただあなたが子供を作りたいという理由だけでは応じられない」という理論構成なのかなと、今のところ想像していますが。

ジョニーは自ら言っていることとして、出来のいい兄たちに比べて、家族では立場がないと。だからこそ家族を作ることで両親に対して胸を張りたい、それをしなきゃという焦りからこそ、アニーの同意も取らずに突っ走ったのかと思いますが、アニーのどの逆鱗に触れたのか、そこが少し丁寧ではない描かれ方に思えます。

アニーはジョニーの文才を世に出したくて本人に無断でAP通信や出版社に売り込んだりしているのですが、アニーにとってはジョニーが「家族という制約の中で自分の可能性を狭めている」ことに対して、ジョニーらしい良さを出して、今まで育ってきた家族の枠内ではなく生きていこうとして欲しがっているわけですよね。

両親に評価してもらいたい、じゃなくて自分がこう生きていきたいから、そこに一緒にいるのはアニーでいてほしいと。

もう一面として、自立した女性であるアニーにとって、自分が今までやってきたこととの整合性もあるのかなと。今まで命を削ってきたことが意味があったことと思うためには、ジョニーと生きる未来が、それ以上に意味があるものでなくては、自分が一歩踏み出す意味がなくて、だからこそ「ただ家族になる」「ただ子供を産む」だけでは、アニーが変わるきっかけとしては弱かったのかなと。

ただ、それはアニーの立場の思いでしかなかったことが「フェアじゃなかった」なのかなと、そう感じました。
(自分の思いだけ押し付けて、ジョニーの思いを無視したことが)

トークショーでは板垣さんが「アニーのあの(機関銃のような)指摘を理解できるのは男性でも200人に1人いるかいないかじゃないかと思う。自分は無理(笑)」と仰って会場の笑いを誘っていましたが、理解しても寄り添える人はさらにその200分の1じゃないかと思います(苦笑)。

その話を聞いていてふと思ったのですが、舞台観劇客に男性が少ないのはなんでかという話が繰り返し色々なところで議論されてきていると思うのですが、舞台の世界で更に現実と向き合うのは辛いからじゃないか、とふと思った次第です(爆)。

・・・

日曜日終演後は約20分のトークショー。

若手ペアからは「今この作品に出逢えてよかった」との感想が法くん、びびちゃん双方から。
法くんからは「ど素人から素人になれたかなと思うぐらい」
びびちゃんからは「ここまで身を削ってやった芝居もいままでなかったというぐらい」

びびちゃんから「板垣先生にここまで丁寧に教えていただいて」と言ったが早いか、板垣先生から「授業料は後ほど」って言われてました(笑)

法くんが天然で突っ走り、びびちゃんが優等生的にフォロー、加奈子さんの光速のツッコミが随所に差し込まれ、岸さんが上手くまとめるという感じ(笑)。が、板垣さんもツッコミ激しいですからね。

加奈子さん曰くの「始まったら終わっちゃうから始まらないで欲しかった」という言葉が印象的。

また板垣さんからプロデューサーの宋さんの話として「この作品の規模なら1週間で終わるものだけど、『良かった』という頃には終わっちゃうのは淋しい、だからどうしても2週間やりたい」という思いでこの日程になったとのこと。

その話を聞いて思いましたが、宋さんの熱さも、板垣さんの熱さも、そしてキャスト皆さんの熱さも、演奏の皆さんの熱さも、それぞれ違う熱さなんですよね。良い舞台を作りたいという思いが伝わってくる素敵な作品が、あと1週間、更に多くの皆さまの心に届くよう、願っています。

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『In This House』(1)

2018.4.4(Wed.) 19:30~21:00
東京芸術劇場シアターイースト
D列2桁番台(センターブロック)

先月の『A Class Act』から1週間、東京芸術劇場の地下反対側、今度はシアターイーストに通います(爆)。この日が初日です。

大人ペア、岸祐二さん演じるヘンリーと、入絵加奈子さん演じるルイーサの「いる」家へやってくる、若手ペア、綿引さやかさん演じるアニーと、法月康平さん演じるジョニー。

2組のペアが「出会う」ことで生まれる物語を描いた作品。サブタイトルに”最後の夜、最初の朝”というタイトルが付けられています。

(上述の「 」を付けた言葉には意味があります)

ネタバレ要素を含んだ作品ではありつつも、ネタバレがあっても楽しめる作品ではあります。
とはいえ当blogのポリシー上、ネタバレときちんと宣言して書き始めますので、ネタバレ回避の方は回れ右お願いします。



大人ペアがかつて住んでいた片田舎の家にいる大晦日に、車が故障して立ち往生した若手ペアが助けを求めたところから物語が始まります。夫婦なのにどことなくぎくしゃくしている大人ペア、カップルなのにことごとく噛み合わない若手ペア。

2組のペアが、自分たちではどうにもできなかった溝を、それぞれのペアの存在が埋めていく様が素敵な物語。

優しさに溢れ、でも後悔に満ちた岸さんのヘンリー。
利発さに溢れ、でも不信に満ちた入絵さんのルイーサ。
使命感に溢れ、でも不安に満ちた綿引さんのアニー。
素直さに溢れ、でも焦燥に満ちた法月さんのジョニー。

若手ペアだけ見ると、どことなく『Before After』のエイミー&ベンの雰囲気も思わせる、「言葉が過ぎる女性」と「言葉が足りない男性」の組み合わせ(爆)。

世界中を飛び回る野戦病院の救急看護師(トリアージナース)であるアニーは、ジョニーが望む「家庭」に入ることを良しとせず、ジョニーとの間で口論になってしまう。そんな若手ペアを女性の面から見守りサポートするルイーサと、男性の面から見守りサポートするヘンリー。ヘンリーとルイーサも実のところ仲睦まじい夫婦に最初は見えつつも、実のところ一つの出来事をもとに心に壁ができてしまっていた…。

若手ペアに対して、無理に結論を強いることはしないながらも、人生の先輩として、自らが自らの中に後悔を持っているからこそ、ジョニーに優しく接するヘンリー。片や実のところ人生のポリシー的には合わない面がありつつも、同じく自らが自らの中に後悔を持っているからこそ、アニーを支えようとするルイーサ。

大人ペアは「変えられない過去」を多く持っていて、若手ペアは「未来を決められない」思いを思っている、そう見えました。

大人は過去を否定しては生きられない生き物のように思えますが(特に男性は)、若者は決断することで自分の可能性を狭めてしまうのではないか、と焦っているように見えて。特にトリアージナースであるアニーは、とりわけ皆を助けることを自身の生きる意味に思っているように思えて、自分自身が率直に幸せを求めることに躊躇いを求める女性のように思えました。そんなアニーが、ルイーサと出会ったときに感じたこと…女性の幸せを求めたのに手に入れきれなかったルイーサの思いを感じたときに、どう感じたか。

対してジョニーはアニーを愛していると直接伝えたものの、アニーに気持ちを伝えられなかったばかりか、彼女の逆鱗に触れてしまい、途方に暮れてしまう…が、ヘンリーが抱えている後悔が、自分の思いや行動がアニーの気持ちに寄り添っていない、一方的なものであったことを気づかせ、アニーに対してどう誠実に対するべきかを考えていく…。

そして大人ペアも「変えられない過去」と対峙する勇気を若手ペアからもらい、縮めることができないとお互い思い込んでいた距離を縮めていく。

「家」を持っているはずの大人ペアは、本当の意味で「家」を作れていなくて。「家」を持とうとしている若手ペアは、本当の意味の「家」の意味を分かることができていなくて。

岸さん演じるヘンリーが伝える「家とはただそのもの」なのではなく、「心」あってのもの。
それを、大人ペアも若手ペアのお陰で知ることができ、若手ペアも大人ペアのお陰で理解することができた。

人は一人で完璧に出来上がっているわけでなく、人と人との関わりをもってして生き方を作っていく。
「house」とは「家」というだけでなく「場」という意味にも感じられて、とても印象深い作品でした。

ヘンリーの岸さん、名実ともに大黒柱。真実を伝えないことを優しさと考えていた様を、変えた勇気に感動。
ルイーサの入絵さん、若き大人の女性。ヘンリーと心通じ合った時のチャーミングさが素敵でした。
アニーの綿引さん、自立した寂しがり屋さん。笑顔でいることで隠し続けていた本心、それを明かすことは決して弱いことではない、そう感じた時の覚悟の表情はとりわけ素敵でした。
ジョニーの法月さん、素直な好青年。作品と役と演出家の板垣さんからの溢れる千本ノックを受けきったであろう感受性が演技に出ていて好印象でした。吸収力の強いスポンジという点では法くんとびびちゃん、とっても似ていると思います。

東京芸術劇場シアターイーストで15日まで。

今回の公演は主催のConceptさんが様々な試みをされていますが、一番素敵な試みだと思ったのが『カルチケ』です。この『カルチケ』とは要約すると”学生無料チケット”のことで、学生さんは学生証持参で無料で観劇可能なシステム(毎公演枚数限定、先着順)。これは、公演前のSNSの「いいね」やRTを蓄積して、100カウントで学生1人無料のシステム。また会場でも500円以上でのカルチケ基金(基金箱があります)があり、チケット代が溜まるとカルチケの枚数に上乗せされる仕組みです。

舞台を観劇していると、自分なんかが言うのも変な話ですが、どうしても見ている層というのは固定化しがちな演劇の世界。そんな中、良質な芝居を肌で感じてもらって、「こういう世界もあるんだ」と知ってもらうことはとても素敵な試みだと思います。

とりわけ今作は、演じる側はもちろんだと思いますが、見る側にも覚悟が求められる作品。それは強迫観念みたいな強いものでは全然なくて、否が応でも自分に置き換えて考えたくなるような物語ということもあって。
U25が普及してきたとはいえ、まだまだ元が高いだけになかなか客層が広がらない中、「日常では味わえない世界」を感じる機会が、この試みを通じて増えることを願っています。

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